試作品を試したい!
ピーラーの開発会議をした次の日、リオン君はもう試作品第1号を完成させてくれました。
ーあなた、仕事、早すぎじゃないですかね?
「リオン君、もう出来たの!?」
「うん」
「そうなんだー。ありがとう!」
お仕事出来るリオン君、素敵!
だけど、その早さにびっくりしちゃうよ。
試作品が完成したならば、次は私の出番である。
これからキッチンツールを作るに当たって、料理長に試作品を試してみたいから、皮むきをさせて欲しいとお願いしてあるのだ。
実は、私、まだ料理長からお許しが出ずにいるから、料理のお仕事は出来ずにいるんだよねー。今回の件も、一生懸命にお願いしてなんとかお許しを頂けたくらいなのだ。
ー料理長は厳しいです。ぐすん、切ない。
それはともあれ、試作品を試してみなくっちゃだね!しかし、試作品を試すって言っても、どれくらい試してみたら良いものなんだろうね?
1週間、毎日使い続けてみたら良いのかな?この世界では耐久テストとかどうしてるんだろうね?
ピーラーだから、切れ味がすぐに落ちないかとか調べてみなくちゃだけど、どれくらい試せば良いのかさっぱり分かりません。
とりあえず、1週間毎日使い続けてみましょうかね。
でも、私も他に仕事をしてるから、出来るのは仕事が終わってからになるんだよねー。仕事が終わったのに、また仕事をしなくちゃならないのは、少ししんどいね。
うー、でも、フィオ様は仕事が終わって帰宅してからリオン君と研究?実験?してたりするし、リオン君は水筒作りなどで忙しくしてたりするし、オルランドさんは『いつ休んでるんですか?』ってくらい仕事をしてるから、私も『少ししんどい』とか言ってられないよね。
しかも、私が『作りたい』って言ってるんだから尚更である。
ーここは一つ頑張りますか。
でも、それは明日からだ。もう遅い時間だから、今から厨房に行っても皮むきさせて貰えないのだ。
でも、試作品が完成したならば、すぐに試してみたくなるものじゃない?
私は何か皮をむいてすぐに食べられるものを探す事にした。
皮をむいてすぐに食べられるものと言ったら、みかんだ。けど、あの皮はピーラーでむくタイプじゃないしなー。
そもそもこの国にみかんがあるのかどうかも怪しい。
しゃあ、みかん以外で何が良いのかと言えば、りんごでしょう!私、日本でもりんごの皮むきはピーラーでやってました。
果物ナイフや包丁でも出来なくはないけど、やっぱりピーラーでむくのが簡単で速いからねー。
そんな訳でりんごを探す事に。開発室には保冷庫があるから、一応中を見てみる事に。
「な、ない…」
「何が『ない』んだい?ボクも探すのを手伝おうか?」
『やっぱりないか〜』と私ががっくりしていると、リオン君が声を掛けてくれた上に手伝いを申し出てくれた。
ーおお!なんて良い人!!
でも、りんご探しを手伝って貰うのは気がひけるよ。
すると、そこにドアをノックする音が聞こえてきた。
「「はい、どうぞ」」
私とリオン君が声を揃えて言うと、中に入ってきたのはフィオ様だった。
「フィオ様!!」
「やあ」
「フィオ様、どうなさったのですか?」
私が尋ねると、フィオ様はにこやかな笑顔で言った。
「昨日の今日だからね、様子を見に来たんだ」
「そうでしたか」
フィオ様の返答に、リオン君が頷いた。
進捗状況を知りたかったって事かな?
「で、どうたい?」
「試作品は出来ております」
「そうか、早いな。それで、試してみたのか?」
「「いいえ」」
「まだなのか?」
「はい。ちょうど、皮をむいてすぐに食べられるものを探しておりました」
私が言うと、リオン君が納得したように頷いた。
「ああ、それで保冷庫を見て『ない』って言ってたんだ」
「うん、そうなの。りんごがないかな〜って探してたんだよ」
「そうかー。確かに、保冷庫にりんごはなかったよね」
「うん…」
その時、私とリオン君のやりとりを見ていたフィオ様が言った。
「厨房にはあるんじゃないか?」
「あ〜…。多分あるとは思いますけど、今から頂きに行くのはちょっと…」
「そうか…。なら、オルランドに聞いてみるか」
フィオ様はそう言うや否や、オルランドさんを呼ぶべくベルを鳴らした。
リンリーン。
風の魔石が飾りについているベルは、遠くにいてもすぐにその音が聞こえてくる。紐付いているベルか魔石を持つ者の耳に。
そうして、すぐにオルランドさんが部屋にやって来た。




