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35 いろいろ

アリエノール=ポレット


先ほどまでドアを蹴り破るほどに怒り狂っていた殿下が、酔っぱらったシウタ殿の腕の中にすっぽり包まれています。


心なしか殿下の頬は赤く染まり、その瞳には涙をこらえているのでしょうか。

シウタ殿が先ほど口にした 「元カノに似てる」 なんて言葉が、相当ショックだったのでしょう。


好きな人に抱かれながら、囁かれる元カノの話。

殿下の心を破壊する気でしょうか? さらに執着が激しくなるのが目に見えております。


ウハハハ! シウタ殿 『配慮とかデリカシー』 って言葉をご存じでしょうか?

好意を向けられていると分かっていながら、よくもそんなセリフを口にできますね。

私の推測ですが、その元カノとやらに一度や二度、刺された経験があるのでは?

今後関係が進むと、殿下は平気で刺すと思いますよ。


そして殿下も、お母さまの皇帝陛下に似てきましたよね。

この国も跡継ぎに恵まれ安泰でしょうか。

既成事実を作り結婚までこぎつければ、殿下の勝ちでしょう。


帝国をなめてはいけませんよ、シウタ殿。

一度権力に目をつけられたら、もう逃れられないのです。

私としては、今後もいい友人でいたいと思っているのですが。


そうそう。

昔、皇帝陛下は、殿下のお父様と24時間どこでも一緒におりました。

それに耐えかねて、自国の惑星に帰ったお父様。そして怒り狂った皇帝陛下の全体指揮権の発動。

帝国全軍団で、お父様の星を包囲。

震えながら 「お前を一生愛すると誓う」 と、告白をした話が銀河中の愛と感動の物語となっており、全ての現代の女性種族が子供の頃から聞いて育ちます。


本当に、この次元の女性種族の頭大丈夫でしょうか。

直情的なア〇ばっかりです。


やはり男性が少ないと、配慮や人権みたいなのが薄くなるのは仕方がない事でしょう。

種族の繁栄に直結の問題ですからそうなりますね。


シウタ殿、できたら長生きしてください。


――


そっと頭に解毒のスキルを施し、脳をクリアにする。


先ほど、パリンと壊れた高価な壺を 「スキル:修復」 で治しながら、今起きている光景を改めて考えていました。


そして伯爵3人がぱちぱちと手を叩き 「おめでとうございます。王配をお世話するのは伯爵家のお務めとなりますわね」 「伯爵家に生まれて来てよかったですな。丁重にお借りし、お楽しみといきましょう」 「新居はもう用意しております。さぁ、借りたまま4人で逃げ出し・・・」


ムードという言葉をご存じないのでしょうか。

魔族より欲望に忠実な伯爵達、帝国は大丈夫でしょうか。


しかし、この空気のなか、異世界の少女がトコトコとジョッキを手に近づいてきた。


この銀河の理を無視する少女。

やはり異質だ。

遠くの次元から流れて来たと言っているが、その気になれば生身で星を一つ破壊できる。

やむなく、帰還の協力を条件に帝国に居てもらっている少女だ。


にこやかな微笑みを浮かべてはいるが、生身でレーザービームを撃ってくる。

次元違えば、チートと呼ばれるだろう。この銀河に居てはいけない存在だ。


ようやく運命値が溜まったとかで、ゲートから帰ってくれるそうですが、早くお帰りを願いましょう。


「皆様ぁ~もういいでしょうか? で、皆さん寝てください。では、シウタさん借りていきますねぇ」


そういいながら手をかざすとシャンデリアの破片が爆散し、部屋のあちこちからパリンパリンと、立て続けに嫌な音が鳴る。

少女が手を上に挙げると、私を凌駕する力のモヤモヤの極光が光輝く。


これは、まずい!


腕の端末から即座に通信を開き、連邦とのかけ橋でありながら帝国の懐刀でもあるアーレイン騎士伯に緊急信号を送る。


少女は片手を突き出すと

ュイイイィィンッ! という謎の高音が鳴る。

彼女の手から発せられたのは、ビームライフルに匹敵する青白い閃光。


チュドン!


億単位の資金を投じた私の部屋の壁画が吹き飛び、風通しの良くなった部屋に入り込む夜風が白髪を撫でるように流れ込んでくる。


ほんと、転移者嫌いです。

シウタ殿の回復スキルぐらいに慎ましければいいものを。

人族が唐突に力を得るとすぐこれだ。


とっとと、星へ帰って下さい。


邪悪な転移者。

次元の壁を超えると魂の力が溢れだし、能力として顕現する。

その力を意のままに振る舞う 「異世界転生してチート能力」 「追放されて無双」 「美少女ハーレム」 得た力に酔い、魔族を性的消費するこいつらはク〇でしょう。


さっきまでハグをしていたシウタ殿とララス殿下でさえ、この光景には呆然と立ち尽くす。

酔っていたシウタ殿も、完全に酔いが冷めた顔をしていた。


異世界少女は、まるで何事もなかったかのように手を下ろし、軽く首をかしげる。


「はぁ、久しぶりに。ちょっと疲れちゃいましたねぇ。 それでは、連邦ゲートで私の銀河に帰還します。お世話になりました。 帰る時、迷惑料として魔石オーパーツを置いておきますので、リリア少将にお問い合わせください~」


