僕らの物語〜チェル編〜
第1話 チェル
東の街B地点。
4月。晴天。
雲一つない青空がどこまでも広がっている。
チェル「んーいい天気だなぁ!旅の始まりにぴったりな日だ!」
チェル。15歳。特徴は金髪に黄色い瞳。尖った耳に牙。
虎の妖怪と人間のハーフ。
茶色のキャスケットを被り、半袖のワイシャツにカーキ色のベスト、茶色の膝丈のパンツ、茶色のショートブーツを履いている。
この世界のどこかにある、どんな願いをも叶えると言う木を目指して旅をする事になったけどその木の詳細は不明。
俺の願いは仲間を見つけること。
今日はその出発の日。
行ってきますを言える人が俺にはいない。
母も父も幼い頃に亡くなった。兄ちゃんがいるけど俺より半年ほど前に旅に出ていた。
半年前。
シェル「チェル、俺はお前が嫌いだから置いてく訳じゃないからな」
シェル。18歳。チェルの兄。同じく虎の妖怪と人間のハーフ。尖った耳に牙。金髪に黄色い瞳。前髪はセンター分け。両耳に揺れるピアスをしている。
チェル「大丈夫だよ、兄ちゃんが俺を思ってくれてること、ちゃんと分かってるから」
シェル「そうか、お前ならいい仲間を見つけられる!兄ちゃんが保証する!よし、じゃあ兄ちゃんは行くよ」
チェル「うん、行ってらっしゃい」
シェル「行ってきます」
シェルはチェルの頭をくしゃくしゃっと撫でた。
シェルはニカッと笑うと手を振りながら歩き出したが途中で何かを思い出したように「チェル!」と呼んだ。
チェル「なーにー?」
チェルが大きな声で応える。
シェル「これやるよ!」
そう言ってシェルが投げたのは茶色のキャスケットだ。
チェルはそれをキャッチする。
チェル「ありがとー!兄ちゃんまたねー!!」
シェルはもう一度振り返り「おー!またな〜!」と返した。
シェル"チェル、俺だってずっとお前とくっついていたかった
だが俺が常に一緒にいたらお前の仲間が欲しいという夢の足枷になる
今は辛いだろうけどお前なら大丈夫だ
こんな小さな街にいつまでも縛られていなくていいんだ
この広大な世界に出ればお前のことを必要とする人に必ず出会えるから
うぅ、あいつまだ手振ってる・・・"
姿が見えていなくても気配で分かるが故に辛い兄であった。
第2話 ラナ
最初に行き着いた街。東の街。A地点。
店で食事をしていると隣のカウンター席に座っていた女性が話しかけてきた。
ラナ。17歳。
長い銀髪をポニーテールにしていて、背は俺より高くて少しキツイ印象を持つ銀色の目。ノースリーブのブラウスに黒のタイトスカートにヒールの靴。
手足はスラリと長く足を組んでいるのが様になるほど、モデルのような綺麗な女性だ。
黒の小さいショルダーバッグを太ももの上に乗せている。
だが見掛けとは違い、気さくで話しやすい人らしい。
ラナ「見かけない顔ね、君、この街の人じゃないわよね?」
チェル「うん、東のB地点から来たんだ
お姉さん、ここの街の人?」
ラナ「隣街じゃない、そうよ、何か目指してるの?」
チェル「うん、旅をしてるんだ、願いを叶える木がある場所を目指してるんだけど何か情報知らない?」
ラナ「願いを叶える木ねぇ、聞いたことないわ」
チェル「そっかぁ、ありがとう」
ラナ「ねぇ、君の願いっての教えてよ、こうして知り合ったのも何かの縁だしね」
チェル「いいよ、俺ね仲間が欲しいんだ
今までずっと1人ぼっちだったから」
ラナ「へぇ意外だわ、こんなフレンドリーならすぐ友達できそうだけど」
チェル「俺ね半妖なんだ
耳と歯見れば分かると思うんだけど」
ラナ「気にしてるのね」
チェル「みんなからしたら俺は気味が悪いんだって
」
ラナ「・・・ずっと辛かったんだね」
その言葉を聞くと同時にポロポロとチェルは涙をこぼした。
チェル「うえ、あれぇ?」
ラナ「え、ちょっと大丈夫?」
チェル「ごめん、何か涙が勝手に」
チェル"そっか、俺ずっと誰かにそう言って欲しかったんだ"
ラナ「いいよいいよ、ほら」
ラナはハンカチを取り出してチェルに渡した。
チェル「ありがと・・お姉さん優しいんだね、嫌じゃないの?俺が半妖で」
ラナ「全然、てゆうか髪ふわふわしてるね、触ってもいい?」
チェル「いいけど・・・」
チェルが帽子を被ってるので横髪を触る。
ラナ「わぁ、ほんとにふわっふわ〜!」
チェル「ちょっとくすぐったいよー!」
ラナ「ごめんごめん」
チェル"こんな風に誰かと笑ったり触られたり兄ちゃん以来だ"
ラナ「ねぇ、君、名前は?」
チェル「チェルだよ、お姉さんは?」
ラナ「私はラナ、君のこと気に入ったよ
ねぇ、私を仲間第一号にしてよ」
チェル「え、仲間になってくれるの?」
ラナ「ちょうど退屈してたのよねぇ、旅とか面白そうだし」
ラナは座ったまま「ん〜っ」と体を伸ばす。
チェル「やったあ‼︎」
ラナ"クスッ、めちゃくちゃ嬉しそう"
ラナ「じゃあ、これからよろしく!」
ラナはそう言って手を出し、2人はガシッと握手をした。
チェル「よろしくね!ラナ!」
第3話 ノエル
東の街M地点。
酒場でチェルとラナが話をしていると隣のカウンター席に1人の男が座った。
ノエル。17歳。
センターパートの金髪に黒い瞳。ワイシャツを第二ボタンまで外し、黒いジーンズとスニーカーを履いている。
チャラそうな感じの男だ。
ノエル「マスター、いつものやつ」
マスター「はいよ」
ノエルは不意にラナの方を見た。
ノエル「!」
ノエルはラナを見ると目を見開いた。
ラナ「え、何?」
ノエル「あぁ、いや君可愛いなと思ってさ」
ラナ"何こいつ、ナンパ?見かけ通りね"
ラナ「それはどーも」
ラナは頬杖をつきながら目も合わせずに言う。
その時、チェルが手で口元を押さえながら小声で言った。
チェル「お兄さんガンマンかなんか?」
相手の男は一瞬ビックリした様子だった。
ノエル「このバッグに上手く隠してたつもりだったんだけどよく分かったね」
このバッグ、とはノエルの肩にかけられている少し大きめの黒いショルダーバッグのことだ。
チェル「お兄さんから火薬の匂いがしたから」
ラナ「え、うそ全然気づかなかった」
チェル「俺、鼻がいいから」
マスター「さすが半妖君だね、狙撃の腕でこの坊やの右に出るものはいないよ」
ラナ「え、そんなにあんたって凄いの?」
ノエル「まぁ、負けたことはないね、褒めてくれてもいいんだよ」
ラナ「アホらし」
シェル「ねぇお兄さん、願いが叶う木がある場所って情報知らない?」
ノエル「んー・・・噂なら聞いたことあるけど場所は分からないな」
ラナ「それってどんな噂?」
ノエル「突然霧が濃くなって霧が晴れたと思ったら大きな木が現れたって話さ」
ラナ「霧・・いきなり現れたってことはまさか移動してるのかしら」
ノエル「願いを伝えたら消えたらしい
その人は南の街で見たって話だ」
チェル「ありがとう!ラナ、やっと一歩前進だね」
ラナ「そうね、とりあずその南の街を目指そう」
チェル「うん、お兄さん情報ありがとう」
ラナとチェルが椅子から立ち上がる。
ノエル「君たち、ちょっと待った
ここから行くならこっちのルートから行った方がいい」
ノエルは机の上に地図を取り出して二人に見せた。
ラナ「え、その道、遠回りじゃない?」
ノエル「遠回りにはなるけどこの道は犯罪が多い場所だ、わざわざ分かってて通る必要はないだろう?」
ノエルは地図を指差しながら話した。
ラナ「え、そうなの?」
チェル「分かった、ちょっと遠回りだけどそうしよう、お兄さんありがとう」
ノエル「いえいえ」
ラナ「あんたって意外といい奴ね」
ノエル「可愛い君が危険な道通るって分かってて行かせるわけにはいかないだろう?」
ラナ「ははは、それはどーも」
ラナは呆れたように言った。
しかし、ノエルが教えた安全な道にギャングが近付いているとの情報が入った。
ノエル"まずい、さっき2人に教えた道にヤバい連中が向かってる、急いで知らせないと"
ギャングA「へへへ、見かけない面だな
ギャングB「あんちゃんいい女連れてんじゃん」
ラナ「こっち安全なはずなのに!」
チェル「でも、さっきの人嘘はついてないと思うよ
完全にイレギュラーだよ」
ラナ「そうね」
ギャングA「やっちまえ!」
チェル「せや!!」
チェルは身軽な動きで攻撃を交わすとギャングの腹にパンチを食らわした。
ギャングA「ぐわ!」
ラナも攻撃をサッと交わすとギャングの腹に膝蹴りをした。
ラナ「はあー!!」
ギャングB「ぐぅ・・・」
チェル「ラナやるー!」
ラナ「チェルもね!」
そこへノエルが来た。
ノエル「あらあら、俺の出番なし?」
チェル「あ、さっきのお兄さん!」
ラナ「あんた、何でここに・・・」
ノエル「君の後をつけ、ゲフンゲフン、危ない奴らが教えた道に向かってるって情報が入ったから君たちが心配で来たんだ」
チェル「ありがとうお兄さん」
ラナ「今、後をつけって言ったわよね?」
ノエル「君は怒った顔も素敵だね」
ラナ「もう調子いいんだから」
チェル「ねぇ、せっかく来てくれたんだしお兄さんも一緒に行かない?」
ノエル「いいよ」(あっさり〜)
ラナ「ちょっと、私は反対よ」
ノエル「そんな釣れないこと言わないでよ〜」
ラナ「何するか分かったもんじゃないし」
ラナは腕組みをしながら不貞腐れた表情をした。
チェル「大丈夫だよ、俺もいるんだし、それにガンマンってかっこいいじゃん」
ラナ「あのねぇ・・・」
チェル「あ、でも一個いい?お兄さん」
ノエル「何だい?」
チェル「見て分かると思うんだけど、俺、人間と妖怪のハーフなんだ」
ノエル「おー、やっぱりそうなのか!で、それが何か問題あるの?」
チェル「ぽかん」
ラナ「あんた、いい性格してるわ」
ラナはノエルの肩に手をポンッと置いた。
チェル「ラナ〜」
ウルウルとした目でチェルはラナを見つめた。
ラナ「う・・・分かったわよ、その変わり!手出したら引っ叩くからね!」
ノエル「えー」
ラナ「えーじゃない!」
ノエル「はーい」
チェル「俺はチェル、こっちがラナ、よろしくね」
ラナ「よろしく」
ノエル「俺はノエル、よろしく、あ、ちょっと待ってて」
ラナ「?」
しばらく待っていると
ブォンと音と共に車が走ってきた。高そうな車だ。
ノエル「とりあえずこれで行こう、足になるしトランクにテントも積んだ
トイレとか風呂はまぁ後で何とかなるだろ」
チェル「うわぁすっげー!!ノエルかっこいいー!」
ラナ「あんた・・・ひょっとして金持ち?」
ノエル「まぁね、家からこの車と他にもだいぶいいもん盗んできたから当分金には困らないよ」
ラナ「盗んできたぁ!?いくら自分の家でもそれはまずいんじゃないの?」
ノエル「まぁ今頃騒ぎになってるだろうね」
ラナ「と言うことは家族に挨拶もしてきてないのね」
ノエル「する必要ある?
うちの家族、昔から俺の存在が気に食わないらしくてさ
何もしてないのに俺がいるだけで不吉な事ばっか起こるって無茶苦茶言われたり
仕舞いには地下室に閉じ込められそうになったり
まー暴れて家出したんだけど
てな訳で、せめて最後にあいつらに復讐してやろうと思って金目の物盗んで出て来たってわけさ」
ラナ「なっにそれ腹立つわね!盗んで正解よそんなもん!」
意外にもプンスカと一番怒っているのはラナだった。
チェル「なんだかんだ仲いいね2人とも」
ラナ「どこがよ!」
ノエル「え、そうかな?」
ノエルはニヤニヤと嬉しそうだ。
ラナ「何ニヤニヤしてんの、さっさと行くわよ」
ノエル&チェル「「はーい!」」
ノエル「ところで、ラナちゃんはともかく、チェルは持ち物何も持ってないのかい?」
チェル「あるよ!ほら!」
チェルはパンツのポケットから茶色のがま口の財布を取り出した。
ノエル「旅をするのにさすがに不用心過ぎないか?
リュックかなんか買いに行こう、買ってあげるから・・・」
チェル「え、いいの?やったぁ!!」
ラナ「ノエル、これからはあんたのお財布に頼ることになりそうだわ」
ノエル「もちろん構わない」
ラナ「悪いわね」
ノエル「俺は君の為なら破滅しても構わないさ!」
ラナ「ほんとおめでたい性格ね」
ラナ"でも、お金の代わりに何か要求してくる感じもないしなんだかんだ言って結構いい奴かも?"
第4話 フローナ
南の街B地点。
3人は話しながら街を歩いていた。すると突然大きな悲鳴が聞こえた。
村人「きゃー!通り魔よー!!」
通り魔「邪魔だどけどけー!!」
通り魔はナイフを持って走っている。
ラナ「え、何、通り魔!?」
ノエル「街に着いて早々まじかよ」
チェル「ねぇ、あのコ危なくない?」
チェルは焦りの色を含んで言った。
通り魔の向かった先には屋台で買い物をし終わった女の人が立っていた。
フローナ15歳。
栗色のショートヘア、色白で小柄の華奢な女性だ。
黒いベレー帽、黒のノースリーブのタイトワンピースに茶色のショートブーツを履いている。
ラナ&ノエル「危ない!」
フローナ「!」
フローナが攻撃しようとした瞬間。
ノエルが打った球が通り魔の手とナイフの間に当たり、ナイフが飛んでいった。
通り魔「いて‼︎」
チェル「さっすがノエル!やるー!」
そして背後からチェルが通り魔の腕を掴んだ。
チェル「ちょっとちょっとお兄さん
ダメだよ女の子にそんな事しちゃ」
通り魔「いたた!くそ!」
通り魔はノエルが持っていた縄であっという間にぐるぐる巻きにされた。
通り魔は駆け付けた警官が取り押さえた。
警官「ご協力感謝します!」
ラナ「ちょっと!何で私に向かって言うのよ!」
ノエル「それはラナちゃんが一番強そうだから・・・いたたっ!」
ノエルがいい終わるや否やノエルの耳をラナが引っ張っる。
ラナ「何ですってー?、とにかく捕まえたのはこの二人よ」
警官「え?・・・し、失礼しました!」
チェル「いえいえ〜」
ノエル「お気になさらず〜」
通り魔「くそ、覚えてろよ!」
警官「大人しくしなさい!」
ラナ「あなた、怪我はない?」
フローナ「うん」
ノエル「良かった」
フローナ「あの、どうもありがとう」
その女の人はペコリと三人にお辞儀をした。
チェル「いえいえ」
そう言ってニカっとチェルは笑った。
フローナ「桃まん食べる?」
ラナ「桃まん??」
フローナは持っていた袋から桃まんを取り出した。
ラナ「え、悪いわよそんな」
フローナ「さっきのお礼もしたいし、桃まんが苦手なら他の買ってくるけど」
チェル「めちゃいい匂い!俺、桃まん?食べたことない!匂いからするにお饅頭みたいな感じかな」
フローナ「そうだね、似てるかも、ここの屋台の美味しいよ」
フローナはチェルに桃まんを渡した。
チェル「わーいありがとう!」
ラナ「もうチェルは食い意地張ってるんだから」
フローナ「そっちのお二人は?」
ノエル「じゃあせっかくだしもらおうかな」
ラナ「そうね、私ももらうわ、ありがとう」
チェル「うまー!」
ノエル「うん、うまい」
ラナ「ほんとね!それにしても南の地でも北の地の料理を出してるのね」
フローナ「良かった、うん、ここのエリアは色んな場所の料理の出店をしてるんだ
見かけない顔だとは思ってたけどあなた達ひょっとして・・・」
チェル「うん、俺達、旅をしてるんだ
どんな願いも叶える木って言う場所を目指してる
何か情報知ってる?」
フローナは首を横にふるふると振る。
フローナ「ごめん、分からない」
チェル「謝らないで、僕たちも分からないからさ」
フローナ「でも旅かぁ、いいなぁ」
チェル「君も一緒に行く?」
フローナ「え、良いの?行く〜!」
ラナ「判断早!!いいの?そんなに簡単に決めちゃって」
フローナ「チャンス逃したくないし後悔したくないんだ
行かない選択をして明日死んだらきっと私後悔する
それだけは嫌なの
時間は1秒も待ってくれないからね
だから私は好奇心の赴くまま行きたい道を行く」
チェル「それ最高♪俺、君の事気に入ったよ」
フローナ「ありがとう」
ラナ「ちなみにコイツ半分妖怪なのよ」
フローナ「へぇ〜!可愛いね!」
チェル「え、かわ!?///」
予想外の反応にチェルは照れてしまう。
ノエル「決まりだね」
ラナ「そうねぇ、女の子いてくれたら私も嬉しいわ」
チェル「君、名前は?」
フローナ「フローナだよ」
チェル「俺はチェル、で、こっちがノエルとラナ
よろしくね」
ノエル「よろしくねフローナちゃん」
ラナ「よろしく!」
フローナ「よろしく!」
チェル「よし、仲間が4人になった記念にパーティーやろう!」
ノエル「やろうやろう♪」
2人は盛り上がっている。
ラナ「言うと思ったわ・・・
フローナ、これから大変よ?こいつらの面倒見なきゃなんないんだから」
ラナはこそっとフローナに言った。
フローナ「ふふ、これから楽しくなりそう」
ラナ「まぁこいつらといたら退屈はしないわね」
第5話 ジン
北の街E地点。
この街には大きな森があり、フルーツの成る木がいっぱいあり、
みんなそれぞれできる限り集めて合流する事になった。
木の下に1人の男がもたれかかっていた。
ジン"俺はここで死ぬのか、だがもういい
これでやっとあなたの元へ行けるよ、セノ・・・"
しばらく探索していると、
フローナが木の下にボロボロになった袴を来た男が座っているのを見つけた。
ジン19歳。
長い黒髪を一つ結びにしているが乱れてボサボサになっている。藍色の袴姿にワラジを履いていて剣が側に置いてある。侍のような格好だ。
その男は意識がほとんどないらしい。
フローナ「あの、大丈夫ですか?」
光が差した瞬間、その男の目にフローナがテレーゼの姿とダブって見える。
ジン"テレーゼ・・・?なぜ、あなたがここに"
フローナが近づこうとした瞬間、男は体勢を崩してそのまま倒れそうになった。
フローナ「っと」
その時、その男は薄れゆく意識の中でフローナの服の裾をぎゅっと掴んだ。
フローナ"この人・・・"
・・・。
2時間後。
ジン「う・・・」
ジンはようやく意識が戻りゆっくりと目を開けた。
ラナ「良かった、目覚めたわね」
ジン「ここは・・・」
チェル「俺達のテントの中だ」
ジン「そうか、すまなかった」
そう言うや否や起きあがろうとする。
ノエル「おい、まだ動いちゃダメだ、
応急処置しただけだから傷は治っちゃいない」
ジン「しかし・・俺がいたら君達にまで被害が及ぶ」
ラナ「被害?どういう意味?」
ジン「俺は呪われているから・・・街の人から迫害されてるんだ、知らなかったとは言え迷惑をかけた」
チェル「何かよく分かんないけど、その話を聞いてたとしてもフローナは君を助けたと思うよ
あ、フローナって言うのは俺達の仲間だよ」
ジン「そのフローナと言う人はそんなお人好しなのか?」
チェル「いや、フローナはそこまでお人好しじゃないよ
現に旅を始める時に無闇に人助けしないことって約束してるから
仲間の安全の為にも」
ジン「では何故」
チェル「なんかね、君が助けてって言ってるように見えたんだってさ、
それで、どうしても放っておけなかったんだって、
ほっといたら君死を選んでたんじゃない?」
ジン「・・・」
ジン"やはりあれは夢ではなかったのか"
フローナ「お待たせ〜」
その時、フローナがテントに入って来た。
ジン「!」
ジン"あの時立ってたのは彼女だったのか"
フローナ「お水飲めそう?」
ジン「ああ・・ありがとう、色々とすまなかった」
フローナ「あはは、私は何にもしてないよ」
フローナは手を軽くブンブンと振った。
ジン"この笑顔なんだか懐かしい気がする
初めて会ったはずなのに"
チェル「なぁなぁ俺いい事思いついちゃった」
ノエル「何だいい事って」
チェル「君、俺達の仲間になってよ!」
ラナ「出た、相手の気持ち完全無視のチェルの勧誘」
フローナ「私は隊長らしくて好きだけどね〜」
チェル「どう?」
ジン「いや、誘いは嬉しいが俺と一緒にいたら君達まで危険な目に合う」
チェル「俺といる方がよっぽど危ないと思うよ
半妖だし」
ジン「半妖だったのか」
ラナ「てか、気付いてなかったのね」
男は一瞬驚いた様子を見せたものの気にしていないようだ。
