知らない人同士
相手のコトはなにも知らない。
きっと、相手も私のコトは知らないだろう。
知らない同士だ。
それでも―――私が叫んだ問題発言、と、経験しているって云ったコトとか……こっちの女の人が当たり前のコトが出来ないと云ったのだから。
旦那さまになった人は、どこまでが本当だと思っているのか疑問に思う。
まあ、ある部分は納得してくれたので良いのかも……、
そんな考えが頭の中をぐるんぐるんと廻り、出された食事を事務的に食べた。
そして、気づく。
素朴で作った人の気持ちの入った優しい味だった。
ああ、この人は本当に優しい人なんだと
満足した所で白湯が手渡され、私が「ありがとう」と、答えると。
それはまた、本当に優しそうに笑う。
うう。
なんか、本当に良い人過ぎて悪い気がするのは気のせいではない、よね?
女の人にもてそうな顔しているんだけど
確かに上手かったんだけど
この人は、本当にきっと押しが弱い人なんではなかろうかと、思う。
うん。
きっとそうなんだと実感した。
だってこんな年増で結婚相手としてはマイナスだらけの女を相手に
こんなに誠実に?
相手に出来るんだから………。
でも、まあ。
夫婦になったんだし。
旦那さまになった人が本当に自分がなにも出来なくて呆れて離縁されなければ―――。
そんな生活も良いのかもしれない。
まだ痛む身体に鞭を打って、ちゃんと正座をして旦那さまに向かって
「ふつつか者ですが、宜しくお願いします」
そう云って頭を下げた。
確か、こんな言葉を云うんだよね。
私が言うと、旦那さまも
「……こちらこそ、よろしくお願いします」
と、云われ慌てて顔を上げてみると、旦那さまになった人もいつの間にか私と同じように正座をして頭を下げていた。
あはは。
本当に気の良い人なんだ。
そう思った。
そうして、わたしたち二人は夫婦になった。




