フィオ様とのお茶会
あの後、私はフィオ様に勧められてお昼寝をした。私が寝ている間、フィオ様はお隣の書斎で本を読んでいてくれた。
お昼寝から目覚めると、二日酔いは消えていた。
「あれ?ウソ、本当に?」
良かったよ〜。本当に辛かった。もうこれからは、ちゃんとお酒かどうか確認してから飲むようにしよう。
私はベッドから降りると、書斎に続くドアをノックした。
「どうぞ」
「失礼致します」
私がドアを開けると、フィオ様は読んでいた本を置いて立ち上がった。
「体調はどうだ?」
「それが、すっかり良くなった様なのです」
「そうか。それは良かったな」
「はい!」
もう、本当に良かったよー。こっちじゃ頭が痛くなっても、痛み止めの薬なんて飲めないしー。それとも、私が知らないだけで、あったりするのかな?
「それにしても、丁度良い時に起きてきたな」
「何かあるのですか?」
「ああ。丁度これからお茶の時間になるのだ。どうだ?一緒にお茶しないか?」
「良いのですか?」
「もちろんだ」
「ありがとうございます。ご相伴にあずからせて頂きます」
私が頷くと、フィオ様がすかさずベルを鳴らした。それからすぐ、オルランドさんがお茶を持って来てくれたんだけど、何とティーカップが2つ用意されていた。
あらかじめ、もう1つ用意するように言われてたのかな?それとも、エスパー?
「どうして、私の分までティーカップが用意されているのですか?あらかじめ、そう決めてあったのですか?」
オルランドさんに疑問を尋ねると、オルランドさんはそっと首を横に振った。
「いいえ。もし起きていたら飲める様に、そして、まだ起きていなかった時には、起きた時に飲める様にと思い、用意致しました」
「うわー!ありがとうございます!!」
流石、オルランドさんである。細やかな心遣いが嬉しい。
「具合はどうですか?」
「もう、すっかり良くなりました」
「そうですか。それは良かったです。では、明日はしっかり働いて貰うとしましょう」
「うえええ!そ、そうですね…。すみませんでした…」
私が謝ると、オルランドさんは言った。
「いいえ。ですが、これからはお酒を飲み過ぎないように気をつけて下さいね」
「はい…。気をつけます…」
「それで、旦那様から伺いましたが、商人を紹介してほしいそうですね」
「はい」
「それについては、また後ほどお話しますね」
「分かりました。宜しくお願いします」
私が頭を下げると、オルランドさんは『では、ごゆっくり』と言って、部屋から出て行った。
けど、私はすぐに紅茶を飲む事が出来なかった。正確には、お茶会の作法が分からないから、どうして良いか悩んでいたのだ。
お茶会と言って良いのか分からないけど、一応お茶会と認識しておく。じゃないと、マナーとか関係なく飲んで、後から恥をかく事になりかねないからね。
私がそっとフィオ様の様子を伺うと、フィオ様は既に紅茶に口をつけていた。そして一口飲むと、ティーカップを置いて、私に言った。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
私はお礼を言って紅茶を飲んだ。やっぱりすぐに紅茶に手をつけなかったのは正解だったようだ。良かったー。
飲んだ紅茶は美味しかった。オルランドさんは、紅茶を入れるのも上手なんだね。すごいなー。
「フィオ様。さきほど、紅茶を一口飲んでから私に勧めて下さいましたけど、それには何か意味があるのですか?すみません。作法がよく分からないのです」
私はここで、マナーが分からないなら聞いてしまえ作戦を実行した。平たく言えば、『聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥』ってやつだね。フィオ様なら私の事情も知ってるから、私がお茶の時のマナーを知らずにいても、『そんな事も知らないのか』とは思わずに教えてくれる事だろう。
実際、フィオ様は快く教えて下さった。
「ああ、これは毒が入れられていない事を証明しているのだ」
「ど、毒ですか!」
「そうだ」
私はそれを聞いて、少し怖くなった。もしかしてここは、毒殺とか暗殺とか普通に起こり得る世界なのでしょうか。
私が内心慄いている事など露知らず、フィオ様はその後もお茶会におけるマナーを教えて下さった。
ーありがとうございます。為になりました!