ノエル「こうなると聞かないんだ」
ジン「しかし、助けてもらった上にこれ以上世話になる訳にはいかない」
チェル「じゃあ助けたお礼に仲間になってよ」
ラナ「チェル、それもう勧誘じゃなくて脅迫よ・・・」
ラナが呆れたように言った。
フローナ「ほんとね」
ノエル「諦めた方が良さそうだぞ」
チェル「な!」
ジンはいつの間にかポロポロ泣いていた。
フローナはそっとハンカチを渡した。
ジン「ありがとう・・・俺は・・仲間になりたい」
それはジンがずっと望んでいたことだった。
居場所が欲しいと。
チェル「本当!?やったぁ!君、名前は?」
ジン「ジンだ」
チェル「俺はチェル、よろしく」
ノエル「俺はノエル、よろしくな!」
ラナ「私はラナよ、よろしく」
フローナ「私はフローナ、よろしくね」
ジン「ああ、よろしく」
数日後の昼。
ジンはすっかり回復していた。
ジン「食事は俺が作ってもいいか?それくらいしかできないが、俺にできる事があればなんでも言ってくれ」
ラナ「あんた、ええ子やなぁ・・・」
チェル「ほんと?助かるー!まともな飯食べてなかったし頼むよ!」
ノエル「パンだけ生活も飽きたしな」
フローナ「ずっとスープとパンだったもんね」
ラナ「だって料理って面倒なんだもの」
ノエル「面倒なんじゃなくてラナちゃんの場合料理音痴なだけでしょ」
ラナ「何ですってー!?」
ラナはノエルの耳を引っ張る。
ノエル「痛い痛い!ラナちゃん、ギブギブー!」
ジン「賄い飯みたいのしか作れないんだがいいか?」
チェル「最高じゃん!!」
ジン「それじゃあ・・・みんなアレルギーがある食べ物とか嫌いな物があればそれぞれ教えて欲しい」
ジンはメモを用意していた。
ラナ「ジン、あんた真面目ねぇ、気にしなくていいのに」
ジン「そう言う訳にはいかん、作らせてもらう以上、君たちの身に何かあったら大変だからな」
チェル「ジンってなんか面倒見の良いパパみたいだよね」
ノエル「俺もそう思った」
フローナ「ジン君って優しいし気が効くよね!」
ラナ「ほんとね」
ジン「そんな事はないと思うが・・・」
チェル「でも聞いてくれて助かったかも
俺ネギだめなんだ」
フローナ「ネギ嫌いなんだ?」
ラナ「へぇ意外、嫌いな食べ物とか無さそうなのに」
チェル「味がダメなわけじゃないんだけど昔ネギ食べて倒れた事あってさ
なんか体質に合わないみたいなんだよね」
ラナ「それはやばいわね
あ、私は何でも大丈夫よ」
ノエル「あー、俺トマトは苦手かな」
ジン「ふんふん、なるほど、フローナは?」
フローナ「色々あって悪いからみんなに合わせて食べるよ」
ジン「いや、全部教えてくれ」
フローナ「えー、でも」
とか言いつつフローナは全部ジンに話した。
その多さに呆れることなくジンは"ふんふん"と頷きながらメモを取っていた。
みんなで買い出しに行くことになった。
街ゆく人はジンを見てざわざわしている。
ジン「すまない、俺がいるせいで」
チェル「俺も昔同じ経験あるよ、でも今は皆んながいるから大丈夫なんだ」
ジン「良い仲間に出会えたんだな」
チェル「ジンだってもう俺たちの仲間だよ?」
ジン「仲間、か」
ジンはフッと笑う。
ジン"まさか本当に仲間だと言ってくれる人に出会えるなんて思ってなかった
セノ、あなたは見ていてくれているだろうか"
ジンは空を見上げた。
チェル「ジン?どうしたの?」
ジン「いや、太陽の光が目に染みただけさ」
その日の夜。
チェル「うわぁうまそー!!」
ジンが最初に作ったのはハンバーグだ。
ラナ「ジン、あんたやるわね!」
フローナ「美味しそー!」
ノエル「早く食べよーぜ!」
みんな「いただきまーす!!」
チェル「んー!うまー!!」
ノエル「うんうん、これめちゃうまいよ」
ラナ「ジン、あんた凄いわ」
フローナ「ジン君は天才だね!」
ジン「そ、そんな事は・・・」
ラナ「あ、ジンが照れてるわ」
フローナ「可愛い」
ジン「コホン、俺も食べる」
ジン"こんなに温かい食事は久しぶりだ"
第6話 温泉
旅の途中、温泉宿を見かけた一同。
普段は水を浴びるだけなどなかなかお風呂に入る機会がなかった為、ここでまったりしようと言う話になった。
フローナ「わぁめちゃ素敵な旅館〜」
ラナ「ほんとね!」
チェル「風呂入りたい〜!」
ノエル「俺も!いこいこー!」
フローナ「私も入りたい」
ラナ「私も久しぶりにお風呂入りたいわ」
ラナはチェルとノエルが先に入っていくのを確認するとジンに話しかけた。
ラナ「ジン、ちょっとちょっと」
ラナはジンを小声で呼びながら小さく手招きした。
ジン「?どうした?」
ジンは少しかがみながら同じように小声で話す。
ラナ「あの2人、特にノエルが女風呂覗かないように見張っててよね」
ジン「あ、あぁ、分かった」
風呂場にて。
ノエル「ジンって意外と細いんだな」
ジン「そうか?」
チェル「ジンは着痩せするタイプだよね」
ジン「あまり見ないでくれ、恥ずかしいだろう」
ノエル「男同士なんだからそうケチケチすんなって」
ジン「そう言う問題じゃない」
ラナ「ん〜いいお湯ー!」
フローナ「気持ちいいね!」
ラナとフローナの声を聞いた瞬間、ノエルの耳がピクピクと反応をする。
ジン「ノエル?どうした?」
ノエル「おい、女湯見にいくぞ」
チェル「よしきた!」
2人はグーサインを出し合う。
ジン「お、おい、よせ」
ラナの予感的中。
ジン"さすがラナだな。この二人の思考をよく理解している"
ノエル「何言ってんだ女湯は男のロマンだぞ」
ジン「覗きは犯罪だぞ!」
ノエル「ふーん、じゃあ犯罪にならなかったら良いのか?」
ジン「え・・・いや、だからそう言う事じゃなくてだな
そもそも合意なく女性の」
チェル「真面目か!」
ノエル「いや、ほら、ジンはムッツリスケベだから」
ジン「否定はしないが・・・」
ノエル「しないんかい」
チェル「あはは笑」
フローナ「良いなぁラナちゃんは胸が大きくて」
フローナはお湯をぶくぶくとしながらラナの胸を見ていた。
ラナ「揉むと大きくなるらしいわよ」
フローナ「きゃあ!?ちょっとラナちゃんくすぐったいよー!」
今度はジンの耳がピクリと反応する。
ラナ「わ、フローナウエストほっそーい、羨ましい〜!両手で掴みきれそう〜!」
フローナ「ラナちゃんだってほそいじゃ・・・あ」
その瞬間、フローナは覗いてた2人と目が合った。
ノエル&チェル「「あ」」
ラナ「あんた達ー!」
ラナは桶とシャンプーを2人目掛けて投げた。
ノエル「チェル退散だ!」
チェル「お、おう!」
2人は急いで体を引っ込めた為、桶とシャンプーは頭上を掠めただけで済んだ。
ラナ「もう!ジンは何してるのよ
見張っててって頼んだのに!」
フローナ「あはは」
フローナは覗かれたことを特に気に留める様子もなくケラケラと笑っている。
ノエル「ふう、チェルちょっとしか見れなくて残念だったな・・・ってジンが溺れてるー!」
その頃、ジンは風呂で盛大にのぼせていた。
チェル「大丈夫かジン!」
ノエル「純情だなー」
ラナ「もう!」
フローナ「ジン君大丈夫かな」
ラナ「フローナは呑気ねぇ」
男性陣の部屋。
ジン「う・・・」
目が覚めると布団の中にいた。
チェル「大丈夫かジン」
ジン「あ、ああ」
チェル「まさかジンがのぼせるとはなー」
ノエル「ジンも男だからな」
ジン「面目ない・・・」
ノエル「気にすんな!お、そうだ、ラナちゃんとフローナちゃん、後で浴衣に着替えて蛍見に行くって言ってたぞ」
ジン「そうなのか、そう言えば俺も浴衣」
ノエル「あぁ、俺が体拭いて着替えさせた、素っ裸で運ぶ訳にはいかなかったからな」
ジン「それは・・・すまなかった」
チェル「具合はどう?」
ジン「あぁ、もうへーきだ」
ノエル「じゃあ俺らも行こうか」
ジン「ああ」
浴衣に着替え、女性陣と合流。
ジン「・・・」
ジン"フローナの浴衣姿前にもどこかで見たことがあるような気がする"
フローナ「ジン君大丈夫?」
ジン「あ、ああ」
ジン"気のせいか・・・?"
ノエル「ラナちゃんフローナちゃん浴衣姿可愛い〜」
チェル「うん!すっごい可愛い!なあジン」
ジン「あぁ」
ラナ「そう?」
フローナ「ありがとうー!3人も浴衣姿かっこいいね!」
ノエル「そうかな?」
ノエルはキメ顔で眉を動かしながら人差し指と親指を顎に当てて言う。
ラナ「なにキメ顔してんのよ」
ノエル「キリッ」
ノエルはその表情のまま今度はラナの方を向く。
ラナ「はいはい」
段々とノエルのあしらい方が上手くなるラナであった。
蛍が見える場所まで移動する。
フローナ「わぁ!蛍綺麗ー!!」
ラナ「ほんと!凄いわね!」
チェル「すっげー!」
ノエル「こんなに沢山の蛍見たの初めてだ」
ジン「俺もだ」
歩いてる途中フローナが足を滑らせた。
フローナ「わぁ!」
ジン「っと‼︎大丈夫か?」
ジンは転びそうになるフローナを咄嗟に抱き寄せた。
フローナ「うん、ごめん、ありがと」
フローナ"あれ、なんだろ、この感じ、前にもどこかで・・・"
ラナ「フローナ、大丈夫?」
ラナの声にジンとフローナはパッと離れた。
フローナ「うん!大丈夫!」
フローナ"なんだか顔熱い、暗くて助かったな
ジン君は何とも思ってないよねきっと"
ジン「・・・」(平静を装っていはいるが無茶苦茶意識している)
二人の距離が縮まっていることに誰も気付いていなかった。
第7話 トーナメント
東の街、C地点。
司会者「さぁ始まりました!トーナメント戦!
今回の優勝したチームにはななななんと!ちょー特大!キャンピングカーをプレゼントしちゃいます!」
チェル「ちょー特大キャンピングカー!?」
ノエル「いいなキャンピングカー」
ジン「あれば便利そうだな」
ラナ「確かにいいわね、でも、そしたらノエルの車はどうするのよ?」
フローナ「そうだよね、あんなに良い車なのに」
ノエル「え、売って金にする」
ラナ「即答ね」
ノエル「だって俺別に車に興味ないし家から盗んだモンだから愛着もないし」
ラナ「なんてゆーか、あんたのそうゆうとこほんと尊敬するわ」
ノエル「うん??」
てなわけで出場する事に。
司会者「くじ引きで対戦相手を決めます!」
司会者がくじを引いてゆく。
司会者「最初の試合はドードン選手VSフローナ選手!」
ガタイが良く背も2m近くある。筋肉隆々でザ、パワー系と言った感じだ。
ラナ「ちょっといくらなんでもあんなヤバそうな奴とフローナが戦うの!?」
ノエル「さすがにあれは不味いんじゃないか?」
ジン「と言うかフローナって戦えるのか?」
全員チラッとフローナを見る。
フローナ「?」
フローナは首を傾げた。
ラナはフローナの肩をガシッと掴んだ。
ラナ「フローナ!だめだめ!棄権しなさい!戦いはこいつらに任せればいいんだから!」
ノエル「そうだよ!あんなのと戦ったら殺されるよ!」
フローナ「えー大丈夫だよ、てゆうか戦いたい!」
次に言いかけたラナの言葉をチェルが止めた。
チェル「フローナがやりたいって言ってるんだ
行かせてあげようよ」
フローナ「ヤバくなったら棄権するから!ね?」
フローナは両手を合わせて片目をつむり、お願いのポーズをする。
ラナ「もー分かったわよ、でも!ほんっとに無茶したらダメだからね?」
フローナ「うん!」
フローナはリングに向かって歩き出す。
ジン「チェル、いいのか?あのドードンって奴かなりやばいぞ」
ノエル「あぁ、俺も名前聞いた事あるわ
相当な人数を惨殺してきた男だ
相手は老若男女区別しない、ただ血を見るのが好きな奴だ」
ラナ「ちょっとそんなヤバい奴なんて聞いてないわよ!」
チェル「いざとなったらルール無視して割り込めばいいよ
それまでは見守ろう」
フローナはリングに上がった。
ドードン「おいおい、こんなちっこい女相手かよ
こりゃ楽勝だな!」
ドードンのチームの奴らもフローナを見てケラケラ笑っている。
しかしその笑いは一瞬で消える事になる。
司会者「よーい!始め!」
ドードンはフローナ目掛けて走り出した。
フローナはピクリとも動く様子はない。
司会者「おーっとドードン選手!フローナ選手に向かって一直線だー!フローナ選手その気迫に負けて身動きすらできないかー?」
チェル「・・・」
ジンは刀を抜く姿勢にノエルは銃を構える姿勢になった。
ラナは指を組みぎゅっと目を瞑った。
司会者「おーっとフローナ選手!ドードン選手の拳を間一髪で避け、その腕をジャンプ台代わりにして飛んだ〜!そして!強烈なかかと落としだー!恐るべし戦闘センスです!!」
その場にいたみんなの目が点になる。
ドードンのチーム「シーン」
ドードン「・・・」
ドードンは完全に気を失っている。
司会者「フローナ選手の勝利です!
その小さく華奢な体には物凄いパワーが秘められている模様です!」
フローナ「やったぁー!勝った勝った〜!」
フローナはピョンピョン跳ねて喜んでいる。
ノエル「す、すげぇ・・・」
チェル「みんな、フローナを怒らせないようにしよう」
ラナ「そ、そうね」
ジン「あの体のどこにあんな力が・・・」
ラナvsザク
ラナ同様、足技に特化したザク。
途中押されるも足技でラナが勝つ。
ジンvsシャーク
鞭使いシャーク。
ジンは鞭の攻撃を刀で軌道修正させながら一気に懐に飛び込み、一瞬にしてシャークを倒した。
ノエルvsダマ
ダマもノエルと同じガンマン。
相手が銃を抜き終わる前にノエルが銃を撃ち、圧勝した。
チェルvsポズン
身軽さと攻撃力の高さでチェルが勝った。
5人は5勝0敗で勝利し、あっという間に巨大キャンピングカーをゲットしたのであった。
第8話 買い物
11月。
次第に空気が冷え、冬が近付いてきた頃。
ラナ「ちょっと待って、チェルあんたその格好で次の街行くつもり?上着は?」
チェル「ん?無いよ上着なんて」
ラナ「旅に出る時何で持って来なかったのよ
旅は春夏だけじゃないでしょーが」
チェル「あ、そっか」
ラナ「もう・・・次の街行く前に買いに行くわよ、次のとこ他の街より寒いみたいだし」
チェル「うん」
ノエル「ジン、お前も上着持ってないだろ?」
ジン「あぁ、俺はいつもこの格好だ」
ノエルはガシッとジンの肩を掴んだ。
ノエル「君も買いなさい、買ったげるから」(歳下)
東の地T地点。
服を調達することになった。
フローナ「チェルこれとかどう?」
ラナ「あらいいわね」
チェル「そう?じゃあこれにしようかな
フローナはセンス良いからこう言う時助かるよ」
フローナ「そ、そうかなぁ、へへへ」
ラナ「私もフローナのコーディネート好きよ」
フローナ「ありがとう」
ノエル「ジンは羽織りか」
ジン「ああ」
ノエル「これ暖かそうだな」
ジン「ああ」
ノエル「ジンは好きな色とか柄とかあるか?」
ジン「特には・・・そう言う視点で衣服を見た事がないからな」
ノエル「まー俺の見立てで良ければ俺が選ぶけどさ」
ジン「そうしてもらえると助かる」
ノエル「羽織りはこれにして、あとマフラーも買おう」
ジン「マフラーも買うのか?」
ノエル「羽織りだけじゃ風邪引いちまうだろ」
ジン「・・・」
ジンはじっとノエルを見た。
ノエル「ドキッ、どした?」
ジン「あぁ、いや、俺に母親がいたらこんな感じなのかと思って」
ノエル「何だよそれ、俺男だぞ(笑)」
ジン「いや、何となく、気を悪くさせたならすまない」
ノエル「いや、そんな事ないよ、ちょっち照れたけど」
ノエルは頭をかいた。
ジン「そうか、なら良かった」
ノエル"そういやジンは母親の事何も知らないんだもんな・・・
つーか、俺も母親とほとんど話した事ないけど"
ノエル「あ、これジンに合いそうだな、和服に合うし」
ジン「ならそれにする」
ノエル「おいおい、そんな簡単に決めちまって良いのか?」
ジン「あぁ、それが良いんだ」
ノエル"くっ、なんだよ素直で可愛いな!"
ジンの買い物が終わった後。
ラナ「あんた、なーにジン見てへらへらしてんのよ」
ノエル「いや、ジンの奴、素直で可愛いなと思ってさ」
ノエルは頭を掻く。
ラナ「側から見たらイチャイチャしてるカップルみたいだったわよ」
ノエル「あれ、ラナちゃんちょっちヤキモチ?」
ラナ「違うわよ!」
ノエル「嘘嘘!分かってるって!それより、ラナちゃんとフローナちゃんの服も見ようよ」
ラナ「そうね、私も見ようかしら」
フローナ「私も見たいー!」
フローナとラナも新しい服を買う事にした。
ラナ「フローナ、その服大きくない?」
フローナ「うん、でも手が半分隠れるくらいがちょうどいいんだ」
ラナ「なるほど、萌え袖ってやつね」(ニヤニヤ)
ノエル「女の子の萌え袖可愛いよなー」
フローナ「?いや、殴る時にクッションになるから」(けろっ)
ラナ「え、じゃあまさかバンテージ代わりに長めの服を・・・?」
フローナ「そうだよ?」(サラりと)
一同"こわ!!"
しばらくしてフローナとラナはいくつか服を試着することに。
試着し終えた二人はお披露目をする。
フローナ「わ!ラナちゃん可愛い〜!」
ラナ「ありがと、フローナもとっても似合ってるわよ!」
フローナ「えへへ、ありがとー♪」
ノエル「おー!可愛いじゃん!!」
チェル「うんうん!二人ともすっごく似合ってるよ!」
ノエル「ジンはどう思う?」
ジン「確かに可愛いが二人とも丈がちと短くないか?」
フローナ「はっ!ごめん、ラナちゃんならいざ知らず私のミニスカート姿なんてみすぼらしかったよね」
ジン「いや、そういうわけではないが・・・」
チェル「まぁつい見ちゃうよね〜」
ラナ「別に見ても怒ったりしないわよ笑」
ノエル「俺は二人の太もも拝めるから嬉しいけどねぇ」
ジン「俺的には膝下10cm以上が希望だな
変な虫が寄り付かないように」(真顔)
ラナ「膝下10cmって笑」
ノエル「お前はこの2人の父ちゃんかよ」
チェル「なんかジン、昔のおじさんみたいだね」
ジン「ガ〜ん・・・そ、そうか?」(ちょっとショック)
チェル「けど確かに2人は短いの多いよね」
フローナ「だって蹴りやすいんだもん」
ラナ「そうそう、長いと足に引っかかって蹴りにくいのよねぇ」
ノエル「君達、ファッションを蹴りやすいとか殴りやすいとかで決めるのよしなさいよ」(呆れ顔)
ラナ「あら、じゃあノエルは私達が戦いにくくて敵にやられるのと
戦いやすい服で勝つのどっちがいいのよ?」
ノエル「・・・」
ノエルはラナとフローナがミニスカートで闘う所や長いスカートで闘いずらくやられるシーンを想像していた。
ノエル「く・・・ゲスめ!」
ラナ「あんた今絶対変な想像したでしょ!」
ノエル「し、してないよ」(目が明後日の方向)
ジン「許せん・・・」
ジンもあれやこれや想像していた。
フローナ「ジン君顔赤いよ」
チェル「ははーん、さては君もエッチな想像しましたね?」
ラナ「ジンって結構ムッツリよね」
ジン「否定はしない」
ラナ「しなさいよ笑」
ノエル「はは、ジンはほんと素直だなぁ笑」
その後。
フローナ「あ!メイド服もあるー!」
ラナ「あら、ほんとね、フローナ着てみたいの?」
フローナ「うん」
フローナは目をキラキラさせている。
ラナ「じゃあ待ってるから着替えておいで?」
ノエル「え!!ラナちゃんも着てよ!」
ラナ「私はいいわよ・・・」
ノエル「一生のお願い!!」
ノエルは手を合わせて頭を下げている。
ラナ「ノエル、あんたそんな事で一生のお願い使っていいの・・・?」
フローナ「ラナちゃーん!一緒に着ようよ〜!」
ラナ「もー、しょうがないわねぇ」
ノエル"フローナちゃんナイス!ありがとう!!"(心の叫び)
二人は再び試着室へ入っていく。
ノエル「なぁチェル、ジン!メイド服っていいよなぁ
ご主人様ーとか言われたいわ俺」
チェル「あー、確かに男として一回くらいは言われてみたいかも」
ジン「ノエル、悪いが俺にはそう言う趣味はな・・・」
その時シャッとカーテンが開く。
フローナ「ど、どーかな?」
ジン「・・・」
チェル「二人ともめちゃ似合ってるよ!!」
ノエル「おー!ラナちゃんフローナちゃん可愛い〜!
