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15 ミリュネ・ベグハルトからシウタ

ミリュネ・ベグハルト 凱旋


帝国のヴォルテクスたちが残骸と化し、赤黒い夜に漂う火の粉が静かに消えていく。


大戦果だ。

帝国部隊は、すごすごと帰るしかないだろうな。


『相手が悪かったな?』


なぜなら、うちの拠点には、私と同じ超級エースが一人いるからだ。

そいつは、残虐性の影を落としながらも、どこか儚く強く裏があり素直で・・・。


はぁ~これが恋というものなんだろうな。

顔が熱くなる。恋は脳のバグと言われているが。

その通りだ。今、私の脳は完全にバグっている。


胸の奥がギュッと締め付けられて息苦しい。

名前を呼ばれると、心臓が音を立てて跳ね回る。


そして、アーレ大佐の言葉が、脳裏に響く。「おぼこ」 

最高に笑える、その通りだ。まるで生娘じゃないか、情けない。


遠距離から冷酷に、迷いなくコクピットを狙える腕前。

見た時は人間性を疑った。戦場で躊躇なく敵機のコクピットを撃ち抜いたのだ。

でも、私に気づかれた途端、シウタはあっという間に良い子の顔をして、素知らぬ振りを決め込む。

分かりやすいにも程がある。


闇が深い、あいつを闇から救ってやりたい。

このままでは、戦場で長生き出来ないだろう。


そう、私の近接とシウタの遠距離援護が揃えば、30機で囲んでもまともに勝つのは無理だ。

2人が前後の陣形を敷いた時点で、戦略的に詰んでいる。


この勝利で帝国側は痛手を負ったはずだ。

前線基地までの補給ラインは遠く、再編成には時間がかかる。


どうせ2陣が来るまでの間は、こちらの時間稼ぎだ。

撤退する奴らを、小突いてやればいい。

紙飛行機の宇宙部隊だが、それぐらい出来るだろう・・・?


さて、恋も悪くないな?

だが、どうしたらいいんだ。

心は繋がっているのに、手も足も出ない。不甲斐なさに泣きそう。

シウタのチャンスを何度も潰しているみたいだし、もうどうしたらいいかわかんない。


押してもダメ、押しすぎてもダメ。押し倒したら嫌らわれる。

こちらも、戦略的に詰んでいる。


そう思いながらも、笑みが口元に浮かぶ。


「本当にどうかしている。私は、どうしてしまったんだ」


――


格納庫の扉がゆっくりと開く音が聞こえる。


「ひゃああああああああ! うひゃあああああああ! うひょおおおお!」


いささか品性がかける様な、歓喜と歓声が満たす中でヴォルテクスから堂々と格納庫に降り立った。


無数の拠点の女猫たちが歓喜と歓声の輪が出来上がっている中、視線が私に注がれる。

が、すぐに 「あっ、凄かったですね。いつもの事ですね、ご苦労様です!」 的な、軽い反応が来る。


別に何も言わなくてもいい、これも一つの敬意だと思う。

お世辞をべらべらと並べられるより、よっぽどいい。


ヘルメットを脇に抱え、黒髪を軽く振りほどく。

額にまとわりついていた汗を手の甲で拭い、肩で息を吐いた。


さて、うちの王子様の凱旋だ。

様子は、どうだろうか?


シウタの方をガン見すると、女猫たちがシウタに群がり、声を張り上げている。


「シウタさん、さすがですー! 戦闘で残虐な人間性があらわになったのに、私はどうしてこんなに惹かれるんですかー?」

「シウタ王子、私を撃ち抜いてぇええええええ!」 「王子がトリガーを引く度に胸が熱くなってもう最高!」 「私が登録している推しの推しやめる!」 「冷たく無慈悲なゲスい王子。なのに、なぜ胸の高まりが収まらないのか」 「こっちみてぇえええ! いぇええええええい!」


あれ、サリ伍長いたか? 気のせいか。

確かに。残虐な人間性があらわになったと言うのに、なぜ惹かれるのか。


超絶な喧騒の中、シウタがいつも3人組の赤髪ポニテのフェリシアに近づいていく。


そして軽く抱きすくめ、頬に軽くキスをした。


「んっ!?  ちょ、ちょっと待ってよ?! ああああああ! どうしてよ! するならするって言ってよ!」


ポニーテールを結んだ髪が揺れて、耳元まで真っ赤に染まっている。

髪の赤より、赤い。


私は、一体何を見せられているのか。

脳を破壊する気だろうか。なぜ私の前でこんな事を。

私の気持ちは、知っているはずだ。本当に残酷な男だ。


「「「 私も! 私にも! ギブミィイイイイイイ、キッス! ウリィイイイイイ!」」」

「吸うんだよ! チューチュー吸うんだよ!」 「ドギュン!ドギュン!」


声を張り上げながらシウタに迫るその姿は、もはや理性を失った吸血鬼の群れ。


さて、ここまでだな。収集をつけるか。

このやり場のない、激しい怒りを地面に叩きつけよう。

今なら、格納庫ぐらい揺らせるかもしれない。


実行しようとした刹那、シウタが女猫達をかき分けて私の方へ来た。


フェリシアの方を見ると、倒れこみ胸を押さえている。

そして、立ち上る気炎が体から見える。

フェリシアは、こんな気炎を持つタイプではなかったが。


「あ~、あれほど、絶対に敵わぬ恋だから傍観者を気取ろうって言ってたじゃない。アイドル男子として扱うのが一番だってさ。一番星なんて遠すぎるって、ひどく傷つくのが目に見えてるよ」


