第13話
坊鬼に連れられ、行き着いたのは社殿の裏にある広場だった。
最初の広場と見た目は同じようだが中央にあるのは櫓ではなく、ここには扉の閉まった大きな門だけが聳えていた。
その左右には尺八ではなく珠の大きな数珠を持った虚無僧達が並び、何かを唱えている。
門の前には自分と同じ襤褸を纏った者達が両手を縄で縛られ、列をなしている。
「ひゃ~っはっはっはっ!地獄じゃ!地獄じゃ~!!」
平安貴族のような格好をした男が一人、気が触れたように笑いながら大声を発し、ふらふらと辺りを彷徨う。
それと周囲の雰囲気に不吉なものをかんじながら研次もそこへ加えられ、両手の自由を奪われた。
彼が定員の最後だったのか、そこから虚無僧の読経は音量を上げ、やがてそれがまとまった掛声のようになる。
「「「ヤッショウ!マカショウ!ヤッショウ!マカショウ!ヤッショウ!マカショウ!ヤッショウ!!マカショウ!!・・」」」
誰も触れていない門の扉が重い音を立ててゆっくりと開いてゆく。その中は真っ暗だった。
宮司のような男に無言で促され、先頭の者から中へ入っていく。最後に研次が収まると蒸気を伴った水滴が辺りに降り注ぐ。
「「「ヤッショウ!!マカショウ!!ヤッショウ!!マカショウ!!ヤッショウ!!!マカショウ!!!ヤッショウ!!!!マカショウ!!!!・・」」」
扉は開く時の倍ほどの早さで閉じてゆく。
やがて目に映るすべてが漆黒に変わり一切の音が消えた。