水筒
私は、急いでフィオ様とオルランドさんに保冷庫のドアポケットと水筒を提案してみた。
ーどうかなー?どうかなー?無事、採用されると良いんだけど。
すると。
「うん、良いんじゃないか?」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ」
「良かったー」
「ただ、保冷庫のドアポケットに関しては、私はよく分からないが。オルランド、どうだ?」
フィオ様がオルランドさんに意見を聞く。
「そうですね。確かに、縦に長い物を入れられるようになるのは、便利だと思います。ただ、すぐに平民に売れはしないと思います」
「そうなのか?」
「はい。今、保冷庫があるのにわざわざ新しい保冷庫を買う者は少数だと思います。大多数は、現在使っている保冷庫が壊れた時に買い替えると思いますので」
「なるほど。そういうものか」
オルランドさんの考えを聞いて、フィオ様にもすぐに売れない事を理解したようだ。
「分かった。では、試作品を作った後で、商人に聞いてみるとしよう。売れるか否か。それか、注文を受けてから作るようにしても良いのかもしれないな」
「それは良い考えかもしれませんね!」
フィオ様の意見に、私は両手をパチンと合わせて、声を上げた。
在庫を抱えなくて済む分、受注生産の方が安心かもしれない。
「分かりました。では、保冷庫に関しては、受注生産も視野に入れて検討してみる事にしましょう」
「はい!」
私がオルランドさんに返事をすると、次にフィオ様が口を開いた。
「後は、水筒だったな」
「はい、そうです」
「平民に需要があるかは私には分からないが、貴族、というか騎士団には需要があると思う」
「騎士団、ですか?」
あら、騎士団なんてものがあったんですね。全く知りませんでしたよ。
「そうだ。演習時や緊急時には、他に魔力を使う余裕なんてないからな。そういった時に冷たい飲み物や温かい飲み物がすぐに飲めるのは、助かると思うぞ」
「そうですか。需要がありそうなら、良かったです」
全部魔力と魔石でやってしまう世界だから、需要がないかもしれないと不安に思ってたから、良かった。
「ただなぁ」
そこで、フィオ様は私の事をじっと見つめてきた。
「な、何でしょう?」
フィオ様は1つ大きなため息を吐くと、私に話して聞かせてくれた。
「ルーナは、スポーツドリンクと同時に水筒を売り出すつもりなんなよな?水筒にスポーツドリンクを入れるつもりなんだよな?」
「?。はい、そうです」
「だが、話を聞くに、水筒は金属で作るのだったよな」
「はい」
「金属の水筒にスポーツドリンクを入れたら、水筒が腐食するのではないか?」
「えっ!?腐食!?」
腐食って事は、錆びるって事?言われてみると、スポーツドリンクにはレモンを使っていて、そのレモンは酸性。そして、金属は酸に溶ける。という事は、金属の水筒にスポーツドリンクは入れられない!?
ーうわぁーーーん、ショックだよぅ〜。
私が呆然としていると、フィオ様が言った。
「大丈夫か?『思いもよらなかった』という顔をしているが」
「……はい。思いもよりませんでした。まさか、水筒にスポーツドリンクを入れられないなんて……。ショックです……」
私は両手で顔を覆って、『うわーん』と声を上げた。泣いてはいない。けど、『うわーん』って言いたくなるほど、衝撃を受けたのだ。
ー私の冷たいスポーツドリンクがー!氷を入れるのは、味が薄くなるからイヤなんだよー。氷を入れる為に味を濃く作るのも、勿体無いからイヤなんだよーー。
私が心の中でイヤイヤしていると、ポンと頭に手を置かれた。見ると、それはフィオ様だった。
フィオ様は、私が悲しんだりした時に、こうして慰めてくれる。妹さんと重なって見えるからだと分かっていても、嬉しい。
「ルーナ、大丈夫だ」
「えっ?」
「今、思い出したが、確か外に使われている金属には耐腐食の為に、魔石と術式が使われていたはずだ」
「そ、そうなのですか!?」
フィオ様の言葉を聞いて、私は目を輝かせた。希望の光が見えてきたー!
「…恐らく。すまない。私もうろ覚えなんだ。少し調べてみるから、それまで待っていて貰えるか?」
「はい!待ちます!ありがとうございます!!」
私が両手を組んでフィオ様にお礼を言うと、オルランドさんが横から言った。
「では、水筒の試作品を作る事にしても良いのですね?」
「ああ、良いぞ」
「もちろんです!」
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私事ですが、24日からしばらく旅行に出掛けます。もし、更新出来なかったら、すみません。