チラッ、でも残念だなぁ、ジンの奴こう言う格好は全然興味な・・むぐ」
ジンがノエルの口をペシっと塞ぐと前に出た。
ジン「いや、二人とも可愛いし良く似合ってる」
キリッとした表情でジンは言う。
フローナ「そ、そうかな?えへへありがとう」
ラナ「ジンに言われるとなんだか照れるわね」
ノエル「ラナちゃん、俺に対する態度と違くない?」
ラナ「あら、そうかしら?」
ラナは腰に手を当て聞き返す。
ノエル「ねぇ、ラナちゃん、その格好でお帰りなさいませご主人様〜!って言ってくれない?」
ラナ「言いません」
ノエル「つれないな〜」
チェル「ねーねーノエル」(こそっ)
ノエル「ん?・・・よし、フローナちゃーん!」
ノエルはチェルに耳打ちされた後、フローナの名前を呼んだ。
フローナ「なぁにー?」
ノエル「お帰りなさいませご主人様〜ってジンに向かって言ってみてくれない?」
フローナ「うん、分かった、お帰りなさいませご主人様」
ジン「ぐっ・・・」
ジンはニヤケそうなのを手で必死に押さえている。
フローナ「?」
フローナは首を傾げた。
ノエル「ニヤニヤ」
チェル「ニヤニヤ」
ラナ「あんた達ねぇ、ジンとフローナで遊ぶんじゃないわよ」
フローナ「ラナちゃんもやってよー」
ラナ「えー、嫌よ」
フローナ「えーラナちゃんの見たい〜!」
チェル「見たい見たいー!」
ラナ「・・・まぁ、あんた達がそこまで言うなら」
ノエル"フローナちゃん、チェル、ナイス!ラナちゃんはこの二人には甘いからなぁ"
キラキラした眼差しで言われたラナは渋々言った。
目を逸らしつつもなんとか言えたようだ。
ラナ「お、お帰りなさいませご主人様・・・」
ノエル「え、天使?」
ラナ「もう!何バカな事言ってんのよ!」
ノエル「でもまぁ、俺は使用人が欲しいと言うよりラナちゃんとフローナちゃんの使用人になりたいけどね」
ラナ「真顔で何言ってんのあんた・・・でも確かにノエルって使用人っていうか下僕っぽいわよね、下僕体質ってゆーか」
ノエル「ん?フッ、そうさ、俺は君達の下僕なのさ」(キラーン)
フローナ"ノエル君、何でそんな嬉しそーなの?"(ちょっと呆れてる)
ラナ「その点、ジンは執事っぽいわよね」
ジン「そ、そうか?」
フローナ「あー確かに!ジン君ってスーツ似合いそう!」
ノエル「じゃー俺も二人の執事になるー!」
ノエルは両腕を上げて万歳をする。
ラナ「あんたは下僕だって言ってんでしょ」
ノエル「似たようなもんじゃん!」
ラナ「全然違うわよ・・・」(呆れ顔)
チェル「じゃあ俺は俺はー?」
ラナ「チェルは・・・犬ね」
チェル「わん??」
着替え終わった後。
こそっとノエルはフローナに話しかけた。
ノエル「フローナちゃん、さっきはありがと」
フローナはニッと笑ってノエルにグーサインをするのだった。
第9話 捕らわれた男性陣
過去を引き出す呪縛に完全に弱ってしまった男性陣は双子のキイラとアイラに捕まり。拘束されてしまった。
フローナとラナは何とか居場所を突き止め、仲間が捕まっている場所へと乗り込んだ。
キイラ「うふふ、これからじっくりと痛ぶってあげるわ」
キイラとアイラが三人に近付こうとしたその時。
ギイィー!
勢いよく扉が開いた。
ラナ&フローナ「待ちなさい!」
アイラ「誰!?」
ラナ「私らの仲間に手出しはさせないわよ!」
フローナ「そーよそーよ!」
戦いがスタートするも三人を捕らえただけのことはある。
かなり腕が立つようだ。
アイラ「ふっ、口ほどにもないわね、私にこんなあっさり捕まっちゃうなんて」
フローナ「ぐっ!」
フローナはアイラに捕まり、首を絞められて気絶しかけていた。
フローナ「・・・」
ラナ「フローナ!」
キイラ「ほらほら、他人の心配してる場合じゃないわよ」
ラナもキイラに押されて身動きが取れない。
ラナ「クッ・・・」
アイラ「ちょっと過去を引き出しただけで情け無いわね、
しょーもない男達」
意識が無くなりかけたフローナだったがその言葉を聞き怒りで無理矢理体に力を入れ、アイラの手首をグッと掴んだ。
アイラ「な!?」
フローナ「ケホッ・・ふざけないで・・・
誰だって弱いところくらいあるんだから」
キイラ「アイラ!」
ラナ「せや!」
キイラ「ぐっ・・・ちっ!」
一瞬でラナに押されたキイラは一旦後ろに飛んだ。
ラナとフローナは2人を跳ね除けた後。
ガッと2人は背中越しに構えた。
ラナ「フローナ!絶対勝つわよ」
フローナ「うん!!」
こうしてラナとフローナはキイラとアイラを倒し、無事3人を救出した。
チェル、ノエル、ジンはしばらく呪縛の後遺症なのか、しょぼくれていたが、ラナに喝を入れられた事と、フローナの優しい言葉かけに元の明るさを取り戻していった。
三人はしばらくラナとフローナに頭が上がらなかった。
第10話 風邪
ノエルは朝ごはんの準備をしているジンの様子を見に行来た。
だがジンは机に寄りかかるように立っていた。
ノエル「ジーン♪うわっどした!?」
ジン「いや、少しふらついただけだ」
ノエル「顔色真っ青じゃん、後は俺がなんとかしとくから部屋で休んだ方がいいよ」
ジン「すまない」
ノエル「何言ってんだ、いつも任せっきりなんだ
こんな時くらい頼ってくれよ」
ジン「ノエル、本当にすまない・・・」
ジンはふらついたままノエルにもたれかかった。
ノエル「おい!ジン!!」
ノエルはジンのおでこに手を当てた。ジンは苦しそうにしている。
ノエル「すげー熱」
ノエルはなんとか部屋にジンを運んだ。
ジン「すまない」
ラナ「何言ってるの誰だって体調崩す時くらいあるわよ
じゃあ私は買い出し行って来るわ」
ノエル「俺も行くよ」
チェル「俺も!」
ラナ「フローナ、ジンの様子見ててくれる?」
フローナ「うん」
ジンとフローナは車に2人きりだった。
しかし、途中車に乗り込んで来た連中がいた。
フローナは看病する準備をしていた所へジンがふらつきながら出て来た。
フローナ「ジン君?だめだよ寝てないと!」
ジンは高熱を出しているにも関わらず人の気配を察していた。
ジン「フローナ、逃げろ」
フローナ「え?」
男1「おい、ジンいるじゃん!」
男2「しかも弱ってるみたいだし今なら楽に勝てそうだな」
振り向くと数人の男達がいた。
フローナ"この人達、ジン君を狙ってるんだ"
チラッ。
フローナ"全部で7人"
ジン「フローナ、早く・・う・・」
フローナ「ジン君、大丈夫よ」
フローナはジンを座らせると自分の上着をジンにかけた。
男1「ひゅー!優しいー!」
男2「ジン片付けてさらにこーんな可愛い子もゲットできるなんて俺たちラッキーだな」
男1「だな、へっへっへ」
フローナ「・・・」
その頃、3人は急いで車の方へ向かっていた。
ラナ「確かなの!?」
ノエル「ああ、街の人がジンの命狙ってる奴がいるって言ってるのを聞いた」
チェル「車の方に向かってたあの連中だとしたら2人がやばい!」
ラナ「フローナ!ジン!」
三人が到着するとフローナはジンを抱き抱えていた。
ノエル「フローナちゃん、だいじょ・・・うわ!何だこりゃ」
床には男達が7人倒れていた。
チェル「ふろ・・・」
フローナはくるっと皆んなの方を向いた。
フローナ「あ、みんなお帰り」
チェル「た、ただいま」
フローナ「あーそうだ、ジン君部屋に運ぶから
そこのゴミ(男達)片付けといてくれる?」
フローナはニコッと笑った。
ラナ・ノエル・チェル「は、はい」
一同"恐ろしい子‼︎"
1週間後。
朝。
フローナ「くしゅん!」
フローナ"何か今日肌寒いな"
フローナは両腕をさすった。
ジンはその小さな異変を見落とさなかった。
ジン「・・・」
昼。
フローナは部屋の掃除をしていた。掃除は交代制だ。
フローナ「ふー」
ジン「フローナ」
フローナ「あ、ジン君!どうしたの?」
ジン「掃除変わる」
フローナ「え、でも今日は私の当番だし・・・」
ジン「あまり無理しない方がいい」
フローナ「え?う、うん、ありがとう?」
女子部屋。
ラナ「あれ、フローナどうしたの?」
フローナ「ジン君が掃除変わるって
今日は私の当番だからって言ったんだけど
無理しない方がって言ってくれたの」(しょぼーん)
ラナ「そう言えばちょっと顔色悪い気がするわね・・・
具合は平気?」
フローナ「うん、今のところは」
ラナ「今日はジンに甘えちゃえばいいんじゃない?」
フローナ「うん」(しゅーん)
ラナ"なんか可愛いな"
ラナはフローナの頭を撫でた。
ラナ「よしよし」
フローナ「ありがと・・・」
夜。
フローナ"なんかあんま食欲ないな
あれ、そう言えばなんかちょっと頭痛いかも"
チェル「わぁ今日は鍋か!いいね!!」
フローナ"ほっ、良かった、鍋なら食べれそう
あれ、ひょっとしてジン君・・・"
ラナ「フローナあんま食べてないじゃない」
チェル「どっか具合悪い?」
ノエル「大丈夫か?」
フローナ「ん、なんか食欲なくて」
ラナ「ちょっといい?」
ラナはフローナのおでこに手を当てた。
ラナ「熱いわね、やっぱり風邪引いたのよ、食べたら今日はもう休んだ方が良いわよ?」
フローナ「うん、ありがとう」
部屋へと歩く途中足元がふらついた。
そこへちょうどジンがキッチンから戻って来た。
ジン「っと!大丈夫か?」
ジンは腕でフローナを支えた。
フローナ「う、うん、ごめん、ありがとう」
ジン「部屋まで送るよ」
フローナ「ありがとう」
フローナを部屋へ送るとガチャンと扉を閉めた。
食事をしているみんなの元へ戻ると
席に着くや否や両肘を付いて座っているラナが話しかけてきた。
ラナ「で?ジンはいつからフローナが体調悪いって気付いてたの?」
ジン「朝、何度かくしゃみしていたし寒そうにしていたからな
それに俺が熱を出した直後だったからもしかしてと思ってな
掃除の時もいつもならやる気満々なのに疲れてる感じだったし」
ラナ「ほんとジンの観察力は凄いわね」
ノエル「それで鍋にしたのか」
チェル「俺、ジンには一生勝てる気がしない」
ノエル「俺もー」
ジン「いや、俺はフローナに風邪を移したかもしれないんだ、申し訳ない事をした」
ラナ「同じ車で生活してるんだもの、移ったって仕方ないわよ」
ノエル「そうそう、それにジンの風邪って決まった訳じゃないんだしさ!」
チェル「フローナなら大丈夫だよ」
ジン「あ、ああ」
次の日の朝。
ジンはフローナが休んでいる部屋に食事を運んだ。
フローナ「ありがとうジン君」
ジン「フローナ、すまない、俺が風邪を引いたから君まで・・・」
フローナ「ジン君のせいじゃないよ、症状だって全然違うし、熱もそんな高くないし」
ジン「しかし・・・」
フローナ「たまたま時期が重なっちゃっただけだよ、ね?」
ジン「ああ、ありがとう、そう言ってもらえると助かる」
ジン"フローナは優しいな"
第11話 サラ
東の町M地点。ブラックエミリア(街の名前)。
山間部に位置しており、周辺はオウシュウトウヒの木に囲まれている。
魔女狩りが今も行われている場所。
フローナの熱がなかなか下がらなかった為、チェル達は風邪を引いたフローナを救うべく医者を探そうとした。
森の中に迷い込んでしまっているところに1人の女性と出会った。
サラ16歳。
長いウェーブ掛かった黒髪に黒いマント姿。いかにも魔女っぽい格好の女性だ。
チェル「ありがとう!君優しいんだね!」
サラ「どう致しまして」
サラが調合した薬を飲んでしばらくすると楽になった。
フローナ「ん・・・」
フローナはゆっくりと目を開けた。
ノエル「フローナちゃん、具合どう?」
フローナ「うん、だいぶ良くなった」
チェル「この人が助けてくれたんだ、えと名前は」
サラ「サラです」
フローナ「ありがとう」
サラ「いいえ、それよりもあなた達、早くこの森を出た方が良いわ」
チェル「え?どうして?」
サラ「この森は呪われていますから」
皆んなと離れてから数時間後。
サラは魔女狩りに捕まってしまい、十字架に張り付けにされていた。
ちょうど執行人が火をつけようとしている最中だった。
サラ"私、ここで終わるのね
でも最後にあの子達に会えて良かったわ"
サラはみんなの笑顔を浮かべながら微笑んだ。
「「ちょっと待ったー‼︎」」
様子を伺っていた5人が草むらから飛び出す。
サラ「!?あなた達はさっきの」
番人「誰だお前達は!?」
ノエル「チッチ、女性を張り付けにするなんていただけないな」
チェル「俺らの恩人になんて事するんだ!」
とチェルは番人を指を指す。
ラナ「許せないわ!」
フローナ「お仕置きしなくちゃね!」
ジン「全くだ」
村人「邪魔をする者を始末しろー!」
5人はその場にいた番人達をあっという間に全員倒した。
サラ「凄い・・・あれだけの人数をたった5人で」
フローナとラナが張り付けにされてる紐を解いた。
だが開口一番サラは。
サラ「早く逃げて下さい
私を庇えばあなた達まで命を狙われる事になるわ
追っ手が気付かないうちに早く」
チェル「やだ!」
そう言うとチェルはサラを負ぶった。
サラ「!?え、ちょっと!」
ノエル「逃げるなら君も連れてくさ」
フローナ「当然だよ!」
ラナ「ここまで来てあなたを置き去りになんてできる訳ないでしょう?」
ジン「一緒に逃げよう」
サラ「あなた達・・・」
走りながらチェルは背中に乗ってるサラに話しかけた。
チェル「と言う訳でサラは今日から俺らの仲間な」
チェルはご満悦と言った表情だ。
ラナ「始まった」
ノエル「サラちゃん、こいつがこれ言い出したら何言っても聞かないぜ」
ジン「諦めた方がいいな」
ラナ「苦労するわよこれから」
サラ「こんな状況なのに気が抜けるわ・・・」
フローナ「あはは」
チェルはニカッと笑う。
サラ"こんな暖かい場所は初めてだわ"
夜。
サラの仲間になった記念パーティーをすることになった。
チェル「見てみて〜!」
チェルはほっぺに赤いペンでおかめみたく赤い丸を書いて見せた。
ラナ「ちょっと何やってるの、取れなくなったらどうするのよ」
チェル「だーいじょぶだってこれ水生だし!」
フローナ「わぁオカメインコみたいで可愛い〜!私もやるー!」
ラナ「ちょっとよしなさいよもう〜!」
そこへジンが近付いてきた。
ジン「!」
ジンはフローナを見るや否やペンを手に取って自分のほっぺに落書きしようとしているその手をガシッと掴んだ。
フローナ「ドキッ、へ!?ジン君?」
ジンは慌てた様子で言った。
ジン「これ、油性だぞ」
チェル「え!?」
フローナ「え、うそぉ!?ほんとだー!油性って書いてある!」
ラナ「危なかったわねーフローナ!」
ノエル「被害がチェルだけで良かったな」
チェル「フローナごめん!良かったフローナが書く前にジンが止めてくれて」
フローナ「チェルってばびっくりしたよもー!」
チェル「ごめんー・・・てゆーかどうしようジン!」
ジン「クッ、ははは、すまない、いや、しかし・・・ははは」
チェル「ジンが・・・笑ってる」
ラナ「ほんと」
フローナ「笑ったジン君可愛い」
ノエル「こんなに笑ったジン初めてだな」
サラ「クスッ」
チェルは笑っているジンを見ると嬉しそうにニカッと笑った。
ジン「チェル、ちょっと待っててくれ」
チェル「?うん」
ジンは消毒液を持って来た。
ラナ「ジン消毒液まで買ってたの?」
ジン「あぁ、料理する上で衛生面はきちんとしないといけないからな」
フローナ「ジン君てほんとに凄いな」
ノエル「感心するよな」
ジン「チェル、手にも使えるやつだから大丈夫だとは思うが拭いた後すぐに洗顔した方が良い」
チェル「お、おう、ありがとジン」
ジン「フローナ、ラナ、コットンか何かあるか?あと化粧水」
フローナ「うん、あるよ!取ってくる」
チェル「大丈夫だよ俺男だし消毒だけで」
ジン「ダメだ、消毒で擦らなきゃいけないんだ、少しでもカバーした方がいい」
ラナ「ジンってほんと優しいわよね」
ノエル「俺たまに惚れそうになる」
フローナ「はい」
ジン「ありがとう、チェルじっとしてて」
チェル「うん」
ジンはコットンに消毒液を含ませて優しく拭いた。
チェル「ん」
ジン「痛いか?」
チェル「だいじょーぶ」
ジン「よし、あとは顔洗って借りた化粧水つけて」
チェル「ありがと」
ラナ「サラ、あなたこれから大変よ?こいつらの面倒見なきゃいけないんだから」
サラ「ふふふ」
サラは嬉しそうに笑うのだった。
第12話 クイズ大会
とある街のクイズ大会に参加した時のこと。
司会者「はい、ではこの問題分かる人!1×1はー!」
ラナ「何よ簡単じゃない、身構えて損したわ」
フローナ「うん、私も分かる」
サラ「私も分かりますわ」
チェル「楽勝だな」
ジン「なぁ、ノエル」
ノエル「うん?」
ジン「あのバツ印は一体何なんだ?」(めちゃくちゃ真剣)
一同「え?」
ノエル「・・・いや、ジン、あのな、あれはバツ印じゃないんだ
掛け算って言ってな」
司会者「はい!それでは答えを書いて下さいー!」
ノエル「後でちゃんと説明するわ・・・」
ジン「なんかすまん・・・」
司会者「さて、お次はー!」
そこには訳の分からない数式がズラリと並んでいる。
ラナ「ちょっと!いきなり難易度飛び過ぎでしょ!」
フローナ「これは無理」
サラ「私も分かりませんわ」
チェル「俺もお手上げだ」
ジン「・・・」(もはや異次元)
ラナ「こんなの天才しか解けないわよ、ねぇノエル、ノエル?」
ノエルは数秒黙ったまま顎に手を置いて考えると紙に数式を書き始めた。
ラナ「え、嘘・・・」
司会者「はい、では答えを書いて下さいー!」
各チームが脱落する中、ノエルはボードに答えを書きに行ったた。
一瞬の沈黙が流れ・・・。
司会者「せ、正解でーす!!」
「「おおー!!」」
会場から歓喜の声が上がった。
ノエルが戻ってくると。
チェル「ノエルやるー!」
ラナ「し、信じらんない、あのアホアホノエルが・・・」
フローナ「ノエル君、真面目な人だとは思ってたけどここまで勉強できるなんて・・・」
サラ「凄いですわノエルさん」
ジンは完全に固まっている。
ノエル「いやー、まさか正解できるとはな!はははラッキーだったよ」
ラナ「あんた、意外と天才肌だったのね・・・」
ノエル「あ、ひょっとして惚れた?」
ノエルはウインクしてみせた。
ラナ「そうねー黙ってれば惚れたかもねー」(超棒読み)
ノエル「ぶーぶー」
ラナ「でも、ちょっとだけ見直したわ」
ノエル「え・・・」(キュン)
フローナ「良かったねノエル君」
ノエル「へへ」
ノエルは照れくさそうに笑った。
番外編〜食事〜
何やかんやと旅を始めて半年。
久しぶりに体重計に乗ったフローナ。
フローナ「ご、5キロも増えてた・・・」
ラナ「フローナは元が細いから大丈夫よ」
サラ「全然増えたようには見えないですわよ」
フローナ「ありがとう・・とほほ」
ノエル「と言うか出会った頃より顔色も良くなってるし良かったんじゃないか?」
フローナ「ジン君の料理が美味しくてついいっぱい食べちゃうんだよね」
ジン「そうか・・・ありがとう」(嬉しい)
ノエル「そう言えば俺、ジンの作ったご飯食べるようになってから肌荒れ治ったんだよなぁ」
ラナ「あんたは乙女か!でもそう言えば私もそうなのよねぇ」
フローナ「私もだよ!それに最近お腹の調子すっごく良いの!」
ラナ「フローナ最初の頃よくお腹痛いって言ってたものね」
チェル「俺達、ジンがいないと生きていけない体になったね」
サラ「そのようですわね」
ジン「え」
ノエル「あ、ジンが照れてる」
ラナ「可愛いわねぇ」
フローナ「ね!」
ジン「茶化さないでくれ」
ジン"生きていけないのは俺の方だ"
番外編〜遊園地〜
遊園地がある街に来た時の話。
チェル「うわぁジェットコースターだぁ!!皆んな!あれ乗ろーよ!」
ノエル「チェル悪い、俺高いとこ苦手で」
ラナ「私もあんまり得意じゃないわ」
ジン「すまないが俺も高いところはちょっと・・・」
サラ「私も」
チェル「ぶーぶー」
三人に断られチェルは不貞腐れ気味だ。
しかし、チェルの他に一人だけ目をキラキラさせている者がいた。
フローナ「私乗りたーい!!」
そのフローナの言葉にチェルの目は一気にキラキラし始めた。
チェル「よし!フローナ行くぞ〜!!」
チェルはジェットコースターの方を指差した。
フローナ「行こいこ〜‼︎」
2人はジェットコースターのところへ並んだ。
ラナ「フローナって高いとこへーきなのね」
ノエル「チェルはともかく意外だよな」
ジン「楽しそうだし良かった」
サラ「私、二人が乗っているところを見学してようかしら」
ラナ「そうね、私もそうするわ」
二人が乗ったジェットコースターは絶叫系に分類されるこの遊園地の中で一番怖いアトラクションだ。
チェル「ひゃっほー!」
フローナ「わぁー!楽しいねチェル!」
チェル「ね!みんなも乗れば楽しいのにー!」
フローナ「私もっかい乗りたい!」
チェル「乗ろのろー!!」
ラナ「嘘みたいにはしゃぐわねあの子達(笑)」
ノエル「めちゃくちゃ楽しそうだな(笑)」
サラ「また乗りに行ってますわ」
ジン「気に入ったみたいだな」
保護者目線で語り合う4人なのであった。
第13話 ジンとセノの過去
11年前。ジン9歳。
村人「鬼の子め!お前がいるせいで不運が広まるんだ!」
村人「お前は呪われてるんだ!こっちへ来るな!」
ジン"何度も何度も言われてきた言葉
俺はいつもひとりぼっちだ・・お腹空いたな・・・
あーでも、このまま食べなかったら死ねるよな"
ジンは人がいない場所まで来るとしゃがみ込んだ。
セノ「ガキ一人がこんなとこで何してるんだ?」
ジンは顔を上げる。
そこには一人の男が立っていた。
ボロボロの茶色いハット帽にコート、ショートブーツを履いている旅人風の男だ。
口には枝を咥えている。
歳は30代後半くらいに見える。
ジン「誰?」
セノ「俺はセノ!旅をする者だ」
ジン「俺に近寄らない方が良いよ
呪われてるから」
セノ「あぁ街の奴らが言ってたのはお前さんの事か
だがそんなもの俺には関係ない」
ジン「俺といたらあんたまで被害に遭うよ」
セノ「いや遭わないね、俺ぁこの街の人間じゃないし明日には違う街へ行く、お前さんも来るかい?
