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メイド服

挨拶が終わると、私はオルランドさんに連れられて、メイド長のアンナ様の元へ向かった。


「では、宜しくお願いします」

「分かりました」


アンナ様は、オルランドさんに返事をすると、すぐに私に向き合った。


「これからメイド服の採寸を行います」

「へっ?」


てっきり既製品を支給されるんだとばかり思ってた。


「あの、メイド服に既製品はないのでしょうか?」


『既製品があるなら、それでも良いですよ〜』という気持ちを込めた問いかけは、バッサリと斬られた。


「既製品はあります。ですが、このお屋敷には相応しくありません。ピッタリと自分の大きさに誂えた服を着て頂きます」


ピシャリと言い切られた。これでは、もう言い返せない。

私はしぶしぶ従った。


ーオーダーメイドなんて、お金がかかるに違いないのに〜。


うう、胃が痛む。


「貴女、本当に聞いていた通りなのね…」

「ふぁい?」


びっくりしすぎて、『はい?』が『ふぁい?』になっちゃった。でも、一体何を聞いていたのだろうか。


「新しい服はそんなにいらないのでしょう?」

「は、はい!」

「オルランドさんから聞きました。お金の無駄遣いをしない事は良い事です。ですが、時と場合にもよります。節制は美徳ですが、吝嗇は美徳ではありません。今回は、旦那様の体面にも関わりますので、あきらめなさい」

「…はい。分かりました…」


オルランドさんから、私が『もったいない、もったいない』って言うって聞いてたんですねー。


「採寸をする部屋はこちらです。ついてきなさい」

「はい」


私がアンナ様の後をついて行くと、すぐに部屋に到着した。部屋を開けると、中にはさっき挨拶したベルタさんとカリーナさんがいた。


「さっ、お入りなさい」


アンナ様に促されて、私は部屋にそろそろと入っていった。


「失礼しまーす」

「どうぞ、どうぞ」

「待ってたわ〜」


ベルタさんとカリーナさんは、笑顔で迎え入れてくれた。歓迎ムードにほっとする。良かった。でも、


「待っていたって?」

「あら?聞いてない?採寸は私達がやるのよ〜」

「そうなんですか?」

「ええ、そうよ」

「じゃあ、さっそくお願いね」

「さっ、脱いで脱いで」


あっそうか。採寸だもんね。服を脱ぐんだ。でも、恥ずかしい。

そんな私の様子を見てとったのか、ベルタさんとカリーナさんがぐいぐい迫ってきた。


「大丈夫よ〜。怖いことなんて、何もないわよ〜」

「恥ずかしがらなくても良いのよ〜」


ーうひぃー。そんな事を言われたって、恥ずかしいものは恥ずかしい。


けど、ここでいつまでもこうしていても埒が明かないから、覚悟を決めて服のボタンを外していった。


ベルタさんとカリーナさんの採寸は素早かった。あっという間に終わって、ほっとした。でも、色々なサイズを知られてしまったのかと思うと、ちょっと複雑。


「じゃあ、私は行くわね」

「ええ、ありがとう」


カリーナさんがベルタさんに挨拶をして、部屋から出て行った。私はどうしたら良いのかな。ここにいても良いのかな。私が戸惑っていると、ベルタさんが話しかけてくれた。


「じゃあ、大急ぎで仕立てるわね」

「えっ?ベルタさんが仕立てるのですか?」

「ええ、そうよ。私はお針子も兼ねてるの」

「すごいですね」

「フフ、ありがとう。でも、別にすごくないのよ?」

「いいえ!服を仕立てられるってすごいですよ!私には出来ませんから」


私は服のリメイクとかお直しとかは出来るけど、仕立てるのはやった事がなかったなぁ。


「ルーナもやってみる?」

「はい!やってみたいです!」

「分かったわ。アンナさん、どうでしょう?」


アンナ様は、私を部屋に案内した後、部屋から出て行かれたんだけど、いつの間にか戻っていらしてたのね。


「良いでしょう。ですが、他の事も覚えて貰わなくてはなりませんから、あまりお針子仕事ばかりはさせられませんよ」

「分かりました」

「ありがとうございます!」


私はお針子仕事も出来る事になりました。

いやっふうー!


この後、オルランドさんが呼びに来るまで、私はお針子仕事を少し教えて貰いました。

アンナ様が私の様子をオルランドさんに報告してくれていたようです。お針子仕事も、すんなりと受け入れてくれました。良かったー。

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