56 サリ伍長からシウタ
サリステア・フィオーレ
輸送艦で超特急でお迎えに上がっております。
帝国側が静観中です。大気圏で待機して何してますかねー?
そもそもミッションは、シウタさんのお迎えと旧型破壊兵器の調査では?
ついでにモガ大将を捕まえて、モア君の保護ですよ。
どこかの現生惑星に王子様と男の子がいると言う事です。時代は、まさに大航海時代ですねー。
ワンチャンス、もしくは理想の男性を育て上げる夢のシチュのために、人生のパズルの欠片を探しにいくのです。
夢があります。行動力も沸いてくると言うのもですよねー!
――
下降中、ホログラムには地表で機影が交差する様子が映っている。
爆風の中で 『レグルス』 はまだ立ち上がろうとしており、片膝をついたまま装甲が剥がれた腕で、砕けたソードを引きずるように構えていた。
着艦の衝撃で艦がわずかに揺れる。
息を整え、ワイシャツの第一ボタンに指を掛けてひとつ外す。襟元がゆるみ、鎖骨のラインに沿って胸布がふわりと開いた。
戦闘で高まったボルテージの中、全員を止めつつ機体を回収する段取りを考えると頭が痛いです。
大気圏で殿下のご機嫌伺いをしている帝国の重鎮達、伍長の私にやらせないでやってくれませんかねー?
戦闘仲裁は、仕事の内に入ってませんよ、輸送がお仕事です!
するとシウタさんのコクピットからの声が通信を突き破り、艦内に響いてきました。
「まだ終わってない!! 1度や2度負けたぐらいで、負けていない。
勝つまでやるから勝つんだよ! 対戦の極意、勝つまで戦闘継続だ!
おいララス、機体貸せ。代わりに一晩でも二晩でも好きにしてくれ。
フェリシア先輩、ヒートソード貸して下さい。おら、ミリさんラウンド2だよ。皇女機仕様なら、いける!」
「ふぅ~。シウタ、いいぞ。その代わり、私も2晩ぐらい欲しいな・・・」
続いて、ララス殿下の絶叫が聞こえます。
「お兄様、もちろんです! そのかわり朝まで機体の返却はできませんし、朝日が昇るまで返しません。アリエノール! 余に魔族の技術を!」
「シウタ君凄い体力だね! うれしい、嬉しい悲鳴も聞きたい!」
「延長戦ね。繁華星の48時間パックがお得だわ。予約しとくね」
「言質は命より重い。じゃあ私も丸二日、フィールドテストに付き合う」
どうしましょうか。シウタさんが〇んでしまいます。
現場は、超鉄火場でボルテージが振り切ってます。
これ止めれますか? ここで止めると、シウタさんに逆ギレされそうですよねー。
普段は、やさしく温和な感じですけどヴォルテクスが絡むとすぐコレです。
仕事関係で一緒より、プライベートで一緒の距離感が一番いいです。
仕事より、今の私的な時間を大切にですよね。
さてと。
「お取込みの所、失礼しますー! 機体の回収に伺いましたよ!
武装解除、シウタさん帰りますよー! シウタさんを回収するのが、私の任務です。お姫様が王子様を迎えに来ましたよ!」
一瞬だけぴたっと周りの動きが止まる。
「サリさん、いつのまに!?」
「サリ、順番だ。もう少しで終わるから待っててくれ」
「むむ、サリさん。これ以上のプレイ人数は、厳しくないですか?」
「あと一人ぐらいいけないかな?」 「さすがに〇んじゃうんじゃない?」 「サリ伍長なら良いんじゃない?」
あ~、これお仕事終わりませんね。
ク〇ですよねー。さて、こちとらもキレますか。
勢いで当たらないと、永遠と戦闘をしてそうです。
あっでも、待ってください。混ぜてもらえるんですか??
――
ドォン!!
2回戦が始まろうとしているその時。
遠くに見える山岳がドンと揺れ、遠くの山が揺れ、轟音とともに古いロケットが地面を突き破って立ち上がった。
緊急のホログラムがズーム拡大で景色を映し出しています。
古びた連合マークとサビだらけの外装、炎と黒煙を噴き上げながら、旧式の亜音速ロケットは宇宙へ向かって発射準備をしているのでしょうか。
遠くに目を疑う様な、3世代前のロケットがそびえたってますねー?
いつのまにか、手配犯の脱出準備が出来上がっていたようすです!
