第13章 国会の修羅場(9)2031年11月 マネー雑誌「週刊マネープラス」
◆ 2031年11月5日 水曜日 発売
◇ マネー雑誌「週刊マネープラス」特集記事
『富裕高齢者の新・相続税対策 年金任意減額制度の衝撃』
記事より抜粋:
「見過ごされがちだが、今回の改革で最も注目すべきは年金任意減額制度だ。年金月額30万円の富裕層が半額の15万円に減額した場合、年間180万円の減額。その1.2倍の216万円が相続税の税額控除に。10年続ければ2,160万円の節税効果。
取材した税理士は語る。『資産5億円以上の富裕層にとって、これほど確実な相続税対策はない。年金を使い切れない層にとっては、実質的に国が20%のプレミアムを付けて相続財産を増やしてくれるようなもの』
都内でアパート3棟を経営する78歳男性:『家賃収入が月200万あるから年金は正直要らない。それが相続税対策になるなら一石二鳥』」
◆ 2031年11月7日 金曜日 午後8時
◇ SNS分析配信「制度の真の意味」
法案成立から1週間。インフルエンサーたちの分析が深まっていた。
###投資系YouTuber「たくみ」が緊急配信
「23歳結婚・5人産めば生涯2,010万円の恩恵!しかも全部非課税!」
画面に早婚多産モデルの計算。視聴者12万人が釘付け。
「でも待って…年金移行債って既納付分だけ。25歳なら働いて3年だから、せいぜい200万円分。45歳なら20年以上払ってるから1500万円分はもらえる」
グラフを表示。世代間の年金移行債受取額の差が一目瞭然。
「つまりね、若い世代ほど年金移行債は少ない。だから選択肢は2つ。一つは『子供に養ってもらう』昭和モデル。もう一つは『政府の減免で子育て費用を浮かせて、その分を自分の老後資金として貯める』令和モデル。どっちにしても自己責任なんだよね」
コメント欄が加速:
『若い世代ほど損してない?』
『いや、減免期間が長いから若い方が得』
『結局、子供=老後保険なのか』
『35歳独身の俺、年金移行債はそこそこもらえるけど減免ゼロでオワタ』
---
###11月8日午後10時 YouTube Live「年金改革シミュレーター緊急公開」
FPブロガー「人生設計の教科書」配信
FPブロガー(配信者):「こんばんは!いつも見てくれてありがとうございます。今日は緊急配信です。さっきの国会中継、皆さん見ました?えっと、ちょっと待ってください…視聴者がもう15万人!?すごい…」
「あのね、某結婚情報誌が簡易計算ツール出してるけど、あれじゃ全然実態がわからないんですよ。年収と子供の数だけ入れて『はい、あなたは黒字です』って…そんな単純じゃないでしょ!親のサポートは?教育費は?再雇用は?そういうの全部考慮しないと本当の数字は出ない」
「だから作りました、『年金改革シミュレーター.xlsm』完全版!入力項目は、夫婦の年齢・年収・昇給率、子供の人数・出産時期、あとは教育プラン…公立か私立か、塾や習い事をどれくらいやるか、それから子育て費用ですね、食費とか被服費、医療費、スポーツにいくらかけるか、親や義理の親の年齢と孫育て可能度、60歳再雇用の有無…全部入れたら『改革前後の差額』と『子育て総コストとの収支』の両方が見られます!」
「はい、それではリンク公開いたします〜。概要欄に貼りました!」
画面にダウンロードカウンターを表示。数字がリアルタイムで跳ね上がっていく。
配信者:「うわ、もう1000ダウンロード…2000…5000!皆さん早い!あ、ちょっと待って(笑)。チャット見てたら誰か年収5000兆円とか入れてエラー報告してますね。真面目にやってくださいよ〜」
最初のチャット欄:
「適当に入れたら持ち出し2000万www」
「子供10人にしたら壊れた」
「年収2億円にしても保険料上限あるから黒字にならんw」
配信者:「はい、画面共有始めます。私も一緒に入力してみますね。えーと、モデルケースとして…28歳夫婦、年収は…」
10分後、チャット欄の雰囲気が変わり始める。最初はふざけていた視聴者たちが、自分の実際の年収や家族構成を入力し始めた。ダウンロード数は既に4万を超え、コメントの流れる速度が明らかに上がっている。
「待って、これガチで計算したらヤバい」
「28歳夫婦、年収500万→改革前より1800万改善!でも子育て費用は800万自己負担」
「35歳から結婚して3人産んでも…減免期間短くて自己負担1500万」
「改革前後で見るか、総コストで見るかで印象変わるな」
「年収800万→改革で2400万補助!自己負担ほぼゼロ」
「23歳結婚、夫年収1200万→改革で3500万改善、トータルでも150万黒字!」
