スポーツドリンクの開発
オルランドさんがレモンを搾ってくれているので、その間私は計量カップでお水を計った。最初は50ミルで試作品を作っていくつもりだ。
その後で、塩と砂糖とレモン果汁の分量を増やした物と少なくした物を作るのだ。そして、合計3つのスポーツドリンクの試作品を作って、3人で飲み比べてみようと思う。
一番舌が肥えてるであろうフィオ様に合格が貰えるのがドキドキである。
「出来ましたよ」
「ありがとうございます」
レモンの果汁を搾り終えたオルランドさんにお礼を言うと、私は果汁が入った容器を手に取って私の前に置いた。そして、そこに計量スプーンを入れて、計っていく。
ー50ミリリットル分だと、確かこれくらいだったよね?
スポーツドリンクを自作していたとは言え、レシピを確認しながら作ってたから、実は分量に関してはあやふやな部分があったりする。でも、確かこの分量だったと思う……。
えーい!もし間違ってても良いじゃないの!これはあくまで試作品なんだし。まだまだ改良する時間はあるもんね。
レモン果汁を入れたら、次は塩。そして、最後に砂糖を入れる。まあ、入れる順番は何でも良いんだけどね。
材料を全て入れ終わったら、次は混ぜるだけ。
私は何か手伝いたそうにしてるフィオ様に声を掛けた。
「あの〜、フィオ様。これをかき混ぜて、塩と砂糖を溶かしていくのですけど、それをフィオ様にお願いしても宜しいですか?」
私からの提案に、フィオ様は食いついた。
「やる!良いのか?」
「はい!もちろんです!」
フィオ様の笑顔を見て、私はお願いして良かったなぁと思った。そこにいるのに、何もさせて貰えないのは手持ち無沙汰だし、淋しいかなと思うからね。
「出来たぞ!どうだ?」
私はフィオ様がかき混ぜてくれた容器を覗き込んだ。
うんうん、よく溶けてるみたいだね。
「よく溶けてます。フィオ様、素晴らしいです!ありがとうございます!」
「そ、そうか?……」
私からの賞賛に、フィオ様は満更でもないご様子。
普段、かき混ぜると言ったら、紅茶に入れたミルクくらいのフィオ様。だから、私は少し大げさに褒めたのだ。
ー『いつもよりたくさんかき混ぜております〜』。なんちゃって。
でも、いつもよりたくさんかき混ぜたのは、本当だもんね。
基準の1つを作ったから、その容器の前に分量を書いてメモを置いておく。そしたら、次は分量を増やした物を作る番だ。
もうオルランドさんがレモン1個分の果汁を搾ってくれているから、今回は搾って貰う必要はない。私は計量カップで水を50ミル計ると、空いてる容器に水を入れて、そこに残りの材料を入れていった。
そして、今回もかき混ぜるのをフィオ様にお願いする。
「かき混ぜたぞ!」
「はい、これで大丈夫です。作るのはあと1つです」
「分かった」
この分量が多い物の前にもメモを置く。そして、最後の1つを作っていく。
私は、先の2つと同じように作っていった。ただし、分量を間違えないように気をつけて。
その後、フィオ様にかき混ぜて貰ったら、3つのスポーツドリンクの完成である。やったー!
そして、分量を書いたメモを置くと、試飲していく。
まず最初に試すのは、基準にした物だ。私は3つのコップに注いでいき、それをお2人の前のテーブルに置いた。
「では、いきましょう」
私が言うと、皆で一斉にコップに口を付けた。
ーむう!こ、これは、まさしくスポーツドリンクや。
少し濃いような気もするけど、これを調整していけば良いかもしれない。けれど、大事なのはお2人の意見だ。お2人の口に合わないようだったら、発売は断念するしかない。
「ど、どうですか?」
私はドキドキしながら尋ねた。
「そうですね。不思議な味がしますね」
「不思議な味、ですか?」
「ええ」
なるほど。『不思議な味』ですか。でも、それじゃあ、美味しいのかどうかよく分かりませんよー。
「フィオ様は、いかがですか?」
「『不思議な味』というのは、納得だ。不思議な味だが、まずくはない」
「良かったぁー!!あっ!でも、『まずくはない』という事は美味しくもないのでしょうか…?」
私が心配になって尋ねると、フィオ様はそれを否定した。
「いや、そういう事ではない。だが、少し甘味が強い気がするな」
「なるほど!分かりました!では、次は分量を少なくした分を試してみましょう!」
少ない物を試したところ、こちらがお2人の口には合ったようだった。分量が多い物も試してみたけど、どうやらお2人には甘すぎるみたいだ。私にも少し甘いと感じたから、分量が多い物は却下になった。残りは2種類だけど、基準の物を改良した物と少ない物の2種類を発売しても良いかもしれない。
甘い味が苦手な人には、分量が少ない物を。そして、甘い味が好きな人や一度にたくさん汗をかく人には基準改良分を。
私がそう提案したら、お2人は賛成してくれた。
ー良かったぁー。あとは改良を頑張るぞー!