「そう、アイドルで丁度いい。望まないのが一番だと思う。傷つくだけだよフェリシア~」


イーリスとミラグロのサポートにしてはいささか手厳しいな。

そして、やめてくれ。その言葉は、私に刺さる。


目の前に立つ、シウタの黒い瞳が私を見つめそのまま、ポスンと体を預けてくる。


いきなりの事に心臓が跳ね上がり、脳が 「こういうこと、最後は戻ってくるわけ」 と考え、『直感』がシウタを受け止める腕を出し、抱える。


本当に直感しか役立たない。

脳みそは、頭蓋から出て一人歩きしている。


「ミリ軍曹、申し訳ないです。 ドーパミンが切れて視界が暗転しています。後は、宜しくお願いします」


シウタが、意識を無くし、体を預け倒れこむ。信用と信頼、何と嬉しい物か。

シウタの髪が私の頬に触れる。近すぎる距離に、息が詰まる。

体温がじんわりと伝わってきて、心臓が爆音を上げておりシウタに鼓動が伝わり起こしてしまいそうだ。


「任せろ」


息を大きく吸い込み、怒声を入れる。


「ほら! 英雄のお休みだ! お前ら静かにぃいいいい! しぃいいてえぇええ! 解散しろ!! 解散だ解散! 補給整備、物流、戦況報告のまとめを頼んだぞ! 実働部! 見事な勝利だ! 後は、11時間後に、集合だ! いいな!」


「「「「了解!!」」」」


「超びっくりしました。了解です、ミリ軍曹」


早速、大声で起こしてしまった。

配慮が足りてない。


――


『ただいま王子使用中、入ったらミンチ。絶対にミンチにする。医療ポットで治してまたミンチだ』


の溶接看板をブリーフィングルームの前にぶち立て置く。


プシューっと扉に入り、宿泊施設の奥にゆっくりと置き、シウタを寝かせる。


シウタの寝顔を見つめる。

不思議な男だ。

なんだろう、やっぱりおかしい。


そして、ムラムラと脳が囁いてくる。


『今が、チャンスだ。

おでこにキスぐらい行ける』 と


なんて慎ましい発言か、さすが私の脳みそだ。学習しだしたな。

採用待ったなしだ。


直感が『信用と信頼を預けた相手に、そのような行為は褒められたことではありません』 と、言ってきたが、何良い子ちゃんぶっているんだ?

直感、使えないやつめ。


よしよし、私の物だし、いいよな。

シウタの横に手を付けてその寝顔に、軽くキスをしようともう。あのあの、ひゃああああ。

どうしよう、いけ! 私、いくんだ! 軽く唇を当てるだけじゃないか!

何も問題ない、清く正しい青春! 軍曹のご褒美! 私が助けた? ご褒美!

後数ミリだ! いけ! シウタの体温を感じる。温かく脳を溶かして来る。直感も、なけなしの勇気で背中を押してくれている。いけ! いくんだ!


その瞬間、シウタの目が開きニヤリと笑った。

寝顔の横に着いた手首を掴まれる。


!!!! トラップだ!! 残虐な罠! また駆け引きに負けたのか!!!


直感に、この行為への負い目がのしかかり、脳が必死に言い訳を探す。


「ミリさん、それで?」

ほぼ密着の状態の唇の距離、瞳をジッとのぞき込まれ、挑発される。


惨敗だ、ボコボコだ。許して、許して欲しい。

もう、ここから出て来る挑発を止めるために口を口で塞ぐしかない。

暴れたら手首を押さえ、膝を股に入れ暴れないようにマウントを取らなければ。

そして裏正中線の背骨を押さえ、きつく抱き寄せ、抵抗できる範囲を狭めなければ???


脳やめろ。それは、捕縛術ではない。れーぷだ。


「ここまでおいてして、固まるんですか? 申し開きとかございますか」


ぬぐぐぐぐぐぐぐぐうううう。


「いや、特に無いな。未遂だ。私はやっていない」


なんだ、このセリフ。

罪を犯した犯罪者は、みんな第一声にそういう。

「私は、やっていない」 って。


そして、脳が必死に言い訳を考えてくれた。

これでどうだ!?


「そうだ! 戦場でお前が怪我なく、無事であることをすみずみ確認するのも、指揮官の義務だろう! 怪我がないか、どうか確認していたんだ! そう、そうだ!」


「なるほど、義務ですか。それなら、ぜひ続けていただけませんか?  ほら、義務ならちゃんと続けてくださいよ」


あっあっあっあっ、んんんんんんんんん

んんんんんんんんんんんんんんん


黒い瞳が面白がるように細められ、唇が軽く開いている。

チラリとピンクの舌が覗いている。


セクシャルモンスターの怪物め!


