表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/69

5 シウタ

エピローグでした。

シウタ


朝からステーキが出て来た。

焼き立てで、チリチリと音を立てておいしそうである。

ワンポンドが約450g。 4ポンドになると巨大ケーキ1ホール分の重さか? しんじゃうって。

いや、やれない事はないけど。

もう30歳手前なんだよ。学生時代見たいに、食べ放題で元を取るとかそういう思想が無理だ。

脳が元を取れと指示を出して来るが、体の部分が幸せにならないと胃と腸が教えてくれる。

胃腸の指示を無視すると、翌日に強烈なペナルティとして体調に現れるのだ。

どんどん生きていくことが辛くなってくるぞ。女神様どうして?


この肉塊と死闘を繰り広げながらミリさんの顔をチラリとみると、ガン見している。

目が合っても、真顔で見ているのだ。


「ミリさん。あの、文化をしらないので、非礼があったらすみません。何か食事作法が違いましたか?」


「いや、気にしないでくれ。シウタを堪能している所だ。デートとは、こういう感じなのか。こっちも幸せになってくるな」


男前な台詞。少女漫画の男性キャラかと突っ込みたくなりますね。

ストレートにものを言う感じ、軍曹っぽくていいですよね。


ミリュネ軍曹を見る、頭ひとつ自分より背が高く、無造作に伸びた黒髪ロング、軍服が少し着崩れていて、第二ボタンまでワイシャツが開いていた。

営業時代に培った感覚、スーツの着こなし方で大体の性格が分る。

良く見せるより、機動性や実用性重視と言う性格が昨日の付き合いで何となく感じる。


転移で、猫系の星に来たのだろうか。

飾り物かと思っていたが、みんなに猫耳が付いている。ミリさんだけでなく、食堂にいる全員に猫耳が付いていた。

星が変れば種族が変る。そういうものだろう。


そして、食堂を見回すと全員がガン見している。

男が珍しいと言っていたか。この現象は、地球でも良くある事だ。

現代だと非常に難しい問題だ。男性の職場での女性の存在ってやつだよな。

一応、男女均等雇用と言っているが、実際はうまくいっていない。 比率 10:0 や9:1 現場労働では当たり前の事だ。職業によってどうしても片寄る。

男には分からないが、こんな感じの雰囲気なのだろう。


正直、場違い感が凄い。

でも自分は、ここでこの星でやりたい事がある。

また、ヴォルテクスに乗りたいんだ。心の火花が言っている、お前をあの頃の様に夢中にさせてやるって!


ガツガツと食べ進め。食事を終える。

こんな所で、どうたらチンタラなんてやってられない。

ミンチにされて転生してアラサーになってやっと気づいた、人生に時間がある事に。

胃腸よ、すまない。犠牲になってくれ。


「ごちそうさまでした。ミリさん。 面接の程、お願い致します」


――


そのまま食堂を後にして、少し歩くと、指令室とプレートに書いてある扉の前についた。

そして、心配するように確認をしてくれた。


「シウタ。大佐の圧が強く感じると思う。どうしても尋問の形になると思うが、正直に話して欲しい」


「承知致しました。正直に話します」


「うん、そうか。今、彼女はいるのか?」 「いません」 「正直だな、いいぞ、正直だ」


なんだよ。


さて、転生後の面談か。

今は肩書とか何も持ってない。商品は今までの自分が売り物だ。

相手には、どう映るだろうか。

頑張ってダメだったら、他の所に就職させてもらおう。

この度は縁がなかったと言うお祈りメールだ。


「ミリュネ軍曹と、シウタさん入ります」


「入ってください」


と、上のインカム見たいなものから声が聞こえ、自動でプシュー! と扉が開き入ると、テーブルとイスが黒く、なじみのあるデザインが目に映った。


「報告にあった、シウタさんですか?」


即座に礼を取る。


「この度、大変お世話になっております。また、忙しい中の面談の程、ありがとうございます。シウタと申します。謎ゲートから身一つでこの星に飛んでしました所、ミリュネ軍曹に助けて頂いております。 ここで働けたらと思いまして 『採用です』 えっ?」


「採用です」


「大佐、落ち着いて下さい。気持ちは分かりますが、顛末と経緯を何も聞いておりません。こんなじっくりシウタの生い立ちを聞ける機会なんてもう無いかもしれません。大佐 『冷静』 が売りなんですから、お願いします」


