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60 シウタ

シウタ 惑星中心部


天井を走る緑のエネルギーチューブが脈動し、『箱舟』 の通路をぼんやり照らしている。


ホラー映画の「エイリアンが這い出てくる」シーンそのもので、今でもトラウマだ。

未知のフィジカル宇宙生物に顔面クパァされたら無抵抗だと思うと、思わずミリ軍曹の手をぎゅっと握った。

手を握り返さるかと思いきや、ガバッと手を引かれる。

その勢いで彼女の胸元にすっぽり収まり、柔らかな鼓動を頬で感じる。

身を守る手段として、呪物 『フェミニストアラート』 の出番だろうか。


「ククッ、もっと寄らないと守れないぞ? シウタ? って、その手に持っているアラートは、アーレイン大佐だな。何て恐ろしい物をシウタに持たせるんだ・・・。 これだけ銀河中に好き放題して、さらに男性利権の最大値を求めると言うのか・・・」


しれっと、殿下の相槌も入ってくる。


「恐ろしい物をお持ちですね。余も男性の平等の権利は大事だと思うのですが、その権利を盾に暴れられては、困ってしまいます。 やはり、男性には体でわからせるしか道が無いのでしょうか」


フェミ狩り宣言を受け、そそくさとアラートをポッケにしまう。

やりすぎると、爆発すると言う事だろう。SNSとか毎日戦争してるし。


そして、かっこいい翼の宰相が割り込んできた。


「あの~、皆様、丸腰で突入とか正気ですか? いくら 『箱舟AI』 と和平したと言っても、素直に信じるとかちょっとゆるすぎると思いますね。 だが! ウハハハ! では身を守る武器を用意致しましょう!」


宰相のスキル、次元収納から取り出した剣は、逆さ髑髏の紫光を宿す邪剣と、血管のような赤い文様が脈打つ魔導書。


「こちらが、邪聖剣ネクロマン、魔剣ルヴぁ、フェアリーサークルの魔導書です。

私の次元に平和が訪れ、強力な武器が産業廃棄物となった時、抽選で当たった。

シウタ殿の所で言うリアルガチャのSSRですね。

ええ、邪聖剣の方はク〇ゲ・・・ 『宰相、ごめんごめん。 ガチャ知ってるのおかしくない? 地球だとガシャポンって形骸化した言葉でさ、ソシャゲ中毒者を指す言葉に似てるんだよね? ちょっとロボの世界感が壊れそうだから、そこまでにしておいてもらえます?』


宰相の次元の転生勇者世界と思われる汚物を取り出そうとしてきた。

生身に自信があるから好き放題してマウントを取ろうとしている。


科学が進みすぎてパーフェクトワールドとなった超宇宙文明、『箱舟AI』 と魔法とスキル文明の融合した世界って事?

『自行惑星がでゅり』 いや、『星オーシャンセカンドストーリ』 になってしまう。

昔は、宇宙、未開惑星、科学が進みすぎたパーフェクトワールドの兵器の世界舞台が流行した。

なぜ、こぞって今の転生者は中世へ飛びたかったのだろう?

たぶん、マヨで簡単にマウントが取れるからか。やっぱり、飛ぶなら中世のナーロッパがいいのか?

そして、あの世界は本当にマヨラーばっかりだよね、終わってるわ。


そして、脳内に誰かが囁いた気がする。


「いいですね~。次は、パーフェクトワールドに送ります。確かにこの辺、なろう変換されていません。次の転生もまたランクイン間違いないですよぉ・・・、よぉ・・・」


と、やたらドリーミーな声が聞こえた気がした。


――


勇者文明の武器を穏便にしまってもらい、そのまま進む。

「古代文明の剣を少し貸して欲しい」 と、意味わかんない事を言うミリさんを止める様に腕を引っ張りつつ、コアルームと思わしき場所に着いた。


古代文明の武器とか怖くないのか?

分身剣とか修得して、自分が増えた後どうするの? 消える保証はないんだぞ。


巨大な円形ゲートが音を立てて左右に開く。

すき間から淡い緑の光があふれ、光の中心には二つのガラスカプセル。

大柄で窮屈そうなモガ大将と、妹さんのニナちゃんが居た。


「助かったぁあああああ! マジに王子様だな! 早くチューッとしてくれ!」


「チューがついてくるのであれば、この機能を明け渡しても良いです」


脳だけ摘出ポット入りとか、半機械化されてなくてよかったね。

90年代は、鬱エンドが多かったから覚悟していたが、普通に元気そうだ。


「チューと言いたい所だが、とりあえず拘束だ。モガ大将、拘束命令が出ている。 だが、安心しろ、妹は無事に保護させてもらう」


「任せて下さい。 ウハハハ! 保護して立派に勇者の妹として暮らさせましょう」


モガ大将の行く末は心配していないが、ニナちゃん大丈夫だろうか。

勇者ってなんだよ。この銀河に魔王はいねーぞ。

殿下、兄妹を宰相に預けて大丈夫?


