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ここで働かせて下さい!

「はい、どうぞ」


私もフィオ様にお願いしたい事があるから、フィオ様が部屋を訪ねてくれたのは好都合だ。


「失礼する」


部屋に入って来たフィオ様の手元には、何か布があった。もしかして、パジャマだろうか。


「オルランドから寝間着が必要だと聞いて、持って来た」

「ありがとうございます。わざわざフィオレンツォさんが持って来てくれたんですか?」

「ああ。様子を見るついでにな」

「なるほど」


その言い分に納得した。普通ならオルランドさんが持って来るはずだもんね。


ーそれにしても、私の様子を見に来てくれたんだ。優しいんだな。


フィオ様の優しさを感じ、心がほんのりと温かくなった。


「体調はどうだ?食事はとれたと聞いたが」

「体調は良くなりました。ちょっと寝たらスッキリしましたよ。あ、食事ありがとうございました。美味しかったです」

「それは良かった」


フィオ様は1つ頷くと、「ではお休み」と言って部屋から出て行こうとした。


ーえっ、もうお終い?早いよ。


「待って下さい」


私が慌てて引き止めると、フィオ様に不思議そうな顔をされた。何かあるのか?って顔だ。


「何か?」

「あの、お願いがあると言いますか。これからの事を相談したいんですが…」

「そうか。分かった。話を聞こう」

「お願いします」



テーブルを挟んで向かい合う形でイスに座る。テーブルの上には何もない。

私にはお茶が入れられないからだ。茶器もなければ、茶葉もない。それに、今のところ保護されている立場だし。お客人(?)の様な立場だから、勝手な事は出来ないのだ。


ーああ、緊張するからお茶が欲しかった。


今はお水さえこの部屋にはない。残念。

フィオ様は飲み物がない事を何も気にしていないようだ。早速本題を尋ねてくる。


「それで、お願いとは?」

「ああ、はい。あの、その…お願いします!ここで働かせて下さい!!」


がばっと勢いよく頭を下げた。


「…………」


静寂が部屋に広がった。


ーダメなのかなぁ。


心配になる。ずっと頭を下げたままフィオ様の反応を待っていると、しばらくしてポツリと呟く声が聞こえた。


「働く…のか?」

「はい!」


ようやく反応があった、とほっとしながら頭を上げたら、フィオ様の不思議そうな顔が見えた。


ー何かおかしな事を言ったっけ?


いや、何も言ってない。


「君は異世界から来たばかりでこちらの事は分からないだろうから、ここでゆっくり過ごして貰おうと考えていたのだが」


ーええっ!?それって食客って事ですか?何か偉そう!!ふっふう〜。


私の気分は高揚した。だけど、フィオ様の次の一言でこの高揚した気分は霧散した。


「それに、君はまだ子供だろう?働くのはまだ早いんじゃないか?」


ーはっ?子供?


確かにまだ未成年だけど、それでも16歳だ。子供って言われるのは嫌だ。フィオ様から見たら、子供だけれど。何歳くらいに思われてるのか分からないけど、もし私が小さいから子供に見えているんだとしたら、すっっっっっごく嫌!!


「あの!!私はじゅう……」


すぐに本当の年齢を言おうとする。

けど、ふと思った。

このまま子供だと思って貰っていた方が良いんじゃないかって。

本当の年齢を言っても庇護してくれるだろうとは思うけど、子供の方がより庇護して貰えそう。

それに、フィオ様ならこの世界のこの国の常識が分からなくても仕方がないと思ってくれるけど、フィオ様以外の人はそうじゃないから。「まだ子供だもんな」ですむ立場が欲しい。

私は頭の中で計算すると、決めた。


「いえ、何でもありません」


途中まで言いながらも止めた私に、フィオ様はちょっと首をかしげた。


「うん?何だ?じゅう…?ああ、12歳くらいか?」

「ああ、はい。12歳です…。ハハハ……」


すかさず話に乗ったけど。


ー12歳かぁ。4つも下だよ。12歳って小6か中1じゃない!うわ〜〜〜ん。私は高校生だよーーー!


自分で決めてついたウソだけど、それでも心が傷ついた。

いいもん、プライドよりも実利を取るもん。ハハハハハ…。はぁ…。


ー悲しい…。

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