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お客様への給仕

「ええ、貴女がやるのです」

「ど、どうしてですか!!」


私がお客様への給仕をやる事について、私はアンナ様に抗議を込めて尋ねた。すると、不可解な答えが返ってきた。


「お客様がそれをお望みだからです」

「えっ!?お客様が?」


はて?お客様は私と面識がある人なのだろうか。けど、私と面識がある人なんて、すごく数が限られる。それに、あんな女の子、知り合いにいたかなー?

よく分からない事だらけけど、理由は分かった。お客様からご指名されたとあれば、私が給仕しなくちゃならない。


ーはぁ〜、気が重いけど、やるしかないなー。


私が気が重いのは、私がお客様に給仕をした事がないからなんだ。フィオ様への給仕だって、最近やらせて貰えるようになったばかりだし。しかも、それも週に1回だけ。

私の給仕レベルなんて、まだレベル2くらい。それなのに、いきなりお客様への給仕とか!!いーーーやーーー、緊張するよーう!!


ーはぁ〜、粗相がないように気をつけなくっちゃ。


「お茶の準備はこちらで調えますから、ルーナはそれを持って行って、お客様にお出しすれば大丈夫です」

「うう、分かりました」

「それでは、行きますよ!」

「はい!!」


アンナ様の号令に従って、私はアンナ様の後に続いて歩き出した。そして、お茶を準備する部屋に入って行く。

すると、そこにはベルタさんとカリーナさんがいた。既にカップを温めたりやお湯を沸かしたりと色々として下さっていたようだ。ありがたや。

お茶の他にはクッキーも用意されている。私がやる事は、本当にお客様にお出する事だけみたい。


「来たのね」

「それじゃあ、準備を進めるわね」

「はい、宜しくお願いします」


私がお願いすると、ベルタさんがテキパキと動いてお湯の用意をしていく。その間、カリーナさんが温める為にカップに入れてあったお湯を捨てていく。息の合った連携プレーだ。流石である。


「お砂糖もティースプーンも大丈夫ね」

「クッキーもちゃんと用意してあるわね」


2人はそう言うと、声を揃えて言った。


「「これで良し!」」

「準備はこれで万端よ」

「さあ、お客様にお出ししてきて頂戴」

「は、はい」


ーーひー、一気に緊張してきたよー。


1回なりを潜めたと思って緊張が、また一気に高まった。思わず返事がどもってしまう。


「大丈夫よ。いっぱい練習してきたじゃない」

「そうよ。旦那様への給仕も上手になったわよ。自信を持って、背筋を伸ばす!」


カリーナさんに背中をパシッと軽く叩かれて、私は背筋をシャンとさせた。いけないいけない。姿勢は大事だよね。

うん、今までだって、お稽古ごとの発表会で緊張した事あったじゃない。大丈夫だ。まあ、発表会なんて幼稚園の頃の話だけどね…。


「ありがとうございます!行ってきます」

「「行ってらっしゃーい」」


2人に見送られて、私は出陣した。お茶のセットを乗せたワゴン?って言うのかな?あれを押して。

そして、私の前にはアンナ様がいてくれている。


「私がドアを開けて先に入りますから、ルーナは私の後に続いて入って頂戴」

「分かりました」


少し歩くと、とうとうアンナ様の足が止まった。応接室の前に着いたのだ。


「大丈夫よ。私が補佐しますからね」


アンナ様は応接室のドアをノックする前に私の方を振り向いて、そう言ってくれた。


「はい!ありがとうございます!!」


私は安堵のあまり、思わず涙が出そうになってしまった。アンナ様にそう言って貰えるだけで、安心感が違うもんね。


「それじゃあ、行きますよ」

「はい」


アンナ様の声に頷くと、アンナ様の手がドアをノックした。

そして、部屋の中から返事が返ってくる。


「良いわよー」


その声は、やっぱりさっき聞いた声だった。あの女の子の。


「失礼致します」

「失礼致します」


アンナ様に続けて私もそう言うと、ワゴンを押して中に入った。

部屋の中にいたのは、ソファーにくつろいで座っている可愛い女の子だった。髪は薄い金髪で、その髪が日の光でキラキラとしていてとてもキレイだ。

でも、私の知っている人ではない。初めて見る子だ。


ー何でこの子は私の事を知ってたのかな…?


私はあまりお客様をジロジロ見ないように気をつけながらも女の子を観察する。そして、そうしながらもワゴンを押してテーブルに近付いた。


「お待たせ致しました。お茶のご用意が出来ました」

「分かったわ」


アンナ様の言葉に、女の子は頷いた。そして、なぜか私の顔をじっと見てきた。


ーひゃー、なんか見られてるんですけどー。何でー??

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