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14 シウタ

シウタとヴォルテクス

出撃前の格納庫とやかましい三人組


「ネッコ族はその領域を太陽系の外へと広げ、無限に広がる宇宙を我が物にするかのように繁栄を続けていた。だが、その平和は終わりを告げる。

改変と捏造が大好きな、宇宙生命体 『帝国バクテリアン』 の侵略が始まったのだ。彼らの技術と破壊力は、あらゆる種族を上回っていた。

無数の星々が次々とその手に落ち、種族の希望は薄れていくばかり。

そんな中、最前線で奮闘する人型ロボ達がいた。

その名は 『ヴォルテクス』 種族最後の選ばれし戦士達が操る戦闘機体 『ヴォルテクス』  だ。 最先端のテクノロジーと驚異的な機動力を誇る種族最後の希望。今 『ヴォルテクス』 の壮絶な戦いが幕を開けようとしている」


「ごめん、ミリ軍曹呼んできてよ。これちょっと、戦争の雰囲気で頭おかしくなってるわよ」 


「ヴォルテクスの格納庫で永遠と独り言を言ってるんだけど。狂気を感じるね? 今ならちょっとぐらい、お尻触っても大丈夫そう? あっ、運が悪いと最後の思い出になるかもしれない。揉むまでいくっとく?」 


「そうか、そうだったのか。私達は種族の最後の希望・・・! 帝国バクテリアンは一人たりとも生かしておけない・・・!」


―――


やかましい3人組の先輩と一緒にみている、ホログラム画面に戦艦同士の激突が浮かんでいた。


帝国側の戦艦がチカチカと瞬く星のごとく、砲艦弾幕での先制攻撃を仕掛ける。

巨大なエネルギービームが放たれると同時に、連邦艦隊の前列を突き抜け直撃。防御シールドが光エネルギーに変化され、青白く発光するが軋むように破壊された。

一部の艦が火を吹きながら後退していく。


連邦艦隊はすぐさま反撃を開始。

前列の艦から放たれる連続エネルギー砲が、帝国側の前衛艦艇を撃ち抜く。一隻が爆炎に包まれる中、帝国の旗艦から新たなミサイル群が発射され、宙に螺旋を描きながら連邦艦隊に襲いかかる。

味方艦の自動砲火がミサイルを次々と撃ち落としていく。

だが全てを防ぎきるには至らず、一部が後方艦艇を直撃し、閃光と共に艦の陣形が大きく乱れた。


「先輩方、これ連邦王国側、押されてません?」


「そ、そうよね。そう見えるかも」 「王子を押してダメなら?」 「推してダメなら押し倒す」


「うまい事言うわね!」 と、「イェーイ!」 と声が重なり、3人は手でハイタッチを決める。


ノリについていけない。

炎上中の修羅場部屋にいる方がマシだったか?


連邦王国の艦隊は隊列を必死に維持していた。

だが、帝国艦隊の突撃陣形が徐々にその隙間をこじ開け、戦況が不穏な空気を漂わせ始める。


帝国の高速戦艦が一気に突破。

銀色に輝く鷲のフォルム、その艦体が流れるような軌道で連邦の戦列へ割り込む。


「あ、これ戦線、抜かれるんじゃない?」 「抜く、抜かれる?」 「抜きたがる?」


見事な3段活用。ご苦労様です。

抜くに反応するとか中学生か? そうか、そう定義すれば先輩方と上手くやれるな。

気づきを得たぞ。


大きな命の星が点いたり消えたりしていると言うのに、とんでもない楽観的だ。

星じゃない。いや、彗星かな。

画面越しに見る命はなんて軽いのだろうか、同情すら湧かない。


再度、この星に響き渡る様な大音量のサイレンが拠点中を包み込む。


「何しているのかしら!? 宇宙部隊!? 命を賭して帝国艦隊を止めろ! 軽々と抜かれるな! 連邦の宇宙部隊は紙くずか何かで出来ているのかしらぁああああ?! 降下部隊を無傷で降ろすなぁあああああ! 仕事しろぉおおおお! ク〇が! 各自戦闘準備、来るわよ!」


