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25 1章おしまい

一章 おしまい


遠い銀河の話で、星間移動が当たり前になった時代。

人々は資源拠点からエネルギーを大量消費し、星々での暮らしを繁栄させていた。

しかし、各国家の宇宙圏での格差や、ヴォルテクスをめぐる利権争いが激化し、政治と経済のパワーバランスが不安定な状態にあった。


そんな中、一つの大きな争いが終わろうとしていた。

この銀河の人々は、安寧と繁栄を求めている。

負の感情や憎悪を文化的に、そして行動原理に基づき乗り越えてきたところまで来ていると思う。


問題もあるとは思うが、確実にこの銀河は繁栄の道を歩んでいる。


地球は、近い未来この問題を乗り越えることができるのだろうか。

かつて教えと道があり、人類は繁栄してきたはずだ。


――


平和調印式の日が、ついにやってきた。


サリ伍長が手際よくスーツを差し出し、ほとんど強制的に着せられている。

未来素材のスーツに袖を通していると、伍長が満足そうに頷きながら微笑んだ。


「今度そのスーツでお部屋デートとかどうですかー? すっごく馴染んでますよねー、シウタさん。その姿で商談の契約を取りに来て、頷かない女猫は居ないと思いますよー。そして、絶対その立場を利用してシウタさんを食事に誘いますね。そしてワンチャンス狙いますから、気をつけてくださいね!」


それは、地球でもまれに良くある手だな。

いわゆるカスハラ(食事一緒に行ってくれるなら、契約してあげる)の未来版じゃないか?

貞操間観念が逆転している世界で見ると、男ってこんな愚かな生き物だったのかと再認識する。


また、サリ伍長自身も赤いアクセントが入った軍服を着ており、普段と違うその姿は可愛らしく見えた。


「サリ伍長もすごくお似合いです。どこかの名家のお嬢様かと思いましたよ。あ、失礼。お嬢様でしたね」


少し照れたような笑顔を見せたサリさんを横目に、隣のミリ軍曹へ目を向ける。

儀礼用の軍服に身を包んだ彼女は、堂々とした立ち姿でこちらを見ていた。


思わず見惚れるほど。高い身長と広い肩幅が軍服を完璧に引き立てている。

普段の中身を知っているためか、なんとなく悔しいのでからかう言葉が口にでる。


「ミリ軍曹、その服装のカリスマ性がすごいですね。うーん、これだけ似合ってるならビックリするくらい同性にモテそうですよね? これ以上人気者になられると、自分が忘れられそうで困るんですが?」


からかい目的で投げかけた言葉に、軍曹は鼻を鳴らして視線を逸らす。


「何言ってるんだ、シウタ。お前こそ、少しは様になってるじゃないか。 ・・・いや、嘘だ。もしこの服装のシウタが夜会婚活の場にいたら、あれだ。話し合いの権利を巡って女猫たちがデスマッチを始めるに違いない。マジにだ」


返ってきた言葉は照れ隠しとも、皮肉な冗談とも取れる曖昧なものだが、口元に笑みが浮かんでいた。


未来銀河の世界で、ひとりの男性を巡ってデスマッチなんて、さすがに野蛮で原始時代すぎる。

ミリ軍曹の冗談の返しの方が上手だな。

本人は冗談で言ってるよな? そうだよな?


未来世界の科学と精神性は向上していると言うのに、どこか原始的な所がある気がする。


式典に向けて最後の準備を整えていくと、不思議と職場の変化を予感させる。

服を変えるだけで感じられるこの空気感は、昔の卒業式や入学式と似ているのだろうか。

もう覚えていない。


――


ここは拠点A-112、連邦王国から参列者達で賑わっている。


式典会場は拠点の外に設けられており、自分たちは拠点内に設けられた閲覧席からその様子を一望していた。


「シウタさん、この部屋から絶対に出ないでくださいね。ミリ軍曹、警護お願いしますー。シウタさんを狙おうとして、マスコミや連邦のお偉いさん、帝国から調停前に会わせてくれという打診がスパムメール並みに届いていますからねー!」