「殿下、宰相に預けて大丈夫です? 勇者の妹って何ですかね? 帝国で暮らしているモア君、大丈夫ですか? 性的なモラルが一番安全な所に預けたつもりだったんですが」


「あ、ララスと呼んで。そうですね、大丈夫そうです。モア君は種族の力 『火』 『氷』 を操れるようになってましたよ。宰相の教え方が上手みたいですね。 でも、勇者の定義ってなんでしょう?」


なんだか、ダメそう。

この銀河、変な所が原始的だよな、筋トレが未だにバーベルだし。

種族の力の取得もこのくだりなのだろう。


ガラスカプセルの側面がプシュウ~と音を立てて開き、モガ大将とニナちゃんが飛び出て来る。

同時に床面のホログラムが七色に輝く。

そこへ投影されたのは、箱舟のアバター。


パステルな鎧にゆるいマント、頭にはネコミミ型レーダーというカオスだ。


「はいはい、最新アップデート完了~。銀河のトレンドを詰め込みました。どうですか? 非武装デザインで愛してもらえそうですっ」


なんだか、機械の存在維持も大変なんだなと思う。

この感じ、ヴイチューバーでもあるな。 未来になっても存在の維持って行為は変わらないのか。

みててつらい。


「で~、この銀河の王子と、最高武力の軍曹、人気が無い魔族宰相、そして姫君ですか。マスター権限を移行し、ここで暮らしてもらいます。 マスター・モガ、マスター・ニナ。それでは、約束ですので解放します。お気をつけてお帰り下さい」


突如、コアルームの天井格子が鈍く鳴り、赤いパトランプが周囲を照らす。

姿を現したのは、高さ五メートルの2体の鉄造兵。

ズズンと動き出し、重量感が床の振動を通して伝わる。


ほらね、やっぱり襲ってくるでしょ。

いや、まてまてまて、宰相の勇者装備で立ち向かう事になるのか。

つまり、小学生の時に剣客浪漫で磨いた抜刀術で戦えと? 無理に決まってんじゃん。

ミリさんは、素手でヴォルテクスの装甲をへこます二重の極み性能だけど、魔剣で戦うの?

後衛は、魔法が使える宰相? クリムゾンフレアだったっけ、骨を出汁にするときに使ってたね。

マジに戦うの?


どうして興味本位でコア内部に入っちゃったんだろう、これ絶対に後で大佐に怒られるわ。


「シウタの言ってた、分身剣借りようかな。私が増えるのか、面白そうだな」


「ミリ軍曹、増えたら消える保証ないんだってば! ミリ軍曹2人は、ヴォルテクス関係でマウント取られるから、絶対ダメ! そもそも、鉄巨人に勝てる気でいるのが凄い」


そして、宰相は肩をすくめ何かを言い出す。


「では、次元収納からSSRのライトセーバーを 『宰相、ダメだって、世界感が壊れ・・・ない。いいじゃん。ライトセーバ。早くだして下さい。ビームサーベルを。なんで今まで、この銀河になかったの?』


このやりとりを横目に殿下が割って入る。


「まずモガ大将とニナを後方へ! このタイプは胸のコアを叩けば緊急停止するはずです!」


と、殿下の叫び声と共に 「「「承知!」」」 と聞こえ、宰相が手から黒い 『モヤモヤ』 を出し、ミリさんの身体の輪郭がブレまくる。そして、モガ大将も地面を蹴り突進していった。