アーレ大佐の怨嗟の絶叫が拠点中に溢れかえる。


だが、まだ戦列崩壊してないように思う、戦闘準備にも決断が速い気もする。


目測とは裏腹に、連邦王国の艦隊は引きはじめている。

防御システムがある軍事星衛拠点の後ろで、再度編成をするのだろうか。

こっちの宇宙艦隊の決断の方が超早かった。


「先輩方これ、宇宙部隊の動き、うちの拠点を生贄にしてる感じしますよね?」


「まぁ、そうね。でも、勝てば全て良しじゃない?」


軽口で返されるが、表情に不安が漂っている。


「負けたら終わりだけどね! 王子、最後の思い出かもしれない抱きしめて?」


「縁起が悪いよ、そういうのは勝ってからにしよ?」


「もちろん勝ってからですね。自分達、その頃にはかけ替えのない戦友になってそうですよね」


自分ができることはただ一つ、戦場に出て、敵機の破壊だ。

負ける気なんてしない。

数なんて気にするな、数は問題じゃないと思う。

当たったら即終了の紙飛行機と呼ばれるシューティングを徹夜でクリアーできそうで出来ないぐらいには、やりこんでいるぞ。


「そうだ。逆フラグ立てませんか、生き残ったらデートしてくださいよ? 敬称略でフェリシア、イーリス、ミラグロ先輩。さぁ、戦場へいきましょう!」


3人が胸を押さえ、少し屈みながら答えてくれた。


「えっ、デート!? ねぇ、繁華星に『お肉がおいしいお店』があるのよ? どう?」


「私は星間クルーズでデートね、『おいしいお肉のお店』があるの」


「ハッ! つまり私がお肉だ。おいしいよ」


何これ?

