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クララの手紙②

『獣人についての知識を深めるためには《長虫信仰》について知ることが重要である』


 ケンドー先生の著書にあったこの一文に、わたくしは驚きました。


《長虫信仰》と言えば、人間国《ラ虫ノ国》にとっては古くに廃れた宗教です。

《オオ虫ノ国》の獣人達の間では、今もその宗教観が根強く残っているのですね。


 そこで、わたくしは古い書物に目を通して《長虫信仰》について調べ上げる事にしたのです。



 我々は元々は大きな魂の流れの一部である。

 その魂は一つ一つが、一匹の『長虫』——つまり蛇であり、毛皮をまとった蛇が獣となり、羽をまとった蛇が鳥に、鱗をまとった蛇が魚となり、衣をまとった蛇が人となった。

 死した蛇は、かりそめの身体から抜け出して、また大いなる流れに戻って行く。



 なるほど、とわたくしは思いました。

 この『長虫信仰』も考えようによっては、獣人とわたくし達を繋ぐ事に役立ちそうです。


 獣人達がなぜ蛇を恐れるのか、それは、蛇が死の象徴であり、魂の姿そのものだからなのでしょう。


 死んでしまえば、ただの一匹の虫ケラに過ぎない。


 だからこそ、獣人は、その毛皮に並々ならぬ誇りを抱いているのかもしれません。

 死んだ獣人の毛皮は剥ぎ取られ、大切に保管されると聞きます。

 毛皮は彼らの生きた証なのでしょう。


 わたくしは美しい獣人達に想いを馳せました。

 早く、早く、と心が急きます。


『大陸の架け橋』は、わたくしと獣人を必ず繋いでくれるでしょう。

 その輝かしい未来が、わたくしには待ち遠しいのです。


 ケンドー先生。

 わたくしは学院では落ちこぼれでした。

 何度、先生からレポートのやり直しをさせられた事でしょう。

 けれど、わたくしは投げ出しませんでした。

 そして、先生もわたくしを投げ出さないでくださりました。

 わたくしの利己的な部分がにじみ出てしまう、なんともお粗末なレポートの手直しに、何度も何度もお付き合いいただきました。


 先生。

 わたくしは諦めません。

 どんなに家族に理解されなかったとしても。


 そうです。

 わたくしの両親は、わたくしの行いに反対しているのです。

 わたくしが獣人について調べている事をよく思っていないようです。

「野蛮だ」などと直接的な言葉で諌められた事もございます。

 ああ、身内に理解してもらえないというのは、なんともつらい事です。


 きっと《長虫信仰》についての資料などご覧になったら、母などは卒倒してしまうに違いありません。

 お母様はわたくしの気持ちを理解してくださる事はないでしょう。


 ならば、行動あるのみです。


 わたくしは獣人と出会ったあの日——胸に湧き上がった興奮を決して忘れません。



 ——《ラ虫ノ国》 クララ=エンジュの手紙より

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