配信者:「ダウンロード数が3万超えました!皆さん、最初は適当だったのが、今はガチ計算になってますね(笑)。そうそう、厚生年金保険料って月額6万円くらいが上限なんですよ。ボーナス分入れても年間90万円くらいで頭打ち。だから年収1000万でも2000万でも、減免額は変わらない。黒字は相当厳しいです。あ、でもちょっと待って、皆さん気づいてます?この減免分、全部非課税なんですよ。所得税も住民税も健康保険料もかからない。つまり年78万円の減免は、額面年収120万円アップと同じ価値があるんです!」
視聴者の反応:
「非課税だから実質価値120万円相当かー」
「保育園代より減免額の方が大きいじゃん、これはデカい」
配信者:「今、主婦の方から具体例が来ました。読みますね。『夫年収650万、現在3人で年46.8万円減免。4人目産んだら62.4万円、5人目なら78万円になります』…改革前と比べたら30年で2000万以上の改善ですよ!それでも子育て費用の自己負担は残りますが、実家の支援があれば負担ゼロも可能ですね」
チャット:
「うち夫45歳、今から3人目…改革で600万補助あっても自己負担1,200万orz」
「↑塾への重課金やめたら?w」
「改革前なら1800万の持ち出しが、改革後は150万まで減った!志茂野大臣の言った通りだ」
「全部私立で塾フルコースなら持ち出しだけど、公立メインならトントンくらいにはいくじゃん」
「持ち出し騒いでる奴、中学受験と鉄緑会コース前提で計算してるだろw」
「婚活女子です。マッチングアプリに『子供5人希望♡』って書いたらいいね10倍になりましたw」
配信者:「おぉ!今すごい情報が!調査報道の方から『志茂野大臣、国交大臣時代の2029年に三世代近居支援住宅制度作ってた』って。え、2年前から仕込んでたんですか!?」
視聴者騒然:
「不動産ゴリラwww」
「↑不動産ゴリラじゃなくて不動産チェスマスターwww」
「全部計画通りかよ」
「省庁横断的な伏線回収」
配信者:「シンママの方々からも報告が…『2児の母です。再婚したらあと1人で60%減免スタートって計算したら、ちょっと希望が見えてきました』『シンママ3人子持ち、婚活サイトの反応は変わらないけど、相手の年収次第では悪くない話かも』」
配信者:「あ、離婚弁護士さんからヤバい指摘来ました!『5人で100%減免受けてる夫が離婚したら、減免資格失効で月7.2万円、年86万円の手取り激減。これ妻側の最強の交渉カードになりますね』」
チャット爆発:
「離婚できない経済構造w」
「妻『離婚したら月7万減るけどいい?』最強」
「減免という名の人質」
配信者:「皆さん、見えてきましたね。実家サポートの有無で数千万円の差。家族関係の良し悪しが、そのまま1億円規模の経済格差になるんです」
視聴者:
「義母との関係が資産価値になった」
「孫育ててもらって、老後は支える。お互い様のWin-Win」
「三世代運命共同体、これ昭和への回帰?」
「年金薄くなる親世代も、子供に頼らざるを得ないから相互依存だな」
配信者:「まとめます!正直、普通の収入だと黒字はまずないです。高収入でも、年収1000万以上で親のサポートがあって5人産んでも、月6000円程度の持ち出し…って志茂野大臣が言ってた通りですね。つまり完全黒字はほぼ不可能。ただ、改革前と比べたら劇的に改善してるし、長期的には年金不安がなくなるメリットはあります」
---
◆ 2031年11月7日 金曜日 午後9時
◇ 投資系YouTubeチャンネル「マネーの羅針盤」ライブ配信
法案成立から1ヶ月。実施要綱が発表され、投資業界が騒然としていた。
「皆さん、とんでもない資金が株式市場に流れ込む可能性があります」
配信者が試算を画面に表示。「年金移行債の発行額、年間30兆円。このうち10%が成長投資型に流れるだけで3兆円。30%なら9兆円です」
チャート分析を始める。「私的年金ファンドは必然的にインデックス中心の運用になるでしょう。個別株のリスクは取れません。つまり、日経平均ETF、TOPIX ETF、先進国株式インデックス…これらが爆買いされる」
コメント欄:
『もう仕込んだ方がいい?』
『バブル来るか』
『年金マネーの再来』
「しかも」配信者が興奮気味に続ける。「若い世代ほど成長投資型の配分を増やすはず。20代で90%成長投資型なんて普通にありえる。つまり、今後40年間、安定的に買い圧力が続く」
別の投資系YouTuber「億り人への道」も参戦:
「これ、日本版401kの超巨大版じゃないですか。しかも強制加入。インデックス投資家にとっては神風が吹いた」
スーパーチャット:
『先生、NISA枠と併用できますか?』(5,000円)
『不動産REITも上がりそう』(3,000円)
配信者が答える。「NISAは別枠です。つまり、年金移行債の成長投資型+NISA+iDeCoのトリプル運用が可能。これは…日本人の金融資産構造が根本から変わりますよ」
---




