表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/69

43 シウタ

シウタ


「帝国や連邦には 「強者が正義を示す」 という慣習が存在しまして、階級や法律よりも 『決闘の結果や戦績』 が優先される風潮があるのです。

まぁ、シウタ殿も大変そうですよね。 私としても何とかしたいのですが、正直、先に私を何とかして欲しいですね。そもそも、宰相の私が全部手配する帝国の風潮もどうにかなりませんか? 貴族制ならもう少しですね、諸侯に頭を使って欲しいといいますか、ア〇ばっかりで。

もしもし? アーレイン騎士伯、聞いてます?」


―魔族宰相 アリエノールの最後の実況発言

以後帝国の歴史の中で彼女を実況席で見たものはいない―


――


ついに激しいエネルギーの衝突が収束した。

ノクターンとラグナロクは、互いに限界を超えてエネルギーを注ぎ込んだせいで、もう身動きひとつ取れない。

お互いにボロボロの状態で決定的な勝敗はついていない。


コクピットには、警告音が鳴り響き、駆動システムがダウンしている。

視界に映るラグナロクもまた、禍々しい魔石を胸部に抱いたまま、うつむくように停止していた。


「ここまでかな」


汗を腕で拭い、ようやく呼吸を整えた所に、アリエノール宰相から通信が入る。


「いい決闘でした。 引き分けでいいのではないでしょうか。また、次回戦えばシウタ殿への貸しも十分返せますよ。チート機体とは言え、リリア少将はその力を銀河中に示しました。 この銀河は再戦を望んでいるでしょうね」


確かに、また戦える事になるなら引き分けでいい。

強い機体だった。この高揚感、ボスを相手にしている感覚。

何よりも代えがたい。


「シウタさん、承知しましたわ。勝敗は持ち越しということでよろしいですわね。

でもね、ミリ軍曹? 日頃の鬱憤を晴らしたいなら、今この場でリリア少将をボコボコにしても構わないのよ?

なにせシウタさん以外はまだ動けますし、味方がほぼ全残りの時点で勝ちですわね。さようなら、少将。今までありがとうございました」


僻地へ飛ばされそうになった、アーレイン大佐の半分本気の冗談だ。

積年の恨みって怖いよね。

地球で仕事の時も良くあった 『絶対に許さん』 と、言うやつだ。

でも、ボスキャラのリリア少将にとどめを刺すのは、自分以外に許される事ではない。


「皆様、とどめは待ってもらえませんか。さんざんやってくれたお礼を返しきれてない。サクッと〇してしまって終了では、盛り上がらない。次は、もう少し簡単に倒せると思います。まぁ、今日はこの辺で本日は、お気をつけてお帰り下さい」