サリ伍長がニヤニヤしながら言葉を続ける。


「『和平の残虐王子伯爵騎士』 だそうです。連邦と帝国で知らない人はいないそうですよ。帝国の設定を聞きたいですか?」


どうしようか、設定を聞くと頭がおかしくならないだろうか。


「えー、そうだな、シウタ。帝国の触りを説明するとだ。戦場で超級エースが誕生すると同時に、皇女を恥辱しながらその命を助け、再戦に燃える皇女の拠点制圧要塞を単騎で相打ちへ。その際、帝国に捕虜となるが帝国の説得により・・・、心入れ替えた残虐騎士は皇女へ和平を嘆願・・・? なんだこれ? マジか設定がまだ、永遠に続いているぞ・・・」


「あっ! そこまでで。頭がおかしくなってしまいます」


なんだそれ?

想像を絶する設定に、頭を抱える。


「生産拠点を武力制圧しようとしたが、エース級が2人いた事で失敗。資源惑星の取り合いをやめて、交易再開と言う事じゃないんですか?」


「それにより、この拠点と縁が深いフィオーレ家が貿易と私の仲介を務めるわけですねー。シウタさん、お金に困る生活なんて送らせませんよ? 繁華星に丁度いい豪邸があるんです、住んでみませんか」


魅力的な提案だが、ヴォルテクスに乗りたい気持ちの方が勝っている。

サリ伍長、それ愛人を囲う感じで話していますよね? これも純愛の内に入りますかね。


軽く首を振り、窓の外を見下ろす。


各国の旗が並び、穏やかな音楽の中、和平の空気を演出していた。

参列者たちは、連邦と帝国の要人が一堂に会した場面に緊張をしている様子だ。


心なしか、参列者全員の視線がここを見ている気がする。

とうぜん、自意識過剰だろう。

ちょっとヴォルテクスの操縦が上手いからと、最近調子に乗っていた事に反省する。


「本日この場にて、我々は長きにわたる対立に終止符を打ち、新たなる未来を共に築くことを誓いますわ」


色々ピカピカした勲章をつけている服を着ている、アーレイン大佐の声が会場に響き渡る。


紫の髪を風に揺らしながら、帝国のララス殿下が中心に向かい進んでいく。

その隣にアリエノール宰相が儀礼服を纏い、気品を放っていた。


何を着ても気品が溢れる魔族の種族格差ってマジずるいと思う。

女神様、なぜ自分は生まれた時から魔族の様なアイドル路線にいけなかったのか。


そして、連邦側から見たこと無い、黒い髪を後ろで束ねた女性のお偉いさんと思われる方が歩み出て来た。


中心に歩み出ている時に、ララス殿下がこちらに気づいたのか、小さく手を振ってくる。

もちろん優しく手を振り返すと、殿下がドンッ! と謎の力に吹き飛ばされたと思いきやアリエノールさんにガッシリと支えられた。


それをみた会場の全員が、こちらをみて手を振っている気もする。


見るな、目を合わすな、気のせいだ。気のせいだ。

目の錯覚だ、ノクターンに乗りすぎて疲れているんだよ。


ミリ軍曹がグイッと襟首を掴み窓の外が見えないように引き寄せてくれたので、会場の全員が手を振っている幻覚が消えた。


「シウタさん、軽率な行動はいけませんよー。このように隙があると思われてしまいます。いいですかー? そもそもですね、シウタさんの属性は王子なんですから・・・、笑顔もいいですが・・・、どちらかと言えば・・・、冷徹で・・・、たまに見せる笑顔が・・・」


部屋から幻聴までもが聞こえて来る。

疲れてるんだろう。


――


式は進み調停の印がつつがなく終わった。

最後に連邦と帝国のそれぞれのスピーチが始まる。

帝国のララス殿下が登壇した。


「本日この場にて、この対立に終止符を打つことができたことを心より嬉しく思います。私たちが手を取り合うことこそ、この銀河に安定と繁栄をもたらす道だと信じております。帝国と連邦が、互いに歩み寄ることを選んだこの瞬間こそが、未来にとって大きな一歩であると! この銀河が争いではなく、共存と協力によって輝きを増すことを願っております」


誰だ、この殿下。

マジに誰だ、影武者か何か?