どうしてでしょうか。
「えっ、マジ!? あれなに!? 見たこと無い形してる!」
「うそ、アレ、飛ぶの!? うわっ、卑猥!」
「垂直の1方向しか進めない狂気の乗り物だね。でもそこにロマンを感じるね」
そして、ロケットの内部カメラのモニターに赤銅色の髪と犬耳飾り、モガ大将の顔が映りました。
「じゃあな王子! 代替えエネルギーを探しに行ってくるぜ!」
「兄貴、ありがとうございました。また共同出演お願いします。この虎視眈々と狙われる殺伐とした銀河の暮らしに自信が持てました」
「ああああああ! ベルトが外れないよぉ! お兄ちゃんの所にいけないよぉ。 ねぇ、少女を拘束するのおかしくない? 私、子供なんですけど、ク〇ッ降りれない! そっちいけない。お姉ちゃん降りれない、そこどいて、おりれない」
次の瞬間、地面が揺れ出しロケットが唸りを上げる。
内部カメラが揺れ、映るのはモア君と暴れる妹さんですね。
二人とも宇宙服代わりの簡易耐圧スーツで必死に重力に耐えているのがわかります。
ロケットは、旧式の固体ブースター音を撒き散らしながら大気圏上層へと突き抜けていきました。
全員機体が、閃光の尾を引くロケットの方を向いて呆然と見送っています。
これは、回収の好機ですね。
私は全力で格納庫に走り 『バルゴ』 に飛び乗り、輸送艦ハッチから射出される。
射出に背中を押され、弾丸のようにシウタさんの所へ。
ガチンッ!
「ラッチ完了。牽引用アーム固定。安定誘導へ移行しますねー!
シウタさん、回収します! 乗り換えは不可、私が機体ごと抱えて帰艦しますから!」
「え、ちょ、サリさん! まだ遊び足り――」
「つづきは艦に戻ってからですね。みんな首を長くして待ってますよ?」
言い終わるが早いか、私は機体を引きずるようにして輸送艦の格納庫へ。
――
シウタ
――
サリさんにさらわれて、旗艦のハンガーデッキに降り立った瞬間、金属の焼けた匂いが鼻先を刺した。
傷だらけの 『レグルス』 が サリさんの 『バルゴ』 クレーンに引かれて後方へと運ばれていく。
サブキャラでは、ミリ軍曹の持ち機体に勝つのは、難しかったか。
しかし、派手にやっちまった。
モガ大将に 『レグルスどうなった?』 と、聞かれる前に修理しないといけないし、借りた時よりキレイにして返さないといけない。
これが 『ノクターン』 の惨状だったら 『!“#$&‘くあせふじこ』 とブチギレると思う。
間違いなく 『責任取れ!DVD!』 からの秒でホテルに連れ込まれるだろう。
また、お金を稼がないとな~。
地球の時、うま味の調味の素ぶちこんで、うまい料理を作る当たり前の事をするだけでバズるはずだから、まだ料理配信は行けるはずだ。
でも、地球の時付き合いがあった、うま味の素の社員様や役職の方々もあんなに粉をぶち込んでないし、むしろ無添加物を飲んでいたよ。意外に健康志向。
そして色々な思いを胸に、視線を上げれば、アーレイン大佐が出迎えてくれた。
すぐに大佐に駆け寄り 「ただいま戻りました」 と、まず深く頭を下げた。
空を埋めるほどの艦隊の歓待にやりすぎじゃない? と思わないでもないが、助けに来てくれて沢山の人の手を借りたのは、事実。
礼を欠いてはいけない。
「大佐、色々とご迷惑と、お手数をおかけしました。そして救援を感謝致します」
獲物を捉えて逃がさない様な光る金の瞳から、ぱっと表情をゆるめた。
まるで虎から猫に変身したような落差だ。
「お帰りなさい。無事でよかったわね。シウタさんが帰ってきたら、現生惑星の暮らしの事で言おうとしてた事も消えちゃったわね。
やっぱり、シウタさんの一人暮らしは危険よ。しばらく、私と一緒の管理下で暮らしましょうね」
確かに、最近超級エースの暮らしもままならない。
ミリ軍曹と違い、暴漢たちを蹴散らす事ができないからである。
アーレ大佐と一緒に暮らす未来か、お互いを尊重できそう。
そして、帰還へのお礼を皆様に言いたい。
「そうだ、大佐。艦内回線をお借りできますか? 艦隊の皆さんに礼を伝えたいんです」
「そうよね、いい事だと思うわ。シウタさんの労いがあれば、全てが丸く収まりそうね」
大佐が通信士へウィンクで合図すると、艦内スピーカーのランプがポンと点灯し、ハンガーデッキの視線が集まった。