今思うと、肉で誘うのが種族のデートの決まり文句だったのか。


立ち上る陽炎の様な士気は、燃える様な気炎か獣欲か。


――


「帝国艦隊が防衛線を突破しました! 敵占領部隊が降下を開始! 敵6艦が大気圏待機中! 降下ヴォルテクスの数は不明!」


司令部の絶叫が拠点に響く中、格納庫の巨大なスライドドアが開き、その中心にミリ軍曹が姿を現した。

その青い瞳は鋭く光り、その場の全ての喧騒を静寂へと変えた。

彼女はゆっくりとした足取りで格納庫の中心へ進み、号令をかける。


「全員、直ちに搭乗準備に移れ! 拠点北エリアで迎撃態勢を取る! 寝ている実働部もたたき起こせ! 全7機のフルフォーメーションで応戦するぞ!」


「「「「了解!」」」」


その言葉で、緊張が一気に現実味を帯びた。

心に火花が飛び散り、高揚の光がおりて来る。


「シウタ!」


声をかけられ、振り返る。

青い瞳がまっすぐに射抜くようで、自分もミリ軍曹の目をじっと見据える、先ほどまでの痴話げんかをしていたミリさんでは無い。

王国屈指の近接使いのエース、ミリュネ・ベグハルトがそこに居た。


「ヴォルテクスの働き期待しているぞ。お前の力が必要だ」


んほぉおおおおおおお! ミリ軍曹だ! 戦時中のこのギャップよ。

惚れるわ。デートしてそのまま抱きたい。


「承知し致しました、ミリ軍曹。貴方に匹敵する戦果を成し遂げて見せましょう」


この言葉に、ニッと男前にミリ軍曹が笑っただろうか。


格納庫の空気は一瞬にして戦闘準備の緊張感に満たされていく。


もう我慢できない。

一直線にヴォルテクス・ノクターンの元へ駆け出す。

脚部の昇降プラットフォームに足をかけると、自動的に駆動音を立てながら持ち上がる。

コクピットのハッチが開き、内部から淡い青白い光が漏れ出した。

その光に向かい、一気に飛び込む。


「ただいま、ノクターン。さぁ、行こうか。 帝国バクテリアに制裁を加えよう」


一言声をかけ、計器をチェック。

そして手早く固定ハーネスを締め、機体を起動させる。

計器とパネルがホログラムで覆われ、マーカーと全方位の状況が映し出された。


「準備完了! システムオールグリーン!」


さぁ、出撃許可が欲しい。

破壊の許可を。


そして、すぐにアーレ大佐の号令が聞こえた。


「出撃を許可します! 再度、帝国第二陣が来る前に宇宙部隊が陣形を整えるまでの勝負よ!」


「「「「了解! 出撃します!」」」」


――


拠点北エリアの広大な戦場。

帝国艦隊から放たれた降下部隊が、まるで赤い流星群のように大気圏を裂いていく。

大気との摩擦で炎に包まれた帝国ヴォルテクスが次々と降下し、その巨足が大地に叩きつけられる音が轟音となって響く。

ズズン! と聞こえるのは、帝国ヴォルテクスの着地の音では無い。


「ちぃいいい、コクピット固ってぇなぁ!!」


ビームライフルを発砲した直後。

敵機の装甲を削り取りながらも、コクピットを貫くには至らず、煙を上げながら敵機が姿勢を崩し地面に突き刺さる音だった。


「一撃で戦闘不能にできないか、二発以上必要じゃねーか。クソッ、効率が悪い。命拾いしたな」


悪態をつきながら、トリガーを引く。

超遠距離から敵機体の頭部に閃光が走ると、豆粒の様に見える敵機体は動かなくなった。


即座に次の降下中の機体脚部を速射で狙う。


ビームが大気を切り裂くように放たれ、降下中の敵2機のヴォルテクスの脚部に直撃し、機体が制御を失い回転しながら地面に叩きつけられ、それぞれ爆炎を上げる。


「ナイスだ! やるな! なぁ? シウタ? 敵コクピットの直撃を狙ったのか? いや、この距離でやれるわけが無いか、偶然だよな。水を差してすまない。そうだ、さすがと言う所だな。だが、残虐すぎるなよ、また恨みを買うぞ」


げっ、ミリ軍曹、鋭いな。

さすがだ。


だが! 騎士道、武士道、シウタさん焼き肉どうってか、やかましいわ。

拠点落ちたら、自分だけ〇されるんだぞ。 あの布告映像を見るに、マジ〇されると思う。

デッド、オア、アライブ(生死を問わず) だ。 出来るだけ〇したいけど。

つまり自分は、恨みを買いすぎたのか??


もちろん、紳士的な良い子ちゃんを振る舞わなければ。 

会社内で仕事の時、いかも真面目にやってるふりをするのが、内勤でのコツって言うのを知っている。 「あいつ、営業なのにちゃんとやっているな」 と、社内評価が爆上がりだ。


「会敵だ! 敵ヴォルテクス接近! 敵機、30オーバー確認! 全機、迎撃開始!」


「「「「了解!」」」」


さて、岩陰に隠れますかね。

目標は30k と行きたい所だが、人のスコアを落してくる倍速で動くバグみたいな近接がいるしなぁ。どのぐらいいけるかな。

でも味方が生きてこその勝利だ。そして、うちの拠点のヴォルテクスは、全部うちの子だ。

まずは長距離援護と行きますか。


降下したばかりの機体が次々と隊列を組み、こちらへの砲火を放っている。


『ヴォルテクス・タイラント』 のブースターが輝き、鋭い動きで、敵の砲撃を躱し突撃していくのがミリ軍曹。

を、狙っている機体を狙う。意識の外で硬直が生まれるからだ。


気を付けろ、深淵を覗くとき、また深淵もお前を覗いているのだ。


ビーム2発を続けざまに発射し、敵機の頭部が砕け、胴体にビームが突き刺さる。

そのまま後方へ崩れ落ち、爆発の閃光が赤い夜を照らした。


ミリ軍曹に続くのが、フェリシア先輩の近接機体 「ヴォルテクス・レイブン」

ヒートソードが超カッコイイ。ブースターの輝きと共にソードが赤い尾を引いている。


近接機体に近接を仕掛ける敵2機、敵マーカーの陣形を見ても囲んでボコる気が見え見えだ。


ハハッ、囲まれた! どうする?!

