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資料:内閣総理大臣談話「我が国の人口問題に関する国民へのお願い」

◆ 「我が国の人口問題に関する国民へのお願い」


◇ 令和9年(2027年)4月1日


国民の皆様


本日、私は、内閣総理大臣として、我が国が直面する人口問題について、率直に、そして真摯に、国民の皆様にお話をしなければならない重大な局面を迎えたことを、深い憂慮とともに申し上げます。



◆ 一、現状認識


我が国の合計特殊出生率は、昨年ついに1.20を下回り、出生数は70万人を割り込みました。この数字が意味するところは、もはや統計上の問題ではありません。我々の社会保障制度、経済システム、そして国家としての持続可能性そのものが、根本から問われる事態に立ち至ったのであります。


政府は、これまで少子化対策を国政の最重要課題と位置づけ、児童手当の拡充、保育所の整備、育児休業制度の充実など、あらゆる施策を講じてまいりました。しかしながら、ここに率直に認めなければなりません。これらの施策は、期待された効果を上げることができませんでした。



◆ 二、社会保障制度の持続可能性について


現在の人口動態が継続した場合、令和17年(2035年)頃には、現行の年金制度は実質的に機能不全に陥ることが、複数の試算により明らかとなっております。医療保険制度、介護保険制度についても、同様の危機に直面することは避けられません。


賦課方式を基本とする我が国の社会保障制度は、現役世代が高齢世代を支えることを前提としております。しかし、令和22年(2040年)には、1.2人の現役世代で1人の高齢者を支える計算となり、これは物理的、経済的に不可能であります。



◆ 三、政府の限界と国民への要請


政府として、この事態を回避すべく、あらゆる可能性を検討してまいりました。しかし、ここに至って、正直に申し上げなければなりません。現在の出生率では、政府の力だけでは、もはや全ての国民の老後を保障することは困難であります。


このような状況において、私は、国民の皆様に、次のことをお願いせざるを得ません。


各家庭において、可能な限り、複数の子どもを持つことをご検討いただきたい。


これは、国家のためではありません。皆様ご自身と、皆様の家族の将来の生活を守るためであります。一人の子どもに老後の全てを託すことは、その子にとっても過重な負担となります。できれば3人、あるいはそれ以上の子どもを育てることで、将来の相互扶助の基盤を、各家庭で構築していただきたいのです。



◆ 四、新たな価値観への転換


ここで重要なことを申し上げます。従来、我々は「少数精鋭」という考え方のもと、一人一人の子どもに多額の教育投資を行うことを是としてまいりました。しかし、現下の状況においては、この価値観を見直す時期に来ているのかもしれません。


高等教育にこだわることなく、それぞれの子どもが、それぞれの特性に応じて社会に貢献できる道を見出すこと。これもまた、大切な選択肢であります。家族の絆と相互扶助こそが、来るべき時代を生き抜く最も確実な保障となるでしょう。



◆ 五、政府の決意と支援


もとより、政府が責任を放棄するわけではありません。以下の緊急措置を直ちに実施いたします。


1. 第3子以降の出産・育児に対する全面的な経済支援

2. 多子世帯への住宅支援の抜本的拡充

3. 不妊治療の完全無償化と治療枠の大幅拡大

4. 養子縁組制度の簡素化と支援強化

5. 地域における相互扶助システムの構築支援


しかしながら、これらの施策をもってしても、政府にできることには限界があることを、率直に認めざるを得ません。



◆ 六、国民の皆様へ


国民の皆様、特に若い世代の方々に申し上げます。


結婚や出産は、確かに個人の選択であり、自由であります。しかし、その選択が、将来の皆様自身の生活に直結することを、どうか真剣にお考えください。子どもを持たないという選択をされた方々を批判するつもりはありません。しかし、その選択には、老後の生活設計において、相応の準備が必要となることを、ご理解いただきたいのです。


また、すでに子育てを終えられた世代の方々には、若い世代が子どもを産み育てやすい環境を作るため、あらゆる面でのご支援をお願いいたします。



◆ 七、結びに


我が国は、歴史上、幾多の困難を乗り越えてまいりました。明治維新、戦後復興、そして高度経済成長。いずれも、国民一人一人の努力と、家族の絆、地域の助け合いによって成し遂げられたものであります。


今、我々は、新たな困難に直面しています。しかし、私は信じています。日本国民の叡智と、家族を大切にする心、そして互いに助け合う精神があれば、必ずやこの危機を乗り越えることができると。


最後に、改めて申し上げます。私たち政府の努力が、根本的な解決につながらなかったことに対し、深く遺憾の意を表するものであります。しかし今は、まさに行動すべき時であります。


どうか、皆様一人一人が、ご自身と家族の未来のために、そして我が国の未来のために、真剣に人生設計をお考えいただきたい。子どもを持つことは、負担ではなく、最も確実な未来への投資であることを、ご理解いただければ幸いです。


国民の皆様のご理解とご協力を、心からお願い申し上げます。


内閣総理大臣 石原慎吾

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