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嬉しい気持ちと泣きたい気持ち

フィオ様に相談出来て、私の心はすっきりした。だけど、その心とは反対に、私は相変わらず二日酔いの頭痛と気持ち悪さに苦しんでいた。


ーうぇ〜。


早く元気になりたいよー。


「そろそろ昼食の時間だが、食べられそうか?」


フィオ様に聞かれて、私はそっと首を振った。


「無理です……」

「そうか。だが、胃が空なのも逆に良くない。スープを飲むくらいなら出来そうか?」

「…多分」


私はスープを飲む自信がなかったけど、そう答えた。『胃が空なのも逆に良くない』なんて言われたら、何か食べなきゃならないもんね。だから、提案してくれたスープを試してみようと思ったのだ。


「分かった」


フィオ様は私の返答に頷くと、そう言って部屋から出て行った。どうして出て行ったのかな?一連の流れからスープを頼みに行ってくれたのだと思うけど、オルランドさんを呼んでお願いするんじゃダメだったのかな?


ーもしかして、私がフィオ様の部屋にいる事はオルランドさんにも内緒なのかな?


そう考えると、少しドキドキしてしまう。いけない事をしているようで。

いや、ご主人様の部屋のベッドで休んでるなんて、普通にいけない事だよね。私がただの使用人ならあり得ない事だ。

そう考えると、フィオ様は私が怒られないように部屋から出て行ったのかもしれないね。有り難い事です。ありがとうございます。


私が心の中でフィオ様にお礼を言っていると、フィオ様の寝室のドアがノックされた。


「はい」

「入るぞ」


フィオ様が戻って来た。


「ありがとうございます」

「何がだ?」

「今、スープをお願いして下さった…のではないのですか?」


もしかして、私の勘違いだったのかな?だとしたら、こんなに恥ずかしい事はない。


ーうわぁ〜〜〜。


私は羞恥のあまり布団を目の下まで持ち上げて、ぎゅっと目を閉じた。


ー恥ずかしい〜。


そう思っていたけど、フィオ様の声が聞こえてきたから、そっと目を開けてフィオ様を見た。


「ああ、その事か。いや、このくらい大した事では……」


フィオ様は何故かそこまで言って止めた。そして。


「ああ、いや……。どう、致しまして…」


私の方じゃなくて、そっぽを向きながら、フィオ様はそう続けて言った。フィオ様のお顔がやや赤らんでいる様な気がするのは、私の気のせいだろうか。

気のせいだとしても、構うものか。赤らんでいるという事で決定しようと思う。だって多分、フィオ様は照れてるとか恥ずかしがってるんだと思うから。

照れたり恥ずかしがってるフィオ様は、初めて見る。新鮮だし、可愛い。


それに、『大した事ではない』と言いそうになったのを止めて言い直したのって、私が『感謝の気持ちをちゃんと受け取って下さい』って言ったからなんだよね。多分。

それって、とっても、嬉しい…。少し目がうるっとしてきちゃったよ。私は一度強く目をつぶって涙をおさえると、布団から顔を出してお礼を言った。


「ありがとうございます」

「?。スープの礼ならもう聞いたが?」

「いえ、これは違います。フィオ様が私の言った事をきちんと受け止めてくれたのが嬉しくて…。ありがとうございます」


私がもう一度お礼を言うと、フィオ様は突然身体を反転させた。


「……昼食に行って来る」

「ええ、ああ、はい…。行ってらっしゃいませ…」


フィオ様の突然の行動に、私は面くらってしまった。いきなりどうしたのかな?突然、お腹が空きだしたのかな?

しかし、フィオ様は2、3歩歩いたところで歩みを止めた。


「寝ているところを見られるのは嫌だろうから、書斎の方にスープを置いておくように言ってある。自分が飲めると思った時に飲むと良い」


フィオ様は私の方を見る事なく、そう言った。

どうしてこっちを見ないんだろう。もしかして、何か怒らせちゃったのかな?

そう思うと、途端に悲しい気持ちになった。


「……分かりました」


何とかそう言ったけど、私はそれ以上言葉を続ける事が出来なかった。

私の心の中が、重苦しい物でいっぱいになってしまったからだ。これ以上口を開いたら、涙が出てきてしまう。


ー泣くな!こらえろ、私!

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