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フィオ様への相談事 2

「アッハハハハハ…」


私の反応がおかしかったのか、フィオ様が笑い出した。そこで、私はさっきのフィオ様の発言が、私をからかう為のものだったと理解した。


「む〜〜〜〜」

「ハハハハハ」


私が怒りでむくれているのにもかかわらず、フィオ様は相変わらず笑っている。しかもお腹を抱えて。


「フィオ様、ひどいですよ!」

「ハハハ…。す、すまない。反応が面白くて…」


私の抗議によって声に出して笑うのは抑えてくれているけど、まだ肩が震えている。

ぶーぶー。そんなフィオ様にはブーイングだ。

それからもしばらく肩を震えていたフィオ様だったけど、『はぁっ』と1つ大きな息を吐き出して、笑いの衝動を抑え込んだ。

どうか、そのまま抑え込んでいて下さい。


「すまなかった。もう大丈夫だ」

「そうですか。それは良かった。じゃあ、次の相談にいきますね」


私はノートを見て言った。


「次は、出身国はどこにするのかです」

「出身国はこの国ではなく、ヤマタイト国にしよう。この国は、月の天女の伝説がある国だ」


フィオ様は、『月の天女』のところで笑いそうに口元をピクピクさせていたけど、何とか乗り切って言い切った。


「ああ、そうですか。そういう名前の国なんですね。その国を出身国にするって事は、名前とか身体的特徴が私に合ってるって事なんですか?」

「そうだ。名前の感じも似ているし、あの国の人間は黒目や黒髪の者が多いのだ」

「そうなんですね。それにしてもヤマタイト国?に詳しいんですね?」

「ああ。以前、ヤマタイト国に留学した事があるのだ」

「留学ですか!それなら詳しいのも納得ですね」


フィオ様の留学の事実に『へ〜』と頷く。


「そのヤマタイト国は近いんですか?」

「いや、遠いな」

「そうなんですね」


遠い国なら、行くのは大変そうだ。それにお金もかかりそう。

私は結構お金を貯めないとならない事に、少し気が遠くなった。


ーいやいや、まだまだこれからだ。頑張ろう!


「次の相談は、私の身の上をどういった設定にするのか、です」

「では、私が留学していた時に知り合った友人の遠い親戚という事にしたらどうだろうか?」

「えっ!?そんな事言って良いのですか?」


私としては、遠い異国の地に働きに出た母からの便りが途絶えたから探しに来たとか、天涯孤独な身の上の私が旅に出てここまでやって来たとか、そういった設定になるのかと思ってたから、誰かの親戚設定にびっくりしちゃった。

それって身分詐称になるのでは?と思ったけど、それは言わないでおく。けど、勝手に親戚になっちゃって良いのだろうか。


「普通はダメだな。けど、その友人に頼んで話を通しておく。だから、心配無用だ」

「良かった。それなら安心です。宜しくお願いします。それで、フィオ様のご友人の遠い親戚の私は、どうしてこの国にやって来たのでしょうか?」


どういった事にするんですか?とフィオ様を見ると、フィオ様は口元に手をやって少し考え込んだ後、顔を上げた。


「では、こういうのはどうだ?母親を幼い頃に亡くした後、父親が再婚したが、その再婚相手の継母は性格が良くない人物だった。その後、父親も亡くした君は継母からのひどい仕打ちに耐え切れず、遠い親戚である私の友人を頼った。けれど、このまま国にいればいずれ継母に見つかる。継母から逃れる為、私の友人に勧められて異国にいる私を頼って来た、と」

「おお〜〜!!それ、良いですね!」


私はフィオ様の案に諸手を挙げて賛成した。とても良く出来たお話だと思いますよ。


「では、これでいこう。オルランドには私から言っておこう」

「はい。宜しくお願いします。じゃあ、次の相談にいきますね」

「まだあるのか」

「はい、まだありますよ。すみませんが、もう少々お付き合い下さい」

「大丈夫だ」

「ありがとうございます。次は、服についてです」

「服?」

「はい。お仕事着なんですけど、私のやりたい仕事に合わせてお仕事着をたくさん用意して頂くのは申し訳ないです」

「ああ、その事か。オルランドから聞いた。仕事着を用意するのは特に問題はないが」


フィオ様はそう言ってくれたけど、私はそうはいかない。


「いやいや、問題ありますよ!勿体無いです!」

「そうか?」

「そうです!フィオ様はお金持ちだから気にしないと思いますけど、私はそうじゃありませんから。たくさん用意して貰う事で、私の心にストレスが溜まります…」

「すとれす?」

「ああ、すみません。ストレスとは心労の事です」


私がストレスを言い直すと、フィオ様は理解出来たようだ。


「そうか。私が与える事で、君の心に負担がかかるのだな」

「そういう事です。なので、後はメイド服と作業着があれば十分です」

「そうか。確か、今の服はそのままで構わないと聞いたが、本当か?」

「本当です。このままで問題ありませんから」

「分かった。ではこの服をそのまま与える事にしよう」

「ありがとうございます!!」


フィオ様に分かって貰えて、私はほっとした。あー、良かった。

しかし、ほっとしたのもつかの間、フィオ様からの言葉に私はショックを受けた。


「あー、作業着の話が出たから、今伝えるが、厩舎と厨房での手伝いはいらないそうだ」

「えっ!?そ、そうなんですか……」


信頼も実績もない私には、馬のお世話はさせて貰えないかもしれないとは思ってた。思ってたけど、やっぱりちょっとショックだ。

あーあ、馬は離れた所から眺めよう。しょんぼり。

けど、厨房のお手伝い拒否の方がダメージは大きい。ここの料理を覚えたいと思ってたから、ショックだ。確かに、信頼も実績もない上に使えるかも分からない人なんて、厨房に入らせて貰えないよね……。がっくし。


私がショックを受けてると、フィオ様が頭をなでて慰めてくれた。


「大丈夫だ。厨房に関しては絶対ダメな訳ではないようだ。料理長は、まず君の人柄や働きぶりを見たいそうだ。その上で、見習いとして手伝って貰うかどうか決めるらしい」

「そうなんですか!?」

「ああ、そう聞いている」


ひゃっほーう!!良かったー。

人柄や働きぶりが見たいって事なら、真面目に丁寧に働いていたら問題ないだろう。良かったー。

私の様子から、気分が浮上した事に気がついたのだろう。フィオ様が『良かったな』と言って、頭をまたなでてくれた。

頭をなでて貰えるのは気恥ずかしいけど、ちょっと嬉しい。

だけど、完全に子供扱いだ。まあ、良いけど。

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