第十九話 地底湖の激闘
「ハァハァハァ………」
ユウは息を乱し、休息をとっていた。
矢が飛び交う道を全力で走り続けたのだ、無理もない。
「もうこの先には罠が無いと信じたいな」
あれだけの距離を走っても未だ息を乱さず涼しげな顔をして天井を仰ぐゼノン。
「まったくだ」
肩で息をしながらも、同意で返すユウ。
「………ごめんなさい」
やはり、泣きそうな顔で謝罪するのはフィロであった。
(しかし、こいつの罠命中率はヤバいな)
若干失礼なことを考えながらもユウはフィロの頭に手を乗せる。
「気にするな」
フィロの表情がゆるんだのを確認し、手をどけて奥を確認する。
ユウ達もかなりの距離を走ってきたはずだが、それでも道は果てしなく続いていて奈落まで続いているのではないかと思わせる。
「もう休憩は充分だ。進むぞ」
ユウはゼノン達にそう告げると、奥へと歩き出した。
その後にジンライ、フィロと続いた。
ゼノンは肩をすくめ、ユウ達の後に続いた。
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それからは、罠にはまりやすいフィロをゼノンが抱え続けて、罠の発動率を大幅に減らすことが出来た。
それでも槍や矢が飛び出す罠には何度か引っかかったが、ユウの【直感】で何とか回避していた。
ここまでの道はずっと一本道で、分かれ道はなかった。
大量の罠を仕掛けて、最奥にいたるまで一つの道しかないという何とも性格の悪い構造になっているようだ。
「ふむ、そろそろ最深部につくだろう」
奥の方から水音が響いてくる。
「やっと最深部か。長かったな」
ユウはこれまでの道のりを思い、感想をこぼす。
岩に追われたり、矢の雨にふられたり、岩に追われたり、槍に刺されかけたりさんざんな道のりだった。
ゼノンもユウと同意見なのか、目を閉じて首を縦に振っていた。
**********
最深部は地底湖となっていて、その広い空間の殆どが水で埋め尽くされていた。
「で、どのあたりに探し物があるんだ?」
「ふむ、奥の方をよく見て見ろ」
ユウがゼノンの言うとおりに、地底湖の先を見た。
すると、小さくだが紫紺の輝きが向かいの陸地の像の手のひらにおさまっているのが見えた。
「なるほど、あれか。とってきてやる」
そう言うとユウは魔力を放出し、向かいの陸地へと飛びだした。
「ユウ!下だ!避けろ!」
ゼノンが叫び声を上げた。
ユウはそのゼノンの叫びを聞き、下を確認することもなくゼノン達の方向へと飛ぶ。
バシャーン!!
水しぶきを上げながら、ユウ達の目の前に魔物が姿を現した。
その魔物に似ている生物を敢えて上げるならミミズだ。
ただし、そのサイズはミミズのそれなど比較するのもバカらしいほど巨大だ。
太さも確かに凄いが、語るべきはその長さだろう。
この広大な地底湖のあちらこちらで、この魔物の体らしき物が蠢いている。
(あいつ、フォルスの家の書庫で見たことがあるな…。確かサンドワームとかいったか)
しかし、サンドワームは砂漠などに住む魔物であり、決して水の中に住んでなどいないし、あんなに巨大でもない。
「ふむ、奴を倒さないと宝玉は手に入らぬか」
ゼノンが弓を構えながら隣に立つ。
「………気持ち悪い」
フィロもその目に闘志を宿し、ユウの隣に立つ。
ジンライはそんなフィロの後ろに隠れていた。
誇り高きフェンリルが聞いてあきれるとおもったが口には出さない。
「よし、行くか!!」
ユウはエンドキャリバーとゼビュロスを鞘から抜き出し、巨大ミミズのもとへと飛び出す。
狙うは顔。
飛び出す勢いそのままに、巨大ミミズの顔へと剣を振り下ろす
「………!?」
直前に危険を感じて後ろへ引き返す。