「あれ? ミリ軍曹。これなんでしょうか? 会った時電流が流れたんですけど? 若い時、男猫に全財産を貢いで失敗して、もう恋愛ごととかもう二度とこりごりと思ってたけど、人生何があるか分からないわね。 アーレイン・フリュグリッドよ。アーレ大佐でいいわ」


そう言うと机から立ち上がり、友好的に握手を求めて来るが、ミリさんが 「大佐、報告した通り直で触るのは危険です。ハニートラップの可能性が絶対的に否めなくて、超危険です。お触りはよくありません」 と遮って来た。


「ハニートラップ? そうよね、シウタさんがここまで露骨に罠ですよって顔してるんですもの。でも、ミリ軍曹。つねに恋愛ごとは、トラップよ。 駆け引きを行い、相手を罠にかけるのよ。まぁ私は罠にかけられた方だけど。お金返して欲しいわね」


アーレイン・フリュグリッド、アーレ大佐と言っただろうか。

歳は同じぐらいか。アラサーの雰囲気が出ている。

銀色のショート、金色の瞳、やわらかい言葉と裏腹にビシッと軍服を着こなしている。

友好的に見えて感じが良い。率先するリーダー格と言うよりは、部下を伸ばすタイプだろう。


「話を聞きますと、失われた文明のゲートから転移したそうです。 シウタすまないが、スパイの可能性もあったから、気を失い寝ている時に種族の力を伍長に調べてもらった。主な種族の力が 『低レベル回復』 と 『気配察知』 でいいな? 後の細かいのは、ククッ、『動物に近寄られる感じ』 なんて出たぞ。『運命の王子様』 が無かったのは意外だったな。ククッ」


笑っているのは、ミリさんのユーモアだろうか。

簡単にスキルも調べられるんだなぁ。未来世界ってすごいな。

女神様からもらったのと、ニュアンスが違うがそんなものだろう。


「そんな感じですね。 そして、お金も何もない状態です。 この星での就労経験が無いのですが、ヴォルテクスに関係した仕事がありましたら斡旋して頂けないでしょうか。 それと、ヴォルテクスを少し動かせると思います。頑張ります。後、前の星での営業経験もあります。また、文明が違うため、不慣れな機械の操作でご迷惑をおかけするかもしれません。 ですが、お願いします。もう一度、ヴォルテクスに乗りたいのです! ミリ軍曹からパイロットは屈強で特別な存在だと分かります! ですが! 自分を雇ってください! 当然すぐに乗せてくれとは言えません、必ず乗れるように段階と信用を得て、ご納得いくように努めます。お願い致します!」


大佐と軍曹を前に頭を下げる。

この本心を言ってダメだったら、ほか職業をしつつヴォルテクスに乗れるような職業を探そう。

生活基盤も何もないため、まずは労働で基盤を整えなければ。


「これって熱く口説かれてますわね。こんなに、胸を打つ台詞ってあります? 胸と股に熱く刺さるわ、男の熱を忘れていたかしら。こんな台詞、私に惚れてから言って欲しいですわね。 サポートの元、3機撃破を成し遂げるほどにヴォルテクスを動かせるのなら採用よ。暫く、この星と拠点の仕事を慣れて覚えてもらってからヴォルテクスに乗ってもらいましょうか。もう、脳が沸騰しそう」


胸を押さえてよろけるお二方。


「良かったな、シウタ。なんだ、熱くて涙が溢れそうだ。私もシウタと働けてうれしく思う」


少しは、期待してくれているのか。ありがたい話だ。

無償の期待には、結果で返すとしよう。こういう人達を落胆させたくないからな。

ならば、胸を張って挨拶だ。

第一印象が大事だ。営業の中で学んだ人の習性だ。

最初の印象を変えるのは、大変だからな。


「ありがとうございます。ご期待に沿えるように頑張ります。 アーレ大佐、ミリ軍曹、宜しくお願い致します!」


元気よく威勢を張り、自分からアーレ大佐に握手の手を差し出す。

ミリ軍曹が眉をひそめたが、大佐が手を握ってくれた。


「よろしくね、私の王子様」


「いえ、私の王子様です。色ボケ大佐」 「うるさいわよ、ゴリ軍曹。これでも脳から出る物質の氾濫を押さえているのよ」


なんだよ。急に剣呑になるなよ。


――


「まずは、サリステア伍長の所を中心についてもらいましょうか。呼んだからもう来るはずだわ」


「シウタ、サリ伍長の所は、流通物流課だ。この星の防衛拠点の物資補給とこの星で取れる魔石の管理出荷の担当場所だ。 営業経験があるなら、なんとかなるんじゃないか? 手の空く、夕方からこっちの実働部隊に来てもらいたいな。 ヴォルテクスを動かしたいのだろう? 期待のヴォルテクス乗りの新人だ」