そう言うが早いか、彼女は眩い光を手のひらから出し告げる。


「さぁ。この光を見てください。少しお休みくださいね」


あまりにも強大な力を、さらりと振るう。


シウタ殿がどうなるか分からない。

アーレイン騎士伯に急行してもらわねば。


レジストを試みようとし、モヤモヤを体に纏い意識が飛ぶ。



――


アーレイン・フリュグリッド


――


シウタさんの私物のワイシャツが宙を舞っていた。

誰かが奪い合い、最後には吹き飛び、投げ飛ばしてしまったのね。


いわゆる、彼シャツよね。

着てみたら絶対に脳にキクと思うのよね。


残るは一人。

視線を戻すと、そこにはミリ軍曹が立ちふさがっている。


現役バリバリのヴォルテクス乗りが、黒髪をなびかせ、シウタさんのシャツを求め決意を込め立っていた。


「ミリ、貴方とやりあうなんて久しぶりじゃない。現場を離れていたからって、私が弱くなったと思っているのかしら?」


ミリ軍曹は、険しい表情を浮かべながら私を見ている。


「だとしたら、間違いよ? 私はさらに強くなった。燃え盛るような心の灯が、怠惰をむさぼることを許してくれないのよ。そう、好かれる事や落胆されないように、自分を磨く努力の事よね。

ミリ、身体を鍛えているだけではだめよ? それに気づいているのにどうして? 婚活戦線を舐めちゃだめ。

きっと結婚後だって気を抜いたらマンネリが待っていると思うの。気概ひとつで幸せの価値観は変わるんだから。頑張りましょ?」


ミリが ドンッ! と、撃たれた様に、後ずさる。

これは、先制を取ったわね。


「グググッ、返す言葉がない。最後の一人、私の前に立つのは貴方だと思ってました、アーレ大佐。

貴方には尊敬と感謝の念を抱いています。今の仕事が好きになったのはあなたのおかげだ。

だが、シウタの私物を目の前で、着られる事を許せる程、私はできていない!」


ミリ軍曹とガチでやるなんて、何年ぶりかしら。

同じ戦場で肩を並べた仲間、侮れないわよね。


――


そんな空気の中、争奪戦の観客となっていたサリ伍長の声が聞こえてくる。


「あの、3等分にしませんかー?」


確かに、その手があったわね。

独占欲で目が曇っていたわね。

今求め争っているのは、シウタさん本人じゃなくて物だもの、分けた方がいいわよね。


一人が独占するよりは分け合うほうが、より多くの幸せを生むのは間違いないわ。


ううん? でも?

サリ伍長の参戦が無く、権利を主張してないかしら?


「4等分で、お願いできませんか。ヒヒヒ」


あー、何かいるわね。邪悪なバーテン残してたわ。

無害な振りをして、漁夫の利で権利を主張。

そんな口いらないわよね。

はぎとっちゃいましょう。


と思った瞬間、ミリ軍曹の身体がブレて、バーテンの前に立ちはだかった。

素早い動きに驚くけれど、どうやら彼女も同じ考えね。


ふふ。ミリもやっぱりやるじゃない。

そうしたら、バーテンの四肢をもいでもらった後、どさくさに紛れて邪悪な酒類を木っ端みじんにしてやるわよ~。


その刹那、緊急連絡が入る。

アリエノール宰相からだ。


「エイリアン少女にシウタ殿がさらわれました。目的地は連邦ゲート、管理者はリリア少将・・・。 官邸は全員気絶状態。・・・帝国官邸を入居を許可する。 騎士伯、官邸に・・・、来て欲しい」


この一報を受けて、ミリ軍曹、サリ伍長、なぜかバーテンも一瞬凍りつく。


最悪のシナリオかもしれない。

のんきに争っているうちに、エイリアン少女がシウタさんを持ち去ってしまったわけね。


「ミリ軍曹! サリ伍長! 行きますわよ!」


さっきまで私と火花を散らしていたミリ軍曹と目が合う。


「「大佐は、官邸へ!」」


あ~、そうよね。

連邦関係者と言えども、帝国からお給料出ているんだったわ。

私が官邸に様子を見に行かないといけないわね。


ミリ軍曹、サリ伍長頼んだわよ。

まったく、本当に面倒な夜になったわね。


そう心中で呟きながら、私は官邸へ急ぎ足を進める。



――


サリステア・フィオーレ


――


シウタさん、またさらわれたんですかー?


