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2 続異世界

シウタ


大柄な重たいお姉さんをロボットのコクピットに運んだ。


コクピットの中は、思ったより狭くなかった。

大柄なお姉さんが乗るからだろうか、これなら二人乗れるだろう。


お姉さんを座席におろし、まわりを確認する。

両脇を圧迫するように配置された計器類とコンソールが、パイロットの身体を包み込こむ作りになっており視界の端に映る計器がカチカチと赤く点滅していた。


ロボットの中に入った安心感と、剛健な金属に包まれたと言う認識で心に余裕が生まれた。


そういえば先ほど、お姫様抱っこで密着、緊急時に色々と触診していたのだ。

現代社会では、セクシャル的で抹殺対象だ。


ますは同意を取らなければいけない。後でこじれた時 「同意が無かった」 言われれば、この行為は制裁対象となる。なお、同意があったと言っても 「断れる状況でなく、無理やりだった」 と言われても社会的抹殺対象。つまり、すでに詰んでいる。

相変わらず、ク〇な世の中だ。

神様、言われて悔しかったら自分の来世をアイドルにして欲しい。


まずは、コンプライアンス的に同意を得なければいけない。

次は、このコクピットの中で前後密着状態となり、操縦しなければならない。

言い逃れが出来ないセクシャルハラスメントの行為だ。


「あの、お姉さん。まずは自己紹介を。 自分は、ショウタと申します。 株式会社〇〇の営業1課の課長代理で?? 機械食品系の総合商社です? うん? この肩書意味ないですね、そもそも別世界ですね? あ~、転生して気づきました。仕事の立場無くして自分の存在を確認できない人生だったのか。今の自分はなんだ? 誰だ? えっ、馬鹿な、この自分が社会不適合者だと? あああああ!」


自分が無職だと? 信じられない。


「?? シウタさんでいいのか。後半良く分からないが。私は、ミリュネと言う。連邦軍、軍曹だ。 なるほど、業者の出入りか。この帝国の封鎖が厳しい中よく来たものだ。こんな素敵な回復の 『種族の力』 を持つ男性が営業に来たら、担当持ち受けで内部戦争が起こるでしょうが、運が無かったですね。 あ、すまない。シウタさん、まずは戦闘エリアを抜けよう、あのあのあの、すまない。あの先ほどからあの、緊急時でいろいろとあの、嫌いにならないで欲しい。あの。脳が沸騰している。なんだこれ。理性で押さえきれないぞ。恋する乙女? なんだこれ」


緊急時セクシャルは、許してくれそうだ。

そして、そう言えば、スキルに訛りがあると書いてあったな。

【言語理解:面白外人程度】 キレそう。 ネィティブ発音とかできるわけねーだろ。

日本でも方言とかで、正しい日本語なんて存在しないし。

シウタでいいか。


「緊急時医療的な行為なので、ご理解を頂けたらと思います。それで、操縦には前後に座らないといけないのですが、操縦するならミリュネさんの前に座って宜しいでしょうか。後々、ハラスメントだったと言われても困りますので」


「なんだ、紳士か。 商売とは言え、今そういうシュチュは許してくれないか。ほんとに意識しただけで、どうにかなってしまう。生きて帰れたら商品も全部買うから、そういうのやめて下さい。 緊急時のため、前に座ってください。緊急だから、やましい心とかそういうのないから、前に座ってください」


なんか怒られた。異世界文化の違いか。

会話がかみ合わないな。


「失礼します」 と、言ってミリュネさんに後頭部を置いて座席に座ると大い太ももにギュッと挟まれる。

ほんのりと、先ほどの血の臭いがした。


「全身の骨が折れててよかったと思う日は、初めでだ。 何もできない、シウタさん、何もできないからな。 本当によかった。 いや、ウソだ。脳に凄い指令が来てるな? このまま襲ってしまえと? 今は戦闘中で私は、軍曹なんだが? 地獄の様な鍛錬の日々は、こんな色香に負けてしまうのか? 情けなさすぎる。おい、私の脳よ返事をしてくれ」