はぁ~、れーぷするしかない。

さらばだ、この拠点。さらばだ、皆。

この思い出を胸に一生留置所で暮らす事に決めた。

アーレ大佐、サリ。後は、頼んだ。

悔しいが、サリ、お前の勝ちだ。この後に優しく寄り添い慰めてやれ。



――


シウタ


――



これ以上挑発するとれーぷ、されかねない。からかいすぎたか?

アーレ大佐の 「おぼこ」 発言。恋愛事で世間をしらない子とは、よく言ったものだと思う。


「いや、特に何もない。未遂だ。私はやっていない!」


その言葉に思わず笑いそうになった。

犯罪者の第一声みたいな言い訳を、こんな状況で聞くとは思わなかったな。


さて、今日も勝ちました。全てにおいて圧勝です。


でも!


残虐! 非道! 極悪! れーぷ!


酷い言われようだった。何だって言うんだよ。

敵を倒して何が悪い。折角、気持ちよく、撃破しているのに水を差さないで欲しい。


息を感じられるほど近い、目の前のミリさんを見てみよう。


超近距離で青い目がグルグルと宙を回り、ヤク中患者みたいな挙動。

この気持ちを素直に表せない、自分が大好きなミリ軍曹をどうしようか。

もちろん好きであるが、こう駆け引き無しで簡単だと面白くない。


強引な行動に出られる前に、収めよう。

この辺でやめないと大惨事が起こるのは分っている。

そして、少し休もう。 マジに疲れたし。


「ミリ軍曹、今日は助けられましたね。ミリ軍曹、本当に最高でした。もう少し自分が落としたかったんですが。悔しいですが、流石です」


掴んだ手を放し、頬に軽く触れる。

そして、迷うことなく顔を近づけると、唇を彼女の唇にそっと重ねた。

一瞬だけ、彼女の体が硬直するのがわかる。


ミリさんの青い瞳が大きく開かれ驚きと戸惑い。そして。

思ったより大人しい。


「おやすみなさい、ミリ軍曹。良い夢を」



――


アーレイン大佐


――


「ポ〇ノォオオオオオオオオオ! エロ添削を抜けて保存しろぉおおおおお! 何が何でもDVDに焼くのよ! いいわね! こんなの実用性しかないわよぉおおおおお!」


油断したわね、シウタさん?

そこに監視カメラがあるのよ、そこはブリーフィングルームよ。


「くっ! 5重のファイヤーウォールを抜けてきます!」 「ああああああ! 映像が消されていきます!」 「ああああああああああ! ラブロマンスでネトネト! もああああああぁああ!」


「DVD! DVD!」 「うあああああああああああああああああ!」 「消されていくぅううううううう!」


そう、私達は負けたのね。

残念だわ。


しかし、消されたなら仕方ないわ。


いや~、でも凄い働きだわ。快勝とはこのことよね。

そして少し時間が余るわよね、あの宇宙のク〇ボケたちに、お話をする時間は出来たわ。

感謝するわよ、うちの超級エース達。

でも盛らないで欲しいわね。

ここではアイドルで居て欲しいの。キスだけでもスキャンダルよ。

貴方の軽率な行動で、どれだけが傷つくと思っているの?



いつもありがとうございます。


もう、蓬莱さんは、こっくりさんはやんないと思う。

慣れない事は、時間がかかりすぎる。推敲時間が狂っとる。

やってられん。


でも、これでいいならまたやるかもしれません。


追記:おかげ様で表紙ランキングを狙える所まで来ました。

ありがとうございます。あとがきがうるさい、場所です。ようこそ。


で、それじゃあランキング狙ってみてしのぎを削り合いをしてみるかと、更なる灯が燃えるわけです。

ですが、表紙のランキングのポイントがあれ? おかしいな? となりました。

内容は、好き嫌いありますから。それは別として入る上位のポイントの内容がおかしいんです。

閲覧している色々なタイプの方がいらっしゃいます。朝方、夜型、一日が26時間の格闘家タイプの方。


そして、朝一番と同時に日間のポイントが増えるランキング達。


わかった。それはいい。

なら、深夜までポイントが入り伸び続けるのだろう。それだけ作品が面白いんだ。

多くのあなた様は、平日通勤時の基本朝8時から伸びだし、10時、夜1時前で基本終わるからだ。


だが、一部のランキングは違う。基本、朝伸びて終わる。

そんな馬鹿な事があるか。

日間やポイントは8時~深夜にかけて伸びるんじゃい。


だが、本人があずかり知らぬ事もある。

自分が、もし関係者だったら 「お前の担当元、朝一番に日間に上がるようにしてこい。本人にはばれないようにな」 と、言うし。

仕事だし、生活かかってんねんで。と言われたらそうかもしれない。


と、苛烈なところは削除致しました。

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