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謎の女の子

声からすると、声の持ち主は女の子だろう。年は私とそんなに変わらないんじゃないかと思う。


声は玄関の表の方から聞こえてくる。私はこっそりと声の方に近付いた。本当は、こんな真似はしちゃいけないんだけど、今までこんな事なかったから、気になっちゃって…。


ーこの女の子はお客様なのかな?それも、約束なしでいきなり現れた。


「…お忍びで来られたのですか?」

「ええ、そうよ!」


オルランドさんの質問に答えた女の子の声は、得意気なものだった。それに対するオルランドさんの反応は、ため息だった。

オルランドさんは大きなため息をつくと、女の子に言った。


「中にお入り下さい。お茶をご用意致します」

「あら?入っても良いの?」

「もちろんでございます」

「ありがとう」


オルランドさんは、女の子をおもてなしする事にしたらしい。けれど、フィオ様は不在にしてるんだけど、それで良いのかな?フィオ様が帰って来るまで待つつもりなのかな?それとも、フィオ様に早く帰って来て貰うのかな?


私がそんな事を考えている間に、女の子はオルランドさんに招かれてお屋敷の中に入ったようだった。聞こえる声が小さくなっていっている。

女の子がどんな子かは分からなかったけど、いきなりお屋敷に来た、オルランドさんと顔見知りの子だという事は分かった。

不審者じゃなくて、良かった。でも、アポなしの訪問はやめた方が良いと思うけどね。いきなり来られると、こっちも用意が出来てなくて慌てちゃうし。


女の子もお屋敷の中に入っていなくなったから、私はお仕事に戻るべく、元の場所に戻っていった。そして、ピーラーを片手にじゃがいもの皮剥きを再開する。

シュッシュッ、と皮を剥いていって全部剥き終える。


「はあ〜、終わったぁー」


両手を上げて伸びをすると、そこにパオロさんがやって来た。


「あっ、パオロさん。丁度、今、終わったところですよ」

「そう、ありがとう。お疲れ様」


パオロさんが労ってくれました。優しいなー。

次にパオロさんは、私の足元にあるじゃがいもを指差した。


「これは、ボクが持って行くね」

「分かりました。ありがとうございます」


素直にパオロさんにじゃがいもをお任せする。


「どう致しまして。そしたら、今日はここはもう良いから。アンナ様がルーナを呼んでるから、そっちに行って貰えるかな?」

「アンナ様がですか?どちらに行けば良いのでしょうか?」

「それが、アンナ様がここに来てるんだ。今、ルーナを待っているから、急いで行ってくれるかな」

「分かりました!」


アンナ様がここまで私を呼びに来てるなんて、きっと急ぎの用事に違いない。私は急いで厨房の出入り口まで行った。


「アンナ様、お待たせしました!」


そう言った私に対して、アンナ様は黙ったままいた。そして、何故か私の顔をじっと見ている。その後は、頭のてっぺんから足元まで見てくる。


ーな、何だろう!?私の格好、何かおかしいの!?


私が内心でオドオドしていると、アンナ様がぽつりと呟いた。


「着替えが必要ね」

「着替え、ですか?」

「ええ、そうよ。洗濯してある給仕用のメイド服に着替えてきて。キャップも替えて」

「分かりました」


何で着替えが必要なのか、いまいち状況がよく分からないけど、『着替えろ』と言われたなら、着替えないとならない。

私は急いで自分の部屋に戻って、メイド服とキャップを洗濯してあるものに替えると、すぐにアンナ様のところに戻った。


「お待たせ致しました」


私が言うと、またアンナ様が私の頭のてっぺんから足元まで見てきた。アンナ様チェックである。


ーどうでしょうか?合格でしょうか?


すると、アンナ様が大きく頷いた。


「良いでしょう」


ー良かったぁ〜。


まだ状況がよく分からないけど、とりあえず合格が貰えて良かった。

私がホッとしていると、アンナ様が思いがけない事を言ってきた。


「貴女にこれからやって貰いたい事があります。今、ここにお客様が来られています。そのお客様へ給仕して下さい」

「えええええっ!?わ、私がですか!」

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