「劇的なセリフかと思ったら、意外と残虐な発言だね? でも、シウタ君から助命をされるとはね。

だが、アーレイン、能力がある者は疎まれるものだよ。現に王子に近いとなれば、なおさらだね。 ふん、確かに今日はここまでか。出直してくるとしよう」


リリア少将がそんな捨て台詞を残し、ミリ軍曹と殿下がまとめにはいる。


「さすがに、ここで囲んでスクラップには出来ないな。一応、私だって連邦の看板を背負ってる、シウタが良ければいいんじゃないか」


「では、ここまでといたしましょう。ララス・セレナーデの名において決闘終了を宣言いたします。

リリア少将、嬉しい限りですわ。また何度でもいらしてくださいませ。

そうすれば、そのぶん距離も縮まりますし・・・、式にはぜひ参加なさってくださいね?」


返事は無くラグナロクの魔石に光が戻り、スラスターが噴射音を上げ、漆黒の機体がゆっくりと浮遊し始める。

そのまま巨大な機体が大きく旋回し、宙へ姿が消えて行った。


銀河を揺るがす存在が去ったあと、歴史的な大決闘は引き分けという意外な形で幕を下ろした。


――


激闘の幕が下り、空前絶後の決闘から一転。ここは控室。

椅子に腰掛けるミリ軍曹は、タオルで汗を拭いながら、やや呆れたように息をついていた。


「あれだけ戦って、決着つかずか。まあ、こういう終わり方もあるもんだな。最後にちょっとチームがまとまりを欠いたのが痛かったな」


絶対にあそこは自分が倒すべきです。

なんだろう、運命がそう言っていた。3伯爵の3人目とかに盗られてたまるか。

何て言うかですね、自分を賭けた決闘ですから自分が倒すべきではありませんかね。


さてと、都合よく引き分けだったので、この度の戦友とお話をしていきましょうか。


戦闘のアドレナリンの余韻が残っているように見え、戦闘服のジッパーを降ろしている先輩方に話しかける。


「フェリシア、イーリス、ミラグロ先輩。ありがとうございました。この度の勝ったらのお付き合いの件だったんですが、今回は引き分けとなってしまいましたね。次は、簡単に倒しますので、今は 『戦友』 としてやっていきたいのです。友達以上、恋人未満ってヤツでお願いします」


「あー! それ昔よく言われたやつだよね! コクっても 『友達で』 ってやつ! そのセリフ何度聞いたかわからないよ!」


「んー! 友達止まりってやつじゃない!? でもわずかな可能性に期待しちゃう! 友達から恋人へってなるかな? なる?? 闇市場はそんな都合のいいBL本で溢れてるから大丈夫よね」


「ぎゃー! 地味にキツいやつ! 『いい人なのはわかるよ?』 の、このままいい人で終わってしまうのか!? よいひとの続編お願いします!」


そうですよね。『また今度、お誘いください』 はいつになるのだろうか。


そして、ミリさんの方をみると何かの危機を察知したのか、壁の隅に張り付いていた。

そんな所へ優しく話しかける。


「シウタああぁああ! 私に近づくんじゃない! 一生分の脳を使って考えたプロポーズの計画がぁああああああ!」


「ミリさん、登山はやめましょう。中止です。 あの、代わりにヴォルテクス展示会へ一緒にいきませんか? ミリさんとだと凄く楽しめそうです。 でも、近接と遠距離トークで喧嘩しますかね? ハハッ、大丈夫です。楽しくいきましょうよ」


「シウタ?? それ、シウタが普通に行きたいやつじゃないか? いや、いいけど。 あれ? 普通にデートだな。 嬉しいけど、同じ展示会に行って飽きたりしないのか? いや、登山にしないか? いや、わかった。シウタの行きたい所いこうか」


そりゃ何度でも行きますよ、好きな映画2回ぐらい行くし。

そして、港区系の従妹子は、ジぷリプリ映画にデートで8回誘われて行ってた。

毎回、はじめて見る感じをリアションするのがとってもキツイかったそうだ。

なんというか、女性=ジぷリプリ なんて安易すぎる言う事か。


そして壁際には、ララス殿下がうつむき加減に立っている。

戦闘服を脱ぎ捨て、清楚なドレス姿で、どこか物憂げな表情を浮かべていた。

負のオーラが出ている。


あまり、精神状態が上向いてないな。

丁重に、そして大胆に扱うんだ。『引き分けなんで、お世話になりました。さようなら』 なんて、口に出そうものなら、刃が命に届くぞ。

もう肉に刃が刺さる感覚はこりごりだ。


そろそろと殿下へ近づき、その耳元へとそっと顔を寄せ、甘い声色で伝える。


「ララス。力足りず引き分けでしたね。ごめんね? せっかく、こんなに想ってくれてるのに」


身体がビクッと跳ねる。


「ひぃんんんんんん!? シウタお兄様、そんな優しい言葉、いったいどこで覚えたんですか!?

どこかで望んでいて、投げかけて欲しい言葉がこんな完璧にでます? この銀河中のデータを見ても女性経験は、無かったはずなのに! 余が抹殺しようとしていた元カノは存在しませんでしたよね?