ニッと笑みを浮かべるミリさん。男前ですね。


「もちろん、喜んでお伺いいたします。 ミリ軍曹、いえこれからは、上官殿でしたか? ハハッ、就職前だと女王様と呼べと言う事でしたが」


「それは夜で頼む」 「軍曹が憎いわね、憎い。あ、民間人への私掠的行為かしら。懲罰やむなしよね」


と、話していると天井のインカムから 「サリステア伍長入りますー」 と、声が聞こえた。


プシュー! と、扉が開くと、自分と同じぐらいの背丈で、フワフワした耳のセミロング、茶色の髪が目のあたりまでかかっている女性が入ってきた。

感じ的に自分より年下だろう。


サリステア伍長が部屋全体を見回している。


「そうだと思ってましたー。ゴリ猫軍曹と色目のゴリ大佐。当然、尋問れーぷの算段ですよねー。混ぜてもらえるんですか?! ・・・あのー、思っても、普通声には出さないですよね。 私の脳の意味が分からないんですけど? 私、これ恋の病ですね。ゴリ猫2人にソーセージの原料にされるのが秒読みなので、帰ります。 お疲れ様でしたー」


目の前に居た、ミリ軍曹の身体がブレる。

瞬時にサリステア伍長の胸倉を掴んで天高く上げていた。


これが骨折から治ったミリ軍曹のフルパワーモードか。

ここまで鍛えないと近接機体の加速に耐え切れないと言うのか。

ぬぐぐ、出来るだけ頑張るとしよう。


「安心しろ、痛みの前に正気に戻る。実践済みだ」


もしやと思い、大佐に話しかける。


「アーレ大佐、あの方が、自分の上司になる方ですか?」


「アーちゃんで良いわよ。 ウソ、やっぱダメ。クソッ、元ク〇彼氏の幻影が脳裏にチラつくわね。私は、この先、心の傷と戦っていくのかしら。 あ、ごめんなさい? そうね、物流流通部の部長に当たるわ。 軍の位は伍長よ。戦闘に出ないから階級が低いのよ」


なるほど、上司か。

格ゲーの様に叩きつけコマンドを入力される前に早く助けねば。


「ミリ軍曹すいません。サリステア伍長にご挨拶をさせて頂ければと」


ミリさんの二頭筋辺りをギュッと触る。


「!? 力が抜けていく?! クソッ、ここからがいい所なのに?! 暴力の快感より、この暖かな触感に負けるというのか!?」


強そうなセリフだな。

伍長がスーッと地面に降ろされた。


「サリステア伍長、シウタと申します。この度はお世話になります」


「えっ? えっ? アーレ大佐? ミリ猫軍曹? 女猫の中の職場に男をぶち込むとか正気ですか? 絶対すぐ辞めますよ。 セクシャールの嵐ですって。耐えれませんよ。 もっと良い就職場所があると思いますよ? だって、ホログラム動画を流せばいくらでも稼げますよ。 私も毎晩見て同僚や友達に 『私この人、知ってるんですよね~。救護しました。ほら、その時とった画像』 ってマウント取りまくる自信ありますからー」


「「ほほう、画像ね」」


こういう考えの方かなりいらっしゃいますよね、全体の利益の想像より、個人の益を見てますね。

根が良い人だと思います。


「自分は、本気です。サリステア伍長。仕事をさせてください。 もう一度、いえ、ヴォルテクスに乗りたいのです。職場環境は、なんとなくですが理解しております。男女比での働き辛さもあるでしょう。理不尽にも耐えます。お願いします!」


握手を求める手を出す。

胸を押さえる、サリステア伍長。


「ひゃあああああ!? いやいやいや、ゲート転移で王子様が現れるなんて、都合よすぎて絵本でもBLでもこんな展開やりませんよ! それで、この王子様は何しに来たんですか?! ここ最前線の生産拠点ですよ? 私達、ゴリ猫の支援で暇じゃないんですけど!? でも、王子様は足りてません! 私の職場に王子様ああああああああああああああああああ」


なんか。握手をした瞬間、白目を剥いて止まった。

明日から、宜しくお願い致します。

サリステア伍長殿。



ありがとうございます。


評価ブクマを押すと週2が週3更新になる可能性が上がります。

その、貴方様が評価を押すと言う力を甘く見てはいけない。

なぜかと言われれば、話変わればまた書かないといけないものか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