鉄巨人が腕を振り下ろす刹那、ミリ軍曹の拳がコアにめり込んでいる。

同時に宰相の氷槍が貫き、氷鎖がコア表面を締め上げる所、モガ大将が殴りつける。


終わってんなこの銀河。

素手と魔法で鉄ゴーレムみたいな物を圧倒している。


「お兄ちゃんはわたしとこっち・・・『お兄様はこちらへ!』」


と、殿下とニナちゃんと両方から手を引かれ関節からポキッと音が鳴る。

次の瞬間、鉄巨人のコアが明滅し停止した。


「コア停止を確認した。そのようなガラクタでは相手になりませんよ」


「人は、進化し続けている。眠りが長すぎたようだな」


ミリさんが凄くかっこいい事を言っているが、正直ドン引きである。


箱舟AIのホログラムは、なおも天井に浮かび、何か新たなプロトコルをカチャカチャと起動させようとしていた。


「これ以上は抹消しますよ、箱舟。余の最後の警告です」


アバターは空中に投影されたまま、ピタッと止まり。

膝を折り、騎士の礼式で頭を垂れる。


「いまのは防衛プロトコルの誤作動でしてっ! ピえん」


合成音声がわずかに震え、語尾にはうっすら泣き声のふりだろうか。


「余は寛大です。ですが、二度目はありません」


「さすが殿下にございます。寛大なお心、まさに銀河の統治者にふさわしい振る舞いですね」


「おお、殿下って凄いな。これが、カリスマなのか!」


「ククッ。シウタ、見習う所だぞ~」 「あのお姉ちゃん、めんへらだよ。いいの?」


後半、煽ってきやがる。


「イエス・ユア・ハイネス! 誤作動ゼロをお約束します! ですから破壊だけは・・・」


アバターは深々と礼をとり、服従姿勢を示した。


よく、捕獲しようとした機械を許せるよな。

まぁ、この銀河の美徳って事にしよう。

そして、この機械がまた暴れないように数を減らしに来ようかな。


――


アケローンが広いので色々乗せてもらい、ノクターンに戻ると殿下が乗っていた。

どこでも一緒モード、始まったか? 気を許すとすぐこれだ。


「いいですよね、ノクターン。素敵な機体です・・・。余との思い出の場所」 と、言われれば乗せない訳には行かない。


ひとまず銀河の危機は去ったため、帰る事にする。後は、偉い人がやってくれるだろう。

今日の仕事は、終わりだ。

コア内部は、何もしてない気もしないでもないが、ミリ軍曹を超える大戦果だ。


そして、箱舟のハッチが背後で閉じる。

視界いっぱいに広がる黒い宇宙。そこから見える白と紺の船体灯が点滅。

ミリ伍長の輸送艦が、こちらを向いてホバリングしていた。

そして、元気すぎる声が通信に飛び込んだ。


「皆様、お疲れ様でしたー! 無事でなによりです。いやー凄かったですね! 新型なら10機にも満たない数でここまでやれるものなんですねー! お帰りなさい、帰還してゆっくり休んでください」


船体灯の点滅を見た瞬間、胸の奥の緊張がゆるんだ。

コアルームでは平静を装っていたが、あの鉄巨人が動き出した時の足と脳の震えはまだ残っている。


無茶は出来ないね~。

でも、無茶しても周りがついてくるんだよな。本当にありがたい。

こんなことをしていて、いつまでも答えを出さなくていいものだろうか。


――


輸送艦の部屋に入り、ソファーに身を沈める。

次は、何を倒しに行こうか。そんな考えが頭をよぎっていたその時、艦内放送が聞こえる。


「シウタさんー! 医療ポットへ直行してください! シウタさんが鉄巨人との戦闘ですか、も~! また無茶しましたね。 ミリ軍曹、シウタさんの部屋のロックを解除します。連行をお願いします!」


サリ伍長、大丈夫だって。

殿下に関節をやられたぐらいだから、鉄巨人関係ないって。


刹那、カチャリとロックが外れた音と共にプシュー! と部屋が勝手に開くとミリ軍曹が、笑顔で立っていた。

全然、休めてない。後、早い。


これから、この調子でこの銀河で暮らしていくのかと思うと、まだ自由で居たいかなとちょっと思う。





いつもありがとうございます。

更新遅れまして申し訳ございません。


素人なりにで考えることがありました。

近ごろは キンキンキン! ザシュ! スイーツ(笑) といった動画的スピード感や耳に残るフレーズが、文章にも求められる時代。

「編集とは何か」と自問しつつ、動画時代の視覚イメージとテンポの時代の加速をどう文章へ落とし込むか。小説が成り立っているのは、貴方様の読解力の高さな様な気がします。

なろうにも文句を言い、カクヨムにも投げ込みつつ比較してみれば、時間をかけ仕上げると読んでくださるのが貴方様のような気もします。


GW執筆が遅れておりますが、少しでも胸の高鳴る物語をお届けできれば幸いです。

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