真夏の月夜の舞
結局、他の使用人さんへは私が挙げた3つ全部やる事にしたらしい。使用人パーティーをして、そこにフィオ様が差し入れをしてくれ、更に特別給金も下さるんだそうだ。
ー流石、お金持ち。太っ腹〜!
私が言った事を1つやるだけでも十分だと思うのに、それを3つ共ですか。そうですか。
ちなみに私は、特別給金は辞退しましたよ。最初は、パーティーと差し入れを頂くのも辞退しようとしたんだけど、フィオ様とオルランドさんから『ルーナの歓迎会も兼ねてある』と言われたから、辞退できなかったのだ。差し入れは、パーティーの時に美味しいものを差し入れてくれるらしく、食べないわけにはいかないそうです。いや、無理やり食べさせられるってわけじゃないんだけどね。
そんな訳で、パーティーの準備やら何やらで皆、いつも以上に忙しくしている。けれど、楽しい事の為の忙しさだから、それさえも皆、楽しんでいる。文化祭とかお祭りの準備が楽しいのと同じだよね。
何でも、使用人の為のパーティーをするのは初めてなんだって。それは楽しみにするよね。
パーティーは、真夏の時期に行われる事になった。
その日は、フィオ様はパーティーの最初に挨拶をするだけで、後は自室に引っ込む事になっている。私があらかじめ、主人がいると皆が楽しめないと言っておいたからだ。ちょっと仲間外れみたいで可哀そうだけど、皆の心の平穏の為には仕方がない。
そんなこんなでパーティー当日になった。この日は、フィオ様の晩餐後にパーティーを開催した。パーティーの最初にはフィオ様が挨拶した後、歓迎会を兼ねてる関係上、私も少しだけ挨拶をした。けど、『早く始めろ〜』という空気が半端なかったです。私、空気を読んで、すぐに挨拶を止めましたよ。
その後、フィオ様が差し入れのお酒とケーキを持ってきてくれた。
成人している皆さんには、お酒が殊の外喜ばれた。聞くところによると、良いお酒なんだって。良かったですねー。私は呑めないですけどねー。
あっちでもこっちでも未成年ですから。はい。
でも、この国では16歳で成人を迎えるんだって。だから、本当ならこっちではお酒を呑めるのかもしれないけど、12歳って事になってるから、仕方がない。ちょっと興味があったんだけど、我慢です。はあ〜。
その代わり、冷たいレモネードを飲んだ。甘い中にも少し酸味があって、とっても美味しい。
そして、ケーキを美味しく頂きました。こっちもとっても美味しかった。こちらでは、あまり日常生活にお菓子が出てこないから、とっても貴重。満足満足。
ーフィオ様、ありがとうございます!!
立食形式のパーティーだから、皆好き勝手に飲んだり食べたりしている。私もだ。
「ねえ、ラウル。このお肉、美味しいよ!」
「じゃあ、食べてみようかな」
「そうしなよ。はいっ」
「ありがとう。……うわっ!本当に美味しいね」
「でしょ?」
ラウルとそんな感じで食べて飲んでいると、グラスが空になった。
「飲み物、取ってくるね」
「うん。行ってらっしゃい」
ラウルと別れて、飲み物コーナーに行くと、何種類かの飲み物が用意してあった。悩んだあげく、またレモネードにした。冷たいレモネードが美味しい。
グラスを片手にラウルのところに戻ると、また色々食べていく。そのうち、暑くなってきた。
「この部屋、ちょっと暑くない?」
「そうかな?そんな風に感じないけどなー」
「ええー?暑いよ。ちょっと風に当たってくるね」
「分かった」
ラウルと別れてベランダに出ると、私はフィオ様から貰った扇子でパタパタと扇いだ。それにしても暑い。何だか、身体が火照っている気がする。それに、何だかふわふわした心地だ。へへへ。妙に楽しい。
空を見上げると、真ん丸いお月様が浮かんでいた。
「私が来たのも、こんな月夜だったのかな?」
ぽつりと呟く。すると、日本への懐かしい想いが湧いてくる。
その手には和風な扇子。そして、空にはキレイな満月。
と来れば!
私はベランダの手すりを乗り越えて、地面に足を降ろした。そして、結っていた髪をほどくと、くるりと大きく回った。
「フフフ。フフフ」
何だか、無性に面白い。私はくるくると回った後、扇子をしっかり持って、舞い始めた。昔、日本舞踊を習っていたのだ。お金がなくなった後も、お母さんに手解きをして貰ったりして少しだけ続けていた。
ーああ、思いっきり舞うのって、気持ち良いー!