こんな窮屈で小さい場所から一歩外へ出れば見てる世界は変わるぞ
俺は自由だ!はっはっは!」
ジン「勝手な事ばっか言わないでよ・・・ぐー」
ジンの腹が絶妙なタイミングで鳴った。
セノ「はっはっは!なんだお前さん腹が減ってるのか!一緒に食べよう、これでも料理は得意なんだ!」
森の中に二人で入り少しして・・・。
ジン「美味しい・・・」
セノが背中に背負っていたリュックから取り出したのは小さなフライパンと鍋とスプーンとフォークとおたま。
かなり年季が入っている。
食材は街で調達してきた。
後は焚き火だけなので
作り方はかなり大雑把だったが味は料理人顔負けなほど美味しかった。
メニューは焼いたパンの上にチーズと目玉焼きを乗せたもの、それとコーンスープだ。
セノ「そうだろうそうだろう?」
ジン「セノは料理うまいんだな」
セノ「ありがとよ、料理でさ、人を笑顔にできるっていいと思わないか?」
ジン「うん」
セノは俺に料理を教えてくれた。
俺は鬼一族の血を引く者。呪われていると忌み嫌われてきた。
でもセノだけは俺のそばにいてくれた。
柔術も剣術もセノが教えてくれた。
セノは俺の師匠だ。
だがそんなある日、俺たちは山賊に襲われた。
セノはジンを庇ったまま小声で話した。
セノ「ジン、このまま大人しくしていろ」
山賊達は2人が死んだと思いその場を去った。
山賊が去った後、すぐにジンは起き上がりセノの名前を呼ぶ。
ジン「セノ!」
セノ「ジン、俺はもう助からない」
ジン「何言ってんだよ!死んじゃやだよ!」
セノ「ジン、よく聞け
お前はお前を必要としている仲間の元へ行くんだ」
ジン「そんなのいないよ!俺にはセノしか」
セノ「心配するな、これから出会う、
少々時間はかかるかもしれないがな、
ジン・・・お前は生きろ」
生きろと告げてセノは息絶えた。
ジン「セノ!セノ!うわあぁん!」
ジン"唯一の理解者だったセノが死んだ、
俺はその日からセノを殺した奴らに復讐する、
それだけを糧に生きてきた、
それから修行を重ねた、そして強くなればなるほど俺を殺そうとする者が現れた、
そんな中、負傷した俺は木にもたれかかった、
死ぬのか・・・だがもういい、
セノ、やっとあなたの元へ行けるよ"
フローナ「あの、大丈夫ですか?」
チェル「俺の仲間になってよ!」
ジン"セノ、俺はやっと仲間を見つけたよ
一番にあなたに伝えたいのに・・・"
チェル「ジーン!お腹空いたよー!」
ジン「!」
ラナ「さっきお昼食べたでしょー」
チェル「だってー」
ジン「それならおやつを作ろう」
チェル「やったー!」
ラナ「もう、ジンは甘いわねぇ」
ジンは皆んの方を見ると優しく微笑んだ。
ジン"ここが俺の帰る場所だ"
第14話 兄との再会
皆んなで屋台ラーメンを食べに行こうと言う話になった。
屋台ラーメンの店主はシェルを見るや否や大きな声を出した。
店主「え!?」
店主はジーッとシェルを見る。しかし、その目から嫌悪感は感じられず、キラキラと輝いていた。
チェル「あ、あの?・・・」
店主「君、お兄さんいるだろう?」
チェル「え、どうしてそれを知ってるの?」
店主「半年ほど前に君のお兄さんに会ったんだ
似てるからすぐに分かったよ
お代はお兄さんからもらってるからいいよ
言ってたよ、弟が来たら仲間共に腹いっぱい食べさせてやってくれってな」
チェル「にーちゃん・・・」
店主「豪快で気風がいい男だったよ」
チェル「にーちゃんに会いたいなぁ」
店主「ははは、旅を続けていればきっとまた会えるさ」
チェル「うん、ありがとうおっちゃん」
ラナ「へぇ、チェルってお兄さんいたのね」
チェル「うん!!」
ノエル「そんな見た目似てるのか?」
チェル「自分じゃよく分からないけど似てるみたいだね」
フローナ「お兄さんどんな感じの人なの?」
チェル「んー、よく笑うスーパーヒーロー?」
一同「どういうこと?」
ワイのワイの。
しばらく兄の話で盛り上がった。
次の日。
街を歩いているといきなりガバッとチェルに抱きつく1人の男が現れた。
噂をすればなんとやらだ。
ラナ「え、何?!」
フローナ「誰!?」
チェル「にーちゃん!!」
ノエル「え、兄ちゃん!?」
ジン「この人がチェルの・・・」
サラ「まぁ、それにしても似てますわねぇ」
シェル「よう、チェル元気だったか〜?」(ペッカー!)
一同"うわぁ、凄い陽の気・・・"
シェルはチェルの頭を撫でた。
チェル「うん!にーちゃんも元気そうだな!」
シェル「まさかこんなところで会えるなんてな」
チェルはめちゃくちゃ嬉しそうだ。
シェルがチェルを溺愛してるのがこの短時間で分かる。
ラナ「仲良いのねぇあんた達」
フローナ「なんか良いねこう言うの」
ジン「ああ」
サラ「ふふ」
チェル「そうだ、にーちゃん!今日は俺らの車に泊まってってよ!」
シェル「今みんなと別行動してたんだ、仲間に聞いてみるわ」
チェル「にーちゃんも仲間いるんだ!ならみんなも一緒に来ればいいじゃん!」
シェル「さすがに全員はこの車に入らないだろ
みんなはほっぽって俺がお邪魔させてもらうわ」
ラナ「ちょっとちょっと、大丈夫なのそれ?」
シェル「だーいじょぶだーいじょぶ!俺隊長だから」
一同「尚更ダメなのでは?」
シェルは仲間に電話をかけた。
シェル「あーレン?俺!」
レン「隊長!あなた今どこにいるんですか!」
明らかに怒った声が電話越しから聞こえてきた。
ラナ「これ、まずいんじゃないの」
ノエル「お前のにーちゃん随分適当だな」
コソコソと話し合う一同。
チェル「にーちゃんは昔からあんな感じだよ」
一同「なるほど」(呆れ顔)
シェル「つーわけで弟の車に1日泊まってくわ」
レン「ちょっと隊長・・・!」
レンが言い終わる前にプツっと電話を切るシェル。
シェル「いいって」
一同「いやいやいや」
ラナ「明らかに怒ってたわよね!?あなたの仲間!」
フローナ「あはは」
ノエル「まぁ、他所様の事情だからなぁ」
シェル「大丈夫、大丈夫、あいつら慣れてっから
まぁてなわけでよろしくな」
チェル「やったぁ!」
一同「やれやれ」
夕飯の際、最後の一つを取り合いになっている2人がいた。
チェル「あー!それ俺の肉だぞノエル!」
ノエル「良いじゃんか〜!」
チェル「だ、め、だ!」
ジン「二人とも、俺の一つあげるから」
チェル「そしたらジンの食べる分減っちゃうじゃんか」
ジン「いや、俺は良いんだ」(とりあえずこの場を納めたいの意)
ノエル「そんなんジンに悪いだろ!」
フローナ「なら半分こに切って食べたら良いんじゃない?」
チェル「それいいなフローナ!そうしようノエル!」
ノエル「お、おう」
ジン「さすがフローナだ」
シェル「クスッ」
ラナ「何笑ってるのよ」
シェル「いや、あいつがあんな駄々こねるとこ初めて見たなと思ってさ」
ラナ「え、チェルは割といつも駄々っ子よ?」
シェル「あいつは今までわがままを言ったり駄々こねたりしたことなんて一度もなかったよ
誰かに何かされても取られても怒ったりやり返したりしなかった
どんな事言われてもされても絶対泣かなかった」
フローナ「チェルは強いんだね」
シェル「泣くと俺が飛んで来るって分かってたからなんだ
昔一度だけ泣いた事あったんだよ
その時の俺はまだ強くなくてそいつらにめちゃくちゃ殴られてさ
それ以来、自分が泣いたら兄が傷付けられる、そう思ったみたいでさ、泣かなくなったんだ
俺は気にしなくていいから泣きたい時は泣け、嫌な事は嫌だって言えって言ったんだけどな
わがままを言わなかったのも、たぶん、俺しか頼れる相手がいなかったから俺に嫌われたくなくてなんだと思う」
チェル「にーちゃんごめん、俺が泣いたからにーちゃんがいっぱい殴れて・・・」
シェル「気にすんなって、こんなん大したことないから、泣きたい時は泣いて良いし辛い時は辛いって叫んで良いんだよチェル」
ラナ「チェル・・・」
フローナ「シェル、私達はチェルがいなかったら今こうして仲間になる事はなかった
私達にとってチェルはかけがえのない存在だよ」
シェル「!ありがとう、その言葉は兄にとって何よりの褒め言葉だ」
別れ際。
シェル「フローナちゃん」
シェルはかがむとコソッとフローナに話しかけた。
フローナ「何ですか?」
シェル「チェルは君を気に入ってるみたいだ」
フローナ「ふふ、チェルは仲間思いだから」
シェル「いや、そうじゃなくて男として」
フローナ「!まさか」
フローナはぱちくりと目をまん丸くさせてシェルを見た。
シェル「俺とあいつは好みが似てるからな」
シェルはニッと笑った。
フローナ「え・・・///」
ゴン‼︎
その時チェルは背後からぴょんっと飛んでシェルの頭に強めのチョップをした。
シェル「いってー!」
シェルが頭を抑える。
チェル「兄ちゃん!フローナに変なこと吹き込むなよ!」
チェルはフローナの前に仁王立ちする。
シェル「なんだ聞いてたのか」
チェル「むう」
まるで威嚇してる猫みたいだ。
シェル「心配すんなって、可愛い弟の仲間に変な事しないよ」
シェルはそう言ってチェルの頭をポンポンとする。
シェル「じゃ、チェルまたな
みんな、これからも弟をよろしく頼むね」
みんな「もちろん」
チェル「にーちゃん!また会えるよね?」
シェル「やっと素直に言えるようになったな
当たり前だろ、必ずまた会える」
チェル「にーちゃん!またね!!」
シェルは振り返りながら手をブンブンと振った。
フローナは後ろ姿のチェルをチラッと見た。
フローナ"まさか、ね"
第15話 チェルの想い
その日、街に出かけたのだが・・・。
チェルの村にいた奴らと偶然出会してしまった。
チェルを虐めていた奴らだ。
男1「チェル、お前半妖だろー?何で人間と一緒に旅してんだよ」
男2「半妖なんだから大人しく家に篭ってろよ」
チェル「俺は・・・」
ラナ「はー?何なのよあんた達!」
ノエル「チェルが誰と何しようと君達には関係ないだろ」
男1「半妖といたらお前らまで悪く言われるんだぜー?」
ジン「隊長は俺達にとって大事な存在だ
悪く言わないでくれ」
サラ「そうですわ、あなた方に言われる筋合いありません」
皆んなは反論したが相手は怯む様子もない。
まだギャーギャーと騒いでいる。
チェルの悪口を言われてフローナは完璧にキレていた。
フローナ「うるっさいなぁ」
皆んなの背後からドスの効いた声が聞こえた。
ラナ「え、フローナ?」
フローナはつかつかと男達の方へと近付く。
フローナ「どうして自分の事は棚に上げて他人を叩くの?
そんな暇があるなら自分の人生を良くするように鍛錬すれば良い
自分の足りない部分から目を逸らしてるから結果的に状況が改善せずに苛立ち他人を攻撃する
ねぇ、あなた達はいつまでそうやって生きていくつもり?ねぇ」
男2「う、うるせー!」
相手は正論で責められ、一瞬怯んだようだったがヤケになったらしく殴りかかってきた。
だがフローナはその腕をガッと掴む。
フローナ「反論出来なくなったら今度は暴力?
ほんとクズね
今度うちの隊長に近付いたら一生生き地獄見せるから」
男2「ひっ!!」
男1「お、おい、行こうぜ!!」
フローナの言葉と冷たい視線に恐怖し、青ざめた相手の男達は逃げて行った。
フローナ「べーっだ!」
フローナは舌を出して二人の男を追い払った。
ラナ「フローナ、あんた凄い迫力だったわよ」
フローナ「そお?」
ラナ「まさかフローナがあそこまで言うとは思わなかったわ」
ノエル「あいつらフローナちゃんに理論責めされて半泣きで逃げてったな」
サラ「カッコよかったですわ」
ジン「ああ」
フローナ「てへ♪」
チェル「フローナ、ありがとう」
フローナはニッと笑った。
チェル"フローナは普段は自分から前に出るタイプじゃないし、自分が何か言われても怒らないのに
仲間の為に怒ってくれるんだな"
次の日の朝。
チェル"誰かが手を振りながらこっちへ向かって走って来る・・・誰だ?"
フローナ「チェルー!」
チェル「フローナ」
その瞬間、チェルは目を覚ました。
チェル"夢か、んーまずい事になったなぁ"
その日のお昼。
フローナが外に出て景色を眺めていた。
チェルが気付き、自分も外に出た。
チェル「フローナ、何見てるの?」
フローナ「んー?紅葉、綺麗だなって思って」
チェル「確かに綺麗だね、あれフローナ、髪に紅葉ついてる」
フローナ「え、嘘、どこ?」
フローナが頭の上に手を伸ばそうとする前にチェルはスッと髪に付いていた紅葉を取った。
フローナ「!ありがとうチェル」
チェルは優しく微笑む。
フローナ「?なーに?」
チェル「ううん、何でもない、キッチン行こ?」
フローナ「うん」
チェルはフローナの頭をポンポンするとキッチンへと向かった。
その時、シェルとのやり取りを思い出す。
シェル「チェルは君を気に入ってるみたいだ」
フローナ「ふふ、チェルは仲間思いだから」
シェル「いや、そうじゃなくて男として」
フローナ「!まさか」
フローナはぱちくりと目をまん丸くさせてシェルを見た。
シェル「俺とあいつは好みが似てるからな」
シェルはニッと笑った。
フローナ「え・・・///」
フローナ"まさか、そんなわけない・・・よね?"
ノエル「チェルってフローナちゃんの事・・・」
その様子をたまたまノエルは見ていた。
背後からラナとサラに話しかけられ、身体が一瞬ビクッと反応をする。
ラナ「あら?ノエル、そんなところで何してるのよ?」
サラ「どうかしましたか?」
ノエル「あー、えーと、外の空気でも吸おうかなぁ?なんて!」
ノエルは後頭部に手を当ててヘラヘラと笑い、何とかごまかした。
ラナ「何よそれ笑」
サラ「ジンさんがご飯の準備ができたと言っていましたわ」
ノエル「ありがと」
ラナ「サラ、今日のご飯何だと思う?」
サラ「そうですわね、昨日はパスタでその前の日はハンバーグでしたから焼き魚かしら、ラナさんはどう思います?」
ラナ「サラは和食ね、私はパンじゃないかと思ってる」
サラ「なるほど」
二人の会話が献立に逸れてノエルは内心ホッとする。
ノエル"はっ、てゆーか俺はジンとチェル、どっちの応援したらいいんだ!?"
