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Gio  作者: 卯月木目丸
第一章 ギオゼッタ
4/12

3 閑話

 パチパチと薪が赤熱し、夜の中に小さな明りを作り出している。そこで暖を取っている二人の旅人が居た。

「ねぇギオさん」

「なんだ」

 ギオゼッタはパイプで一息吐くと、アイネの方へ顔を一切動かさず黒目だけをグラスで薄ら隠しながら向ける。次の街へは明日の昼ぐらいにはつくだろうかという距離で彼らは一泊することにした。

 辺りは以前と変わりなく緑のテーブルで高くてもギオゼッタの腰ほどしかない小さな木があるぐらいの場所であったが、なんとか薪は集める事が出来た。こんな場所では人を襲うような獣や蛇なんていないだろう、昼間ですら虫は見かけたが鼠や鳥さえ見なかった。

「ギオさんはなんで旅をしてるの?」

「…そうだな」

 考えるフリをして一服した彼はパイプを少しばかり遠くへ話して口を開く。

「僕が錬金術師だってのは知ってるな」

「うん! とっても凄い錬金術師さんなんだよね」

 知るか、そんな事。彼は心の内で目を輝かせている少女に向かって呟いた。実際に言ってしまったら楽になるどころか色々ブチ壊してしまう事だろう、彼はもう一息パイプを吸い、煙とともに詰まった言葉を空気に溶かしていった。

「あっわかった!」

 彼は小さくしたり顔を決めた。残念ながらその見事な顔は焚火が照らし出した影に入り込みアイネに見えることは無かったが、さぞ下衆のものであっただろう。

 何せ彼は適当に話していれば彼女が勝手に予想するであろうとタカをくくっていたのだから。正直で愚直な子供はこういうところが良いと、影に隠れた下衆な彼がつぶやく。

「錬金術って、何か珍しい材料とか必要なんでしょ? それを取りに行ってたんだ」

 そんなもんなのかと内心考え込みながら、ギオゼッタは棒で灰に成り果てた薪をこちこちとつつき火の粉をあげさせる。

 保存食として売っていた粉を固めて腹に貯まる事しか考えられていないものを食べたせいか、喉がパサパサする。もはや話を聞く気がないかのように喉を赤に照らしながら撫でた。

「……材料ね…」

 少し気になった彼はバッグに手を突っ込みがさがさと漁る。

 衣服の代えは少なく小さな道具が多く目立つ中に、その暗闇の中にちょこんと光る石ころのような物が丁寧にしまわれているのを彼は見つけた。

 それを差し込んだ手でころころと転がしながら遊びながら、彼はそれの正体を定める。

 ある程度察しがついたトコロで、彼はそれを前と同じようにバッグの中に放り込んだ。

「寝るぞ」

 会話をとにかく大胆に切り上げた彼は横になり、星を見ながら無言のまま時間までもを無視し始める。こんなものはあるだけ今は邪魔だろう…そう彼は思い、今日を終えたいのだ。








「ねぇねぇギオさん」

「どうした」

 二人はまだ道を往く。そんな道中ではこのころころとした少女はとても良く話しかけてきてくれる。つまらなくはないのだが、煩わしくないわけじゃないのだろう、人によっては。

「お次に行く街ってどんな場所?」

「知らない」

 アイネは膨れた。

 ギオゼッタも自分が宿の主人に聴いてもわからないと言われたのだ、彼も納得できないような顔でアイネを見た。彼女は少し笑った。

 でもまぁ裏を返せば目立つモノもない静かな街だということかもしれない、ギオゼッタはそう思い直しながら小さな噂でも聞かなかったかと記憶を辿る。なんせまだ数日しかない記憶だ、辿るのはきっと容易なはずである。だがそんな短い思い出の中にもそれらしきものは見当たらなかった。

 つまり静かで好ましいところだと彼は納得する。

「どんなところだろうねぇ」

 とりあえず彼女が望むような場所ではないだろう。そうとも彼は納得した。

「なんでそんなに気になるんだ?」

 同じような質問をいくらか聞いた覚えがある彼はふいにそんなことを訊ねる。

 アイネは考え込んだが、ギオゼッタにも別の答えが顔を見せた。

 旅人とはそういうのを楽しむ人たちの事なのではないだろうか…大概は…しかし、自分は別にそんな気はないし、むしろトラブルに巻き込まれるのは極力避けようと思っている。どこかでやっている事を邪魔されたくないという強い感情があるのを悟っている。

「少なくとも…浮浪者や旅人ではないんだな…」

 夢に見たあの光景が自分の物だとするなら、どうせ学者やその類いであろうがなぜこうも見知らぬ草原に寝そべらせたのかいまだ彼は納得いかなかった。

 荷台から転がり落ちたわけじゃあるまいし。

 このこんこんとわき続ける疑問を一時中断させたのはやっと次の言葉を掘り出してきたアイネであった。

「ほら…だって何にもないとつまらないでしょ」

「良いじゃないか、静かな場所だって」

「だったら静かな場所って有名になるよ!」

 叫びたかった、知らないととにかく叫びたかった。立派な旅の衣服の内側で蕁麻疹だろうが寒疣だろうかが蠢くようなとんでもなく恐怖を掠らせた感覚を伴ったが、彼は歯を食いしばり続ける。

「…ぅぅ…だが僕は静かな場所であってほしいね」

 アイネはまた膨れた。

「私は楽しいところが良い!」

 喧嘩をしてるわけじゃないが、どうも疲れる。彼は服の袖で流れそうになっていた汗と、その影にあった冷や汗をまとめて拭いた。

 だが少なくともわかったことがある…今日も。

「…君は、どうやら旅人らしいな」

 二人はまだ道を往く、その途中だ。

 寒くなってきました。貧乏書生(現代版)なので、薪を入れる金はありません。指先だけ温まる様な術はないものか、まぁこの季節ですしそういうものですよね。

 次回からは閑話休題となります。

 オンラインセッションに参加してたり、シナリオを書いたりしているので、そちらで遅れたりしますので、ご了承ください。一緒に居た人、読者だったりしないよね…? それでは。

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