「このまま端末で話せるわよ」
「こちらシウタ。出撃から救出まで支えてくれた皆様にお礼を、ありがとうございました。あなたのおかげで、自分はまたここへ帰ってこられました。 この借りは行動でお返し致します」
艦内は、色めきだった祝賀ムードに包まれた。
こういう義理事は大事にしないとね。
――
帰還から三日がたった。
連邦宙域へ逃げたあの旧式ロケットは、やはり捕捉されたらしい。
そして、ならず者の討伐の任務から休暇を言い渡された。
アーレイン大佐は私室の安全のためロック権限を自分と大佐だけに更新し、スパイ用の安全対策と言う事で、大佐の隣室の部屋。
また食事、外出はアーレ大佐と同伴でここ数日暮らしている。
何かが、ヤバイ。囲われている気もする。
本能が危険の警鐘を鳴らしているが、まぁ、大丈夫だろう。
軍事惑星の自室で、ごろりとベッドに転がったままホログラム端末を開く。
お金が必要なので、銀河のトレンドを調べていると、自分の映像が自動再生された。
『必ず、この借りは行動で返します!』
ハンガーで挨拶したときの自分の一言。
それ自体は事実なのだが、カットインで薔薇が舞い背後に銀河がきらめき、光の翼を生やしていた。
美化が止まらない。狂気を感じる。頭がおかしくなりそう。
でも、製作者の苦労を読み取り、とりあえず 『いいね』 押して画面を閉じる。
大事な事だよね。女神様、聞こえていますか?
レグルスの修理見積もりは笑えない数字だった。
モガ大将が監獄から出てきたら、間違いなく〇られると思う。
自分のノクターンが同じ目にあったら、そうする。
どうにかして修理資金を調達しなければならない。
再び、トレンドを調べていると、自分の動画が並んでいる所に、見覚えのある赤銅色ヘアの少年サムネが見えた。
モア君じゃないか!?
タイトルは 【辺境少年革命家、モア君。 連邦での生活決定!】
もうすでに何かヤバイ。
再生をタップすると、連邦広報チャンネルのトーク番組が始まった。ニコニコ顔の少将がモアの肩に手を回し、コメント欄は賛否両論。\おめでとー!/\いや待て!/
マジに、正気を疑う。未来へ来てもスラングは変わんないのか。
そもそも、少年労働やめーや。
と、思うが考え方が古いのだろうか。
地球の時は稼ぐ能力の方が評価される世の中だった気もする。
『モア君と、魔石の交換条件を結びましてね』 と、リリア少将の満面の笑み。
えっと、無限魔石とな。
たしか兵器の動力源候補だ。どう考えても子どもがポケットマネーでやり取りしていい品じゃない。
動画は拍手喝采、取引成立! となっている。
リリア少将も子供相手に何をしているのか。
『ラグナロク』 の無敵シールドが無くなったって事? いつでもボコボコにしてやるぞ。
そのとき、私室の自動ドアが勢いよく、プシューッとスライドした。
「おはよう、あなた。あっ、シウタさん、大変よ!」
アーレ大佐が普通に部屋に入ってきた。
常に管理下に置かれ、一緒に暮らしている感じではある。
「おはようございます。昼ですけど」
「挨拶より説明が先よ。これ!」
大佐は腕を振ると、ホログラムが部屋に展開される。
そこに映るのは、さっきの動画のスクリーンショット。
そして、狂ったほど再生されている。
「この交渉、あなたは知らなかったわね? 男の子が本人の意思でやっているみたいなの。
まさかモア君をリリア少将が捕まえるとはね。
でも無限魔石をホイホイ連合に流していいものではないわ? リリア少将は、昔から考えが甘いのよ」
「子供と魔石を交換するとは、誰もが思いませんよ。イカれてますよね。 早く止めないと惑星破壊兵器が起動してしまいません? えっと、銀河の危機では?」
「そうね、危機よ。そして機が来たわね、リリア少将はやりすぎたのよ。個人的制裁をしたい所よね。
まず連邦のモア君を取り返して、モガ大将を止めないといけない。 スパイのリューラーを人質にしてね」
大佐は金の瞳を細める。
意外と大佐は根に持つタイプだったのか。
産業スパイはともかく、子供を巻き込むのやめーや。
それは、断固反対するぞ。
いつもありがとうございます。
エピローグで始まり、プロローグで終わると何かカッコイイ気がします。
最初を最後に持ってきて、最後を最初に持ってくるアレですね。




