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62 アーレインからシウタ

アーレイン・フリュグリッド


「「シウタさん、お酒は夜でいいんじゃないかしら??」」


サリと声をそろえて誘導し、まずは温泉へ。

完全に作戦どおりよ。


旅館の女将リューラーと組み、旅館の大浴場に 『一緒に入れる混浴の儀式』 を復活させたわ。


もしも、混浴がフェミ団体にバレたりしたら・・・


「同時入浴? タイムテーブルをわけてください」

「公共の場は性別ごとに安全を確保する必要があります」

「映像取らなきゃ! 湯けむりでどうせ見えないって、見えないなら男女一緒でも困らないでしょうが!」

「温泉もバリアフリーの時代だよ! 混浴は性被害を助長させたりなんてしない! 男性には輪郭をエロく見せるボディスウウウツウゥウウウを着せるんだよ!」

「天才あらわる!早く予約取らないと!」


と、賛否両論の大炎上よね? この旅館10年先まで予約が埋まると思うわよ。

リューラーも賭けに出たわよね。成功するか、大炎上をするか、燃え盛り灰になるか。


でも、どう考えても混浴なんて狩場よね。

そんな所に来てくれる人なんて、シウタさんしかいないわよ。


シウタさんに勇気を出して混浴だと伝えたら 「あ~、なるほど。ありましたね、そういう所。古くからあって時代と共に今は無くなった文化ですよねぇ。 行きましょうか、ハハッ、目のやり場に困って視線が泳いだら、そういう事ですので、ご勘弁願えたらと思います」


完全にOKサイン。 

私達の目つき、狩りをするネコ科の目になっていたわね。

バレていないかしら?


でも、完璧な布陣になるはずだった。

ところが先に浴場に入り、監視カメラチェックをしていた所、箱舟AIのドローンが陣形を組んで飛来。


予測済みよ。浴場の籠から小型ジャミング弾をばら撒き次々と撃墜させる。


それでも散開したドローン機体が何かを探すように彷徨っている。

どこかに指揮を執る者が居るわね。

早く潰さないと。


このままでは、シウタさんの綺麗に配慮された湯けむり映像が出回り、邪悪な 『混浴』 発案者が燃やされるわよ。

旅館の所持者であり混浴の発案者は、リューラーと言う事で話がついているけど、火の粉は少ない方がいいわね。


私は脱衣場にブチ入り、即座に浴衣を羽織る。

鏡の前で緊張のあまり、何度もタオルを巻き直しているサリの耳元へ囁いた。


「ここにシウタさんが居る事を、気づいた者がいるわ。処理してくるから、先に入ってて? まだ手を出しちゃだめよ?」 と促す。


「はい? えっ、夢のようなシチュエーションですけど、アーレ大佐! 無理ですって! こんな状態で理性が持つと思いますか! ヘールプ! 助けが必要ですよー! ああああああああああ!」


かわいい悲鳴よね。

一番の約束をしたから、今でもいいと思うけど。

時と場所と雰囲気を選ばないと、嫌われちゃうわよ?


ガラガラガラ! パン! スパァアアアアン! スパァアアアアアン!


そういう風に、即座にシウタさんと出来ればいいのだけど。

上手くいかないと思うわよ。


最高の取れ高が浴槽に来ると言うのに、今ここにいられないのが少し悔しいわ!


こっちも指揮者をスパァアアアンと締めて来るわよ。

時間が無いわ。

シウタさんがのぼせるまで、戻らないと。


――


浴衣の裾をたくし上げ、全力疾走。

道端の巨大で愛らしい現生動物たちは、私と目が合った瞬間に一斉逃走してるわ。

怖がらせたかしら?

