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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

正義のヒーロー、悪の親玉

作者: 夜童アスカ

2016年、全人口の1%に特殊能力が発現する。各国は直ちに彼らを保護し、その能力の発現要因などを研究した。

2020年、××××にある研究施設で能力者が施設を破壊し、脱走した。

以降、彼らは各地で事件を起こす。

各国は残った能力者を集め、彼らと戦っていく。



◆◇◆◇◆


そして、20XX年。


「久しぶりだね」


「あぁ久しぶり。いつ以来だ?」


「君が最初の事件を起こす前だから・・・あーごめん、暗算苦手だから分かんない」


「変わらないな、本当」


「そりゃそうでしょ。能力者は新陳代謝の影響がどうとかで不老なんだから」


「そういう意味じゃねぇよ」



二人はのんびりと再会の挨拶を交わす。

激戦の後を思わせる瓦礫の上で、ボロボロになって。

男は仰向けに横たわり、女は男に跨がるようにして、銃口を男の額に突きつけている。



「これでようやく終わりだ」


「能力者は俺たち以外残ってないしな」


「実験だったり実戦だったりでみーんな死んじゃったもんね」


「実験・・・能力の強制発現か」


「そうそれ。いやー、見学させられたこともあったけど惨いもんだよ。喉が裂けるくらい悲鳴上げて、のたうち回って目とかの血管切れて出血やら内出血やらで」


「しかも自然発現と比べて、体も脆いし能力も弱い。やっぱり天然物が一番だ」


「まぁ、自然発現した奴らも実戦で死んだけど」


「強い能力者ほど能力を酷使し過ぎてすぐ死んだな。酷使するほど能力に恵まれてない弱い俺たちが残ったっていうのはなかなかどうして皮肉なもんだ」


「それも今日までだけどね。君は私に殺されて死ぬし」


「そしてお前は能力の酷使で死ぬ」


「既に限界だよ。だからこうして拳銃を持ってる。零距離で頭撃ち抜けばさすがの能力者も死ぬからね」


「俺だってもう限界だ。だからこうしてお前にマウントポジションを取られてる。指一本動かせねぇ」



世間話のように語る。



「ところで知ってる?

私たちは『正義』と『悪』なんだってさ」


「人を傷つける俺たちが『悪』で、その俺たちを倒すお前らが『正義』だろ?アニメの戦隊ものみたいだな」


「『悪』は『正義』に倒される」


「それが醍醐味だろ」


「私、どちらって言うと悪役の方が好きだったな」


「何で?」


「自分の目標を達成するために出来る限りのことをするんだよ?

かっこいいじゃん」


「最後には倒されるのに?」


「それでいいんだよ。

倒されるまで止めないからこそかっこいいの」


「俺はヒーローの方が好きだな」


「普通はそうだろうね」


「ピンチに颯爽と現れて悪役を倒すっていうのがかっこいい」


「そういう場面って大抵ヒーローたちVS悪役一人だよね」


「仲間との協力が大事なんだ」


「なるほどね」



つぅ、と女の目から血が伝う。

それはぽたり、と男の頬に落ち、男の血と共に流れ落ちる。



「私は、人体実験の材料にされた人たちを助けたり、その施設を壊滅させたりしてる君を『悪』だとは思ってないよ」


「俺は、人体実験に強制参加させられたり、敵を倒そうともしないお前を『正義』だとは思ってねぇよ」


「人殺しは嫌なんだ。怖いもん」


「人助けは良いことだぜ。嬉しくなる」


「でも、君は私を助けない」


「だが、お前は俺を殺す」


「君の憧れの『正義』のヒーローになるためだからね」


「お前の好きな『悪』の親玉になるためにな」



達成感に満ちた表情で語り合う。



「能力者が生まれた理由って何なんだろうね?」


「さぁな。神様の悪戯って奴じゃねぇの?」


「神のみぞ知るって感じかねぇ。

しかし君が神様って言うなんて何か違和感あるね」


「お前が言っても似合わねえからお互い様だな」


「お揃いか。嬉しいね」


「そうだな」



女の目から血の涙が落ちる。

男の目から血の涙が流れる。



「泣くなよ」


「君もね」



男が片手を伸ばし、女の涙を拭う。

女が拳銃から片手を離し、男の涙を拭く。



「動けないんじゃなかったの?」


「お前こそ、拳銃から手を離していいのかよ?」


「君の言葉を信じてたんだよ」


「お前が撃たねぇって信じてたんだ」


「友情だね」


「友情だな」



クスクスと笑い合う。



「すぐ追いつくから待っててよ」


「待っててやるから早く来いよ」




「またね、『悪』の親玉」


「またな、『正義』のヒーロー」




◆◇◆◇◆


20XX年、長年続いた能力者との戦いは最後の能力者二人の死と共に終わりを迎えた。二人は能力発現前からの友人関係にあり、死亡時も寄り添っていた。男性は頭部を拳銃で撃たれ死亡。女性は直後に能力の酷使による脳への深刻なダメージで死亡した。

その後、各国上層部が能力者を人体実験の材料にしていた事が発覚。さらに、能力者は脳に特殊なチップを埋められ、脳の機能を100%引き出すことを可能にする実験の成功例だということが判明。各地で反対運動や反政府デモが起こる。

(中略)

21XX年、****で行われた国際会議で締結された『能力者条約』において、能力者誕生実験は永久に禁止される。


~○○社****著『能力者の歴史』より抜粋~



◆◇◆◇◆


「おまたせ」


「遅い」


「ちょっと迷子になっちゃって」


「ったく・・・、ほら手ぇ出せ」


「手を繋ぐの?」


「これで迷子になんねぇだろ」


「迷っても君がいるし楽しいだろうね」


「迷わなくてもお前がいるなら面白いだろうな」


「私を助けてくれる君は『正義』のヒーローみたいだね」


「俺を困らせてくれるお前は『悪』の親玉みたいだな」


「これからも困らせてあげるから期待しててよ」


「これからも助けてやるから安心しろ」




「じゃ、行こうか。『正義』のヒーローさん」


「じゃあ、行くか。『悪』の親玉さん」















【END】

読んでくださってありがとうございます!

活動報告にて後書きを掲載しておりますので、よろしければ見てください。

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