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フィオ様への相談事 3

フィオ様への相談は、順調に進んでいる。あとは、残すところお給料についての相談とプレゼントについてだけだ。


「えーっと、次はお給料についてですね」

「ああ、その事はオルランドと考えてある。契約書も作ったから、読んでみてくれ」

「はい」


私はザッと読んでみた。よく分からない単語は聞いて、読んでみた。けど、よく分からなくて、フィオ様に説明して貰う事になってしまった。すみませぬ。

フィオ様によると、まず私はメイドと庭師の仕事をする事になるらしい。厩舎での仕事と料理の仕事は断られちゃったからねー。トホホ。

もしかしたら、そのうち料理の仕事はお手伝いさせて貰えるかもしれないけどね。


それでお給料だけど、メイドの見習い分のお給料と庭師の見習いの分のお給料を頂けるようだ。お給料は月額で、毎月最初の日に支払われるんだって。

もし料理の仕事が出来るようになったら、その時にまた新しく契約を交わすんだってさ。

契約内容に問題ないから、私は契約を交わした。


これでお給料の相談も無事終わった。残す相談はプレゼントのみとなった。

私はノートをバッグにしまうと、替わりにプレゼントしても良い物をテーブルの上に出していく。

赤いボールペンでしょー。定規でしょー。蛍光ペンでしょー。それから、腕時計!

うーん。品数が少ないような気がする。フィオ様、ごめんなさい。


「一体どうしたんだ?」


私がいきなりテーブルに並べだしたから、フィオ様が戸惑ってしまった。すみませぬ。

説明してから並べれば良かったね。


「これは、フィオ様へのお礼として、私の持ち物で差し上げられる物です。この中からお好きな物を1つ選んで下さいね」

「えっ!?良いのか?」

「はい!もちろんです!」


私はニッコリ笑って肯定した。


「だが、お礼で物を貰うような事はしていないと思うのだが…」

「いやいや、そんな事はありませんよ!仕事着をたくさん頂きますし、このシャツとズボンも頂きましたから!それに、必要な服を用意して頂けるようですし!ありがとうございます!感謝しております。お礼に受け取って下さい。それとも、いりませんか?」

「いや、いる!」


フィオ様は慌ててそう言うと、ハッとしてゴホンゴホンを空咳をした。きっと慌てちゃったから、ばつが悪いのだろう。そんな事、気にしなくても良いのに。


「そこまで言われると受け取らないわけにはいかないな」


フィオ様はウンウンと頷きながら、言った。


「そうですねー。受け取らないわけにはいきませんよねー」


私はフィオ様を微笑ましく思いながら、応えた。絶対気になってるのに、本当に貰っても良いのかと戸惑っちゃうところも、『いらないのか』と問われて、間髪入れずに応えちゃうところも微笑ましいね。ニヨニヨしちゃう。


「うむ。では、これらがどういった物なのか説明して貰えるか?」

「はーい、良いですよー」


私はフィオ様の要望に応えて説明する事にした。いや、最初から説明する気だったけどね。


「これは、赤いボールペンです」

「ほう。確かに赤いな」

「赤いですね。これは字を書く為の物です。ココを押すとペン先が出ます。更にもう1回押すと引っ込む優れ物です」

「それはすごいな」

「そうでしょう!」


別に私がすごいわけじゃないんだけど、ボールペンが賞賛されて、何だか得意げな気持ちになった。『ふふん』と胸を張る。


「書いてみても良いですよ」


私はフィオ様に『ハイ』と赤いボールペンを手渡した。


「あっ、紙も必要ですよね」


バッグからノートを取り出して、フィオ様にどうぞする。


「ありがとう」


フィオ様は受け取ると、早速ノートに書き始めた。


「おお!!赤い!すごい!」


フィオ様は瞳を煌めかせながら、書き書きしている。

ノートがあるついでに、蛍光ペンも渡してみる。黄色とピンクの2本だ。


「フィオ様、こっちもどうぞ」

「これは何だ?」

「これらは蛍光ペンです。こうして書いてある文字を強調させる時に使います」


私はフィオ様が書いた赤いボールペンの字の上に蛍光ペンで線を引いた。


「おお!!」


フィオ様は感嘆の声を上げた。驚いて貰えたようで何より。こうして異世界の人に驚いて貰えると、私も地球人として日本人として誇らしい。


それからしばらくして、色々試して満足したのか、フィオ様が蛍光ペンのふたを閉めた。


「どうでした?」

「書いてある字の上から書いても下の字が消えないのがすごいな。それに色鮮やかだ」

「そうでしょう、そうでしょう」


私はウンウン頷いた後、今度は腕時計を渡した。


「これは腕につける時計です。これで、現在の時刻が分かるようになっています」

「なるほど」


フィオ様は腕時計を受け取ると、しげしげと眺めた。文字盤を見つめ、裏を見て、また文字盤に戻る。


「どうやって動いてるんだ?」

「うーんと、電池って言う電気が溜まってる物で動いてるんです」

「でんちとは不思議な物なのだな。それで、でんきとは何だ?」

「こっちには電気は無いんですね。電気は、雷が持っている力ですかねー?うーん、上手く説明出来ません。すみません」

「いや、謝る必要はない。雷の力とは、でんきとはすごい物なのだな」

「そうですね。すごいですね」


電気がすごいって事には全力で同意するけど、こっちの世界にはないんだ。こっちの世界って明かりってどうなってるんだろう?普通に部屋とか明るかったけど、違う方法があるのかな?気になる。


「それにしても、時計をこの様に身につけられるのはすごいな」

「えっ?ああ、そうですね」


明かりについて考えてたから、一瞬反応が遅れちゃったよ。


「これは良いな」


フィオ様の反応に、私は『おや?』と思った。時計自体に反応がないって事は、この国にも時計はあるって事かな?


「あのー、この国にも時計ってあるんですか?」

「ん?ああ、ある。もっと大きいがな」

「そうなんですねー。この時計と似たような感じですか?」

「そうだな。似てるな」

「えっ!!それってすごいですね!違う世界なのに、時計の形が似てるなんて!」

「本当だな」


時計が似てるって事を聞いて、この国に一気に親近感が増した。時計でテンションが上がった私達は、すごいすごいと喜びあったのだった。

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