少し感動してしまった。


誰もが次の殿下の言葉を見守っている。

なんか癪だが、カリスマ性を持ち合わせているのだろう。


「その功労者で、私には生き別れた、愛しているお兄様がいると知りました。ずっと余は探していました! どうして? どうして黙っていたのですか!? お兄様は、敵である余を助けてくれた。命を救ってくれた。でも、それならどうして一言も何も言ってくれなかったの!? ずっと余と一緒にいてくれるって約束してください、今ここで! あああああああああ!」


会場が凍り付く。

ミリ軍曹とサリ伍長が隣で 「「あっ。いけない」」 といっただろうか。

直後、壇下に座っていたアリエノール宰相が立ち上がる。


彼女は両手を上げ、手のひらから黒い 『もやもや』 を放出していた。

同時に、殿下の前の壇上がふわりと浮き上がり、空へと舞い上がっていく。

殿下は何かを喋り続けているが、壇上がどこかへ飛ばされてしまったため、もはや何を言っているのか全く聞こえない。


そして、アリエノール宰相は片手を振りながら回りに拍手を催促している。

催促に煽られるようにして、会場は割れんばかりの拍手で包まれた。


魔族つえーな。なんか力業でズルくない?

納得いかないので今度、宰相に奢ってもらおう。


――


フワフワ飛んで行った壇上が、フワフワと元の位置に戻り連邦の方のスピーチが始まる。


「あれが連邦上部の方ですか?」


「あー、シウタはそうだな、知らないのか。あれがリリア少将だ。保守的な人で私はあんまり好きじゃないな」


「守銭奴ですよねー、帝国とシウタさんが生む利益を考え、アーレイン大佐を栄転させる邪悪な人です」


すごい言われようだ。

これが、連邦の役員と言う事か。


その緑色の眼差しが会場全体を見渡し、話始める。


「拠点A-112での奮闘は、銀河の未来を照らす希望の光となりました。ヴォルテクスを駆り、戦場の最前線に立ち続けた2人。そして拠点を支え、圧倒的な実力で敵を迎撃し続けたミリュネ軍曹、シウタ大使。その2人の超級エースの働きが帝国の心を動かし、和平への道筋を切り開いたのです」


その視線がこちらに向かう。


「さらに、この拠点を長年支え、未来への礎を築いてこられたアーレイン大佐。彼女の卓越した指揮と決断力が、この平和調停を可能にしました。そして彼女の新たな任務が、華々しい功績を讃え、シュメ太陽系K-112惑星での新たな防衛の指揮を執りる事となります。その地においてアーレイン大佐が新たな挑戦に挑むことは、連邦全体の未来を切り拓く力となるでしょう」


拍手が沸き起こる中、少将は続けた。


「そしてここにいる皆様も、シウタ大使、ミリ軍曹をはじめとするこの拠点の英雄たちが示した勇気を忘れないでください。そして新たな位を連邦王国でも新たな位を設けます。その功績を讃え、和平大使の位を授けます!」


会場は割れんばかりの拍手だったが。

この部屋は白けていた。


栄誉を授かると言われても、素直に喜べる気分ではない。


――


式典が無事終わり、応接室に呼ばれているので先ほどの3人で応接室へと入る。


中には、ララス殿下、アリエノール宰相、この前の黒い3人が座っていた。

そして、緑の目のリリア少将が待っていたかのように話しかけて来た。


「初めましてだな、シウタ君。 私がリリア少将である。 この度の貴殿の働きに敬意を表する」


アーレイン大佐が居ない事が気になるが、最低限の礼儀は示さなければならないだろう。


「どうも、初めまして少将」


少し礼が雑になってしまった。


自分はミリ軍曹に拾われ、アーレイン大佐に雇われ、サリ伍長についたのだ。

少将に雇われたわけではない。そして、なんだか良い印象が持てない。


そして、まず殿下とアリエノール宰相に礼はしないといけないだろう。

姿勢を正し、二人に深く頭を下げる。


「殿下、先ほどは素敵なスピーチでしたね。この度は改めまして宜しくお願い致します。そして、宰相後でお話しませんか? アフターがいいですね」


どこか上の空だった殿下に、笑顔の花が咲いた。


「共栄、素晴らしい思想です。では、お兄様。そしてミリュネ軍曹、サリステア伍長、お聞きしているとは思いますが、一度帝国領本土へいきましょう。 これから共栄していくのですから、ご協力の程お願い致します」