何となく言おうとしていることは分る。

緊急時の倫理観を超える配慮を無視した行動。申し訳なくなりますよね。

自分も、配慮せずに本当に申し訳ない。


操縦席に座ると冷たい外気が一気に体を包み込んだ。コクピットの出入り口から赤い空が見える。

感覚が、まるで霧が晴れたかのように思えた。

息を大きく吸い込むとミュリネさんの血の匂いがした。


左右の視界を写すパネルは、蜘蛛の巣状のひび割れに覆われていた。


「視界は、一番上の予備パネルを見て欲しい。操縦デバイスが左右2本のその操縦スティックだ。ボタンとトリガーでボルテックスの精密な操作を可能にしている。足元のペダル2個でアクセルとブレーキだ、これは分るな?」


「なんとなく、わかります」


ウソだろ。

おいおいおい、これ操作方法が分るわ。

これ、やりこんだ、セッガの電脳ロボじゃないか。

2本スティックは神! セッガは、神! 3歩先を進む、犠牲者! アナログ回線でメタバース空間。 時代が20年先取りでマジ凄い超神だ。いや、凄かったんだ。

操作が違っても直ぐに慣れるだろう。


マジで、ロボ動かしていいのか。最高だ。

ここから逃げたら、この世界でロボ関係の仕事で就職をしよう。

やる気が出て来た。 楽しそうな世界だ、生き残ろう。


「ミリュネさん! ミリュネ軍曹! いきましょう。さあ、指示を下さい! 何でもしますよ!」


「あのな、ほんとにそういうのダメだ。 今、何でもって言ったな? お喋りな口を口で塞いで黙らすぞ? いや、すまない。私の理性があるうちに行こう。起動させるぞ、操作はなんとなくわかるんだな。そしたら、指示を出す。 戦闘モードのオートで自立が動くぞ。細かい動きは手元のコンソールを見て、指示を出す」


はい! 軍曹殿! とか、このテンションで言いたいが。

民間が調子に乗るなと言う事だろう。

その通りで、なんだか恥ずかしい。


ミリュネさんが折れてない手でコンソールをいじり上のパネルに赤いマーカーを出す。


「この点が自機だ、一先ずこのマーカーの所に行ってくれ」


コクピットを照らしていた赤の光から緑に輝いた。


巨大なロボットが地面を震わせながらゆっくりと立ち上がる。

その金属の脚が地面に叩きつけられるたび、大地は揺れ、空気が震えた。


たまらない。

脳内にあの頃のBGMが流れている。

魔クロース、がんどむ、エヴォン? あなたの好きなロボはなんでしょうか?

ミリュネさんを助けた恩のついでに、就職の口を聞いてみよう。


――


地面は爆撃の跡で穴だらけ、倒壊した建造物の残骸が散乱している。

その中をロボットで巧みに操縦しながら駆け抜けていた。


気持ちよすぎる。超、気持ちいい。絶対にこのロボ関連の就職をしたい。

そうだよ、ターボだ、アクセルと右上ボタンでターボで走れる。

ほんとに感動だ。生き残ったらあのク〇女神のための祭壇を作ろう。

本当にありがとう、電脳操作のロボ世界。


そして、なんとなく追っ手の気配を背後に感じながら、走る。


「おお、筋がいいな、筋・・・? あのエロ筋? 脳みそ仕事してくれ! ダメだ。すまない、折れてる肋骨に重心をかけてくれ。痛みが無いと正気を保てない」


それほど、意識を保つのがきついのか。

ここで、気を失われても困るので、心を鬼にして体重を後ろのミリュネさんに預ける。


「ググッ。そうだ、いいぞ。いや、なんでだ。 やばいな、最高に気持ちいい。シウタさん、あの~、詮索して大変ごめんな。サキュバスたちの 『種族の力』 とか、持ってたりしますか?」


魅了とかおっぺぇスキルとかですかね?

