忙しいオルランドさんと何も出来ない私
これからの話しがまとまるとフィオ様は席を立って、ドアまで歩を進めた。ドアの前で私を振り返り、挨拶をする。
「オルランドとは明日の朝に相談すると良い。では、おやすみ」
「おやすみなさい」
パタンとドアが閉まると、私は肺の中にあった空気を一気に吐き出した。
ー緊張したーーー。
ほぼ初対面のまだよく分からない人にお願い事をして、気疲れした。
その上、気後れもしていた。
ーはぁ、疲れたー。
何だか、お昼寝をして回復した気力と体力が減った気がする。お昼寝しちゃったから夜眠れないかもしれないと心配したけど、この分だと眠れるかも。
いそいそと布団に潜り込むと、案の定すぐに眠りにつく事が出来た。
次の日の朝、パチっと目を覚ますと天井が目に入った。
馴染みがあるわけではないけど、見知らないわけではない天井だ。良かった。寝呆ける事なく、ちゃんと覚えてた。パニックにならずにすんだ。
ーここは異世界のフィオ様のお屋敷のお部屋だ。
私は今いる場所の確認をするとベッドから降りて制服に着替えた。その後はとりあえず髪を梳かしてポニーテールに結んだんだけど、顔はどうやって洗ったら良いんだろう。
私はベッドのサイドテーブルにあるベルを手に取って鳴らした。困った事があれば、オルランドさんに聞けば良い。
チリンチリンと鳴らせば、すぐにオルランドさんが部屋に来てくれた。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
「おはようございます。おかげさまで、昨日はすぐにぐっすり眠れました」
「そうですか。それは宜しゅうございました」
オルランドさんは朝の挨拶をすると、部屋まで運んできた物を用意していく。どうやら洗顔する用意をしてくれたようだ。何も言ってないのに何で分かった?エスパーか!?と一瞬思ったけど、きっとフィオ様へ毎朝やっているから分かったに違いない。
「ありがとうございます」
私はお礼を言うと、前髪が濡れないようにヘアピンで留めてから顔を洗った。タオルで拭くとさっぱりした。
ーふい〜。さっぱり。
あっ、化粧水とかない。肌が乾燥しちゃう。けど、化粧水はお願いしづらいな。このお屋敷に無いかもしれないし。
と思ったところで、昨日お風呂に入ってなければ身体を拭いてもいない事に気がついた。ちょっと言いにくいけど、お願いしてみよう。流石に朝からお風呂はお願いしづらいから、身体を拭かせて貰おうかな。
「あの、汗かいてるので、身体を拭きたいんですけど。お願いできますか?」
「もちろんです。朝食の前になさいますか?後になさいますか?」
「じゃあ、後でお願いします」
「かしこまりました」
オルランドさんは朝食の用意をするべく、部屋から出て行った。
ー良かった。身体が拭ける。
それにしても、身体を拭くだけでもいちいちお願いしないとならないなんて、面倒すぎる。早く働いて自由に行動出来るようになりたいな。
その後は、オルランドさんが持って来てくれた朝食を食べて、身体を拭かせて貰った。身体もさっぱりした。良かった。
私は再び制服を着た後、またオルランドさんを呼んだ。何回もすみません。けど、私はちゃんとしたお客様ではないし、このお屋敷で働いているわけではないから、お屋敷の中を勝手にウロウロ出来ないので、仕方がない。
部屋にやって来たオルランドさんが片付けをしている様子を見ながらお礼を言うと、私はオルランドさんの時間がある時に働く為の相談をしたいとお願いした。
「私の時間は気にしなくても大丈夫ですよ」
オルランドさんはそう言ってくれたけど、気にするよ。だって、絶対忙しいに決まってるもの。
「いやいや、気にしますよ。私がいる分、普段より忙しくなっているでしょうから」
「お気遣いありがとうございます。では、お言葉に甘えさせて頂きますね。色々と用事を済ませてからお話を伺います。旦那様からもお話を伺うように言われておりますので」
「分かりました。宜しくお願いします」
私は勢いよく頭を下げた。




