開発室
という訳で、出来ました!開発室が。
オルランドさんに開発室について聞かされてから数日がたった今日、開発室が正式に稼働し始めた。とは言っても、参加してくれる鍛治職人はここにいないみたいだけど。
「あの〜、鍛治職人さんはどちらに?」
私が尋ねると、オルランドさんが爽やかな笑顔を見せながら言った。
「現在、鍛治職人を募集しているところです」
「そうなのですね〜。分かりましたー。良い人が見つかると良いですね」
「そうですね」
私達に協力してくれる鍛治職人さんは、まだ見つかってないのかー。なら、先にスポーツドリンクを作れば良いね!
私は用意して貰った材料を見ていった。材料はレモン、塩とお砂糖。あとはお水。そして、スポーツドリンクを入れるガラスの容器とまな板、ナイフとマドラー、軽量カップとスプーンだ。何と、果汁を搾る搾り器はありませんでした。
お皿洗いの時にパオロさんにそれとなく聞いてみたんだけど、『搾り器なんて聞いた事ないなー』だそうです。
私、もしかしたら、ピーラーより先に搾り器を作った方が良いかもしれないよ。今日、レモンを搾ってみて、大変だったらフィオ様とオルランドさんに搾り器の製作を提案してみようかな。
「それで、これからどうするんだ?」
フィオ様が聞いてくる。心なしかワクワクしてる様な気がする。
「では、これからスポーツドリンクを作ってみる事にしましょう」
「分かった。何かする事はあるか?」
そう聞かれ、私はそっとオルランドさんに目配せをした。『手伝って貰っても良いのですか?』という意味を込めて。それに対してオルランドさんは、黙って頷いた。
ーなるほど。手伝って貰っても良いのですね!
でも、流石にフィオ様にレモンを切って貰うのはどうかと思うから、計って貰ったり混ぜて貰ったりしようかなー。
「フィオ様の出番はまだ後です。その時は、宜しくお願いしますね」
「分かった」
私の言った事に対して、フィオ様はニコニコと笑って頷いた。何かやれるのが嬉しいのかな?
フィオ様って、日本にいたら実験とか好きになってたかもしれないね。
私は流しで手を洗うと、レモンを手に取った。レモンも洗う。そして、洗ったレモンをまな板の上に置いた。ナイフでレモンを半分にする。
私、日本にいた時は、夏には麦茶とスポーツドリンクをよく作ってたんだよね。スポーツドリンクは市販の粉末を溶かして作ったりもしたけど、レモンを使って手作りもした。
暑い外から帰って来た時には、まずスポーツドリンクで水分補給をしたものだったなー。だから、こっちで庭師の仕事をしてる時に飲みたくなったのだ。
ー暑くて汗をかいたところによく冷えてるスポーツドリンク、サイコー!!
そんな感じで手作りしてたものだから、レシピは大体覚えてる。でも、こちらと日本とで、重さや液体の量の考えが同じかどうか分からない。こちらは、重さの単位が『グル』だし、液体の量の単位は『ミル』と『リル』だ。
1グラム=1グル?、1ミル=1ミリリットル?、1リル=1リットル?
一応、最初はそう仮定してスポーツドリンクを作ってみる。
ーどうか、私の仮説が合ってますように!
じゃないと、大変すぎるよ…。
レモンを切り終わると、私はレモンを搾っていく。
「んぎぎぎぎぎ…」
レモンって硬い。
私の様子を見て、フィオ様が手伝いを申し出てくれた。
「大丈夫か?私が代わりに…」
「いえ、私がやります」
「えっ!?いや、私が」
「いえ、私が。そのお召し物にレモンの果汁が付いては大変ですから」
フィオ様の申し出を、オルランドさんが抑え込んだ。オルランドさんにそう言われてしまうと、フィオ様も強く『やりたい』とは言えないようだ。
ーオルランドさん。つ、強い。流石です、オルランドさん!
オルランドさんは執事の白いシャツを腕まくりすると、手を洗ってからレモンを受け取ってくれた。
「ありがとうございます。宜しくお願いします」
「任せて下さい」
ーオルランドさん、頼もし過ぎますぅ〜。