ホッとしたのも束の間、すぐに悩んでしまうノエルであった。
第16話 ジンの苦手なもの
買い出しに行く為、街中を2人で歩いているとジンが急に俺の裾を掴んで来た。
ノエルは立ち止まって聞く。
ノエル「ジン、どした?どっか具合でも悪いのか?」
ジン「いや・・・人が沢山いる所が苦手なんだ、すまないが少しの間掴まっててもいいか?」
ジンはまるで捨てられた子犬のような目をしている。
ノエル「あ、じゃあ、手とか繋いじゃう?」
ノエルはスッと手を差し出す。
ノエル"なーんてな、ジンのやつきっと"いや、さすがに手は繋がん"とか言うんだろうな笑"
ジン「いいのか?」
ノエル「!?え、あ、あぁ」
ぎゅっ。
ジン「ありがとう」
ノエル「キュン・・・」
ノエル"ジンのやつ素直だな・・・何だこのなんとも言えない感情は・・・か、可愛い
女だったら惚れてたかもしれん"
しばらく歩いていると人混みを抜け、皆んなと合流した。
チェル「ジン!ノエル!こっちこっち!」
ラナ「あら、なーにあんた達、手なんか繋いじゃって」
ジン「あぁ、いやこれは」
パッとジンは手を離した。
その瞬間ノエルはジンの肩に腕を回す。
ノエル「たまにはいいだろ〜俺ら仲良しだもんな!」
ジン「あ、あぁ」
ラナ「何よそれ笑」
フローナ「みんな集まったし車に戻ろうか」
チェル「俺お腹空いたー!」
ジン「あぁ、ご飯にしよう」
チェル「めっしーめっしー♪」
ラナ「ほんとチェルは子どもねー」
チェル「だってジンのご飯美味いんだもん!」
フローナ「そうそう!美味しいよねー!」
チェル「ねー!」
皆んなの少し後ろを歩く二人。
ジン「ノエル」
ノエル「ん?」
ジン「ありがとう」
ノエルは手を伸ばすと自分より背の高いジンの頭をぽんぽんとして歩き出した。
ジンはノエルにぽんぽんされた場所に指先で触れる。
ジン"ノエルが女性だったら好きになってたかもしれないな"
ちょっと危うい二人である。
第17話 ラナの気持ち
次の街の情報を調べるべくノエルとラナが別行動をしていた時。
酒場でラナを落とし入れようとした女がいた。
このお店は女性たちが男性にお酒を注いだり話をしたりすることでお金を得ている言わばキャバクラのようなバーだ。
ノエルが他の席の子に話を聞こうと席を立った隙に睡眠薬入りの酒を注がれ、それをラナは飲んでしまったのだ。
ここの席は死角となっていてノエルの場所からは見えない構造になっている。
ノエルは酒を注がれ過ぎて完全に酔っ払って女の子達とキャッキャしている。
ラナ「?あんた・・・酒に何入れたの・・」
ラナは意識朦朧としていた。
女「クスッ、ただの睡眠薬さ、私はあんたみたいな男にちやほやされてる女が大嫌いさ、今楽にしてあげるわ」
ラナ"駄目だわ、体に力入らない・・・
睡眠薬かしら、まずいわ、意識が遠のく・・・"
女がナイフをラナに近づけた瞬間。
カチャっと背後から銃口を女に向ける男がいた。
女はそれに気付き両手を挙げた。汗が首筋を伝った。
女「!・・・あなた、さっき女達に酔い潰されていたはずじゃ・・・」
ノエル「どうも俺は危険な事には鼻が効くみたいでね
それと、あの程度の酒じゃ俺は酔わせれないよ」
女「クッ・・・」
ノエルはラナを抱き抱えた。
女はノエルにナイフを向けようとするが・・・。
ノエル「辞めときなよ、女を撃ちたくない」
その言葉を聞いた女はうなだれた。
ラナをノエルが運んでいく。
ラナ"あれ、私運ばれてる?なんだろう凄く懐かしくて暖かい"
ラナ「お兄ちゃん・・・」
ノエルはお兄ちゃんと呟いたラナの方をチラッと見た。
ノエル「・・・・」
その日の夕方。
ノエルとフローナが二人になる瞬間があり、フローナがこっそりノエルに話しかけた。
フローナ「ねぇ、ノエル君はラナちゃんに"告白"はしないの?」
ノエル「君は、核心をついてきたねぇ
言えないよ、今の関係を壊れるのが怖いんだ
それにラナちゃんは俺の事男として見てないからね」
フローナ「んー、じゃあ怖いついでに気長に待ってみたら?」
ノエル「え?」
フローナ「ラナちゃんは意外とゆっくりさんだから」
ノエル「それってどう言う・・・」
チェル「フローナー!ノエルー!飯できたってー!」
フローナ「はーい!ノエル君行こ!」
ノエル「あ、ああ・・・」
ノエル"俺は後にこのフローナちゃんの言葉を思い出して驚く事になる"
女子部屋。
ラナ「フローナ、サラ、私ね、ノエルをお兄ちゃんの代わりにしてるんじゃないかって思うの」
フローナ「んー、確かにノエル君はお兄さんぽいとこあるけど
それはラナちゃんを大事に思ってる部分が同じだからじゃないかな?」
サラ「私もそう思いますわ」
ラナ「そうなのかなぁ」
フローナ「大丈夫だよ、ノエル君はラナちゃんを焦らせるような人じゃないし
ラナちゃんはラナちゃんのペースでいけばいいんじゃないかな?」
サラ「ラナさんはラナさんらしくいるのが一番だと思いますわ」
ラナ「うん・・・ありがとう、フローナ、サラ」
フローナとサラはニコッと笑った。
フローナ"大丈夫、ラナちゃんの中でもう答えは出てるよ
あとはそれに気付くきっかけが来るから"
第18話 洞窟
旅の途中、吹雪に襲われた。
仲間とはぐれてしまったラナとノエルは洞窟に入る事にした。
外は暗くなってきていてノエルが持っていた寛容ライトでなんとか灯りはある状態だ。
二人は離れた距離に座っていたのだが・・・。
ノエル「ねぇラナちゃん、隣行っていい?」
ラナ「やーよ、あんた変な事する気でしょ」
ノエル「いや、何もしないからさ・・・」
ラナ「ノエル?何か顔色悪いみたいだけどどっか具合悪いの?」
ラナは咄嗟にノエルに近寄る。
ノエル「いや、そう言う訳じゃないんだけど・・・」
ノエルの顔色は青白くなっていて手がカタカタと震えている。
ラナ「手震えてるじゃない、やっぱりどこか悪いんじゃないの?」
ノエル「いや・・・実は俺、暗いの苦手なんだ」
ノエルは完全に青ざめている。
ラナ「え、そうなの?」
ノエル「男のくせにカッコ悪いよね、ははは」
ラナ「・・・誰だって苦手なものぐらいあるわよ」
ラナはそう言うとノエルの隣に座り直し、手をぎゅっと握った。
ノエル「え、ラナちゃん?」
ラナ「手ぐらいなら繋いでてもいいわよ」
そっぽを向いているが優しさがちゃんと伝わってくる。
ノエル「ありがとう」
ラナ"何よ、調子狂っちゃうじゃない・・・
あのノエルがこんな風になるなんて"
その日の夜。
ノエルは悪夢にうなされていた。
ノエル「う・・・夢か」
チラッと隣を見ると自分に寄り掛かって寝ているラナがいた。
ノエル"ずっと手離さないでいてくれたのか
やっぱり俺は君が好きだ、ごめんな、ラナ・・・"
一方その頃。他の皆んなは・・・。
近くに小屋があった為、そこで吹雪が止むのを待つ事にした。
止んだと同時にノエルとラナを探しに行く。
吹雪が止んだ事でチェルの鼻が効くようになり、二人がいるであろう洞窟へと向かった。
チェルは先頭を歩いていたが洞窟に入る手前で急に立ち止まった。
後ろを歩いていたフローナはチェルにぶつかった。
フローナ「ぶっ、どしたの」
フローナは赤くなっている鼻をさする。
チェル「ストップ」
チェルは手で皆んなが止まるように指示を出した。
フローナ「?・・・なるほど」
ジン「もう少しあのままでいいんじゃないか?」
サラ「ふふ、そうしましょう」
洞窟の入り口から見えた2人はお互いに寄り添い合って手を繋いだまま眠っていた。
第19話 宝の地図
次の街に宝の地図があるという噂を元に、皆んなは探そうとしたのだが、その手前の街では反乱が起こっていた。
民衆「うおぉー!!」
フローナ「これじゃ通れないね」
ラナ「ここ突っ切るのが最短ルートなのに」
ノエル「・・・」
ノエルが一点を見つめている。
ラナ「ノエル?」
ノエルは何やらカバンから取り出す。
ノエル「これをな」
一同「ん?」
ノエル「こうして」
一同「うん」
ノエル「こうすんの」
一同「うんうん」
ノエルはそのあるものからピンを歯で噛みながら抜くと反乱が起こっている中心に落とした。
皆んなの目線だけが爆弾を追う。
ドカーン!!
爆風とともにその場にいた人達が周りへと飛んでいき。ちょうど中心部分が空白になった。
サラ「あらまぁ」
サラはあっけらかんとしている。
ラナ「えー!?ちょっとノエル!!」
ノエル「よし、行くぞ」
ノエルはダダダっと走り始めた。
ジン「何人か死んだんじゃないか?」
ノエル「風を起こしただけだし、戦いに来てる奴らみんな鍛えてたし相当みそっかすじゃなきゃ死なないって、たぶん!」
一同「たぶんって付け加えた!」
チェル「はーっはっはっは!ノエルさいっこー!」
チェルはケラケラ笑っている。
ラナ「ま、そのおかげで最短ルートで行けるけどね」
チェル「俺達には時間無いしね」
ノエル「だって面倒くさかったんだもん」
フローナ「なんてゆーかノエル君すごい」
ノエル「ありがと」
ラナ「今のは褒めてないわよ・・・」
サラ「ふふ、本当に退屈しない人たちですわねぇ」
ジン「しかし、反乱止まったみたいだし結果的にこれで良かったんじゃないか?かなり派手なやり方ではあったが」
サラ「私もそう思いますわ」
チェル「とにかく急ごう」
一同「おー!!」
その後、無事に目的の街に辿り着いた。
地図が隠されているであろう建物内をバラバラに捜索していたのだが・・・。
途中、爆弾が仕掛けられていると放送が流れ、皆んなはそれぞれすぐに外へと出た。
フローナ「ラナちゃん大変なの!」
チェル「まだ中にノエルが・・・」
ラナ「え・・・」
その直後、建物が爆発した。
ドカーーン!!
ラナ「うそ、うそよ・・・ノエルー!!」
ラナの目から涙が溢れた瞬間。
ノエル「はーい、ラナちゃん」
建物付近からボロボロになったノエルが顔を出した。
ラナ「ノエル・・・ノエル!!」
ラナはノエルの元へ駆け寄った。
ノエル「そんなに俺に会いたかった?」
ラナ「バカ!」
ノエルは体制を崩した。
ノエル「っ・・・・」
ラナ「ちょっと、大丈夫?」
ノエル「ごめんラナちゃん、実は肋骨何本か折れてる」
ラナ「掴まって」
ノエル「ありがとう」
チェル「ほっ・・・」
サラ「無事で良かったですわ・・・」
フローナ「何だかんだ言ってラブラブね」
ジン「ああ」
第20話 ラナの告白
次の日の朝。
ラナ「フローナ、サラ、私・・・」
フローナ「ラナちゃん、答え出たんだね」
ラナ「うん」
フローナ「行っておいでラナちゃん、もう大丈夫だよ」
フローナはラナの背中をポンっと押した。
サラ「ラナさん、頑張って!」
フローナとサラが両手の拳を丸めてガッツポーズをしてラナを見送った。
ラナ"私いつもいつもノエルに気を使ってもらってばかりだった
これからもずっとそれでいいの?そんなのダメ
だって私もノエルの事が・・・"
ラナ「ノエル!」
ノエルはちょうど部屋を出たところだった。
ノエル「ラナちゃん、おはよう、朝からどうした、の・・・」
ラナはノエルの胸元の襟を引っ張り強引にキスをした。
ノエル「!?」
ノエルはいきなりのことに驚き、腰を抜かしてそのまま後ろに座り込んだ。
ノエルはポカンとしている。
ラナはしゃがんで話を続けた。
ラナ「私、やっと気付いたの、自分の気持ちに
ノエルの事が好きなんだって」
ノエル「うそ、ほんとに?」
ラナ「ほんとよ・・・ってやだノエル、泣いてるの!?」
ノエル「や、だってフラれると思って自分の気持ち言わないでおこうって思ってて・・・」
ラナ「もう、泣かないのー」
ラナはノエルの涙をハンカチで拭った。
ノエル「ありがと・・・」
ラナ「で?ノエルはどうなの?」
ノエル「もちろん大好きだよ」
2人は気持ちを確かめ合うと、互いに微笑み合いキスをした。
チェル「あのー」
ジン「俺たちもいるんだが・・・」
そう、この時、男性部屋の扉が開けっぱなしのままになっていたのでキッチンに向かおうとしていたチェルとジンが行き場を失い、一部始終を見てしまったのだ。
更に女性部屋の方からフローナとサラが扉に隠れながら二人を見守っていた。
完全に二人の世界に入っていたノエルとラナは顔を真っ赤にしている。
ラナ「ご、ごめんなさい・・・」
ノエル「わ、悪い・・・」
しばらく二人は他人行儀になっていたらしい。
第21話 ノエルの元カノ
街を歩いていると一人の女性が話しかけてきた。
アイリ「あら?ノエルじゃない」
ノエル「!アイリ・・・」
チェル「知り合い?」
ノエル「あ、ああ・・・」
ラナ「ノエル?」
アイリ「ふふ、私はノエルの元恋人、つまり元カノよ」
ラナ「え、元カノ!?」
チェル「本当なの?」
ノエル「ああ・・・」
しかし、ノエルのその表情を見れば、良い別れ方をしていないのは明確だった。
過去。
アイリ「ノエル、私と別れて欲しいの」
ノエル「え、急にどうして・・・」
アイリ「あなたって真面目過ぎて一緒にいてもつまらないのよ
だから別れて」
ノエル「・・・分かった」
俺はその日、二度目の失恋をした。
一度目も同じ理由で相手から別れを告げられた。
その日から俺はメガネを捨て、髪型、髪色を変えて喋り方も変えた。
本当の自分は誰も求めていないと気付いたから。
ノエルはこの日、元カノに再会することで、昔の心の傷が完全に開いてしまった。
アイリ「ノエル、まるで別人みたいね、昔は黒髪にメガネ、話し方も真面目な感じだったのに」
ノエル「みんなの前でその話は辞めてくれないかアイリ」
アイリ「あら、どうして?まさか、皆んな昔のノエルを知らないの?昔のノエルってばね」
ラナ「ちょっとあんた、もういいでしょう?」
ラナがノエルを庇うように前に出た。
ノエル「ラナちゃん・・・」
アイリ「あら、何よあなた、ノエルの今カノ?」
ラナ「そうよ」
アイリ「ふーん、なかなか美人じゃない、ねぇあなた、過去を知らないまま付き合ってて大丈夫?本当のノエルって真面目でつまらないんだから
あなたもすぐに飽きるわよ?」
ラナ「あなたと私を一緒にしないで、ノエルと別れたんだからもう関わらないでちょうだい
それとも、ノエルに未練があるなんて言わないわよね?」
アイリ「フッ、あるわけないじゃない、こんなつまらない男に」
バチバチ。
チェル「うわぁ、バッチバチだね」(ヒソヒソ)
フローナ「うん」(ヒソヒソ)
その日の昼。
ノエルは一人にして欲しいと外へ出た。
しかし、雨が降り始めた為、ノエルのことが心配になったラナが傘を持って迎えに行った。
ラナのお願いで皆んなは車で待機することになった。
しばらく探していると・・・。
公園のブランコに座っているノエルを見つけた。
ラナ「ちょっとノエル、傘もささずに何してるのよ、風邪引いちゃうわよ?ほら、帰りましょうよ」
ノエル「ラナちゃんも話聞いて幻滅したでしょ
ずっと黙ってたことはごめん、知られたら離れていくかもしれないって怖くて
本当の俺はつまらない奴だから」
ラナ「ノエル、私は黙ってたことを悪いことだなんて思ってないし幻滅もしてないわ、
昔のノエルのこと知らないことばかりだけど、これだけは断言できる
どっちのあんたもつまらなくなんかない!
最初から昔のままで出会ってたとしても私は絶対にノエルを好きになってた
皆んなだってそうよ
本当の俺はって、今まで一緒にいたノエルが偽物みたいに言わないで
あんたといて楽しいって思った私や皆んなの時間まで否定しないでよ
どっちのノエルも本物なんだから」
涙声になっているラナの言葉を聞いたノエルは静かに涙を流した。
ノエル「ラナちゃん・・・ありがとう」
ノエルはブランコに座ったまま涙を流した。
ラナがしゃがんでノエルを抱き締める。
ラナはノエルが泣き止むまで雨の中ずっと抱き締め続けていた。
次の日、2人は仲良く風邪を引く事になる。
ラナ「ゲホゲホ、あんたのせいよ」
ノエル「ごめん、ラナちゃんが抱き締めてくれてたから離れがたくてつい・・・」
チェル「え、二人抱き合ってたの?あの雨の中?」
サラ「それで傘を持っていたラナさんまで濡れていたわけですね」
ラナ「ちょっとノエル!皆んなの前で余計なこと言わないでよ!」
フローナ「それで仲良く風邪引いたんだねぇ」(にまにま)
サラ「・・・」(にまにま)
ノエル「いやー参っちゃうよねぇ!ははは」
ラナ「あんたねぇ・・・ほんと調子いいんだから」
ジン「ノエル、ラナ、お粥作ってきたが食べれそうか?」
ラナ「ありがとうジン、大丈夫、食べれるわ」
ノエル「ジン、さんきゅな、俺も大丈夫、食べれそうだ
よ、あ!ラナちゃんがあーんして食べさせてくれたら早く治るかもしれないなぁ」
ラナ「あのねぇ、私も病人なのよ・・・」
ジン「フッ・・・」
ラナ「ちょっと、ジン、何で笑ってるのよ?」
ジン「すまん、それだけ言い合える元気があるのなら二人とも大丈夫そうだなと安心しただけだ」
ノエル「ジン・・・お前ってほんといい奴だな」
ラナ「なんかジンを見てると妙にホッとするわ」
ノエル「それめっちゃ分かる」
フローナ「ふふ」
サラ「?フローナさん、どうかされたんですか?」
フローナ「二人ともなんだかんだ言って仲良いんだなって思ってさ」
サラ「ふふ、確かに・・・そのようですわね」
チェル「良かった良かった」
番外編〜刺激的〜
それはラナがシャワーを浴びていた時、事件は起こった。
ラナ「きゃあ!!」
ラナは虫がシャワー室にいた達、悲鳴を上げた。
その悲鳴を聞きつけたノエルは急いで風呂場へと向かった。
ガラッ。
ノエル「ラナちゃん!だいじょ・・・」
ラナ「きゃあ!?」
ノエル「あらん刺激的だこと」(鼻血)
ラナ「バカ!早く出てってよ!」
ノエル「いや、だってラナちゃんの悲鳴が聞こえたから!」
ラナ「はっ、そうよ虫よ!ちょっとノエル!そこの虫早く何とかしてよ!あ、でも目は瞑ったままよ!」
ノエル「ラナちゃん、さすがにそれは無茶苦茶だよ・・・」
あまりの難易度の高いラナの要求にさすがのノエルも半分呆れている。
ラナ「いいから早く何とかしてよ!」
ノエル「じゃあせめてこのタオル使って隠しててよ」
しかし、ノエルがラナにタオルを渡そうとした瞬間、虫は勢いよく二人に向かって飛んできた。
ラナ「ちょっとこっち来ないでよ!!」
ノエル「うわ!!実は俺も虫苦手なんだ!こっち来るな!」
ギャーギャー。
と、その時。ガチャ。
チェル「二人ともどうしたの?」
ラナ「あ、チェル、ナイスタイミング!そこにいる虫何とかして!」
チェル「?なんだ、ただの蜘蛛じゃん」
チェルは素手でパッと捕まえると窓の外へと放した。
ノエル「はー助かった、さんきゅなチェル」
チェル「いえいえ・・・てゆーか二人とも凄い体勢だね?」
ラナ「え?ちょっと!あんたはいつまで私の腕に引っ付いてんのよ!」
ゴン!!
ノエル「いたぁい!ラナちゃんに殴られたぁ」
チェル「あはは、じゃあ俺は部屋に戻るよ?」
ラナ「え、ええ、ありがとうチェル」
チェル「どういたしまして〜」
ノエル「ねぇラナちゃん、もうこれは実質、一緒にシャワー浴びたのと同じじゃない?」
ラナ「あんた、また殴られたいの?」
ノエル「うそうそ!冗談です!!」
ラナ「・・・まぁでも、一番最初に駆けつけてくれたのがノエルで良かったわよ」
ノエル「え・・・」
ラナ「来てくれてありがとう」
ノエル「うん!」
第22話 ジンの告白
フローナはなかなか寝付けなかった為、キッチンに来た。
その時、ジンもちょうど椅子に座ろうとしていた。
ジン「どうした?眠れないのか?」
フローナ「ジン君!うん、なかなか寝付けなくて
ジン君も?」
ジン「ああ、何か飲むか?」
フローナ「私やるよ!」
ジン「いや、俺がやるよ、何がいい?」
フローナ「じゃあお言葉に甘えて・・・温かいミルクティーで」
ジン「分かった」
フローナ"ジン君ってほんと優しいなぁ・・・"
ジンはミルクティーをフローナに出した。
フローナ「ありがとう!」
ジンは小さく微笑んだ。
ジン「目の前に座ってもいいか?」
フローナ「もちろん!」
フローナはふーふーとするとミルクティーを飲んだ。
フローナ"私が猫舌なの知ってからジン君は熱くなり過ぎないように飲み物を入れてくれる
ジン君優し過ぎだよ!"
穏やかな時間が過ぎていく。
フローナ"あれ、なんだろ、何も話してないのに
何か凄い癒されるな"
しばらくしてジンが口を開く。
ジン「何か話そうか」
フローナ「!うん」
そしてしばらく雑談をした。
フローナ"わ、ジン君の声、低くて優しいから心地良いな、眠くなってきた・・・"
フローナはうとうとし始めた。
ジン「フローナ?」
フローナは座ったまま眠ってしまった。
ジンは眠っているフローナに毛布をかけた。
ジン"本当なら起こして布団で寝るように言うべきなのだろうが
このコーヒーを飲み終わるまでもう少しだけ"
ジンはなるべくゆっくりとコーヒーを飲んだ。
フローナ「zzzやきにく」
その時、フローナの寝言が聞こえた。
ジン「!フッ、明日は焼肉にしようか」
30分後。
フローナ「はれ!?私寝ちゃってた!?」
ジン「ああ」
フローナは口元をゴシゴシっと拭いた。
フローナ「あー恥ずかしい!もー起こしてよジン君〜!」
ジン「すまない、気持ち良さそうに寝てたから」
次の日の朝。
男性部屋。
ノエル「ジン、おはよー」
チェルはまだスヤスヤと眠っている。
ジン「ああ、おはよう」
ノエル「ジン、何か嬉しい事でもあったのか?」
ジン「?何でそう思うんだ?」
ノエル「何となくそう見えて」
ジン「夜にフローナと話してただけだ」
ノエル「へぇ、珍しいな?」
ジン「時が」
ノエル「?」
ジン「止まればいいと思った」
ノエル「・・・お前それ、好きって自白してるようなもんだぞ」
言っているジンではなくノエルの方が照れる。
ジン「・・・そうか、俺はフローナが好きなのか」
ノエル「ジンはフローナちゃんに気持ち伝えないのか?」
ジン「言わないさ」
ノエル「まぁお前はそう言うよな
じゃあさ、フローナちゃんがお前が好きだって言ったらどうするんだ?」
ジン「いや、それはないだろう?」
ノエル「もしもの話だ」
ジン「もしそうだとしても俺よりふさわしい奴がいると思う」
ノエル「ストップ!
ジン、お前はフローナちゃんにどうなって欲しいんだ?」
ジン「それは幸せになって欲しい」
ノエル「じゃあフローナちゃんがジンといるのが幸せだって言ったらお前どうすんだ?
フローナちゃんの幸せを願ってるのにジン自らフローナちゃんを幸せから遠ざけるのか?」
ジン「それは・・・」
ノエル「フローナちゃんの幸せはジンが決める事じゃない、フローナちゃんが決める事だ
まぁ!もしもの話だけどな!」
ジン「あ、あぁ・・・」
その後、ジンはたまたま女性陣が話しているのを聞いてしまった。
フローナ「私、ジン君が好き
でも仲間として今の関係が壊れちゃうのが怖い」
ラナ「フローナはジンとどうなりたいの?」
フローナ「そりゃ・・一緒になれたら幸せだよ」
サラ「フローナさん・・・」
ジン"フローナ・・・"
"じゃあフローナちゃんがジンといるのが幸せだって言ったらお前どうすんだ?"
ジン"そうか、フローナも同じだったんだな"
フローナと二人きりになった時。
チェル「ジン〜飯めし〜!」
チェルの元気な声が聞こえてきた。
フローナ「行こっか」
ジンはキッチンへ向かおうとするフローナの腕を掴んだ。
フローナ「ジン君?」
フローナが振り返る。
ジン「フローナ、俺は・・・君が好きだ」
フローナ"え、うそ・・・ジン君が私を?"
