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59 シウタ

シウタ


膝の上には、殿下。

気分は、ホログラム画面3D画面で見る、ガンシューティングの箱もの。

今でも地球のゲーセンにあった気がする。


地球の時は、二人で座るカップルシートと呼ばれた。

肩を寄せ合って二人並び、銃を構えて敵を撃つ。自然と距離が近づいて、ドキドキが恋心に変わる可能性が高い。

つり橋効果まで狙えるってんだから、開発者の頭の良さ伺え・・・。

いや。彼女を連れてゲーセンにきた事があるだろ。

なんて汚い手を使うんだ。うらやましい限りだ。


思い出すのは子供の頃。

初めてゲーセンに足を踏み入れた時、お兄さんたちがやっていた 『はんぐーおん』 や、『宇宙ハリアー』 人類は、あれから進化を続けて来た。


そして、今!

ヴォルテクスと言う未来の形のホログラム画面で、新たなガンシューティングが始まろうとしている。


だが、もう子供では無い。ゲームばかりやっている分けにはいかないんだ。

女性を放っておいて、ゲームをしていると 『ピカチューゥウウッ!』 とカミナリが落ちる時代。

ララスの機嫌をとらなければ、大人とは言えないだろう。


トリガーに指をかけ、殿下の耳元にささやく。


「殿下。いや、ララス、見ててよ。退屈させないように君を喜ばせるよ」


「うん・・・。ずっと見ています」


身体を震わせ、声にならない小さな息をこぼしたような気がする。


「じゅぽじゅぽですわ~」 「ヌルヌルでございますな」 「ぱんぱん! ぱんぱんぱんぱん!」


マジにいくら操作しても、ク〇みたいなホログラム画面が消えない。

人類の方が、悪いバグじゃねーのか? パーフェクトワールドの思想もいいよね。


――


さて! 

敵はSFC時代のシューティングゲームの、紙飛行機バイパー感あふれるドローンの群れ。

幾何学的に並んで突っ込んでくる。


先行している 『タイラント』 をサポートするために、ノクターンのビームが敵を裂く。

整列して迫るドローン群は、3機まとめて消し爆発し光と還元する。


この法則は、未来になっても変らないのか?

まさにファムコン並みのAIだ。人類が持つ業 『殺意』 が足りていない。

人類特有の 『お前だけは許さん』 『憎しみが晴らせればそれでいい』 『FPSのスコアのコツは、コイツだけは絶対に許さんと言う激しい怒り』 が足りていない。

『ねぇ、そんな怒りや憎しみを抱えて、ゲームやる必要ある? 楽しい?』 と、言われるが、うるせぇえええええええ! 自分が最強だと証明するまでやめれるわけねーだろ!!


鉄仮面をつけたような無人機体が編隊を組んだまま、一直線に突進してくる。

ブーストの光を尾に残し、波状攻撃。

トリガーを順繰りに引いて、宇宙の藻屑を量産中だ。


だが、困った事にミリ軍曹が特攻モードだ。


「シウタ! 後ろは、任せたぞ!」


次々に撃破していく、ミリ軍曹。

戦友としては最高だ。だがな、ミリ軍曹。2P協力プレイでマウント取るタイプでしょ?

一緒にゲームするには、向いてないよね。弟とかボコボコにして、遊んでくれなくなるタイプ。

筋肉プロティンシューティングじゃねーんだぞ。


自分も援護しつつ、迫りくるドローンたちを宇宙の彩に変えるが、この状況は遠距離が有利だ。

今日のK数は勝ったな、負ける要素が無い。


つまり自分が、最強のヴォルテクス乗りと言う事です。

この前サブキャラでやられたけどね、まぁ本気じゃなかった。足とかつってたし、お腹痛かったし。

メインキャラならこんなもんですよ。


心が平穏に包まれる。ラブアンドピース。今日は、誰にでも優しくできる。

前に座る殿下の耳元に、優しくささやいてみせた。


「ねぇ、ララス。楽しんでくれてる? 次はあの5編隊を落としてみせるよ。そうだ、一緒に撃ってみようか、いつもどうやって操縦してるの? 良かったら一緒にやろう」


「ふぁ~~。完全に個室デートです。全身が紅潮して汗がとまりません。そうですね、この箱舟AIを何とかして救わなければなりませんね。また暴れてもらうように保護しなければなりません、絶対に」


その時コクピット脇に浮かんでいる、画面をぺろぺろしている伯爵達のスパムポップアップが消え、羽のシュルエットが浮かぶ。


「あの~、敵が半壊してます。深入りも危険です。そろそろ、一回下がって体勢立て直したほうがよいかと。連邦の上級パイロットの3機と合流してください。敵の大型機の投入を確認しました」


