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スパーク

ちょっと離れた位置から2人を見ていると、金髪さんと茶髪さんでは金髪さんの方が偉い立場にいる事が分かった。2人の立ち位置や服装から、2人の違いが分かったのだ。


ーうん、1番に警戒しなければならないのは、金髪さんだね。


ゴクッと唾を飲み込み、2人に近付くべく歩き出そうとすると、金髪さんが茶髪さんに向かって小声で何か話しかけ始めた。

小声だし距離があるから、何て言っているのかは分からない。

様子を見ていると、茶髪さんが手に持っていた水差しを部屋の中のテーブルに置いた後、どこかへ行ってしまった。去り際にこちらにチラッと視線を向けて。


ーあれ?行っちゃうんだ。執事さんっぽかったから、同席はしなくても、てっきり金髪さんの後ろに控えてるのかと思ったんだけどな。


私に対する配慮だろうか。だとしたら、有り難い。

知らない男の人2人と対峙するよりは、1対1の方が気が楽だもん。

一応、何かあってはいけないからか、部屋のドアが少し開けてある。


ーでも、SPとかいなくても良いのかな?


金髪さんは見るからにお金持ちだ。

私は何もしないけど、(はた)から見たら、私が危険人物の可能性がある訳だから心配になる。けど、自分で対処出来るくらい自信があるか、どこかにSPが潜んでいるのかもしれないと思い直す。

それなら良いけど。


金髪さんがテーブルの側まで歩いて来たので、私も慌ててテーブルまで向かう。

すると、そこで手でイスを示しながら何か言った。


「♪☆%¥〒@&@#」


ーえっ!!今、何て言ったの?


全然、全く、これっぽっちも分からなかった。外国の方だから、もしかしたらと思ったけど、日本語はやっぱり話せないんですね。う〜ん、困った。

英語ではないし、フランス語でもないみたい。一応、私は英語もフランス語も日常会話くらいなら出来る。

これでも一応は歴史と伝統のある家の娘ですから!今は貧乏だけど…。


それは置いておいて、今のジェスチャーからするとイスに座れって事だよね?

一礼してイスに座ると金髪さんも対面に座った。

良かった。正解だったみたい。


「♪☆%¥〒@#$%?」


どうしよう。また何か話しかけてくれたけど、やっぱり何て言ってるのか分からないよ。どうしよう〜?

目を閉じて、うつむきながら唸る。

すると、ポンポンと肩が叩かれた。

見ると、金髪さんが困ったような不安そうな顔をしている。


ーああ!突然唸り出したから、具合が悪くなったのかと思ったんですね?それはごめんなさい。


金髪さんがコップに水を注いで、テーブルに置いてくれた。ジェスチャーから「飲め」と言われているのが分かる。


ーありがとうございます。有り難く頂きます。


ゴクっ。

喉を鳴らして水を一口飲み込んだ。その途端、目の前が、頭の中がスパークした。


「ーーーーーーーーーー」


声にならない。

ぎゅっと目を閉じ、両手で顔を覆う。


ー気持ち悪い。息が出来ない。気持ち悪い。頭が痛い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い……。


「はぁ。はぁ。はぁ」


息遣いが荒い。心臓がドクドクしてる。

どれくらい時間が経ったのか分からないけど、ものすごく疲れた。でも、やっと気持ち悪いのが治まった。良かった。


「はぁっ」


1つ大きく息をして目を開けると、何故か天井が見えた。


ー何で天井が?


自分の状態を確認すると、ベッドに寝ていた。どうやら金髪さんがベッドに寝かせてくれたみたい。

それって、私を運んでくれたって事だよね?うわぁ、重いでしょうに。ごめんなさい。ありがとうございます。


ベッドに寝たまま横を見ると、金髪さんと目が合った。


「大丈夫か?」

「はい。もう大丈夫です。寝かせてくれてありがとうございます」


起き上がってお礼を言うと、金髪さんが微笑んだ。


ーうわぁっ!?何ですか!その微笑みは!!


金髪さんはアクアマリン色の瞳をした、結構な美形。さっきまではいかめしい表情をしてたし、私も緊張してたからイケメンな事なんて気にもしてなかった。

けど、この微笑みときたら!破壊力抜群!!


ーうわぁ〜。しかも、声までイイ声してるし。「大丈夫か?」だって。


………ってそうじゃないよ!それどころじゃないよ!!「大丈夫か?」だって!?

さっきまでは何て言ってるのか分からなかったのに。突然分かるようになった!?

これってどういう事?さっきと今で違う事なんてスパークした事だけだけど…。

水?水がおかしかった?何か混入されていた?


「大丈夫か?やはりまだ具合が悪いんじゃないか?顔色が悪いぞ」


金髪さんがそう言って、また水を勧めてくれた。けど、飲むのが怖い。

毒?いや、それはないか。水に毒を入れて殺すくらいなら、意識がない状態で殺した方が簡単だし。

じゃあ、何?


疑心暗鬼に陥って水を固辞すると、金髪さんは「そうか」と言って、自分のコップに水差しから水を注いだ。そして、そのまま何のためたいもなく飲む。


ー飲んだ!?大丈夫なの?


様子を伺うけど、特に何も起きない。水がおかしいんじゃないのかな?

心の中でうんうん唸って考えていたら、金髪さんが不思議な事を言った。


「ところで、君は月の天女なのか?」


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