フローナ「わ、私も好きだよ」
ジン「俺でいいのか?」
フローナ「私はジン君がいい」
ジンは優しく微笑むとフローナを抱きしめた。
その日の夜。キッチンで雑談をしていた時のこと。
フローナ「あの、ジン君一つ聞いてもいい?」
ジン「ああ」
フローナ「その、いつから好きだったのかなって」
ジン「そうだな、明確にいつからと言うのは分からないが
今思うと最初から惹かれていたように感じる
君は俺にとってメシアなのだろうな
フローナ?」
フローナは顔を赤くしてプルプルしている。
フローナ「ごめん、聞いたの私なのに恥ずかしくて・・・」
フローナ"ジン君これ素で言ってるんだもんなぁ
心臓持たないよ"
ジン「俺も聞いていいか?好きになってくれた理由を」
フローナ「んー、少しずつだから私もよく分かんないや
ジン君の事知ってく度に好きになってった感じだから
優しいし気が効くし周りの事よく見てるし料理上手だしカッコいいし」
ジン「フローナ、ストップ」
ジンは手で顔を隠した。隠していても分かるほどに顔が赤くなっていた。
フローナ「ジン君顔真っ赤だよ」
ジン「フローナもだ」
フローナ「えへへ、じゃあお揃いだね」
ジン「!そうだな」
ジン"お揃いならまぁいいか"
第23話 ジンに乗り移った幽霊
ジンにバラエという幽霊が乗り移ってしまった、らしい。
バラエ「へぇ、あんた俺に惚れてんのか」
フローナ「ドキッ」
ラナ「ちょっと!フローナに近づかないでちょうだい!フローナ気をつけて!見た目はジンでも中身はただのバラエなんだから」
バラエ「ただのとは失敬な」
ノエル「でもフローナちゃんちょっとときめいてたよね」
フローナ「う・・・」
ラナ「何言ってんの!騙されちゃダメよフローナ
ジンがこのまま元に戻らなくてもいいの?」
フローナ「そ、そうだよね!あの!ジン君の体から早く出てって・・・」
バラエ「こう言う俺は嫌いか?」
首を傾げながら困り顔で言われ・・・。
フローナ「う・・・///もうやだぁ」
フローナはラナに抱き付いた。
ラナ「ちょっとみんな、フローナをバラエ(ジン)に近づけちゃダメよ!」
ノエル「全くだ!」
チェル「放っておいたら何するか分かったもんじゃないね!」
サラ「危険ですわね」
バラエ「♪」
しばらく共に過ごすうちに、バラエはフローナの事を自分にとって特別な存在だと認識し始めていた。
フローナが敵からの攻撃を受ける際に
ジンの体から抜けたバラエはフローナを攻撃から庇った。
フローナ「バラエ‼︎」
バラエ「くうぅ・・・」
フローナ「バラエ、あなたどうして」
バラエ「俺、あんたの事結構気に入ってたんだ
あんた達も色々と悪かったな」
チェル「バラエ・・・」
みんながフローナとバラエの元へ行こうとするのをジンが止めた。
バラエは体が少しずつ消えてゆく。
バラエ「なぁ、最後に手繋いでもいいか?」
フローナ「うん」
バラエ「俺、あんたみたいな彼女や仲間欲しかったな」
フローナ「・・・」
バラエ「泣いてくれてんのか
悪くない死に方だな」
そう言うとバラエは消えていった。
フローナ「バラエ・・・」
フローナはしばらく空を見上げていた。
第24話 復讐心
セノを殺した盗賊に遭遇したジンは仲間を置いて一人で突っ走ってしまった。
チェル「ジン!!」
フローナ「ジン君!」
ジンは仲間の声に耳を傾ける事なく走っていく。
ジンは防御も忘れ無我夢中で戦った。
あまりに無茶な戦い方をした為、体に重傷を負って動けない状態になっていた。
そこへチェルが匂いを頼りに仲間と共にジンの跡を辿ってきたのだ。
チェル「ジン!!」
フローナ「ジン君!」
ノエル「ジン!大丈夫か!!」
サラ「早く手当を!」
ラナ「急ぎましょう」
敵1「ちっ、仲間が来やがったか!」
チェル「お前らふざけんなよ」
敵1「へっ、そんな悪魔の子、死んだ方が世の為人の為だ」
敵2「ああ、まさかまだ生きてたとは思わなかったがな」
チェル「何だと?」
ボンッ!!
盗賊は煙幕を使って逃げた。
チェル「うわ!?くそ、逃げられた・・・」
その日の夜。
チェルはジンを呼び出した。
チェル「ジン、俺は復讐するなって言ってる訳じゃない
ただ、一人で突っ込むのは辞めて
ジンが傷付いたら皆んなが悲しむ、もちろん俺も
復讐したいなら俺達も一緒だ」
ジン「チェル・・・ああ、すまない・・・」
チェル「次泣かせたら俺は力ずくでも奪いにいくからね」
ジン「!チェル、君はまさか・・・分かった、もう泣かせない、約束する」
チェル「うん」
コンコン。
チェル「はーい」
ガチャ。
ひょこっとフローナが現れた。
フローナ「ジン君、具合どう?お水持ってきたよ」
ジン「ありがとう」
チェル「だいぶ良いみたいだけどまだ心配だからフローナ付いててあげて」
ノエル「俺ら、キッチンにいるからさ」
フローナ「うん」
ジン「チェル、ノエル、ありがとう」
ノエル「良いってことよ」
チェル「にひひ」
二人は部屋を出て行った。
フローナ「話の邪魔しちゃったかな?」
ジン「いや、話は終わった後だったから大丈夫だ」
フローナ「そっか、なら良かった」
フローナは沢山泣いたようで目の下が赤くなっていた。
ジン「フローナ、すまない、俺は君を泣かせてしまった・・・」
フローナ「ううん、私は大丈夫だよ
でもねジン君、もうあんな無茶はしないで欲しいの」
ジン「ああ、すまなかった」
フローナ「私、ジン君が死んじゃったらって思ったら体が引き裂かれるような思いだったよ
苦しくて悲しくて仕方なかったよ
私だけじゃない、皆んなもきっと同じ気持ちだったと思うよ」
ジン「ああ・・・」
フローナ「それとね」
ジン「ああ」
フローナ「なんかアイツら気に食わなかった!だから私も一発ぶん殴ってやんなきゃ気が済まない!
あの二人の顔!思い出すだけでムカつく〜!きー!」
ジン「・・・はは、君は本当に・・・」
フローナ「だから、次に復讐する時は私を置いて行かないで連れてって」
ジン「フローナ・・・ああ、分かった
俺は君の存在にこうやって何度も救われているな」
フローナはジンの手をそっと握る。
フローナ「私だってジン君にいーっぱい救われてるよ?」
ジン「!フローナ、ありがとう」
ジンは優しく微笑みながらお礼を言った。
そして、フローナがジンを支えながらキッチンに行くと。
チェル「よし、ジンの怪我が治ったらあいつらぶっ倒しに行くぞー!」
フローナ「もちろんだよ!!もうこれはジン君一人の問題じゃない、私達の問題なんだから!」
ラナ「二人とも燃えてるわね・・・」
ノエル「まぁあのバカ盗賊たちが火に油を注いじゃったからねぇ」
サラ「ふふ、これはやるしかありませんね」
ノエル「って、サラちゃんは何作ってるの?・・・」
サラは何やらドス黒い妖気を漂わせながら調理場でツボの中を棒のようなもので混ぜている。
サラ「ふふふ、秘密ですわ」
ノエル"うわーん、ここにも敵に回したくない人がいるよ"
第25話 鬼との決別
戦いの中で奥底に眠っていた鬼が目覚めてしまったジン。
体が少しずつ鬼になりかけたその時、ジンは刀を自分の首に向けた。
ラナ「ちょっと!何する気!?」
ジン「完全に鬼になる前に首をはねる」
フローナ「だめ!!」
フローナはジンをぎゅっと抱きしめた。
ジン「よせ、フローナ!自制心が効かないんだ
このままでは君まで」
フローナ「ジン君死んだら私も死ぬ!」
フローナは必死の思いで止めに入る。
すると・・・。
チェル「俺も!」
ラナ「私も!」
ノエル「当然俺も」
サラ「私も」
みんなもフローナと同じようにジンを抱きしめた。
ジン「みんな・・・」
チェル「ジン、俺達はお前を1人にしたりしない」
ジン「くぅ・・・!!」
キイィン!
その瞬間フローナの体から光が放たれ、みんなを包んだ。
ジン「!?」
ジン"何だ?この力、何かに"守られてる"ような・・・"
ジン「ここは・・」
テレーゼ「ここはあなたの心の中です」
ジン「テレーゼ・・・?」
テレーゼは頷く。
テレーゼ「ジン、あなたはもう大丈夫です」
ジン「え?・・・」
テレーゼはふっと微笑んだ。その瞬間テレーゼがフローナとダブって見えて消えた。
し・・・ん。
ラナ「とまった?・・・」
ノエル「収まったみたいだな」
サラ「ホッ」
チェル「ジン!!良かったぁ!!」
ジン「みんなありがとう・・・フローナ!?」
ジンはフローナが意識が無い事に気付いた。
ラナ「え、フローナどうしたの!?」
フローナ「」
ジン「寝てる」
みんな「ガクッ」
ラナ「疲れちゃったのね」
ノエル「今日はずっと戦いっぱなしだったからな、無理もない」
ジン"さっきの光はまさかフローナが?
ではフローナはテレーゼなのか?"
車に戻って来た。
フローナは部屋で寝ている。
ノエル「ジンどした?」
ジン「あぁ、いや・・・さっきフローナから何か不思議な力を感じなかったか?」
ノエル「さっきってジンが鬼になりかけた時?」
ジン「あぁ」
ラナ「んー無我夢中だったから覚えてないわ」
チェル「俺もよく分かんないな」
サラ「私もですわ」
ジン「いや、俺の気のせいかもしれん、気にしないでくれ」
その後、絵画展に訪れる機会があり6人は美術館に行くことになった。
美術館の一番奥にあるスペースにはテレーゼの絵が飾られていた。
タイトルは
"伝説の女神テレーゼ"
ジン「!これは」
ノエル「テレーゼの絵だって、綺麗だよな」
ラナ「確かテレーゼって別名再生の女神とも呼ばれてたわね」
フローナ「どうして再生の女神なんだろ?」
サラ「私が聞いた話では、テレーゼが現れた時、枯れ果てた大地が蘇り、人々の傷が癒える、と言われていましたわ」
ノエル「語り継がれてる意味が分かるな」
ジン「ああ」
チェル「あ!あの時こんな感じの光が見えたよ!」
ラナ「あの時?」
チェル「ほら、ジンが不思議な力を感じたって言ってたやつ!」
ジン「そうか、ではあれはやはり・・・」
ノエル「やはり?」
ジン「いや、何でもない」
チェル「えー気になるじゃんか」
ジン「まだ俺にもよく分からないんだ」
ノエル「ま、そういうことってよくあるよな」
チェル「そうなの?」
ノエル「チェルにはまだ難しいかもな」
チェル「むぅ、そんな子どもじゃないもん」
チェルが頬をぷくっと膨らませる。
ノエル「あはは、ごめんごめん」
ノエルがチェルの頭を撫でる。
ジンはフローナの方をチラッと見た。
ジン"今はまだ仮説段階だ、皆んなに話して混乱させることはない、
本人も気付いていないようだし"
フローナ「ジン君?どうかした?」
フローナが首を傾げて聞く。
ジン「いや、何でもないさ」
ジン"君は俺にとってメシアだ、テレーゼでもそうでなくても"
第26話 兄との再会
敵に捕まって戻って来たフローナ。
ラナ「え、フローナ!ちょっと大丈夫なの?」
先にフローナの近くに立っていたジンは異変に気付く。
フローナ「・・・」
当然みんなも近寄ろうとしたが・・・。
ジン「!来るな!」
ラナ「え」
驚いたラナは足を止めた。
その瞬間、フローナはジンをナイフで刺した。
ジン「ぐぅ・・・・」
チェル「ジン!!」
ラナ「!!」
ノエル「!!」
サラ「・・・」
チェル「みんな気をつけて!フローナ何かに操られてる!」
ノエル「やっぱりな」
ラナ「フローナがジンを刺すはずないものね」
チェル「ジン!大丈夫か!?」
ジン「あぁ・・・何とかな」
チェル「ラナとサラはジンの治療に当たってくれ!
フローナは俺とノエルが何とかする!」
ラナ「分かったわ!サラ!」
サラ「ええ」
2人はジンを運んだ。
ノエル「フローナちゃん!辞めるんだ!」
チェル「フローナ!俺達が分からないのか?」
フローナは依然として攻撃を続ける。
チェル「せやー!」
チェルの攻撃により手からナイフが落ちた。
ノエルはその拍子にフローナの背後へ回り、両腕を拘束した。
ノエル"何つー力だ、これが女の子の力か?両足で踏ん張ってなきゃすっ飛ばされちまいそうだ"
ノエル「チェル!」
チェル「フローナごめん!」
そう言うとチェルはフローナの腹に一発入れて気絶させた。
フローナ「う・・・」
ラナ「ジン、大丈夫?」
ジン「あぁ、致命傷にはなってない
と言うよりフローナが避けてくれたと言った方が正しいか」
ラナ「それって・・・」
サラ「フローナさんは闘っているんですね
ギリギリの崖っぷちで」
ジン「ああ」
フローナはサラが調合した睡眠薬で眠らせた。
チェル「サラ、薬はどれくらい効く?」
サラ「かなり強力なので24時間、それ以上はフローナさんの体に負担がかかってしまいます」
チェル「24時間か」
ノエル「しっかし、フローナちゃんが気絶する事で術が解けたのは幸いだったな」
チェル「うん、そうだね」
そんな中、シェルに再会する。
チェルの顔を見るや否やシェルは異変に気付いた。
シェル「チェル、何かあったか?」
チェル「にーちゃん!!」
・・・。
シェル「なるほどな、チェル、とりあえずフローナちゃんの様子見させてくれないか?」
チェル「うん」
チェルはシェルをフローナが眠っている部屋まで案内した。
シェル「・・・」
するとシェルは膝を付いてしゃがむと、いきなり寝ているフローナの服をずらして鎖骨あたりまで肌消させた。
ゴンッ!!ゴスッ!!
直後、チェルのチョップ&ラナの踵落としが頭に炸裂する。
ラナ「フローナに何すんのよ!」
チェル「にーちゃんがそんな奴だったなんて知らなかった!」
頭に二つコブができて倒れたままシェルは人差し指だけを上げた。
シェル「まぁ待て落ち着け、これ見てみ」
ラナ「何このマーク?」
シェル「っと、あったこれだ」
シェルは懐から写真を取り出した。
チェル「同じマーク?」
シェル「俺の仲間も昔こいつに術をかけられた事があってな
潰したはずだったがまたノコノコ出てきやがったな、
主犯は俺らが始末したからおそらく意志を継ぐものが現れたんだろう」
チェル「居場所は?」
シェル「今どこにいるかは分からねぇが」
シェルは仲間を収集させた。
最初はぶつくさ言っていた仲間達だったが・・・。
シェル「悪いが説教は後で聞く、皆んな、こいつを10時間以内に探してくれ
出発は明後日に変更だ」
チェル「にーちゃん、いいの?」
シェル「当たり前だろ、俺はいつもお前が最優先なんだよ」
チェル「にーちゃん・・・」
シェルはガシガシっとチェルの頭を撫でるとあぐらを解き、立ち上がった。
シェル「俺達がいれば絶対大丈夫だ
こいつら優秀だからな」
シェルの仲間は嬉しそうにしている。先程までのお怒りがどこ吹く風。
レン「・・・コホン、行きますよ隊長」
その後。
敵の攻撃により周りにも被害がでていた。
戦いはかなり難航していた。
チェル「皆んな、この状況で他の人達まで守るのは無理だ
今はそれぞれ自分達が助かる事だけを考えて、
これは隊長命令だよ」
一同は頷く。
ノエル"チェルは前にこんな事も言っていた"
チェル「みんなに言っておきたい事がある
これから旅をしていく上で色々な事が起こるだろう
その上で2つ約束して欲しいんだ
1つ目は酷いと思われるかもしれないけどむやみに人を助けない事
不用意に人を信用せずまず疑って掛かって欲しい
この人は大丈夫といった自分の先入観で動いてしまうと見抜けるものも見抜けなくなるから
2つ目は何があっても自分が生きる事を優先する事
どんな手を使っても、だよ」
ノエル"俺はそう言う隊長好きだぜ"
ノエル「うわ!!」
ノエルは衝撃を食らってすっ飛ばされそうになった。
その時、背後に回ったガッとジンが支えた。
ジン「大丈夫か?」
ノエル「あぁ、助かったよ、それにしてもあいつ強いな・・・」
ジン「ああ・・・」
チェルが吹っ飛ばされた後、
跡を追おうとする敵をシェルの刀が止めに入った。
フローナ「!シェルさん!」
ラナ「ほっ・・・間一髪ね」
シェル「俺の可愛い弟にそれ以上手を出すな
次の相手は俺だ」
「ふん!それならお前も倒せばいいだけだ」
シェル「俺は今怒りで力の制御ができないんだ、手加減はしないぞ」
「笑わせるな!!」
しばらく攻防が続いた後。シェルは敵を倒した。
去り際。
チェル「にーちゃん!ありがとうー!!」
チェルは手をブンブン振りなながら叫んだ。
シェル「おー!またなー!」
シェルも同じように手を振りかえす。
ノエル「カッコいいにーちゃんだな」
ラナ「ええ、頼りになるお兄さんね」
チェル「えへへ、兄ちゃんは俺のスーパーヒーローだからね!」
チェルは誇らしげに人差し指で鼻の下をこするのだった。
第27話 ノエルに相談
フローナは夜1人で星を見ていた。
フローナ「はぁ・・・」
フローナ"ジン君ともっとイチャイチャしたいなぁ。でもあんま求め過ぎたら嫌われちゃうかな"
ノエルはたまたま目が覚めて起きてきた。
ノエル"あれ、フローナちゃんだ"
ノエル「フローナちゃん」
フローナ「ノエル君」
ノエル「寝れない?」
フローナ「あ、いや・・・」
ノエル「言いたくない事は言わなくていいけど
俺で良ければ聞くよ?」
フローナ「ありがと・・・実は」
ノエル「ふむ、つまり単刀直入に言うとフローナちゃんは欲求不満な訳だ」
バシバシっとフローナはノエルの肩を軽く叩いた。
ノエル「ははは、でもね大丈夫だよフローナちゃん
ジンはむしろそれを聞いたら喜ぶと思うよ?」
フローナ「そ、そうかな・・・」
ノエル「だって好きな女の子に求めてもらって嬉しくない男なんていないよ」
フローナ「あんまり求めたらすぐに飽きられちゃうんじゃないかって考えちゃって」
ノエル「他の男はともかく、ジンは大丈夫だよ
ジンはフローナちゃんを傷付けたりしないし、それにフローナちゃんが思ってる以上にジンはフローナちゃんに惚れてるからさ」
フローナ「ありがとう・・・」
ノエル「そう言うのはちゃんと話し合った方が良いよ?勇気いると思うけどさ」
フローナ「うん、ありがとう」
ノエルはフローナの頭をポンポンすると部屋に戻って行った。
フローナ"ノエル君優しいなぁ・・・私にお兄ちゃんがいたらこんな感じなのかな"
次の日。
ジン「フローナ、何かあったのか?」
フローナ「え?いや、その・・・」
ジン「ああ、いや、無理に言わなくて大丈夫だ
話したくなったらいつでも・・・」
フローナ「ジン君!あのね!私・・・その」
ジン「うん?」
フローナ「ほんとはもっとジン君とイチャイチャしたい!」(どどーん!)
