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第12章 密室の設計者(1)2030年5月18日 土曜日 午後2時

◆ 2030年5月18日 土曜日 午後2時


◇ 厚生労働省 第3会議室


午後の日差しが会議室の窓から斜めに差し込んでいる。楕円形のテーブルを囲む15名の委員たちの表情は、どこか形式的な緊張感に包まれていた。学界代表の教授が資料に目を通し、労働界代表の組合幹部が腕組みをする。座長を務める有識者が時計をちらりと確認した。


「本日の議題は、年金制度の将来展望についてです」


山市厚労大臣が立ち上がり、秘書官から受け取った資料を配布し始める。「基礎年金の財政状況が深刻化しています。抜本的な見直しが必要な時期に来ております」


労働界代表の手がすっと上がった。「具体的にはどのような見直しを?」


山市の視線が一瞬泳ぐ。「現在、省内で検討中です」言葉を慎重に選びながら続ける。「近日中に叩き台をお示しできると思います」


「企業としても、持続可能な制度への転換は歓迎します」経済界代表が前のめりになる。


学界代表が資料をパラパラとめくる音が響く。「しかし、急激な制度変更は混乱を招きます。段階的な移行が望ましい」その声には学者特有の慎重さがにじんでいた。


座長が議論をまとめる。「では、省内での検討結果を待って、次回詳細に議論いたしましょう」


会議は1時間で終了した。委員たちは「建設的な意見交換」ができたと満足げに会議室を後にする。


委員たちの誰一人、真の議論が別室で始まろうとしていることには気づいていない。


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