人は進歩し続けているの、現生生物では相手にならないわね。


腕のホログラム端末を起動すると、ミリ軍曹から 「大佐、サリの番に混ざるのはズルくないです?」 と、恨みがましいメッセージが点滅していたけど、今は無視よ。

そのまま端末でドローンの発信元を逆探知、座標ロックできたわ。


岩棚の上ね。

ブースターブーツを起動させ、ジェットが青白く閃く。

反発力を太ももへ伝え、一気に跳躍する。

岩棚へ着地すると、帝国と意外な協力者が、夕焼けの赤く染まる空の下に立っていた。


「ねぇ、ミリ。帝国と組むのはズルくないのかしら?」


帝国のジャケットを着ているミリ軍曹。

連絡を取るために通信装備一式貰ったのね? 帝国は払いがいいからいいわよね~。


「ララス殿下、私には、大佐と口論ディスピュート では勝てない。ここは、託します」


夕日に染まる殿下、その服装から勝負服と言うのがわかるわね。

ここ一番で映えているのが、高貴な血のなせる業かしら。


「お兄様の恋路は銀河の国家全体の行く末。余には見届ける義務がございますわ」


と、夕日に頬を染めながら、気もそぞろに温泉を映し出しているホログラムの方に二人の顔が向かう。

ホログラム映像には上手く温泉にたどり着いたドローンが、温泉ライブ映像を映し出していた。


浴場の現場では、サリが頬を桃色に染めシウタさんの背中を流している。

もう、背中と胸がくっつく距離。

湯けむり越しでもドキドキが伝わるほどいい雰囲気じゃないの!


ちょっとまって!? いつの間にこんな進展していたの!?


「ポルノォオオオオオ!! 急いで参加しないと大変な事になるわよ?!!?」

「大佐!?!? 静かにお願いします。始まったら、参加しにいきましょう!?!?!」


「頭が爆発しないネトネトもあるのですね。

尊い、尊いです。まさか、初めてが多人数でこんな形になるとは。

描いた夢と現実はだいぶ違う物ですね。 帝国も連邦もラブアンドピース! 悟りました、情熱こそ世界を繁栄させていく源なのです。では、余は布団の中に待機していますね」


――


シウタ


――


温泉から上がり、ホカホカ。

サリさんとギリギリのプラトニックで健全な温泉だった。

と思う。


部屋の中が和風なんだよね。未来で浴衣を着るとは思わなかった。

地球って実は近いんじゃないの? ねぇ、ボイジャー1号と2号の黄金記録、この銀河に届いてるでしょ。


そして、ふすまが紙障子だ。穴開けて遊ぶと目から火が出るぐらい殴られるやつ。

インディアンは子供に火を当てて、火に対する注意喚起する。日本は、障子で遊ぶとカチこまれる。


そんな事を思い、そっと障子を開けた。

灯篭の柔らかな光と、金色の瞳がキラリと光る。

ひざを折って座っているアーレイン大佐がいた。

浴衣は胸元を緩くむすび、帯の下からこぼれる白い太ももがちらちらとしている。


金色の瞳を細め、手を口元に手を当て 「今夜はゆっくりと、ね?」


と、刹那 「スパァン!」 と障子が開く音。

振り向く間もなく腰に腕が回る、サリステア伍長だ。


「大佐だけ先行なんてズルいですよー! まずは私が。ぎゅっ!」


あれ? 腕が細いのに、逃げることが出来なさそうな力強さ。

物凄い心音がドクドクと背中越しに伝わる。


そういう事? まだ日も沈んでないと言うのに、なんて積極的な。

あ~はいはい、せいぜいご奉仕致すとしますかね。


と、そのまま覚悟を決めて布団をめくると、紫が寝ており目が合う。

紫髪のララス殿下が頬を染め、上品に口に指をそろえて微笑んでいた。


合った目をそらし出口を見ると、浴衣姿の黒ロング、ミリ軍曹が音も無く腕を組んで立っている。

そして、白い歯をキラリ。


あっ、これ〇んだ?


肉体の波に襲われたような気がして、意識がここで途切れる。


――


目を開けるとフワフワとした雲の上。

蒼い髪の女性が、アンテナ式のブラウン管を見ながら寝そべっていた。


「はい、これも悪役令嬢に転生。これも、悪役令嬢に転生ですよぉ。マッチョの悪役男爵に転生? 一時期話題になるけど、3日後には消えるわねぇ。もうダメなのかしら、転生ブームもおしまいなの?