ジン「ズガーン・・・え、ほんとに?」
フローナ「あんまり求め過ぎたら引かれるんじゃとかすぐに飽きられて他の子にいっちゃうんじゃとかぐるぐる考えちゃって
それで・・・」
その話を聞いたジンはフローナの両肩をガシッと掴んだ。
ジン「フローナ、俺は生涯フローナに飽きることはないし、フローナ以外の人のところへ行く事もない
ずっと君だけだ」
フローナ「うん」
ジンはフローナをぎゅっと抱きしめる。
ジン「だから」
フローナ「?」
ジンは一度体を離すと。
ジン「フローナも、その・・俺だけにしてくれないか?」
顔を赤くしながらジンは言った。
フローナ"キュン!!か、可愛い・・・"
フローナ「私もずっとジン君だけだよ!」
ジン「ありがとう」
フローナ"ジン君って時々、無自覚に可愛い事言うんだよなぁ
心臓が追いつかないや"
第28話 テレーゼ覚醒
激しい戦いの中、ジンは負けてしまった。
ジンが倒れている所が崩れて崖から落ちた。
ジンは意識がない。
チェル「ジン!!」
その直後フローナはジンが落ちた崖へ飛び込んだ。
ラナ「フローナー!!」
ジンに追いついたフローナは抱きしめた。
フローナ「お願いみんなの元へ戻れる為の翼を
あいつを倒せるだけの力を!」
パアァと光がフローナを包むとフローナに羽が生えた。
敵「今お前達もあの2人の元へ行かせてやる・・・何だ?何か来る」
フローナはジンをお姫様抱っこした状態で崖から戻って来た。
ラナ「フローナ!?」
ノエル「え、フローナちゃんに羽!?どうなってんだ!?」
チェル「フローナすっげぇー!!」
サラ「何がなんだか分かりませんが無事だったみたいですわね・・・」
ジン「う・・・フローナ?君は一体・・」
ジンは意識を取り戻した。
フローナ「ニコッ」
敵「ふん!羽が生えたから何だと言うんだ!」
敵はそんな事お構いなしに攻撃を放つ。
フローナが手を前に突き出すと衝撃を吸収した。
敵「何!?」
フローナが攻撃を放った。その瞬間、フローナの姿形がテレーゼのものへと変わった。
敵「ぐああ!!まさか、テレーゼの魂を持つものがいるとは・・・」
あっという間に敵を制圧した。
しかしすぐにフローナの姿に戻り意識を失った。
ラナ「フローナ!」
フローナ「すー」
ノエル「寝てるだけみたいだな・・・」
ジン「やはり、フローナはテレーゼだったのか」
チェル「あの時ジンが言ってたのはこの事だったのか」
ジン「あぁ」
ノエル「さっきあいつが消える前に言ってたんだがフローナちゃんはテレーゼの魂を持ってるのかもな」
ラナ「でも、そうだとすれば今までのも合点がいくわね」
チェル「まさかテレーゼの魂がフローナの中に存在していたなんて・・・」
番外編〜反乱の止め方〜
️とある街では反乱が起こっていた。
民衆「うおぉー!!」
そんな中、テレーゼ(クレナ)が姿を現した。
反乱の中へと進んでいく。
ラナ「あれがほんとにフローナなの?」
チェル「そうなんだって」
ノエル「信じられないよな、どっからどう見てもテレーゼだよ」
ジン「どうやら今のフローナは見た目と能力はテレーゼ、中身はフローナになってるらしい」
サラ「ややこしいですわね」
民衆1「え、テレーゼ!?」
民衆2「なぜあなたがここに・・・」
テレーゼ(クレナ)「戦いを止めなさい
さもないと、全員この場で皆殺しにしますわよ」(ニッコリ)
その一言で民衆の動きがピタッと止まった。
テレーゼ(クレナ)は皆んの方へ振り返るとペロッと舌を出してグーサインを出した。
ラナ「フローナね」
ノエル「フローナちゃんだ」
チェル「フローナだね」
サラ「フローナさんですわね」
ジン「間違いなくな」
第29話 サラの告白
海でお酒飲んでしばらくして・・・。
フローナ「ジーン君ぎゅーしよー!」
ジン「ドキッ、ああ」
ぎゅっ。
フローナはジンに小さくウインクした。
ジン"なるほど、そう言う事か"
ジン「フローナ、水買いに行こうか」
フローナ「うん!」
ノエル「フローナちゃん酔い方可愛いよなー」
ラナ「はいはい、すいませんねぇ、私は可愛げなくて」
ノエル「そんなこと言ってないでしょ、あ、追加で何か飲み物取ってこようか」
飲み物を取りに行こうとするノエルの腕をラナは引っ張った。
ノエル「ラナちゃん?」
ラナはそっぽを向いたまま腕を掴んでいる。
ラナ「・・・ここにいて」
ノエル「クスッ」
ノエルはふっと笑うとラナの頭をポンポンと撫でた後、寄り添うように座り直したようだ。
フローナ「やれやれ」
ジン「上手くいったみたいだな」
フローナ「ジン君合わせてくれてありがとね」
ジン「あぁ」
ジン"ほんとに君は凄いな"
ぎゅっとフローナはジンの手を握った。
ジン「!」
フローナ「えへ、今度は私の番」
ジンは微笑むとフローナを抱き寄せた。
チェル「いいなぁみんなラブラブで」
チェルは柵越しに両手で頬杖をつきながら言った。
すると後ろからサラが来た。
サラ「それなら私が慰めてあげましょうか?」
チェル「サラ・・・そんな君を利用するみたいなことできないよ」
サラ「私はそれでも構いませんけど?」
チェル「・・・サラって俺のこと好きなの?」
チェルはサラの方に体勢を向き直し聞いた。
サラ「ええ、好きですよ」
チェル「え、いつから!?」
サラ「秘密です」
チェル「えー教えてよ!」
サラ「だめです」
チェル「けち」
サラ「ケチでも何でもだめです」
チェル「むー・・・でもさ、だったら尚更そんな酷いことできないよ」
サラ「私は隊長が手に入りさえすれば隊長の気持ちなんてどうだっていいんです
私、結構悪い女なんですよ」
チェルは呆気に取られた後フッと笑うと礼を言った。
チェル「サラ、ありがとう」
サラ「ふふ、どう致しまして」
夕陽のオレンジが二人を優しく照らしていた。
番外編〜キルシュトルテの旅〜
皆んなでカフェに来た時の話。
チェル「あれ、サラはケーキ食べないの?」
サラ「はい、好きなケーキがなかったので」
フローナ「それは残念だったね・・・ちなみにサラの好きなケーキって何?」
サラ「キルシュトルテです」
フローナ「あー!あのさくらんぼの!」
ラナ「フローナよく知ってるわね」
フローナ「うん、前に一度だけ食べた事があって、確か東の街の山間部で産まれたケーキだよね?」
サラ「はい、子どもの頃に母がよく焼いてくれたんです私の思い出の味です」
フローナ「素敵な思い出だね」
サラ「ありがとうございます」
チェル「へぇ!サラの思い出の味かぁ、俺も食べてみたいなぁ」
ノエル「あ、思い出した、そう言えばブラックエミリアはさくらんぼの生産量世界一なんだっけ?」
サラ「よく知ってますね、そうですよ、なのでブラックエミリアではキルシュトルテをおやつに食べる人が多いんです」
チェル「フローナ食べた事あるって言ってたけど、ブラックエミリアで食べたの?」
フローナ「ううん、南の街にあるケーキ屋さんだよ」
チェル「他の街でも作ってるところあるんだ!」
フローナ「うん、南の街だとお店の数は少ないけどね、東の街なら多いんじゃないかな?」
チェル「俺、キルシュトルテ探しの旅したい!」
サラ「それはまた唐突ですね」
ノエル「チェル、すっかりキルシュトルテに興味津々だな」
チェル「だって、サラの好きなケーキなのに食べたことないなんて寂しいじゃん!」
サラ「(キュン)隊長・・・」
ノエル「じゃあ、明日探しに行ってみるか?」
チェル「え、いいの!?✨」
ノエル「俺はいいけど皆んなはどう?」
フローナ「私も行きたーい!」
ラナ「私もキルシュトルテっていうケーキがどんなものなのか気になるから行くわ」
ジン「俺も食べてみたい」
チェル「サラも行くよね?」
サラ「ふふ、分かりました、行きましょう」
チェル「やったー!」
こうして次の日、6人のキルシュトルテ探しの旅が始まったのである。
番外編〜パーティー〜
ダンス会場で踊ろうという事になり、男性陣はスーツ、女性陣はドレスに着替えた。
ノエル&チェル「「じゃじゃ〜んどう?」」
ラナ「あんた達ホストみたい」
ノエル&チェル「「ぶーぶー」」(金髪スーツコンビ)
ノエル「ラナちゃんとフローナちゃんは何着ても似合うね」
フローナ「ありがとう、ノエル君とチェルも似合ってるよ!」
ノエル「へへ、ありがとう」
チェル「ありがと」
ラナ「あれ、ジンは」
ジン「すまない遅くなった!」(キラキラ〜)
フローナ「ドキッ」
フローナ"わ、ジン君かっこいい〜‼︎"
ラナ「これは・・・ずるいわね」
ノエル「だろー?かっこよ過ぎだよな」
チェル「ジンかっこいいぞ!」
ジン「あ、ありがとう」
ジンは照れた様子だ。
女性1「ねぇねぇ、お兄さん一緒に踊らないー?」
女性2「えーずるーい私も私もー!」
男性陣はその場にいた女性達に誘われていたが・・・。
男性「ねぇ君達可愛いね、俺らと踊らない?」
女性陣は女性陣で男性達に誘われていた。
ノエル「ごめん、先客がいるんだ」
ジン「すまないが」
チェル「俺もごめんね」
女性達「「え〜!」」
ノエルはラナの元へ。
ノエル「ラナちゃん、踊ってくれる?」
ラナ「ほら」
ラナがぶっきらぼうに手を出すとノエルは嬉しそうに微笑んだ。
チェルはサラの元へ。
サラ「あら、隊長、フローナさんを誘わなくていいんですか?」
チェル「意地悪だね君は」
チェルは不服そうな顔をしつつ無言で手を出した。
その手をサラが無言のまま取る。
ジンはフローナの元へ。
ジンは膝をつくとそっとフローナの前に手を差し出した。
ジン「俺と踊って頂けますか?」
フローナ"わぁジン君王子様みたい〜!"
フローナ「はい!」
ラナ&ノエル
ノエル「やっぱジンのやつ凄いな
初めて踊るってのに
ちょっとダンスのやり方見ただけで見様見真似でできちまうんだもん」
ラナ「初めてで?凄いわね、でもノエルだって上手いじゃない」
ノエル「俺は幼い頃に無理矢理習わされてたから覚えただけだよ」
ラナ「でも、そのおかげで今私と踊れてるんだから
悪くはないんじゃない?」
ラナはそう言ってウインクをする。
ノエル「!ほんと君には敵わないな」
ラナ「それにしても、フローナってばジンにデレデレね」
ノエル「俺にはジンの方がデレデレしてるように見えるけどねぇ」
ジン&フローナ
フローナ"ジン君ってほんとかっこいいなぁ・・・こんな風にジン君と踊れる日が来るなんて夢みたい"
フローナは完全に目がハートになっている。
ジン"フローナドレス姿綺麗だ"
ジンはフローナを見て始終微笑んでいる。
ラナ「バカップルね」
ノエル「だね」
チェル&サラ
一方、その頃。チェルは辿々しく踊っていた。
サラ「隊長、本当に下手くそですねぇ」
ため息混じりにサラは言い放つ。
チェル「サラってば酷いな〜」
サラ「ほら、こうですよこう」
サラはチェルをリードするように踊った。
チェル「・・・フッ」
チェルはサラを見て微笑んだ。
サラ「隊長ちゃんと聞いてます?」
チェル「うん、聞いてるよ」
番外編〜肝試し〜
フローナ×ジン
暗くなった森の中を歩いているとバサっと鳥が羽ばたいた。
フローナ「きゃ!」
ジン「大丈夫か?」
フローナ「うん、ごめん暗いの苦手で」
ジン「大丈夫だ、何があっても守るから」
フローナ「あ、ありがとう」
ガサッと音と共に草むらからお化け役の人が出てきた。
お化け役「わ!!」
ジンは咄嗟に後ろに避けたのだが・・・。
ジン「うわっ」
思いのほか地面がぬかるんでいてジンが足を滑らせて転びそうになったのをフローナがガシッと受け止めた。
フローナ「大丈夫?」
ジン「ドキッ、あぁ・・・ありがとう」
何だかとってもいい雰囲気〜。
お化け役「・・・」
お化け役"・・・あれ、俺何してたんだっけ"
役目を忘れるお化け役なのであった。
また歩き始める。
ジン"守るとか言っておきながらなんてザマだ・・・"
フローナ「チラッ」
ジンの気持ちを汲んだフローナ。
フローナ「・・・ぎゅっ」
ジン「!?」
フローナ「暗いの怖いから掴まってていい?」
ジン「あ、あぁ」
ジン"フローナ、気づいてくれ、胸が当たってるんだ"
フローナは胸がないので胸が当たるという概念がそもそもない。
ジン"耐えるんだ俺・・・"
ノエル×ラナ
ラナ「ちょっとそんなに引っ付かれたら歩きにくいでしょ!」
がんじがらめに抱きついてくるノエルを引き離そうとするラナ。
ノエル「俺が暗闇苦手なの知ってるでしょ〜」
ラナ「ほら、手繋いでてあげるから
あんた置いてどっか行ったりしないわよ」
ラナ"全く、みんなに暗闇苦手なのバレたくないからって無理して来るんだから"
ノエル「ありがと」
チラッ。
ノエル"狭い空間じゃないからほんとは平気なんだけど
狡くてごめんね"
ノエル「ラナちゃん、手もいいけど腕ぎゅーにしない?」
ラナ「ノエル、あんたほんとは平気なんじゃ」
お化け「うらめしや〜」
ノエル「ぎゃー!」
ノエルはラナに反射的に抱きついた。
ラナ「こーら!くっつくなっちゅーに!」
ラナは引っ付いてくるノエルを再度引き離そうとするが。
ノエル「だってお化けが!」
ラナ「あんなの人間が変装してるだけだ・・・って」
お化けはスッと消えていった。どうやら本物だったらしい。
ラナ&ノエル「うそーん」
その後2人はくっついたまましばらく固まっていたそうな。
チェル×サラ
チェル「何が起きるのかなー♪わっくわっく♪」
サラ「お化け役の人とか出て来るんじゃないですか?」
お化け役「うらやめしやぁ!!」
お化け役の人が草むらからガサッと出てきた。
サラ「ほら、こんな感じで」
とお化け役を指差すサラ。
お化け役"やりずれぇなおい・・・"
チェル「サラはクールだなぁ、サラって苦手なものとかないの?」
サラ「さぁ?どうでしょうね」
チェル「何なに気になるじゃん!」
サラ「・・・」(ピタッ)
チェル「?」
サラが急に固まった為、チェルは首を傾げた。
サラは無言のままチェルの肩を指差した。
チェル「サラ?あぁ、何だ蜘蛛じゃん」
チェルの肩に大きな蜘蛛が乗っている。
サラ「隊長、それ以上近付かないで下さい」
チェル「サラ、ひょっとして・・・」
サラはいつもの余裕がある顔付きとは打って変わって焦った表情になっている。
チェル「ニヤニヤ」
サラにジリジリと近付くチェル。そう、肩に大きな蜘蛛を乗せたまま。
サラ「いーやー!!バシッ!」
ノエル「はははっ、それでサラちゃんに殴られたのか」
チェルの頬には手形がくっきりついていた。
チェル「うん」
チェルはテーブルに頬杖をつきながら言った。
ラナ「殴られて当然ね」
チェル「それから口聞いてくんないの」
サラ「ぷいっ」
ノエル「の割に嬉しそうだけどな」
チェル「え、そう見える?」
ラナ「ぜんっぜん反省してないわね」
フローナ「チェルは嬉しいんだよね、サラちゃんが感情を出してくれた事が」
チェル「・・・やれやれ、フローナには敵わないなぁ」
チェルは少し照れた様子で頬を人差し指で掻いた。
ラナ「ふーん、そういうこと」
ノエル「だそうですよサラちゃん」
サラ「・・・次やったら許しませんからね」
チェル「え、じゃあ今回のは許してくれるの?」
サラ「ええ、まぁ」
チェルはみんなの方を向くとニカッと笑ってピースサインをした。
一同"何だかんだ言って仲良いなぁ"
番外編〜お祭り〜
フローナ&ジン
フローナ「ジン君ジン君」
ペシペシとジンの腕を叩くフローナ。
ジン「どうした?」
フローナ「あれ食べたい」
フローナは綿あめを売っている屋台を指差した。
ジン「ああ、行こうか」
フローナ「うん!」
ジン"うーん可愛い"
ラナ&ノエル
ノエル「ラナちゃん何食べたい?」
ラナ「そうねー、たこ焼き良いわね」
ノエル「良いね、買ってくるよ、ここで座ってて」
ラナはグイッとノエルの袖を引っ張った。
ノエル「ラナちゃん?」
ラナ「一緒に行けばいいじゃない」
ノエル「何それ可愛い過ぎない?」
ラナ「う、うるさい///」
サラ&チェル
チェル「サラー!輪投げやろ!輪投げ!」
サラ「良いですよ」
チェル「え、いーの?やった!」
サラ「隊長楽しそうですね」
チェル「だって祭りだよ?そりゃあ楽しいよ!」
サラ"能天気のかたまり"
チェル「それに」
サラ「?」
チェル「サラといたら何だって楽しーもん!」
チェルはニカっと笑った。
しかし、サラは俯いてしまった。心なしか顔が赤く染まっている。
チェル「あれ、サラひょっとして照れてる?」
サラ「照れてません」
チェル「えーだって顔赤いよ?」
サラ「気のせいです」
チェル「そんな訳ないじゃん、いつもサラの事見てる俺が気付かないはずないよ」
サラ「!・・・私も・・隊長がいたら楽しいですよ」
それを聞いたチェルはニッと笑った。
チェル「行こ!サラ」
チェルが手を伸ばす。
サラ「えぇ」
チェルはサラの手を取って歩き出した。
サラ"本当にあなたは太陽みたいに笑う人ね"
番外編〜日常喧嘩〜
ラナ「ノエル!あんたって何でそうなの?」
ノエル「ラナちゃんこそ!」
2人は喧嘩しながら外に出してあるキャンプ用のテーブルと椅子が置いてある場所へと出て来た。
フローナ「今日は良い天気だねー」
ジン「そうだな」
2人は日向ぼっこをしながらのほほんと会話をしていた。
ラナ「あんたらは老夫婦か!」
フローナ「まぁまぁそんなカッカしないで」
フローナは両手で頬杖をついてへにゃへにゃ顔で言う。
ノエル「君たちはお互いに不満とかないのか?」
フローナ「んー不満かぁ・・・ないなぁ」
ジン「俺も・・・ないなぁ」
ぽやぽや〜。
ラナ「あんた達って喧嘩した事ないの?」
フローナ「喧嘩するような事ないしなぁ」
ジン「ないなぁ」
ぽやぽや〜。
ラナ「じゃあ試しにジンに怒ってみたら?」
フローナ「えー何もしてないのにジン君に怒るなんてできないよー、ジン君やってみてよ」
ジン「え」
ジンは少し考えた後。
ジン「・・・それならお互いやるのはどうだ?」
ノエル"ジン、自分がやるのが嫌とかよりもフローナちゃんの怒ってるとこ見たいんだな"
フローナ「OK!じゃあ先にジン君ね」
ジン「コホン、では
フローナこんな事しちゃダメじゃないか」
キラキラ〜と背景が輝く。
フローナ「キュン!今のいい!」
ジン「え?」
ラナ「ジン怒り方優し過ぎよ!」
ジン「じゃあ次フローナな」
ジンはキリッと言った。
ノエル「楽しそうだね君」
フローナ「分かった!コホン!
もー!ジン君のおたんこなす!」
フローナは両手を腰に当てながら言ってみせた。
これでも怒っているらしい。
ジン「ほわわ〜ん」
ジン"何だこの可愛い生き物は"
ジンは手でにやけてる顔を隠した。
ラナ「はぁ、何か2人見てたら怒ってんの馬鹿らしくなってきたわ」
ノエル「俺もー」
ラナ「ノエル、コーヒー入れて来ましょ」
ノエル「うん」
ラナの後ろをノエルはトコトコ付いていった。
フローナ「やれやれ」
ジン「まぁ喧嘩するほど仲がいいとも言うしな」
フローナ「そうだねぇ」
ノエル「ラナさっきはごめん、嫌いになった?」
ラナ「嫌いになんてなってない、私の方こそごめん言い過ぎたわ」
ノエル「仲直りのチューしよ」
ラナは少し照れた様子だ。
ラナ「うん」
ノエル"あれ、やけに素直だな、可愛い"
ノエルはされるがままのラナにキスをした。
すると今度はチェルとサラも部屋から出て来た。
2人ともムスッとしている。どうやらこの2人も喧嘩しているようだ。
フローナ「どしたの2人とも」
チェル「フローナ聞いてよ!サラってば私の方が好きなのよって言うんだよ!俺の方が好きなのにさ!」
サラ「ジンさんそんな事ありませんよねぇ?私の方がずっと好きだったんです、これだけは譲れませんわ」
チェル「いーや、俺の方が好きだ!」
サラ「いいえ、どう考えても私の方が好きです」
フローナ"うーん、側から見るとイチャついてるようにしか見えないけど本人達は至って真剣だしなぁ"
チェル「フローナはジンより自分の方が好きって思わない?」
フローナ「んー考えた事ないなぁ、ジン君はある?」
ジン「ないな、同じ気持ちなのだからそれで充分だ」
フローナ「ジン君とお揃い嬉しいー♪」
ジン「ああ、俺もだ」
ジンはフローナの頭を優しく撫でた。
チェル&サラ「・・・」
チェル"あれ、俺何でこんな怒ってたんだっけ"
サラ"あら、私何でこんな怒ってたのかしら"
チェル「俺飲み物持ってこよ」
サラ「私も」
ジン&フローナ「「やれやれ」」
みんなの精神安定剤カップル。
ノエル「お、チェル、サラちゃんも来たね」
チェル「ノエルは何にしたの?」
ノエル「俺とラナちゃんはコーヒーだよ
お2人さんは?」
チェル「俺はオレンジジュース」
サラ「私は紅茶を」
ラナ「じゃあ先に行ってるわね」
チェル「うん」
・・・。
チェル「サラ、ごめん、意地になって」
サラ「いいえ、私の方こそ言い過ぎましたわ」
チェルはサラをぎゅっと抱きしめた。
チェル「俺、サラしか見てないから」
サラ「はい、隊長、好きですよ」
チェル「うん、俺も好きだよ」
二人はちゅっと軽く口付けをしてし戻って行った。
第30話 隊長を守れ!
