紙飛行機
僕は公園で紙飛行機を飛ばすのが好きだった。
放課後、ランドセルを家に放り投げると、色とりどりの折り紙を持っていつもの公園へ向かう。その日も友達三人でベンチに座り、ああでもないこうでもないと言いながら紙飛行機を折っていた。
一番長く飛んだやつが勝ち。
単純だけどそれが最高に楽しかった。
「せーのっ!」
三人でいっせいに空へ放る。
ひらひら。
くるり。
どれも似たような軌道を描きすぐに地面へ落ちる。
「だめだなあ」
「もっと先をとがらせたほうがいいんじゃない?」
何度も折り直し何度も飛ばす。
そして、僕が緑色の飛行機を放ったときそれは起きた。
すーっと風にのった。
まるで見えない糸で引かれているみたいにゆっくり、そしてなめらかに空を進んでいく。
「わー!」
「すごい!」
僕たちは思わず歓声をあげた。
公園の端まで行き道路へ出てしまうかと思ったその瞬間もふわりと弧を描いて向きを変えた。まるで公園の外へは出ないと決めているかのように。
「どうなってるの!?」
「まだ飛んでる!」
夕方の光を浴びて緑の飛行機が飛び続ける。
そして、公園の奥の大きな木のそばで、ぱっ、と消えた。
いや、消えたように見えた。
「え?」
「どこいった?」
三人で駆け寄る。
枝にも引っかかっていない。
地面にも落ちていない。
しばらく探したけれど見つからなかった。
「風でどっか行ったのかなぁ……」
誰かがそう言った。
もう夕方。空はオレンジ色に染まっている。僕たちはなんとなく黙ったままその日は帰った。
部屋に入ると机の上に緑色の折り紙が置いてあった。
「あれ?」
さっきの色だ。
近づいて手に取る。まっさらな緑の折り紙。一枚だけ。
裏にはたどたどしい文字で「ありがとう」と書いてあった。
僕はしばらくそれを見つめた。
どうして?
どういうこと?
(……?)
わからない。
わからないけど、あの飛行機は誰かが欲しかったんだな、と思った。
何かに必要だったんだと。
(うん。よく飛んだもんな)
不思議だけど、なんだか何かの役に立てたようで嬉しかった。
胸の奥がじんわりあたたかくなった。
次の日も紙飛行機を飛ばしに行った。
消えた紙飛行機は、もう探さなかった。
終