いえ、そんな事はないわ。太古の昔話から引き継ぐ、与えられた力を振う黄金構成は、また形を変え出て来るはずです。次々と送り込まないと、火が消えてしまう」


ぶつぶつ何かを言っているが、そんな事より下界に送って欲しい。

こんなアホな最後を迎えてられないって。


「もしもし、自分が心から尊敬致します女神様。ちょっと意識だけ早めに天界に来てしまったようです。 戻してもらっていいですかね」


「わっ!? 早かったわね。 もう〇んだの? 見てたけど、残虐だったわね~。人はNPCじゃないのよ。引き金軽すぎ~。残虐すぎてウケるわ」


何か腹立つ女神だな。


「いいから、戻してください。まだここに来る時でもないでしょう。 無罪、合意無き行為です。自分はやられた。自分、れーぷされました」


「それって、タイガーマスクのコント? タイガーマスク! あれ? みんなで楽しんでたように見えたけど気のせいだったかしら」


「うわぁ、暇して見てたんですか? テンション高くない? もうコントの時代じゃないですよ。もう人は動画のショートコントしか見ないんですから。コントを行儀よくみるのは好きな人だけですって。さぁ、お願いします。送ってください」


「はいはい、しっかり繁栄してきてくださいね~。いってらっしゃい」


覚えがある光に包まれ、また意識は遠のく。


目が覚めると医療ポットの中。

今日一日だけでも、シャワーから、温泉、そして医療ポット。

身体ふやけるわ。


「「「目が覚めたのね! 良かった・・・!」」」


そうね、あれは夢だったんだよね。

朝チュンじゃなくて、医療コポコポ。


あれ? 何しに来たんだっけ。

体を休めに来たんじゃなかったの。


――


翌日、炎上した。

ゴウゴウと燃え上がっている。


箱舟AIがアップした動画に 「混浴」 というタグが付いて公開へ。

うまい具合に湯けむりが色々と隠し、箱舟より上質なモラルAIの添削を逃れたみたいだ。


ばっちりと、自分とサリさんが背中を流すシーンが映り。

別のカメラから浴衣に着替えて、いそいそ部屋に入り込む殿下、大佐、軍曹の姿が。

おかげて辺境ホテルが 『人権意識ゼロの観光地』 として賛否両論、銀河中で人権について色々語られる。


この事態を受け、殿下の母親、銀河皇帝が異例のコメントを発表する。


「娘の彼氏。娘の彼氏とプレイああああああああああああああああああああ! 無理ぃいいい!」


ニュース速報テロップは一斉にピンク色に。


これが銀河帝国の陛下のお言葉ですかね。

この謎コメントで帝国の支持率上がりすぎでしょ。


「娘の彼氏」 が大トレンド。

世の中のお姉さま方が時代を席巻。


そして本日『産業スパイ。リューラー、人権侵害問題。帝国証人喚問』と、キャッチフレーズが銀河中に飛び交っている。


わぁ、燃えてる。ゴウゴウと燃やされそう。

古代は処刑もエンターテイメントだったもんな。未来へ来ても人間の蛮族な部分は変わらないなぁ。

リューラーさん、さようなら。モガ大将の蒸留所は自分が貰いますね。


大炎上中の現在、今後の対策を打ち出すために、殿下、宰相、大佐、伍長で会議中である。


「ぬかったわぁああああ! あんな旧型AIに後れを取るなんて。でも結果オーライね」


「これ、箱舟ぶち壊しましょうよー?! 絶対に人類に敵対的ですよ! シウタさん次回お願いしますねー!」


「えっと、情事関係に、なぜ私が呼ばれましたか。やれる事なんて無いと思いますが? 外交弁護ぐらいやりますが。まぁ、明日までにあの旅館の塔は、爆発して無くなっているでしょうね」


「お兄様、お母様にお会いしてもらおうと思ったのですが。このテンション、しばらく身を隠した方が良さそうですね」


「クククッ。さて、筋トレするか。シウタもやろう?」


さて、発展性が無く、まとまりが無い。

宰相に蒸留所まで送ってもらって、設備をいじってよう。

次に何をやるか、この銀河ではやる事に困らなさそうだ。



いつもありがと~ございます。


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