販売に向けて
保温保冷の水筒が完成してから、しばらくした後、とうとう水筒とスポーツドリンクを販売する事になった。ちなみに私は水筒の完成品第1号を頂いたから、今回買う必要はないのだ。嬉しい〜。
最初にその話を聞いた時に、フィオ様を差し置いて第1号を貰うのはな〜と思ったから『第1号はフィオ様が貰うべきですよ』と提案したら、『私は試作品を貰ったから良いのだ』と言われてしまった。
『じゃあ、リオン君が』と言ったら、『この中で一番水筒を欲しがってるのは、ルーナちゃんだから、ボクは後で良いよ』と言われてしまった上、オルランドさんもリオン君の言葉にウンウン頷いてたから、有り難く私が第1号を頂戴する事になったのだ。皆さん、ありがとうございます!
その際に聞いたんだけど、開発室のメンバーは作ったものは無料で貰えるんだってー!超嬉しいです!
そしたら、私が欲しい物をどんどん提案してみたら良いかもだね!
でも、作る物によっては私はあまり戦力にならないのが申し訳ないよ。金属系ならどうしたって鍛冶職人のリオン君に負担がかかっちゃうからね。
保冷庫の次にはスライサーとか考えてるし。ごめんね、リオン君。頼りにしてます。
水筒とスポーツドリンクの販売は、当面はお店に委託して販売して貰うらしい。当面、というのは、機を見てお店を立ち上げる可能性があるからとの事だ。
それを聞いて、私は『流石お金持ち』って思ってしまった。さらっと『お店を立ち上げるかもしれない』と言えちゃうところがすごいよね。私もそんな事を言ってみたい!
まあ、あくまでまだ可能性があるだけみたいだけど。私が提案して開発した商品の売れ行きが悪かったら、お店は立ち上げないって事だもんね。
そう考えると、ちょっとプレッシャーを感じるよ。ううう、たくさん売れなくても良いから、それなりには売れてほしいよ。
それには宣伝が大事だと思うけど、それはお店の仕事だからねー。私はお手伝い出来ないのだ。ああ、もどかしい。どうか委託したお店の人が宣伝上手の売り上手な事を祈る。
あれ?でも、ポスターとか少量のチラシとかなら作っても良いんじゃないだろうか。皆に提案してみようかなー。だって、スポーツドリンクの凄さとかさ、ちゃんと説明しないと分からないかもしれないもんね。
『風邪をひいてる人や動いてたくさん汗をかく人に良いですよ!』って書いておけば、すぐに分かって貰えるもんね。
絵も分かりやすく書いておけば、尚良いよね。
私の提案は、すぐに受け入れて貰えた。良かったー。しかも、屋敷に置いてある紙を使って良いし、フィオ様の絵の具も使っても良いって言って貰えた。ラッキー!
私は普段の仕事が終わった後、開発室の一画を借りてポスター作成に勤しんだ。ポスターはそれぞれ2枚あったら良いかなー?店頭に1枚と商品近くに1枚貼れば良いかな?それとも、ポスターよりかはポップみたいな物の方が良いかな?
悩んだ末、大きいポスターを各1枚、小さいポップを各1枚書く事にした。それが終わったら、チラシを書くんだー。でも、そんなにたくさんは書けないから、少しだけだけど。
「こんな感じで良いかなー?」
私は自分のシャーペンで紙に下書きした後で、絵の具を使って色付けしていく。絵の具を使うのなんて、すごく久しぶりだ。ちょっとドキドキしちゃうよ。
はみ出ないように注意して塗っていくと、ポスターは無事完成した。
ーふぃ〜、疲れたー。
気をつけて塗ってちょっと疲れたから、ポップ作成はまた明日にする事にする。私の近くでは、リオン君がまだ水筒を作っていた。遅くまでお疲れ様です。
リオン君の鍛冶仕事場は開発室の一画にあるのだ。仕切りがあるから、鍛冶仕事場は見えないようになっている。中は水の魔石が設置してあって、涼しくなるようになっているようだ。お屋敷にも各所に設置してあるけど、鍛冶仕事場は暑くなるからねー。火の魔石で金属を溶かして加工していくらしいから。
私が『部屋の中で大丈夫なの?戸建ての仕事場じゃなくても平気なの?』ってリオン君に聞いたら、『魔石もあるし、術式もかけてあるから大丈夫だよ』との事だった。よく分からないけど、そうなんだー。
「リオン君、まだやるの?」
「うん、あと少しねー」
「ほどほどにしなよー」
「分かった。ありがとう」
リオン君は仕事熱心だね。
「私はもう行くねー。お疲れ様でしたー」
「うん、お疲れ様ー」




