りんご
部屋にやって来たオルランドさんにフィオ様が言った。
「りんごはあるか?」
「りんごでございますか…」
オルランドさんはそこで少し考えた後、
「ございますよ。お待ち下さい。すぐにご用意致します」
そう言って、すぐに部屋から出て行った。
ーあるんだ!りんご!!
りんごがあるのは良かった。これでピーラーを試す事が出来る。
それからすぐに再びオルランドさんが部屋にやって来た。その手にはりんごが2つある。
「お待たせ致しました」
「いや、ありがとう。りんごはルーナに渡してくれ」
「かしこまりました」
オルランドさんはフィオ様にそう言うと、私にりんごを渡してくれた。
「ありがとうございます」
「りんごが必要という事は、ピーラーが出来たのですか?」
流石はオルランドさん!察しが良い。
「はい!そうなんです!」
「もう出来たのですか。早いですね」
「リオン君はすごいですよね!!」
オルランドさんの言葉に私が答えると、リオン君が慌てだした。
「いや、そんな事はないから!!」
そんな事はあるのに、自分ではそうは気付いてないリオン君である。
「いえいえ、十分にすごいですよ」
「そうだな」
「そうだよ」
私達に次々に言われて、リオン君は照れて赤い顔をしながら、困って唸ってしまった。
「う〜」
ーハハハ。リオン君は可愛いな〜。
年上の男性にそんな事を思うなんて、と思うけど、可愛いものは仕方がない。リオン君はどうかずっとこのままでいて下さい。
「ルーナちゃん!そ、そんな事より、今はりんごだよ!」
リオン君は焦ったようにそう言った。その言葉に私は頷いた。
「そうだねー。りんご、剥いてみなくちゃだね!」
そんな訳で、私はとうとうピーラーを試してみる事になった。まずは、最初にりんごを水で洗う。そしたら、ついにピーラーの出番である。
「い、いきますよ」
私は背後で見ている3人に声をかけた。後ろから私のやる事をじっと見てられるのって、ちょっと緊張するけど、頑張ります!とは言っても、皮を剥くだけだけどね。
りんごにピーラーの刃を当てて、すっと下に引いていく。すると、皮はするっと剥けていった。
「「「おおー!!!」」」
3人にから感嘆の声が上がる。
その後、りんご1つの皮を剥いて、もう1つの皮も剥いて、小さく切っていった。
「どうぞ」
フォークと小皿も用意して、皆の前に置くと、3人はフォークに刺したりんごをまじまじと見つめた。
「ちゃんと皮が剥けてるな」
「その様ですね」
「良かったー」
フィオ様が確認して言うと、オルランドさんが相槌を打った。1人安堵しているのはリオン君だ。
「良かったね、リオン君!これからしばらく使い続けてみて、問題がないか確認してみるね」
「うん、宜しくね」
「任せておいて!」
次の日、私は料理長にお願いして皮剥きをさせて貰う事になった。
「宜しくお願いします」
「おう。じゃあ、詳しい事はパオロに聞いてくれ」
「はい、分かりました」
私が料理長に返事をすると、すぐにパオロさんを呼んでくれた。
「パオロー!」
「はい!」
「前に言ってた皮剥き器の件だ。嬢ちゃんに皮剥きが必要な野菜を教えてやってくれ」
「分かりました」
「宜しく頼むな」
「はい」
パオロさんは料理長に返事をすると、私に顔を向けた。
「野菜はあっちにあるんだ。案内するね」
「はい!宜しくお願いします!」
パオロさんが案内してくれた先には、山盛りになった人参があった。
「皮を剥いてほしいのは、この人参だよ。ボクも一緒に皮を剥くね」
「分かりました」
私は厨房の隅に座ってパオロさんと一緒に人参の皮を剥いていく事に。パオロさんはナイフで、私はピーラーで。
「へー、これが皮剥き器かい?」
私が取り出したピーラーを見て、パオロさんが声を掛けてきた。
「そうですよ」
「面白い形をしてるんだな」
「そうですね」
私には見慣れた形をしているピーラーだけど、ここの人には面白い形らしい。
私の手にあるピーラーをじっと見ているパオロさんに、私は提案した。
「あの、もし良かったら見てみますか?」
「!?。良いのかい?」
「はい、もちろんです」
私がピーラーを差し出すと、パオロさんは受け取ったピーラーを目の高さに掲げてじっと見つめる。
「なるほどなー。ここが刃になってるのか」
パオロさんはピーラーを観察し終えると、私にお礼を言って返してくれた。
「ありがとう」
「いえいえー」
私は返して貰ったピーラーを右手に持つと、左手で人参を掴んだ。
ーいざ、人参!!
人参の皮は簡単に剥けた。良かったー。
「へー、すごいなー。本当に皮が剥けた」
私がピーラーで皮を剥いたのを見て、パオロさんが驚いて目を丸くしていた。