レストランにて。
男「なぁなぁねーちゃん、あんた綺麗だな、俺と飲まない?」
サラ「あの、お気持ちはありがたいんですが・・・」
男「ちょっとくらい付き合ってよ〜」
男はサラの肩を掴んだ。
バシッとその手をチェルが払う。
チェル「サラに触るな!」
サラ「隊長・・・」
男「何だとこの!」
男はチェルに殴りかかった。
サラ「!」
サラは咄嗟にチェルを庇った。
チェル「サラ!!」
チェルは咄嗟にサラを抱き寄せた為、かすり傷で済んだ。
チェル「サラ、血出てる」
サラ「大丈夫ですわ、これくらいかすり傷ですよ」
チェルは相手を睨むと胸ぐらを掴んだ。
男「ひっ!」
サラ"あ、これは・・・隊長がやばい"
サラ「隊長!私なら大丈夫ですから!」
チェル「・・・二度とサラに近づくな」
相手はそのあまりの剣幕に怯んだ様子で逃げていった。
チェルは俯いたまま拳を握りしめている。
サラ"こんな隊長初めてだわ"
遅れてフローナ、ジン、ノエル、ラナもお店に入って来た。
ラナ「あーいたいた!ってどしたの?」
サラ「皆さん・・・」
ノエル「わ、サラちゃん顔から血出てるじゃん」
チェル「悪い、みんな、サラを頼む」
ラナ「え?チェル?」
チェル「少し待ってて欲しい、すぐに戻る」
チェルの様子が明らかにおかしい。
ノエル「・・・分かった」
フローナ「・・・・」
ジン「・・・・」
ラナ「あんなチェルの顔初めて見た
大丈夫かしら一人にして」
フローナ「大丈夫だよ、チェルは待っててって言ってた、待とう」
ジン「そうだな」
ノエル「サラちゃんさっき何があったの?」
サラは先程のトラブルを一通り話した。
ノエル「なるほどね、それにしてもあの隊長があそこまでなるなんてな」
ラナ「サラが傷付けられてキレたのは分かるけれど
それだけじゃない感じだったわよね」
ジン「力が暴走しないように抑えているようだったな」
フローナ「半分妖怪だって言ってたから妖怪の闘争本能みたいなものがさっきのをきっかけに一時的に出てきてしまったのかも」
ラナ「そう言われると納得だわ」
ジン「俺達が行けば余計に動揺させてしまうかもしれないな」
フローナ「うん、今は隊長を信じて待とう」
サラ「心配ですけどそうするしかないですわね」
ノエル「サラちゃん大丈夫か?」
サラ「ええ、私も隊長を信じてますから」
チェルは森の中へ入ると蹲った。
チェル"おさまれ、おさまってくれ!みんなが待ってるんだ、
たまにある、妖怪の闘争本能みたいなものが湧きあがってきて制御できない事が
ここまでなったのは初めてかもしれない"
シェル「チェル、自分の力が暴走することがあっても自分を見失なうな
強い意志さえあれば自分を見失なうことはない
どんな事があっても仲間を傷付けるな
守り抜け最期まで」
"いつだったか兄ちゃんに言われたことがあったっけ・・・兄ちゃん・・・"
ふらつきながら歩いていると湖を見つけた。チェルは倒れ込むように中へ入った。
バッシャーン!
チェル"あーやばい、なんか急に力抜ける、
このまま沈んでったらそしたら俺、死んじゃうよな、
そしたら皆んなに会えなくなる、
ラナ、ノエル、フローナ、ジン、サラ"
ザバッと水面から顔を出した。
チェル"戻ろう、皆んなの元へ"
レムレス「ククク」
不意に笑い声が聞こえる。
チェル「誰だ!?」
レムレス「お前、半妖だな」
チェル「そうだけどお前は?」
レムレス「俺はレムレス、お前を絶望へと引きづり込んでやる」
チェル「何!?うわ!?なんだこれ!」
ツルのようなものが足に巻きついてきた。
レムレス「ククク、それはな、幻影を見せる植物さ、そのまま幻影の中でくたばれ」
フローナ「ピクッ」
サラ「フローナさん?」
フローナ「行こう」
ラナ「行くってどこへ」
フローナ「チェルのとこへ」
ノエル「え、でもさっき待ってるって」
フローナ「さっきまではね
でも今はなんか凄くやな予感するの」
ジン「・・・行こう、君の予感は当たるからな」
サラ「隊長・・・どうかご無事で」
レムレス「そいつはな、自分の不甲斐なさを埋める為にわざわざ難ありそうなお前達を仲間にしたのさ
そうする事で必要とされていると思いたかったのさ
哀れだなぁ」
フローナ「黙って聞いてればごちゃごちゃうるさい男ね!
そんなの私だってそうよ!
必要とされたいって思って何がいけないのよ!」
ラナ「そーよそーよ!ざっけんじゃないわよ!」
サラ「隊長は私達にとって大事な人ですわ!侮辱するのなら許しませんわ!」
レムレス「ふん!そんなもの弱さでしかない!」
フローナ「それが弱さだって言うなら私は一生弱くて上等よ!
大事な人を犠牲にするのが強さなら強さなんて要らない!」
ノエル「そーだそーだ!お前みたいな奴に俺らの隊長を思う気持ちは理解できないだろうけどな!」
ジン「チェルは皆んなの光だ
貴様なんぞに消させはしない!」
レムレス「貴様ら」
チェル「みん、な・・・?」
やっとチェルの意識が戻った。
ノエル「チェル!今助けに行く!」
チェル"俺が一人犠牲になれば皆んな助かる"
チェル「ダメだよ!俺のせいで皆んなが傷付くなんて嫌だ!だから、このまま俺を置いて逃げて!」
ラナ「何言ってるのよ!そんな事できるはずないでしょう!?」
フローナ「そうだよ!どんな危険があったって助けに行くよ!」
ジン「もちろんだ」
サラ「当然ですわ」
ノエル「チェル、お前がいなくなったら俺達は旅を続けられない!お前が1人犠牲になる事は俺達を守る事じゃない」
チェル「ノエル・・・」
ノエル「隊長は素直に助けてって言えばいいんだよ」
ノエルはニッと笑った。
その言葉に全員が頷く。
チェル「!・・・ごめん、みんな助けて」
一同「了解!!!」
みんなが力を合わせ、なんとかレムレスの呪縛からチェルを救い出そうとするが・・・。
ノエル「俺とジンがあいつを惹きつける、その間に三人はチェルの元へ!」
ラナ「分かったわ!」
フローナ「了解!」
サラ「二人ともお気をつけて」
ジン「ああ」
レムレス「邪魔だ女ども!!」
レムレスが三人に攻撃しようとするが、ジンの刀がそれを止めた。
ジン「お前の相手は俺達だ」
レムレス「チッ」
ノエルがザッと横からレムレスの頭を銃で狙う。
しかし、打つ瞬間、レムレスが姿を消したかと思うと頭上に飛んだ。
ノエル「あーくそ!いけたと思ったのに!」
レムレス「お前の動きは遅過ぎる!」
ノエル「ぐあっ!!」
ノエルはレムレスの攻撃で後方へ飛ばされた。
木にぶつかる手前でジンが受け止める。
ジン「ノエル、大丈夫か!?」
ノエル「助かったよジン、ありがとな」
ジン「ああ・・・しかし、空中に飛ばれたらさすがに手の出しようがないな」
ノエル「人間の体じゃ対応できる範囲は限られてるからな」
チェル「ジン、ノエル、後は俺に任せて!」
ノエル「チェル!!」
ジン「戻ったか」
レムレス「何!?俺の妖術が解かれただと!?」
三人はジンとノエルにグーサインを出している。
どうやら三人がチェルに寄り添うことで呪縛が解けたようだ。
ノエル「さすが俺らのお姫様たちだ」
レムレス「ばかな、どうやって・・・」
ノエル「よう、知ってたか?女の子の力はな物理的なものだけじゃないんだぜ?」
そして、敵の呪縛から解放されたチェルは敵に向かって走り出した。
チェルは怒りから目の色が変わり、走っているその姿が虎とダブって見える。
ノエル「チェル!」
チェルは敵を爪で切り裂いた。
レムレス「ぐああ!!」
・・・。
チェル「皆んな、ごめん助かったよ」
ラナ「もう!心配したのよ!」
ノエル「フローナちゃんが異変に気付かなかったら
ヤバかったな」
チェル「え、フローナが?」
サラ「そうですよ、最初は待つつもりだったんですけど
途中からフローナさんが隊長が危ないって教えてくれたんです」
フローナ「完璧、感だったけどね!」
ジン「フローナの感は当たるからな」
チェル「皆んなありがとう
俺、皆んなに会えて本当に良かった」
サラ「私も隊長に会えて良かったですよ」
ラナ「私だってそうよ」
フローナ「私もチェルがいて良かった!」
ノエル「俺もだよ」
ジン「俺もチェルの存在に救われてる」
チェル「みんな・・・ありがとう」
チェルは大粒の涙を流した。
サラがチェルを抱きしめる。
チェル「サ・・・」
サラ「良かった、あなたが無事で」
その言葉を聞くとチェルはぎゅっとサラを抱きしめ返した。
チェル「ごめん、取り乱して」
サラ「嬉しかったですよ、私の為にあんなに取り乱してくれるなんて思ってなかったので」
チェル「グスッ、そりゃなるよ、だって」
サラ「だって、何ですか?」
チェル「これ今言わなきゃダメ?」
サラ「ダメです」
ラナ「あらあら、いつものチェルに戻ったわね」
フローナ「ね!2人とも可愛い」
チェル「俺サラの事好き・・・」
サラ「無理して好きって言わなくてもいいんですよ」(ツーン)
チェル「そんな事ないよ!好きだよ!」
サラ「本当ですかねぇ・・・」
サラがじと〜っとチェルを見る。
チェル「ほんとほんと、ちょー大好き!」(もはやヤケクソ)
サラ「隊長」
チェル「うん?」
サラ「私も好きですよ」
サラはニコッと笑った。
チェル「サラー!!」
ノエル「フッ、ラブラブだな」
ジン「あぁ」
第31話 願いが叶う木
ついに願いが叶う木を見つけた6人。
願いが叶う木が何でも願いが叶うというのは少し違っていて死人ともう一度だけ話せると言うものだった。
<ジンと母>
すうっと一人の女性が現れた。
ノエル「誰この綺麗な人」
ラナ「てゆうかジンにそっくり!」
ジンの母「私はジンの母親です」
ジン「え、あなたが・・・」
ジンの母「私はあなたを産んですぐに病で死んだの
本当は私があなたを守らなくちゃいけなかった
本当にごめんなさい」
ジン「いや、あなたはずっと俺を守ってくれていたよ」
ジンの母「ジンはいい子ね」
ジン母はジンの頭を優しく撫でた。
ジン「!俺はあなたのおかげでセノや皆んなに出会えた
感謝してるよ」
ジンの母「そう、楽しく過ごせてるみたいで良かったわ
皆さん、これからもジンの事よろしくね」
チェル「もちろんだよ!」
ノエル「とゆうか俺らがジンに世話になってるよな」
ラナ「本当ね」
ジン「皆んな」
ジンの母「ジン、あなたと話せて良かったわ」
ジン「俺の方こそ会えて良かった
ありがとう、"母さん"」
ジンの母「ありがとう、母さんて呼んでもらえて嬉しいわ」
ジンの母はジンをそっと抱き締めた。
ジン「母さん・・・」
ジン母は消えていった。
ノエル「良かったなジン!お前ちゃんと愛されてたんだよ」
ジン「ああ」
<ジンとセノ>
すうっと一人男性が現れた。
ジン「セノ!!」
セノ「よおジン、デカくなったなぁ!」
セノはジンの頭をワシワシっと撫でる。
セノ「元気そうだな」
ジン「ああ」
セノ「ジン、良い仲間に出会えたみたいだな」
ジン「ああ、本当に良い仲間さ」
セノ「良かったよかった!お前さん達、ジンの事、これからもよろしく頼むよ」
一同「もちろん!!」
<ラナと兄>
兄と再会。
ラナ「お兄ちゃん!!」
ラナの兄「ラナ、元気そうだな」
ラナ「うん」
ラナの兄「ラナ、お前はもう俺がいなくても大丈夫だ」
ラナ「嫌・・ずっとここにいてよ、お兄ちゃん・・・」
ラナの兄「ラナ、お前には仲間が、そして彼氏がいるんだろ?
お前はもう一人じゃない、だから大丈夫だ」
ラナ「う・・・う・・・」
ラナの兄はラナをそっと抱き締めた。
ラナの兄「ラナ、お兄ちゃんそろそろ行かなくちゃいけないんだ、だから笑って送ってくれないか?」
ラナ「ひくっ・・・うん、分かったよお兄ちゃん」
ラナの兄はラナの頭を撫でると消えていった。
ノエル「ラナちゃん・・・」
ラナ「ノエル!!」
ラナはノエルにしがみついた。
ノエルはラナを抱き締めながらラナの兄がした時と同じように優しく頭を優しく撫でた。
<サラと母>
母親と再会。
サラ「お母様、私はあの時、あなたを助けられませんでした、ごめんなさい・・・」
サラの母「いいのよサラ、あなたがこうして生きていてくれたんだから
あなたは今幸せなのね?」
サラ「はい」
サラの母「良かったわ、それだけが心残りだったのよ
皆さん、サラを助けてくれてありがとう」
チェル「お礼を言うのは俺らの方だよ、サラがいたからフローナの風邪を治せたし、怪我をした時に仲間の治療ができてる、
俺ら、サラに出会えて良かった!」
サラ「隊長・・・」
サラの母「あらまぁ・・・サラってばいつの間にこんな素敵な彼氏ができていたのね」
サラ「え、どうしてそれを・・・」
サラの母「うふふ、二人の顔を見ていれば分かるわよ」
サラ「かああぁ・・・」
サラの母「じゃあ、私はそろそろ行くわね
皆さん、サラをこれからもよろしくね」
一同「はい!」
<チェル>
願いが叶う木は死んだ人間ともう一度だけ話ができるというものだった。
ラナ「残念だったわね、願いが叶う木じゃなくて・・・」
チェル「もういいんだ!」
ラナ「え?」
チェル「俺の本当の願いはもう叶ったから」
ノエル「本当の願い?」
チェル「うん、仲間を見つけて旅をする事!
そりゃあ人間にはなりたかったけど、この力があるから仲間を守り続けられた訳だし
こんな大好きな仲間と旅ができたんだもん!」
ノエル「チェル・・・」
フローナ「うんうん、それに彼女もできたしね♪」
チェル「えへへ」
サラはチェルの笑顔を見た。
サラ「・・・」
<ノエルとフローナ>
ノエル「俺とフローナちゃんには木の力、発動しなかったね
俺はともかく、フローナちゃんには発動すると思ってたよ」
フローナ「うん、きっとおばあちゃんとおじいちゃんは私に仲間ができた時にはすでに天国に行ってたんだと思う
それくらい皆んなのこと安心できる存在だって分かってくれたんじゃないかな」
ノエル「そっか・・・フローナちゃんって意外と強いよね」
フローナ「えー?そうかなぁ?」
ノエル「うん、俺はそう思うよ」
フローナ「ニッ、ありがとう」
「フローナ」
「ジン」
その時、声が聞こえてきた。
フローナ「え?」
ノエル「なんか今声が・・・え!?フローナちゃんと、ジンが二人!?」
目の前に一人の女性と男性が現れた。
女性はフローナに、男性はジンにそっくりだが
二人とも髪が長く、浴衣姿に下駄を履いている。
ジンは侍、フローナは町娘のような格好だ。
チェル「でも、服装も髪型もだいぶ昔っぽいよ??」
第32話 500年前のジンとフローナ
500年前。
戦いに明け暮れる日々。
つかの間の休息とも言える時間。
俺はずっと君だけを見ていた。
ジン「何があろうとも俺はあなたを守る」
フローナ「ジン様・・・」
ジン「!」
フローナ「危ない!」
逃げている途中、敵の放った矢がフローナの背中に刺さった。
ジン「フローナ!」
フローナ「ジン様、早くお逃げ下さい」
ジン「フローナを置いてなど行けぬ」
フローナ「私はもう・・・」
ジン"城は火を放たれしばらくすれば焼け落ちる
とは言え外へ出たとしてもすぐに殺されるだろう、
それに・・・フローナのこれは致命傷だ、
ならば道は一つ"
ジンはフローナをぎゅっと抱きしめるとそのまま抱えて城の中の部屋に向かった。
フローナ「駄目ですジン様」
ジン「あのまま外へ逃げたとしてもすぐに敵陣に打たれ死ぬ、それならば」
フローナ「ジン・・・さま」
ジンの部屋にたどり着く。
ジン「フローナすまない、守り切れないばかりか君を盾にしてしまった
生まれ変わったら必ずやあなたを守り抜くと誓う」
フローナ「ジン様、生まれ変わったら今度は私からあなたを探しに行きます
その時はまたお側にいて下さいますか?」
ジン「あぁ、フローナが望む限り側に・・・」
言い終わる前にフローナは息絶えた。
ジン「っ・・・」
ジンは涙を流しながら刀を抜くと自ら自害した。
500年後。
チェル「そんな過去があったんだね」
ノエル「ぐすっ・・・」
ラナ「そんな事があったの」
ラナは泣いているノエルにティッシュをノエルに渡した。
ノエル「ずびー!ありがと」
ラナ「どういたしまして」
フローナ「そうだったの・・・だから懐かしく思う瞬間があったのね」
ジン「記憶が断片的に残っていたのはそういう事だったのか」
500年前のジン「ジン、あの時私はフローナを守り切れなかった
現世ではあの日の約束を果たせるよう彼女を守ってほしい」
ジン「あぁ、命に変えても守る」
500年前のフローナ「フローナ、今度は二人共生きて幸せになって」
フローナ「うん」
そして2人は消えていった。
チェル「願いの叶う木の力でまさか500年前の二人に会えるなんて・・・」
フローナ「びっくりしたよ」
ジン「ああ、だが、これで納得した」
フローナ「何を納得したの?」
ジン「最初に会った時も、旅の途中でも、何度か君を見て懐かしい気持ちになったことがあったんだ
その時は気のせいかと思っていたんだが・・・今やっとその答えが分かった」
フローナ「え、ジン君も?私も実は懐かしさ覚えた時あったよ」
ラナ「つまり二人は500年前からずっと固い絆で結ばれてたカップルだったってわけね」
サラ「ロマンチックですわね」
フローナ「えへへ、うん!」
ジン「そう言われると気恥ずかしいな」
最終話 僕らの物語
チェル「解散しよう」
そう言ったのは隊長だった。
次の日の朝。
サラ「隊長、良いんですか?」
チェル「目的は果たしたんだ
確かに俺は出来る事ならみんなとずっと一緒にいたい
だけど皆んなにはそれぞれの幸せがある
俺の勝手な都合にこれ以上付き合わせる訳にいかない」
サラ「隊長・・・」
ノエル「ラナちゃん、君はこれからどうしたい?」
ラナ「私は・・・これからも旅をしたいわね」
ノエル「じゃあそうしよう」
ラナ「でも、ノエルはそれでいいの?」
ノエル「俺はラナさえいればいいんだよ」
ノエルはラナの頭を優しく撫でた。
ラナ「ありがとう・・・」
ジン「フローナ、これからどうしたい?」
フローナ「私は・・・・」
ジン「どんな答えでも俺はそれが一番だと思ってる
フローナの正直な気持ちを聞かせてくれ」
フローナ「私、旅を続けたい
皆んなとこれからも一緒にご飯食べたり笑ったりしたい」
ジンは微笑むとフローナの頭を撫でた。
ジン「ああ、そうしよう」
フローナ「ジン君はそれでいいの?」
ジン「ああ、俺も君と同じ気持ちだ、だからチェルたち旅立ってしまう前にちゃんと伝えよう、俺たちの想いを」
フローナ「うん、それを聞いてチェルとサラがどう応えるかは分からないけど、このままサヨナラなんて絶対後悔するもんね」
チェル「サラ、付いて来てくれないか?俺といたら君を幸せから遠ざけてしまうけど」
サラ「隊長、私は今とても幸せですよ
私の幸せは私が決めます、勝手に私の幸せを決めないで下さい」
チェル「サラ・・・ありがとう」
二人が旅立とうとしたその時。
サラ「隊長、私は自分の幸せは自分で決めるって言いましたよね」
チェル「え、う、うん」
サラ「皆さんも同じみたいですよ」
チェル「え」
チェルが振り返るとそこにはみんなが立っていた。
チェル「皆んな、なんで・・・」
ノエル「隊長、散々俺らを振り回しといてそりゃないんじゃないか?」
ラナ「人の幸せ勝手に決めないでくれる?」
フローナ「2人がいないと寂しいよー!」
ジン「ああ、俺もだ」
チェルは泣きながら皆の元へ走った。
サラはその背中を微笑ましそうに見つめている。
ノエルとジンに抱きつくチェル。
ノエル「たーいちょう、泣き過ぎだよ」
ノエルはポンポンとチェルの肩をあやすように叩いた。
ラナ「そう言うあんたも泣いてるじゃない」
フローナ「ラナちゃんだって」
サラ「良かったですわ」
フローナ「うんうん」
ジン「ほんとに」
チェル「ジーン!」
ジン「うん?どうした?」
チェル「泣いたらお腹減っちゃった!」
ジン「ああ、何か作るよ」
ラナ「もう、チェルはほんっとお子ちゃまなんだから」
フローナ「ぐー、そう言えば朝ごはんまだだった」
ノエル「そう言えば忘れてたな」
サラ「ふふふ」
朝食後。
チェル「さて、朝ごはんも食べたことだし出発しますか!」
一同「おー!!」
晴天。
チェルの旅の始まりの日と同じように雲一つない青空がどこまでも広がっている。
今日もチェル、ラナ、ノエル、フローナ、ジン、サラの六人による旅が始まった。
僕らの物語はこれからもずっとずっと続いていく。
〜街の特徴〜
〜南の地〜
海に囲まれている
小さな島国がいっぱいある
温暖な気候
(マルタ島のような場所とオーストラリアのような場所がある)
〜北の地〜
山に囲まれている
川が流れている
(中国の桂林のような場所)
〜東の地〜
都会的
出店が多い
カフェが多い
(イギリスのような場所とトルコのような場所がある)
〜西の地〜
砂漠地帯
栄えた街もあり
(モロッコのような場所とトルコのような場所がある)