学園には行きたくありません!
衝撃の12歳発言に悲しい思いをしながらも、私は平静を装っていた。
ーくっ、この演技力。主演女優賞ものだわよ。
フィオ様に気がつかれないように、心の中でそっと泣く。
これからは、私は12歳になるんだ。4歳も若くなるんだ。良かったね。と己に言い聞かせて慰める。全然慰められないけど。
「それで、働くのを止めるか?」
「いやいや、働きますよ。働かせて下さい!それとも、子供は働いちゃダメなんですか?」
「いや、ダメではない。だが、勉強は良いのか?私が君くらいの時は学園で学んでいたものだが」
この国の事がさっぱり分からないけど、この国は義務教育の国なんだろうか?
「勉強ですか?勉強はしますよ。この国の基本的な事は最初に教えて頂けたらと思いますが、それ以外は仕事が終わった後の時間にすれば良いかと。それとも、学園?には行かないといけないものなんでしょうか?」
「いや、行かないといけないわけではではないな」
「そうなんですね。良かった」
私がほっと息を漏らすと、フィオ様が首をかしげた。
「うん?良かったとは?」
フィオ様は私が何で安堵してるのか分かってないようだ。
「学園とやらに通うにしたって、お金がかかるじゃないですか」
「ああ、その事か。心配する事ない。私が出そう」
ーはっ?この人は何を言ってるんでしょうね?
「いりません!!勿体ない!行かなくても大丈夫なら、行きたくありませんから」
「そうなのか?」
「はい!」
だって、お金出して貰うなんて、申し訳なさすぎるよ。そもそも何でお金出してくれようとしてるんだろう。ほぼ初対面に近い私の為に。
もしかして、あしながおじさん的な?
それはそうと、私は学園に行って勉強する時間があるならなら、その分働いて稼ぎたい。そしたら、日本に帰る手がかりが早く掴めるから。
私の強い決意を感じ取ってくれたのかな?フィオ様は「そうか」と分かってくれた。
だけど、フィオ様が心なしかしょんぼりしているように見える。そんなに私を学園に入れたかったのだろうか。
「それよりも、働き方や仕事内容を相談したいのですが」
私は話をそらせようとフィオ様に話し掛けた。
「分かった。君は何が出来る?何か要望はあるか?」
「えーと、料理と掃除、裁縫、お花のお世話が出来ます。要望ですが、衣食住の保障をお願いしたいです。あと、もし私が読み書きが出来なかったら、教えて頂きたいです。あとは、うーん。もし良ければ、やった事がない仕事も教えて欲しいですね。それから、ずっと同じ仕事をするのではなくて、1日とか1週間でやる仕事内容を変えて貰えたら嬉しいです」
要望があるかって事だったから、思いつく限りの要望を言った。言ってしまった。言い過ぎたかも。
でも、本当はまだ要望あるんだよね。小出しにしていこうかな。
「分かったが、仕事を変えるのは何故だ?」
「色々な事を覚えて、出来る事を増やしたいからです」
フィオ様の疑問は最もだろう。普通は専門の職に就くものだから。でも、私は手に職をつけたいのだ。色々な事を経験して覚えたら、それだけ将来の選択肢が増える。こっちの世界で経験した事だって、日本で就職する際に役立つかもしれない。
「そうか。オルランドに言っておこう。詳しくはオルランドと相談して決めたら良い」
「良いんですか!ありがとうございます!!」