そうだね、聞いている。

そして一応、分っているとは言え、聞かずにはいられない。

ミリ軍曹、サリ伍長の目を見つめ、無言で頷き合う。


「アーレイン大佐は、どうなりましたか? 自分はアーレイン大佐に雇われました。少将、失礼ですが、あなたに雇われたわけではありません。所詮は雇われ傭兵みたいな物でして、連邦に忠義を持ち合わせていません」


その言葉に応接室の空気が一瞬静まり返るが、黒服の3人が声を上げる。


「超ドストライク。雇いますわ。家と領地売っても雇いますわ」


「ベルティア殿、抜け駆けはいけませんな。もう家を売った私に勝てるとでも?」


「えぇ、売ってしまわれたんですか? 実はもう買いましたけど?」


あっ、うるさい系だ。


アリエノール宰相が静かに手を上げる。

その動きだけで、3人が静まり返った。さすが、宰相だ。


「おや、王子様に嫌われてしまったかい」


リリア少将の緑の目が細められる。


「安心したまえ、シウタ君。彼女がいなくなることで君が不利になることもないし、拠点も同じだ。むしろ、彼女がいたからこそ君の価値がここまで高められたのだ。大佐の存在があったからこそ、君は今、帝国と連邦の両方で必要とされる存在になったのだよ」


アーレイン大佐のおかげ。その通りかもしれない。

仕事は人の好き嫌いでしてはいけないと言う格言があるが、ク〇食らえだ。

こちとら、人間なんじゃい。少将、覚えていろよ。


「さて、殿下もいらっしゃることですし、これ以上のおしゃべりは控えよう。これからの正式な話は殿下が望まれる形で進めるとしようか」


そして殿下が興奮を抑えきれない様子で話し始める。


「ええ、一緒にですよ。一緒に。まずは1週間です。一緒に行きましょう。 そして、一緒に本土に降りて、手を振るんです。 あっ、あの、その時は、お兄様、余の腰に手を回して下さいね。想像しただけあぶぶう、あああああ 『では、シウタ殿。行きますか。サリ伍長、ミリ軍曹、この度は、サポートの程、宜しくお願い致します』」


宰相が、あぶあぶ言っている何かを遮るように、殿下をエスコートして席を立つ。


――


応接室を後にする間際、アリエノール宰相がそっとこちらに話しかけてきた。


「アーレイン騎士伯も帝国大使館で待っている。シウタ殿、出張での仕事も悪くないと思いますよ。何より一緒に飲める友となったのは喜ばしい事だ」




ありがとうございます。

プロットが切れている中、なんとか次に進めました。


テンプレとはプロットを補強するサポートの強さ。


プロットとは、筆の速度のサポート


何となくわかってきました。


そして休日とは、小説をもんもんと書く日。


少し贅沢を言うなら、評価という物で作者を幸せにして頂いてももいいんじゃないかなと。

思うわけであります。はい。


そして、いつも押してくれている貴方様ありがとうございます。


プロットも切れて準備している時間が無いまま、書いているので。

キャラクターがテンプレ系になるわけですね。

そして、前に作ったキャラを動物占いにあてはめ、性格を変える。

コアラとか、羊とかおおかみとか虎とか、上手い具合に性格が細分化している。

優しいコアラ、厳しいコアラ、破壊光線を撃つコアラ。

いろんなコアラがいるよ、机の引き出し、パソコンの中を探してみてね。


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― 新着の感想 ―
少将やっちまったな。 後で国家反逆罪で軍法会議にかけられるかもしれんなあ。
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