ゴウッと風を切り、ユウがさっきまでいた場所を巨大ミミズの尾が通過する。
(あぶねぇ…)
ユウが【直感】を信じてよかったと安堵した瞬間、ユウの目の前に巨大ミミズの尾が現れた。
「くっ!はえぇ」
ユウに向かって尾が打ち下ろされる刹那、尾が四つに分かれた。
「なに!?」
それにより回避を諦め、防御に移行する。
目の前でエンドキャリバーとゼビュロスを交差させ防御し、来るべき衝撃に備える。
しかし、ユウの防御は意味をなさなかった。
後ろからフィロの雷撃が飛び、ユウに当たる前に尾を撃退したからである。
それに続き、ゼノンが巨大ミミズに矢を放つ。
数本が巨大ミミズの首に刺さり、巨大ミミズは大きくのけぞり悲鳴を上げた。
「うおおぉぉぉぉぉ!」
そんな隙を見逃すユウではなく、すぐに巨大ミミズの懐に飛び込む。
尾ではなく胴体が飛んでくるが、首を斬りつけて即離脱。
巨大ミミズの胴体は虚しく空を切った。
ユウはゼノン達の下に戻ってエンドキャリバーを鞘に戻し、ゼビュロスを上段に構えた。
「ゼノン、フィロ。少しばかり時間を稼いでくれ」
「心得た」
「………わかった」
ゼノンとフィロの攻撃が苛烈さを増した。
ゼノンの矢は至る所に偏在する巨大ミミズの胴体に刺さり、フィロの雷撃は巨大ミミズの胴体を次々と焦がしていく。
そのたびに巨大ミミズは暴れまわり、そのせいで起きた波によってユウ達はすでにずぶ濡れだった。
「よし、くたばれ巨大ミミズ!」
ゼビュロスを頭上から思い切り振り下ろす。
ゴウンッ!とゼビュロスから豪風が吹き荒れた。
豪風はカマイタチとなり、巨大ミミズを襲う。
放たれたカマイタチは水面を削り、胴体を次々と切り、そして顔を斬りつけた。
ひとしきり巨大ミミズは水面をのたうち回り、やがて湖の底へと沈んでいった。
それを確認し、ゼビュロスを鞘に戻す。
「ふむ、よくやったな。おつかれ」
ゼノンがユウに労いの言葉をかけると同時に、フィロがユウに飛びついた。
「…………がんばった」
ユウは、慣れた様子で適当に頭をなで回してひきはがすと宝玉のある陸地へと飛んだ。
「へぇ、綺麗なもんだな」
遠くから見たときはよくわからなかったが、その石像は天使をかたどっていて翼のはね一つ一つが細かく表現されていた。
そして、その像が胸の前で両手を組み、後生大事に抱え込んでいるのが今回のユウ達の目的の品だった。
(あれだけの波にのまれても固定されたままか…)
力づくでとるのは無理だろうとあたりをつけ、エンドキャリバーで両腕を切り落として宝玉を確保した。
「よし、これでここに来た目的は達成だな」
宝玉を掴み、ユウはゼノン達の下へと戻った。
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ユウ・カザキリ
Lv30
HP320/600
MP432/800
筋力118
耐久62
俊敏120
魔力128
器用78
《スキル》
【異界収納】
【鑑定】
【偽能使い】
【異世界言語、文字取得】
【毒耐性(弱)3】
【魔力操作】
【スマッシュ】
【俊足】
【剛力】
【超観察】
【紅の激昂】
【魔力自然超回復】
【直感】
【読書家】
【吸血鬼眷属(王族)】
【風の鎧】
【体力自然回復2】
HPが一定時間ごとに回復する。
マンティコアから奪った。
その後、リザードナイトから奪い強化。
【韋駄天】
俊敏に補正大。
魔力を使用し、空中を駆けることができる。
フェンリルから。
【炸裂攻撃】
魔力をこめると近接攻撃が一度で四度の攻撃となる。
巨大ミミズから。
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6/7 スキルの諸々を修正