遠距離恋愛 〜人生最長の一夜〜
「ガタンゴトン」
仙台に向かう新幹線の中に一人の男(以後、慎吾)がいる。
慎吾は東京に住む18歳の高校生だ。慎吾には仙台に住む彼女(以後、裕子)がいた。出会い系サイトで出会った二人だった。
遠距離ということもあり、一ヵ月にして、始めて顔を合わせる。期待と緊張に胸を膨らませ、慎吾は到着を今か今かと待ちわびている。
仙台に着きお互いを見つけると、慎吾は裕子に向かって走って行った。裕子も慎吾の方へ走って行った。始めて二人が顔を合わせる。そして人目を気にすることなく抱き合った。そしてお互いを確かめあうかのように、キスをした。慎吾にとって、これはファーストキスだった。裕子はそのことを知っていたので、クスッと笑って、
「初キスもらっちゃった♪」
と言った。慎吾は恥ずかしさとドキドキで顔が真っ赤になっていた。そして慎吾は勇気を振り絞り、
「手、繋ごっか」
と言った。裕子も
「ぅん、繋ごっか」
と言った。駅を出て、二人は計画していた通り展望台のあるビルに行った。高所恐怖症の慎吾の手を引っ張り、裕子は展望台まで慎吾を連れて行った。慎吾は始めて見る仙台の街並みに、高所恐怖症のことなど忘れ、眺め続けていた。
二人は展望台を出て、駅前のアーケードを歩き出した。慎吾にとって始めて牛タン丼を食べ、二人でプリクラをとり、女っ子と二人きりでカラオケに行き、慎吾にとって最高の一日になった。
そして帰る時間になって慎吾は大変なことに気づかされることになった。
慎吾は帰りの新幹線代まで使ってしまっていた。見栄っ張りな慎吾は裕子にお金を借りることもできず、仕方なく新幹線を使わず帰ることにした。
しかし夜も遅く、途中で終電も終わってしまい、慎吾は見知らぬ土地で一夜を過ごすことになってしまった。
慎吾は始発が来るまで知らない土地を泣きながら、時には歌いながら歩いていた。コンビニで時間をつぶしたり、慎吾にとって人生で一番長い夜になってしまった。やがて夜も明けてきて、電車も動き出す時間がきた。寂しさから開放された慎吾は始発に乗り、帰って行った。
やがて二人の恋にも終わりがきて、慎吾は進学、裕子は就職。お互いの道に進んで行った。二人は今でもメールをしたりする仲で、時には相談をしたりしながら友達としての関係で長く続けていった。お互いがお互いを密かに想いながら。