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黒犬と旅する異世界 ~人の意思、世界の意思~  作者: 緋龍
人捜しを経て人助けをするに至った理由
47/70

四十六話 ラ

「騎士!? この兄さん、騎士なんすか!?」


 朝食を食べて宿に戻り、部屋で他愛もない話をして過ごしていると、挙動不審な動きをしながらキールが訪ねてきた。部屋にいるルークにちらちらと視線を送りそわそわしている。訊きたくて仕方がないが、ルークに気圧されて訊けない、と言った感じだった。雷華は苦笑しながらルークをマーレ=ボルジエの騎士だと紹介した。


「声が大きい。極秘任務だって言ったでしょうが」


 口に人差し指を当て、キールを軽く睨む。詳しいことは言えないが、ある任務でイシュアヌに来ているのだと説明したのだ。苦しい言い訳だと思ったが、キールは素直に納得してくれた。

 雷華とキールは向かい合って部屋の椅子に座り、ルークはベッドに腰掛けている。ロウジュはいつかと同じで、扉に背を預けて立っていた。


「ご、ごめんライカねえ、つい興奮しちゃってさ。それにしても騎士と知り合いになんて、なかなかなれるもんじゃないっすよ。さすが、ライカ姐!」


「あ、ありがとう? まあ、ルークについてはそんな感じだから。それよりキール、用事は? 何か用があって来たんでしょ?」


 何がさすがなのかよく分からないが、とりあえず礼を口にする。そして、これ以上余計なことを訊かれないよう、さりげなく話題を変えた。思考が単純にできているらしいキールは、すぐに「そうだった」と言ってここに来た目的を話し始めた。


「ライカ姐、フェリシア姐の墓に一緒に行かないっすか?」


「フェリシアさんのお墓に?」


「昨日も誘いに来たんすけど、ライカ姐いなかったっすから」


「昨日はリムダ山に行っていたのよ」


「リムダ山!? あそこは許可証がないと入れないとこっすよ!? まさかこっそり入ったんすか!?」


「そんなことするわけないでしょうが。許可証を持ってるディーっていう賞金稼ぎに連れて行ってもらったの」


 雷華が言い終えると、キールが「ディーだってええぇぇぇっっ!」と叫びながら椅子から立ち上った。その驚きように雷華の方が驚く。ルークとロウジュも顔にこそ出さなかったものの、眉をぴくりと動かして興奮するキールを見やった。


「ちょ、ちょっと、どうしたのキール。どうしてそんなに驚いているの」


「驚かずにはいられないっすよ! ディーは賞金稼ぎの間では有名なんすから。神出鬼没で気分屋、泣かした女は数知れず」


 あり得る、と雷華たち三人は一様に頷く。


「だけど、受けた依頼は必ずこなし、どんな依頼も一人でやり遂げる。俺たちが賞金稼ぎになったのは、ディーに憧れたからってのもあるんすよ。もちろん一番はレヴァイア、さん……だけど」


 上気した顔で喋っていたキールは、レヴァイアの名を口にした途端、表情を曇らせた。もう彼に会えないと分かっていても、そう簡単に割り切れるものではないだろう。雷華も暗い気持ちになったが、しんみりするのは自分の柄じゃないと、ぱんっと両手を叩き、努めて明るい声を出した。


「それで、フェリシアさんのお墓はどこにあるの?」


 キールに誘われなければ、雷華から言い出していただろう。フェリシアの墓には行かなければならないと思っていた。自己満足でしかないが、自分の口からレヴァイアのことを彼女に報告したかった。


「え、ああ、下層西区画の共同墓地っす。行ってくれるっすか?」


「もちろんよ。途中でお花を買いましょう。ルークとロウジュはどうする? 宿にいる?」


 頷いて椅子から立ち上り黒髪の二人に訊ねる。


「当然付き合う」


「行く」


 フェリシアの墓参りは旅には何の関係もない。だから無理に付き合わせるつもりはないと思って訊いたのだが、二人はそれぞれ外に出る準備をし始めた。睨み合いながら。その様子を見たキールが恐る恐る雷華に訊ねてくる。


「な、なあライカ姐、この二人もしかして仲悪かったりするんすか?」


「……もし良いように見えるのだとすれば、医者に行った方がいいわね」


 苦笑いするしかない雷華だった。    

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