二日酔い
明るい日差しを感じて、私はパチリと目を覚ました。すると、私の部屋のものではない天井が目に入った。
「あれ?ここは…あ痛っ!!」
見覚えがある気がして起き上がった途端、私は激しい頭痛に襲われた。
「痛い痛い痛い!!!それに、気持ち悪い…」
「大丈夫か?」
「えっ?…痛っ!!」
声を掛けられて、そちらを向いたら、また頭が激しく痛んだ。
「いたたたた…」
私は手で頭を押さえながら、声の持ち主に返事をした。
「フィオ様。…大丈夫じゃないです…。頭が痛い…。気持ち悪い…です……」
「そうか、さもありなん。辛いと思うが、それはただの二日酔いだから、病気の心配はしなくて良いぞ」
「二日酔い…。これが、あの有名な二日酔いですか。初めて経験しました……」
「それはそうだろうな。ほら、二日酔いには水を飲むと良い」
フィオ様はそう言って、水が入ったコップを差し出してくれた。
「ありがとうございます」
私はお礼を言うと、コップに手を伸ばして、ゴクリと1口水を飲んだ。
ー美味しい!
私は水を飲んだ瞬間に、喉が渇いていた事、水を欲していたことに気がついた。それからは、水を飲ん必至に飲んだ。ゴクゴクゴク…と飲んだら、いくらか気分がスッキリした。
「どんどん水を飲むと良い」
フィオ様が空になったコップに新しく水を注いでくれる。
「ありがとうございます」
フィオ様にお礼を言うけど、水を注ぐのって、本当なら私がやらなくちゃいけないんじゃない?フィオ様にさせて良い事じゃないんでは…?
それに、ここってフィオ様の部屋だよね?私、どうしてここにいるのかな?しかも、ベッドに寝て。
「あの〜、フィオ様。ここってフィオ様のお部屋です…よね?」
「そうだ」
「私は、どうしてフィオ様のお部屋のベッドで寝ているのでしょうか?」
「覚えてないのか?」
フィオ様が首を傾げて問い掛けてくるけど、よく覚えてません!
「すみません。覚えてると思うのですが、覚えてません」
「それは、覚えているのかいないのか、どっちだ」
「えーと、覚えているとは思うのです。きっかけがあれば思い出すのではないかと」
「つまり、忘れているのだな?」
「うう、すみません」
私は布団を持ち上げて、顔を隠した。
「どこまで覚えている?昨日のパーティーの事は?」
「覚えています」
「では、その後に……私に差し入れを持ってきてくれたのは?」
「覚えています」
「そうか。では、レモネードだと思っていたものが、実はレモン酒だった事は?」
「!?。レモン酒!!思い出しました!私、あの後でまたレモン酒を飲んじゃって…。……寝ちゃったんですね!?ああ〜、やっちゃったぁ」
私は両手で顔を覆った。フィオ様に顔向け出来ない。いや、そうじゃないね。顔を合わせてちゃんと謝らないと!私は手を下ろしてフィオ様の顔をちゃんと見た。
「申し訳ございませんでしたー」
私はベッドの上で土下座した。勢いよく頭を下げたから、頭がズキリと痛くなったけど、今はそれを気にしている余裕はない。
「お、おい!」
フィオ様が慌てたような声を出しているけど、私は気にせずに土下座をしている。
「私、寝てしまったようで。申し訳ございません」
「いやいや、良いから。大丈夫だから、顔を上げてくれないか」
「…分かりました。ありがとうございます」
フィオ様が怒ってなくて良かった。でも、迷惑をかけちゃったのは反省しないと…。ここは、これまでより一層精進して働くしかない!!
と思って……。
「ああーー!!!仕事!!遅刻!!」
ー仕事の事をすっかり忘れてた!
私は慌ててベッドから降りようとし、
「いててててててて」
頭が痛くなった。
「ルーナ。今日は仕事は休みだ」
「へっ?」
「体調が優れないから休ませると言ってある」
「えっ!いや、でも、体調が悪いわけでは…。風邪とかじゃありませんし…」
「いや、立派に体調不良だろう。大丈夫だから、今日は1日ここで寝てなさい」
「ここで、ですか?」
私が聞くと、フィオ様は肯定した。
「ああ。私も今日は仕事が休みなんだ。暇だから、話し相手になってほしいのだが。良いだろうか?」
「もちろんです!ありがとうございます!!」
ーフィオ様って、本当に素晴らしいご主人様だなぁ。ここで働けている事は、本当にラッキーだよ。
私は改めてフィオ様に感謝した。