アリエノール宰相からの通信が入る。合理的判断だ。


「いいですか、アリエノール。貴方は、長命種だから余裕があると思います。

でも人は、一分一秒一刹那、感じる心臓の鼓動を大切にしなければ、なりません。

余にこれ以上の幸せがあるとお思いますか? ここで下がるという選択肢はありません! 突撃です! 突撃です! 破壊をまき散らし、余の前に全ひれ伏すのです!」


殿下が、完全に戦火に酔っている。

戦っているのは自分だと思うけども、この無双シリーズの前にしていると気持ちはわからないでもない。

人は、なぜRTA(うわ、ウメハらスゲー、まだやってるのか)を見るのか、それに似ていると思う。


そのとき、箱舟AIがモニターに浮かび上がった。


『リセット開始。戦闘シーケンス起動。判断 『アーク』 損傷率 87%ァアアアッツ!? 物理法則を無視するナ! 人間!』


『大型コアユニット投。モジュール解除完了。人類よ、戦火の恐怖を思い出すがイイ!』


その言葉と同時に、惑星空間の裏側から巨大な影が姿を現した。


ホログラムに光る金色の目、アーレイン大佐が浮かび上がる。


「シウタさん。敵データを送るわね。青く光るコアを撃つのよ」


つまりは、シュート・ザ・コア! 出現と同時にコアに張り付いてトリガー連打だ、ドン!

同じ会社、ボタン強打の嵐! つまりタイコーの達人のヒントは、紙バイパーからだったか。

次回作は、台パンの達人チンパンジーで頼みます。


―― ブルーコア・シリーズ。

球状の中枢装甲を中心に、左右に展開する大型可変装甲。

ビーム砲・ミサイルラックが複合的に装備され、その姿は、往年のゲームのボス機。

完全自動思考に進化したAI主力兵器。――


「素晴らしい・・・」


思わず声を洩らしたところに、3人の先輩のポップアップが乱入する。


「もうすぐ着くよ~、着いたら一斉に突撃かな? ねぇ、シウタ君、今度一緒に私とヒートソードで敵対的なドローンロボ落としにいかない?」


「楽しいと思うな~。汎用機で狩に行こうよ」


「獲物は・・・、あれ? どっち?」


「喜んで行きます、休日開いてるので呼んでください」 と、答えると、フェリシア、イーリス、ミラグロ先輩達が、集結してくる。


殿下は、ホログラムをシッシッと振り払っているが、ホログラムは消えない。

このホログラム、なぜか消えないんだってば。


「先輩達が集まる前にぶち壊さねーとな。これを軍曹に取られたら溜まったもんじゃない。負けみたいなものだ」


操縦スティックを押し込み、飛来するミサイルの腹をすり抜け、青いコアの前に立つ。


「こんにちは、そして、さようなら。 出現時にコア大打撃への防止ぐらい積んでこいや。ノクターン! 掃射だ! ぶち込めぇええええええ!」


光り輝く後部レーザ、ライフル、キャノンをズドドドドドと連射し、玉の打ち切りを確認した後、即座に離脱する。


青いコアが明滅し、噴煙と共に色を失った。


『バカナアアアアアアァアアアア!』


いい返事だ。

ビームを浴びたコアが燃え落ち、存在そのものを削がれていく。


そしていよいよドローン群が減りすぎたのか、箱舟AIのアバターが通信に割り込んできた。

サイドテールの蒼いアイドル風ホログラム。


『エット。UI更新中・・・。あのぉ~。ご、ごめんなさい? ほんの冗談っていうか~、ちょっとおふざけが過ぎたっていうか~、てへっ。許して? リアルな女性より、男性はホログラムアイドルが好きでしょ? 存在を消さないで? 和平交渉しよ?』


箱舟AIが媚び始めてきた。

存在の定義の維持に必死だな。

でもね、壊れた機械は修正するか、壊さないと。

そんな話が、伝説マナ聖剣サボテン君のポリフェノール系ストーリーだった気がする。


話を無視し次々と、トリガーを撃ち抜く。

小型ドローン群が爆光とともに弾け、続く中型機も断末魔を残して消えていった。


「あらら、惑星コア本体から通信よ、この悲惨な状態での口上を聞いてみましょうか」


次の瞬間、騎士甲冑のAIアイドルが片膝をつく。

眩いマント、豪奢なエンブレム。


『てへっ、UI更新中・・・。大変失礼致しました、帝国第一皇女のララス姫、ご無事で何よりでございますっ!』


AIは完璧な騎士ムーブで剣を地面に突き立て、震える声で続けた。


「くっ、〇すな! 貴女様と守護騎士様のご活躍、余すところなく見届けておりました。まさに、我が真の主にふさわしい気高さ。この命、剣、心、AI演算能力、すべて捧げます!」