無い物は、無い。


「ははは、あれば良かったんですけどね~、そんな優秀なものはないですね~」


良くわからんが、てきとうに話を合わせる。


「たしかに、魅了とはまったく違う。あれは跳ね返せる。でも、なんだこれ。頭に結婚の二文字しか浮かんでこない。そうだ、シウタさん、全身骨折で私は、正気を失っている。この度の色々な非礼を許して欲しい」


「そうですよね。緊急時ですから大丈夫です。いえいえ、こちらこそ許して下さい。色々とミリュネさんへ非礼をしてしまいした。田舎者なので、どうしたらいいか分からないのです。そして、結果的にミリュネさんに逆に、助けて頂いたものですからこちらこそ申し訳ない。骨折とか尋常じゃない痛みですよね。本当にありがとうございます。このまま何とか逃げましょう」


営業の大人の対応だ。

踏み込まない感じでどうだろうか。


「あー、こちらこそだ。えー、やさしさしさと紳士的な言葉に脳から色々な麻薬成分が溢れている。あああああああああ! ここで優しい言葉、らめぇえええええ!! ひゃあああああ! 直感が負けるぅうううう!」


楽しく荒野を移動しているのに耳元で、叫ばないで欲しい。

うるさい。


そして先ほどから、後ろに敵意みたいなものがついてきている。

スキル気配察知の効果か、恐竜の気配と一緒だな。


いや待て、この未来世界で恐竜の気配はやばくないか?


「ミリュネさん。いや、ミリュネ軍曹と呼んでいいですか? 敵意が近づいてきてます」


「出来たら、女王様とか呼んで欲しいな? 王子様? じゃない。あー、シウタさん。後ろ向いて私を思いっきり殴れないか? いやだめだ、多分だが気持ちいい。 私の呼び方は 『ミリ』 でいい。 シウタ、それは 『種族の力』 か?」


「多分そうです 『ミリ』 さん。対応策ってありますか」


コクピットの上のレーダーみたいなものを見ているが、異常は何も検出されていない。

それなのに、恐竜の気配は消えていない。


「了解、武装を解除する。威嚇射撃をしてもらいたい。拠点からはなれているから効果はあるだろう。その愛称呼びが、直接、脳に、来ている。もう、老後までの暮らしが脳の映像で流れているのだ。詮索して申し訳ない、彼女とかいるのか? どこに住んでいる? 週末は? 空いているな? 一緒にホテルで歌おう? ああああああああああああ! 私が嫌いなクズの台詞じゃないか! 本当になんなんだ!」


いや、まぁ一晩ぐらい別にいいが。

今、そういう事を言う場合じゃないだろ。

立場を全うしないのは軽蔑してしまうが、ミリさんは十分な対応と立場を熟慮した行動だと思う。

軍人さんへの好感がもてる。 日本の自衛隊の食品機械の営業も担当した事があるしな。


「解除! 上のボタンとトリガーで兵装の違いがでるんだが、慣れなければトリガーだけでいい。 私のヴォルテクスは、近距離型~中距離だ。分からないと思うが、乱射でいいぞ」


近距離型~中距離型か、最高に脳に来る。いいじゃないか。

前世の自分の持ち機体は遠距離から中距離、ノーロックを得意とする機体だったが。

でももう何年も触っていない。自分が愛したゲームだ。

まだ、触ってない機体もあったんだ。


「ミリさん、ボタンで特殊兵装ですか。胸にきます。そういうことですか。 女神様の祭壇を立てなければいけませんね。女神様、本当にありがとうございます。 たとえ、ここでまた転生となっても、十分な転生を果たしたといえます。 ミリさん、やってみます。 遠慮なく、後ろから指示を飛ばしてください。 遠慮は命を削ると知って欲しい。ミリ、頼む。 足りないところを教えて欲しい」


「うあああああああああ! 私の旦那様ぁああ! セクシャルモンスターめ! 任せろ! オールレンジモードだ。 一度、ロックオンしたら対象を外さないぞ! 逃げるなら言え! いくぞ! 何が何でも生き残り旦那にする!」


「了解! うん? 旦那? 方言ですか? 武装解除、ミリ軍曹! 了解であります!」


コンソールを操作され、コックピット内のレバーの操作モードを切り替えたのだろう。

直線的な移動ルートは解除され、ヴォルテクスは自由な動きが可能となった。

機体がまるで生き物のように応答し、自分の意思の元の操作に合わせて滑らかに地上を躍動する。


近距離中距離系か、思い出せよ自分。

まとわりつく影の様に。距離を保つのだ。


高速移動のロボット。最高にいいじゃないか。

だって男だもん、いつだって青春は胸の中と思い出の中にある。

愛した物は、年齢経過と共に劣化しないのが不思議だ。

だってそうだろ?


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やはりノーロック射撃は全てを解決しますよね。しかし遠中距離でノーロック…TDかな?
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