まさか、余の他に試した女がいるんですか!? いいえ、そんなはずありません。信じております」


なんだろう、地球で言う〇〇厨って言うとフェミに怒られてしまうので、こっちで言う 『ユニコーン』 信者というやつか。

貞操観念が逆転していると、物凄いやっかいな属性だと思う。


「ですがシウタお兄様、これでよかったのでしょうか。

余は、あの時の血の匂いや、あの燃えるような殺気こそが、本当だと思っていたんです。

死ぬか生きるかの修羅場の中で、あんなに高揚して、あんなに熱くなって、それなのにこんな決闘、まるで茶番のような引き分け。

余が望んでいたのは、こんな中途半端な決着じゃないと思うのです。誰も倒れない、何も変わらない! 私はいったい何のために協力しているのでしょうか。

・・・と言う事でして、引き続き帝国でお勤めくださいね」


相変わらず、頭が回る時の殿下は異常に優秀で困ってしまう。

正直、色恋営業でごまかすのもそろそろ限界な気がする。


彼女の耳元に顔を寄せ、そのまま頬と頬が軽く触れ合う距離まで寄り添う。

肌はひんやりとして、触れた瞬間に体温が上がったのがわかった。

そっと離れて微笑むと、殿下の紫の瞳が輝き出した。


よし。メンケア(発狂防止用メンヘラーケアマネジメント)は十分だ。

リリア少将との戦いを終え、お金関係の面倒事もひとまず落ち着いたし、修理代は試合放映権やグッズ販売などの収益で補填されているだろう。

足りなければ、最悪脱いでピアノでも弾けば何とかなるはずだ。


やっぱり、アイドルもとい色恋営業最強かよ。

価値観逆転、いいよね。お金ジャブジャブ。


さて、これからどうするか。

そんなことを考えていると、会議室の扉が控えめに開き、3伯爵が慌ただしく入ってきた。


「皆様、お疲れ様でしたわ。 暫く、リリア少将も大人しくしている事でしょう」


「やはり次回の決闘イベントを求める声が高まっているようですな。銀河各国と報道陣から問い合わせが殺到しておりまして」


「無限錬金システムの完成ということですね、星一つ以上の収益が見込まれました。この利益で、少将を超える機体の建造を進言致します」


そして、控室のモニターには、しつこく繰り返される決着のリプレイ映像と、熱狂するファンのインタビューが映し出されており、アリエノール宰相の放送席に暴徒が 『もう口を開くな! 邪悪な魔族め!』 と、押し寄せているのが見える。