おもむろにマントを翻し、胸を張っての宣言。


「ゆえに、これより我はララス姫直属、および、シウタ騎士として、お仕えいたします!! どうかどうか、破壊だけは、どうかぁぁああ!!」


機械にプライドはないのだろうか。だとしたら、そんなものだろう。

そうね、社会性という皮をむけば人も一緒だろうし。

しかし、大変見苦しい。この命乞いはそこを狙っているのだろう。


惑星ベースで投影されたホログラムが近づいてきている。

箱舟アバターは瞳を潤ませ、わざとらしく上目遣いで、大変あざとい。

エンブレムをポンと外して 『忠誠』 と刻まれたSDカードを差し出してきた。


箱舟の時代は、SDカードを名刺代わりに使ってたんだ。

それは、この時代に勝てんよ。


「シウタに、色目を使うAIには教育が必要だな」


「機械風情が・・・、お兄様に媚びた色目を使うとは、必要ない存在のようですね」


「AIが色目を使うとはいい度胸ね、そこの宇宙デブリ、数分後の貴方の姿よ?」


あれ? 機械にも存在意義があるんじゃなかったの? どういうこと?


「とりあえず、人質返してもらえるかな?

この銀河に来て、道義を学んだんだ。何も破壊するわけじゃない、慈悲は帰ってくる。

ドローンや自動複製を繰り返し、この宙域に展開してもらえれば、とても嬉しい」


「は、はいっ! ただいまより全システムを 『人類融和モード』 へ移行しますぅうう!」


――


本体の暗闇の惑星に一筋の光が走る。

共振音とともに巨大な花弁装甲がゆっくりと開く。


「どうぞ! 惑星の中心で 『マスター・モガおよび、ニナ』 がお待ちしております! コア室は火気厳禁ですので、女性の方々は正装でお越しください~」


あ、これ自分連れてってもらえなさそう。

この銀河は、危ない感じのやつは男は連れてってもらえない。


「それじゃあ、お兄様。後を任せて帰りましょう。後は、ミリ軍曹単体で解決できると思います」


「シウタ、ここまでだ。あとは先に帰って私の帰りを待ってて欲しい」


「フェリシア、イーリス、ミラグロ機 『ノクターン』 をすぐに囲んで、絶対に中に入ろうとするわよ」


アーレイン大佐の指示が、的確過ぎる。

そのままブーストを吹かし、惑星中心に進んでいく。

目の前のララスを腕で抱え説得しながら、最高速でコア内部へ滑り込む。


――


ホログラムが 「「「早く戻ってきなさいッ!」」」 と聞こえた様にも聞こえる。


「ララス、手が勝手に動いてしまって。 ああっ! 操縦スティックに触らないで! えっ、あれ? 凄い力? ごめんごめんごめん。 何でもする! コア内部に入ってみたいんだって! 頼むぅうううううう!」


「そうきましたか。そ、そうしましたら、後で余の部屋へお願いします。お、お覚悟!!」


殿下の力がマジに強い。力で勝てなさそう。

あれ? 今までメンヘラな姫様ぶってたって事?


そして、ノクターンの最高速度で我先にとコア内部に乗り込む。

後ろを見ると巨大な花弁状の装甲が、惑星コアを包むように静かに閉じはじめていた。


子供の頃は、こういうのを見て未来を想像したものだ。

大体が、エイリアンが侵攻してきて世界が滅亡寸前で話が始まる。

未来とは、人類滅亡ぐらいの軽いノリだった気もする。


刹那、ブースターの光と流星の様な光が花弁の縁をかすめ、火花を散らしながら強引に突入してきた。


星間ユニットを積んだ 『真・アケローン』 と、いつもの 『タイラント』 だ。

2機はほぼ同時に着地した。


ミリ軍曹が外部スピーカーでわめいている。


「シウタアアアアアァアア! トラブルばっかりどうして、どうして・・・。おまえは大人しく家庭に入らないんだ! あっ、いや、これはまずいな。すまない。そういう時代じゃないもんな。 銀河で一人の男性超級エース、大人しくしているタマじゃないから惚れたんだしな」


「帝国の姫君と惑星コア突入ですか、ウハハハ! 完全に酔ってますね。ほら、降りて来て下さい。さぁスキルでアルコールを飛ばしましょう・・・・!」


酔ってないぞ。

いや、破壊の力に酔ってるわ。


銀生身最強の二人が入ってきてくれた。

なんて心強いんだ。


コア内部は絡み合うエネルギーチューブが青白く光り、壁と天井を蔦のように覆っていた。

その中をミリ軍曹が自分の手を引き、アリエノール宰相が殿下を支えて進む。



いつもありがとうございます。


スーファミの星キツネ、64の星キツネ。

そう考えると、あの時代の3D筐体ってすげぇな。未来行きすぎた。

でも最近出てないよね。FPS系に取られたからかな、どうしてだろう。


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