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第13章 国会の修羅場(2)2031年1月15日 午後4時30分

◆ 2031年1月15日 午後4時30分


◇ 厚生労働省別室 制度説明会


記者会見の後、実務担当者による詳細説明会が開かれた。梶川安奈が資料を手に、報道陣に向かって説明を始める。


「年金個人口座、愛称『ライフマネー』について説明します」梶川は緊張した面持ちで話し始めた。「皆様の年金記録を一元管理し、年金移行債の残高や私的年金ファンドの運用状況をスマホで確認できるシステムです」


記者が質問した。「なぜ『ライフマネー』という名称に?」


梶川は準備していた答えを述べる。「人生100年時代の資産、ライフ=人生、マネー=お金。分かりやすさを重視しました」


「具体的な運用はどうなりますか?」


梶川は資料をめくった。「例えば30歳の方が今まで納めた保険料200万円分が年金移行債として交付されます。初期設定は100%安全型ファンドですが、最大90%まで成長投資型に振替可能です」


「60歳まで引き出せないというのは厳しい条件ではないでしょうか?」


「年間で元本総額の3%まで配当を引き出せます」梶川はスマホの電卓アプリを開いた。「200万円の元本なら年6万円、月5,000円の配当収入。元本は温存しながら生活の足しにできます」


別の記者が手を挙げた。「インフレリスクについてはどのようにお考えですか?」


梶川はしっかりと答えた。「年金移行債はインフレ連動型です。年3%以内のインフレであれば実質価値は維持されます。ただし、3%を超えるインフレの場合は目減りリスクがあります。ですから成長投資型ファンドへの分散も重要になります」


「英語としては変では?」という声も上がったが、梶川は微笑んだ。「日本の制度ですから、日本人に分かりやすいことが一番です」


市島綾人が梶川の隣に立つ。「続いて厚生年金の減免制度について詳しくご説明します」


記者席がざわめく。先ほどの会見で大臣が触れた内容の詳細だ。


市島が資料を配布する。「出生数に応じた段階的減免です。お子さんが3人なら厚生年金保険料の60%、4人なら80%、5人なら100%減免となります」


「適用時期はいつからになりますか?」記者が質問する。


「第3子出産の翌月から60%減免開始です」市島が説明を続ける。「配偶者も同率で減免されます。減免は本人負担分のみで、事業者負担分は対象外です。例えば月収40万円の会社員の場合、本人負担分は月3.66万円ですから、3人目で月2.2万円、4人目で月2.93万円、5人目で月3.66万円の手取り増になります」


女性記者が手を挙げた。「これは結婚していることが前提ですか?」


梶川が答える。「いいえ、独身の方も対象です。ただし減免は本人分のみとなります」


「不妊治療中の方への配慮についてはいかがでしょうか?」別の記者が問う。


市島が慎重に答える。「その点については所掌分野と異なりますので、お答えを差し控えさせていただきます」


「養子縁組の場合はどのような扱いになりますか?」


梶川が補足する。「普通養子縁組は対象外です。ただし特別養子縁組の場合は、実親側の出生数から1を減じ、養親側に加算する方向で検討中です。また、虐待等の加害者となった場合の減算措置も含め、詳細はこれから詰めていきます」


「この制度の狙いは」梶川が続ける。「子育て世帯の経済負担を実質的に軽減することです。なお、減免分はマイナンバーと紐付けされた受け取り口座への還付で行い、各企業の社会保険処理の負担に配慮します」


「財源についてはどのようにお考えですか?」経済部記者が質問する。


「基礎年金廃止で浮く財源と、年金移行債の発行です」市島が明確に答えた。「年金移行債を個人に交付し、その売却代金で私的年金ファンドを購入してもらいます。そのファンドが市場で年金移行債を買い支える循環構造により、実質的な財政負担は抑制されます」



◆ 2031年1月15日 午後5時30分

###緊急ライブ配信


登録者280万人の「リベ大学長」が緊急ライブ配信を開始した。


「皆さん、大変なことが発表されましたね。今日の年金制度発表、見ました?チャット欄、すごい勢いでコメント流れてますけど…」


チャット欄が爆発的に流れていく:

『年金もらえるの?』『騙されてる気がする』『60歳まで引き出せないってヤバくない?』『でも確実にもらえるなら…』


「落ち着いて、落ち着いて。まず資料を整理しましょう。画面共有しますね」


パワーポイントが表示される。『年金移行債とは何か』のタイトル。


「あ、その前に…『ライフマネー』って愛称、みんなどう思う?」リベ大学長が苦笑する。


チャット欄:

『ダサすぎwww』

『the 日本のお役所仕事』

『Go Toの再来』

『でも覚えやすいかも』


「まあ、日本らしいネーミングセンスですよね。でも本題に戻りましょう。要するに、今まで払った年金保険料を、インフレ調整した上で個人の資産として返すということです。でも皆さん、これ…」


リベ大学長の声が一瞬止まる。


「皆さん、これ実質的に年金制度の解体ですよ。国は『返します』って言ってるけど、要するに『もう面倒見ません』ってことです」


リベ大学長は資料を読み込む。「厚生年金の減免?3人で60%、5人で100%…へー、子沢山には優しいのか。まあでも5人なんて現実的じゃないし…」


コメントが炎上:

『やっぱり!』『国家的詐欺だ』『でも破綻するよりマシじゃん』『20代だけど支持する』『老人切り捨て反対』『5人とか無理ゲー』


同時刻、別の配信でも…


###子育て系インフルエンサー「ゆるママちゃん」緊急ライブ


「みんなー!大変だよ大変!5人産んだら保険料タダって、マジ?スマホの電卓アプリ開いて一緒に計算しよ!」


視聴者2万人が同時視聴中。コメント欄:

『うちもう3人いるから頑張る?』『5人とか無理ゲーw』『旦那説得中』『保育園足りないのに…』


「えーっとね、月収40万の旦那さんの場合…月3万6千円の保険料が30年間タダ!これって…」


スマホをタップする音。


「1296万円!?うそでしょ、これだけで家1軒買えるじゃん!」


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