「とーさまとかーさまは、どうして結婚したのですか?」
なんでもあり。
「とーさまとかーさまは、どうして結婚したのですか?」
両親の間に座って、2人の腕に腕を絡ませてぎゅっとしながら訊いてみた。
かーさまはわたしの前髪を撫でて、とーさまはそれを見ながらにっこり笑っている。
「僕らは政略結婚だったんだよ」
「う?」
よくわからなくて、とーさまをじっと見上げた。
「んー、家同士の利益があって結婚したんだ」
「もう、あなた。それでは半分嘘ではありませんか。ちゃんと我が家のかわいいレディーに説明してくださいな」
2人がにこにこしながら話しているから、よくわからなくてもにこにこしてしまう。
「あはは、実は言うとね、母様は本当は違う人と結婚する予定だったんだよ」
「っ!!」
とーさまの爆弾発言に、かーさまを見上げた。
「かーさま、とーさまと結婚しないの……?」
「ふふふ、しましたよ。だから、今父様と一緒にいるでしょ? それに、あなたの母様にもなれたわ」
そう言われて、慌てて母様の膝の上によじのぼった。
「だめよ、かーさま。ほかにお嫁に行っちゃ…!」
「あらあら、難しいことを知ってるのね。大丈夫よ、母様は父様以外のお嫁さんになったりしないわ」
「絶対よ!」
「ええ、絶対ね」
むぎゅっとかーさまの胸に顔を埋めれば、かーさまは優しく頭を撫でてくれた。
「そう、僕も母様を他の人に渡したくなくてね。どうにか阻止して、それで僕と結婚してもらっんだよ」
とーさまはなんだか寂しそうに目を細めて、わたしの頭を撫でた。
「とーさま、悲しい?」
「そうだね、母様と結婚できないかもしれないと思っていた時が一番苦しかったかな」
「そう言いながらも、あの頃は凄まじく動いていたではありませんか」
「必死だったからね。君の元婚約者とその家の悪行を隅から隅まで調べまくってどうにかしたものさ」
「だから、お偉い方に目までつけられちゃって…」
「それで君との婚約を勝ち取れたのだから、安いものさ」
「我が家とあなたの家が厄介払いされただけでしょう?」
「膿出しを賞賛してくださった高位貴族の方々が後ろ盾になってくれたのだから、むしろよかったくらいだよ」
「もう……」
とーさまがかーさまの肩を抱き寄せて、くすくす笑っている。
きっと、とーさまがんばったんだと思う!
「とーさま、えらいえらい?」
そう訊くと、2人は顔を見合わせて吹き出した。
「そうだね、一部の方々したら父様は偉かったんだよ」
「無茶なさってたけど、父様はある意味勇敢だったのよ」
「とーさま、かーさまと結婚できてえらい!」
「そうだろう!」
「もう、調子に乗らないでくださいよ」
かーさまは怒り口調だったけど笑っていたから、たぶん本気では怒ってないんだと思う。
「わたしもかーさまと結婚したいっ!」
「あらあら」
「えっ、父様とじゃないの!?」
「かーさまがいい!!」
「ふふふ、ありがとう。私の小さなレディー」
「……………今、将来結婚するところを想像して、気持ちが萎えた。誰にもやりたくない」
とーさまが急にどんよりし始めたけど、かーさまは笑ったままだった。
「私たちが楽しい結婚生活を送っているように、この子の結婚だってきっと楽しいものになりますよ」
そう言って、かーさまはキャラメルクッキーを取って、わたしの口の中に入れてくれた。
「どう?甘い?」
「うんっ!あまくておいしーい!」
「はぁ…、一生家にいてほしいなぁ」
「あなた」
「……わかってる、娘のしあわせが一番ですよ」
いつものとーさまとかーさまの会話になったから、やっぱりわたしもにこにこしてしまう。
その時、部屋の隅にいる執事長が見えて、わたしはかーさまの膝をおりて、クッキーを持った。
「しつじちょー、はいどうぞ!キャラメルクッキー!」
「おや、私にもくださるのですか?」
「うん!しつじちょー、なんか苦しそう。これ甘いから、きっと苦しくなくなるよ!」
「……っ!ああ、お嬢様…!!ぜひそのまま素敵なレディーでいてくださいましっ…、若旦那様のように無茶はなさないでくださると、私の寿命も縮まることもないでしょう…!」
「こら、余計なことを吹き込むんじゃないよ」
「わたし、もう立派なレディーよ?」
「ええ、ええ、そうにございますよ!若旦那様と違って、お嬢様は安心安全の素敵なレディーでございます!」
なぜかとーさまが手で顔を覆ってたけれど、かーさまが隣で笑ってたから、何も問題ないと思うの!
わたしは手を伸ばして、執事長の口にさっきかーさまがしてくれたみたいに、キャラメルクッキーを放り込んだのだった。
了
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292日目。