3人がモヤモヤに消えた瞬間を見ましたけど

エイリアンさんが、シウタさんを害する様子は無さそうでしたよー?


どちらかと言えば、私達の方が襲う心配がありますよね?


だって、このちぎれてキレイに3等分になったワイシャツがここにあります。


私達3人、シウタさんを巡ってこうならないようにしないといけませんよねー。


さてと、向かいますかねー。



――


シウタ


――


気が付けば、いつの間にか移動用星間シャトルの中にいた。


帝国官邸で手から放たれた少女ビームの記憶は瞬く間に消え失せ、広い席に寝かされており、正面には、大型ホログラム装置が静かに輝いていた。


ふと、ホログラム画面が点滅し、そこに女猫のイケメンともとれるリリア少将の笑みが浮かび上がった。

そして、無造作に手を叩きながら、薄ら笑いを浮かべていた。


「さて、制服姿の少女。運転中かい? 流石に、エイリアンも星間移動くらいは自力でこなせないみたいで、むしろ助かったよ。今は二人きりだ。そしてここは、拠点でも帝国の邸宅でもない。君をどう扱おうか、楽しみだ」


少将の言葉には、喜悦が滲んでいた。


「ふふ、いい話があるのさ。今や銀河を揺るがすほどの王子が出現し、ホログラム局の上納文化に、男優。いや、無限に稼げるチャンスが広がっているんだ」


どこの星でもこの上納文化があるのか。

女神様、反省しております。アイドルの卒業はどうやってするんでしょうか。

でも少将、全てのリソースを使っても成功したいと言う、心を燃やす営業欲と。れーぷは、違うぞ。


「連邦の映像コンテンツ産業が、シウタ君を必要としてるのだ。まったく素晴らしい素材だ。仕事には困らせないぞ。シウタ君が画面越しに活躍すると、連邦のスポンサーは大喜びだね。あとは連邦の宝をどうやって利益につなげるのか。考え甲斐がある」


連邦上部やばすぎだろ。

なるほど、守銭奴だ。


「リリア少将。 アイドルは意外に大変な事が分かりました。チュバーも陰で分相応の努力をしているのですね。普通のお仕事で良いかなと最近思うわけですよ。 ヴォルテクスで宇宙海賊とかを討伐したいので、帝国にそんな仕事ありましたら、そっち方面に転職しますから」


「なぜだ?! 稼ぐだけ稼げば、後はもう労働から逃げられるんだよ!? 君にはその才能がある! この男性が軽んじられる世間を、見返したくないのか?」


そんな事を話していると室内アナウンスが入る。


「シウタさん。拉致ってしまってごめんなさいぃいい。あの、もうすぐ連邦ゲートに付きますから、星間移動ゲートを視認する時、私の手を握って頂けますか? 本当にそれだけでいいんです。 お礼もしますから、お願いします~。断ったら、周辺を半壊させてまで頷かせないといけないです。お願いします」


それもいいな。

ゲート周辺を破壊させて少将に少々困らせてみたいが。


彼女が帰還できずに困っている様子を見て、正直内心では助けてやろうと考えていた。

ただし!


「わかりました。それだけでしたら、手伝いますよ。でも、宰相の部屋は弁償してくださいね」


そういう事だ。


「はぃいい! ありがとうございます! 好きなだけ、魔石、マーセキン鉱石をお渡ししますから!」


いきなり、無限にお金が入りそうだ。

リリア少将の野望もこれまでですね。お金になびかなくで良さそうだ。

少将も、お金貯めて何するつもりなんだろう?

ステータス? 高級車でも買いたいのか?


ホログラム画面が一変し、遠くからでも一目で分かるほど巨大な連邦宇宙ドックの壁面が現れた。

無数の光が点滅し、まるで要塞だ。

外壁に輝く青と金を基調とした連邦王国の紋章が、宇宙の闇を照らしていて、超かっこいい


その時、シャトルの外から急接近するサリ伍長の輸送船が見えた。

高速で機体の航行灯が点滅し、こちらに向かって突っ込んでくる。

そしてすぐさま、通信が入る。


「シウタ大丈夫か!? お前を取り返しに来た! すぐにタイラントを出すからな!」


「シウタさん。大丈夫ですよねー? 少将に仕事斡旋されても断りましょうね? 好きな仕事を優先しますもんね? はぁ~、分ってきました。その残虐な衝動、私じゃ止められないんですよね? そこに惹かれても、今後のお付き合いを考えるとダメな衝動ですよねー」


それぞれの立場がありますからね。

そこの見極めがゴールまでのお付き合いではありませんか?


そして、来てくれて。ありがたい、ありがたい。

ミリ軍曹と輸送艦のサリ伍長が来てくれるとおもいましたよ。


でも、連邦宇宙ドックで、暴れて大丈夫か?

うらやましいので参加させて欲しい。

ミリ軍曹、ここから自分をさらってくれないか。





大雪で更新が遅れております。


いつもありがとうございます。

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