アーレイン大佐が引き続き、その場を収めていた。


なんか、現場は凄く大変そうだ。

そもそも、帝国の宰相に実況やらすなよ。

姿形からして 「全ての種族は、統べられ、管理せねばならぬ。頂点たる魔族がその使命を負うのだ」 とか、実況席で言い出しても違和感が無い。


そんなモニターを見ていた中、控室の扉が勢いよく開いた。


「おつかれさまですー! 」


勢いよく飛び込んできたのは、サリ伍長。


「おつかれさまですー! 整備終わりましたよ。みなさん、差し入れです。しっかり補給してくださいねー! 何せシウタさんのおかげで銀河中が大騒ぎですからねー!」


いつもの元気の良い満面の笑みで、差し入れのセンスを疑う様なベーコンを机の上に並べながら、楽しそうにしている。


「それに皆様の大活躍のおかげで、繁華星の株価も爆上がりですよ、資金もこれで大丈夫ですね! あ、それから後ほど請求書お送りしますからよろしくお願いしますねー!」


いつもの軽い口調で恐ろしいことを言われ、一瞬で控室の空気が凍りついた。


――


大使館に戻り、半重力ベッドに倒れ込みながら、これからのことを考える。

和平大使はもうたくさんだ。それどころか、もはや和平の使者どころか戦闘大使になりつつある。

でも、今後決闘イベントをやっていけば十分な稼ぎにはなるかな。


でも、どうしてこうなった。

今更、拠点に戻ってもヴォルテクスに乗る仕事は残っていないだろう。


後、借りを返しにリリア少将の宇宙ドッグへ、今すぐにでもノクターンで乗り込みたい。

2回目の攻略になるので、簡単に倒せるし。


さて 『アケローン』 は、リニューアル中だし、サリ伍長の輸送艦は、絶対に貸してくれないだろう。

サリ伍長にこの状況で 「なんでもするから!貸してください!」 と、言ったら今度こそ、完全に捕まりそうな気がする。


どうやって、宇宙ドッグにランチャーをぶち込もうか。その段取りを組もうか考えている所、部屋のインターホンが鳴り、ホログラムにサリ伍長が映し出された。


丁度いい所に来てくれた。輸送艦、借りれないかな。

協力してもらおうと、色恋の手はこの前使ったし、力任せに借りようとしても力で負ける。

どうしようか。


「シウタさん、サリですー。今後のお仕事のお話をしに来ましたよー。 シウタさん部屋のインターホンを鳴らすまでアーレ大佐と詰問とレスバをしないといけないんですけどー? それにしても、部屋前のカメラによる警備が凄いですよねー? 部屋の前に大量に増設されてますよ。まさに時の人って感じですよねー」


いつの間に部屋の警備がそんな事になっていたのか。カメラの増設に気づかないんだけども。

でもまぁ、超級エースで無敵機体を倒す程度の実力だし、人気が高いのはしかたないかな。

警備が厳しいのも頷ける。


まったく、実力があるのも辛いなぁ。

自分が超級エースで偉大な存在であるため、警備関係でアーレ大佐に大変ご迷惑をおかけしている。


「どうぞ~」 と、部屋の扉をプシューッと開ける。


茶色のセミロングを揺らし、微笑みを浮かべながらサリ伍長が部屋へと入ってきた。

その手には、可愛らしく包まれたベーコンがあった。


マジに一日に、何度ベーコン。

可愛くラッピングしてもベーコンは、ベーコン。


食生活に大きく違いがあるから、国際間のお付き合いとか、次元を超えた文化のお付き合いとか、難易度高くない? 文化的な隔たりが強烈に当たってくると思う。

上手くいかないと思う。


「差し入れのベーコンです。 シウタさん、今後どうします? 今、私の管轄ですけど。 帝国で和平大使を続けられないですよね。連邦と喧嘩してますし、その仕事なくなりますよね。でも、拠点には戻らないですよねー。あっ、その前にカメラ監視を切りますね。ちょっとお部屋ゴソゴソしますね。失礼しますー」


そうだね、監視カメラだね。防犯を考えた、監視カメラだね。


いろんな決定権を持つ連邦のリリア少将が、帝国に敵対的だし。

自分も連邦に敵対的だし、大使の仕事も保留となるのか。


お仕事探さないと。

永久就職にはまだ早い。





いつもありがとうございます。


10万字で長編と言われている事に驚いてます。

小説の書き方みたいな本を読んでると、長編は35万字みたいな事をかいてあります。

10万ぐらいだったら、プロットが持つのでコンスタントに面白い作品がやれそうですが。

テンプレの流れから、クオリティ上げてキャラを動かせばそれだけで面白いですからね。

もう、10万超えた辺りから。一行目を書き出しの話を考えるので、何時間も悩むのはいやなんじゃ。


35万字目指して、エターナル不朽化しないで進めていいけたらなと思います。


次回何を書きましょうかね。

異世界転生で中世風な舞台物も限界だと思うんですよね。

ロボもゴーレムもスキルか科学の違いでしか無いと思うんですが、奴〇を捕まえて『ご主人様、凄いです!』 みたいなのは、イライラするから書きたくない。

やっぱり。なろうに向いてないのかな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