表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/103

第13章 国会の修羅場(4)2031年4月27日 日曜日 午後8時

◆ 2031年4月27日 日曜日 午後8時


◇ 選挙速報


NHKの選挙特番で当確が次々と報じられる。与党が単独で3分の2を超える圧勝だった。


志茂野の選挙区では特に注目が集まっていた。「志茂野大臣、得票率68%超で圧勝。前回比15ポイント増という驚異的な伸び」とアナウンサーが報じる。


「年金改革への国民の信任を得た」石原総理がインタビューに答える。


---



◆ 2031年5月7日 水曜日 午後8時


◇ SNSの戦場 〜特別国会開会前夜〜


翌日の特別国会開会を前に、各プラットフォームで配信合戦が始まっていた。


###YouTube「政治系チャンネル」


登録者500万人の「政治のツボ」が緊急生配信を開始した。40代男性の配信者「政ツボ先生」が画面に向かって話している。


「皆さん、いよいよ明日から年金改革の国会審議が始まりますね。コメント欄、すごい勢いで流れてますよ…『騙されるな』『若者の味方』『高齢者切り捨て』…意見が真っ二つに分かれてます」


画面右側のコメント欄が猛スピードで流れている:


『老人ホームが満杯になる』

『若者にとっては朗報でしょ』

『5人も産めるかよ』

『氷河期世代はどうなるの?』

『移行債って結局国債じゃん』

『インフレで価値下がったら終わり』


「おっと、スーパーチャット来ました。『政ツボ先生、移行債の金利3%って本当においしいんですか?』…あー、ここ誤解されやすいとこなんですよ。金利3%じゃなくて、インフレ連動で年3%までなんです」


政ツボ先生が電卓アプリを開く。「つまり、インフレ率が0.5%なら0.5%、2%なら2%の利率。上限が3%。実際の利率は今のデフレ状況だと1%未満でしょうね。だから私的年金ファンドの成長投資型への配分が重要になる」


画面を切り替えて説明を続ける。「安全型は年金移行債中心で低リスク低リターン。成長投資型は株式やREITで運用。最大90%まで成長投資型に振替可能…これは賢い設計かも」


コメント欄がさらに加速:


『え、3%固定じゃないの?』

『インフレ連動かよ…』

『結局実質利率ほぼゼロじゃん』


『やっぱり詐欺じゃん』

『政府を信じろって無理』

『でも年金もらえないよりマシ』

『20代だけど支持する』


「コメント読み切れませんが…あ、また政治系配信者の『エコノ解説』さんが反対配信してますね。登録者400万人の彼が『年金移行債は史上最大の詐欺』って…激しいですね」


---


###同時刻 別チャンネル


経済解説系インフルエンサー「エコノ解説」(登録者420万人)も緊急配信中。30代後半の男性配信者が険しい表情で話している。


「皆さん、騙されちゃダメです。この年金移行債、本質は政府の借金を国民に押し付けるだけなんです」


デジタルホワイトボードに数式を書き始める。


「現在の年金積立金42兆円、これがほぼ底をついてる。で、移行債を発行して60兆円規模の払い戻しをするって言ってるんです。差額18兆円はどこから来るか?新規国債発行です」


コメント欄:


『やっぱりそうか』

『政府の借金が国民の借金』

『でも年金制度続けても破綻するよね』

『現実的な代案ある?』

『エコノ先生の案は?』


「代案?それは難しいんですが…」配信者が言葉を詰まらせる。「確かに現行制度も持続不可能なんですよね。でも、これだけリスクを個人に押し付けていいのかって話で…」


突然、画面に「スーパーチャット 5,000円」の表示。


「『先生、氷河期世代です。結局どの選択肢でも損ですよね?』…うーん、これは本当に辛い質問ですね。正直、氷河期の皆さんは…どの制度でも厳しいかもしれません」


コメント欄が一気に重い空気に:


『氷河期は見捨てられた世代』

『若い時は就職氷河期、老後は年金なし』

『自己責任って言われ続けて』

『政治家は誰も救ってくれない』


---


###TikTok「投資系インフルエンサー」


一方、TikTokでは20代の投資系インフルエンサー「投資女子みゆ」(フォロワー80万人)が短時間動画で解説していた。


「移行債の本質、3分で解説します!」


ポップなBGMとともに、グラフィカルな説明が始まる。


「①現在の年金→もらえない確率80%、②移行債→確実にもらえる、③ただしインフレリスクあり」


「結論:20代なら移行債一択!40年運用できるから複利効果で増えるよ〜」


コメント欄:


「みゆちゃんありがとう!」

「でも5人も産めない(・_・;)」

「結婚もできてない(T_T)」

「投資の勉強しなきゃ」


短時間でわかりやすく、若い世代には好評のようだった。


---


###子育て系配信「ママ友チャンネル」


30代主婦の「3児ママゆりこ」(チャンネル登録者150万人)が、夜10時からの配信で切実な話をしていた。


「うちね、夫の年収650万円で3人育ててるんです。で、この制度だと…」スマホの電卓アプリで計算している。


「厚生年金の減免、月3.9万円!年間で46.8万円よ?これ、めちゃくちゃ大きくない?」


画面に映る3人の子供たちが騒いでいる中での配信。リアルな生活感が伝わってくる。


「でもね、正直言うと4人目5人目は…経済的にも体力的にも厳しいのよ」


電卓アプリをもう一度開く。「待って、4人でも80%減免か…月5.2万円、年間62.4万円の手取り増。5人じゃなくても4人でこれって、相当大きいわよね」


視聴者からのコメントで画面が埋まる。


「あ、そうか!」ゆりこが気づいたように声を上げる。「5人で100%減免は確かにすごいけど、4人の80%でも十分インパクトあるじゃない。月5万円の手取り増って、子供一人分の教育費くらい出るもん」


コメント欄:


『4人でも十分すぎる』

『3人60%でも助かるレベル』

『段階的でいいよね』

『うちは2人で限界』

『5人産んだら保険料タダって』

『夫が5人欲しがってる(・_・;)』


「コメント見てると、やっぱりみんな悩んでるのね。制度としては良いけど、現実は厳しいよね…」


---


###政治系配信の舞台


深夜2時、各配信者たちは明日の国会中継に向けて準備していた。


「政治のツボ」の配信者は、資料の山に囲まれながらメモを整理している。「明日の志茂野答弁、絶対に荒れるな…リアルタイム配信で同時解説するか」


「エコノ解説」の配信者は、経済データを再検証していた。「移行債の利回り計算、もう一度チェックしないと…視聴者から突っ込まれる」


各インフルエンサーたちも、明日の国会審議がSNS政治の新たな戦場になることを予感していた。政治家の答弁よりも、彼らの解説動画の方が多くの国民に影響を与える時代。2031年の日本政治は、もはや国会だけでは決まらない。


---


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