ブリッツボールだったら、ジェクトシュート、一択じゃろがい。

素敵だよね。


ヒートソードと、敵の双剣があたる瞬間の意識の外、2機の腕部を吹き飛ばす。


「フェリシア先輩! ハハッ、今です!」


レイブンが猛スピードで駆け寄り、ヒートソードを振り下ろす。

敵機の頭部を一刀両断し、そのまま返しでもう一体を袈裟切りに、火花と煙を吹き上げながら2機は倒れ込んだ。


やりおる、この援護癖になるわ。


「ありがと、凄いわね・・・」 「お礼に後で、チューしてくださいよ」 「はひぃ・・・」


このやり取りをすると、嫉妬深い上司が怒るのが予想できる。

ほらね。


「シウタァアアアアア! 戦闘中だぞ! 敵が下がるぞ! 再度陣形を組まれる前に突撃するぞ!」


ほら、それではダメだと思います。

そう、駆け引きですよ、ミリさん駆け引き。

多分、不得意ですよね~。


「了解! ハハッ、ミリ軍曹なんか怒ってます? でもミリ軍曹をキスに誘っても、待っているだけだったじゃないですか? チューぐらいしてくれるのを待ってたんですが」


「んんんんん! 恋愛相談だとレディ的な行動が好印象だと学んだのにな・・・。 おい! 無駄口を叩くな! いくぞ!」


「おぼこ」 と、ぼそりと司令通信から聞こえたのは気のせいだろうか。


前にでるとイーリス先輩の 『ヴォルテクス・エクリプス』 が、長距離狙撃ランスを構えており、荷電式の高速で発射される重槍が蒼い線を引く。

敵を正確に撃ち抜き、1機を戦闘不能にしているのが見える。


溜め式の砲撃だ。いわゆる確殺狙いの機体。これ、乗ってみたいなぁ~。

そしてイーリス先輩を守るように、ミラグロ先輩の汎用型 『ヴォルテクス・アクア』 が徘徊していた。


こっちは、敵を寄せなければ大丈夫そうだな。


さて、大分数も減ったし、ミリ軍曹の邪魔でもしましょうか。


「行くぞ!」


ミリ軍曹の 『タイラント』 がブースターを最大に吹かし、鋭い突進を繰り出す。

重力がまるで仕事をしていない。

帝国の編隊に突撃をしかけ、赤い目の敵機へと一直線に向かうその姿は、地獄からの使者そのものだ。


全く、敵も学習しませんよね。

突っ込んできたのを囲んで叩くのを叩かれる、って学ばない物だろうか。

必勝パターンかもしれませんが、スナイパーを落とさなければ、無駄に被害を出すと言うが定石なのに。


敵機が重火器を構え、軍曹に照準を合わせる。

だがすでにミリ軍曹の機体は射線の外だ、滑るような動きで敵の横をすり抜け、トンファーが一閃される。


重力仕事しろや、異常な速度の慣性で空中を滑るな。

相打ち覚悟じゃないと取れねーよ、こんなの。


流れる様な突撃に慌て出した敵機から、トリガーを引き順番に打ち抜く。

ミリ軍曹とコラボ爆発と共に、敵機は数を減らしていく。


これ、こっちの逆必勝パターンになっているよ、気づいてくれ。

そうして、もう少し楽しませてくれないか。


いや! いいか。基本、初心者狩りが大好きだし。

格ゲーでもなんでも対戦ゲームってボコられてから始まるものだし、別にいいよね。


残り数体になったマーカー表示された敵機がブースターを全力で吹かしながら、赤い夜の向こうに撤退していていくのが見える。


勝ったのか?

戦場のハイテンションで色々と言った手前、チューしまくらないといけないかな。

めんどくさいし、恥ずかしいから、尻揉みで勘弁してくれねーかな。

好きなだけ揉んでくれ。これなら、減るもんじゃないし。


ホログラム画面のポップアップにアーレ大佐が映る。


「見事なチームワークね。これで、帝国に少し泣き顔を見せられるわ。英雄たちに感謝するわ。 私達の勝利よ、3倍以上に味方の大破機無し、見事すぎる勝利よ。 宇宙部隊も陣形を整えるようだし、生存者を回収してもらってお帰り願いましょう」


「「「了解!」」」


う~ん、転がっている機体に完全にとどめ刺してぇなぁ。

古代だと、戦場処理としてとどめを刺す仕事があったはずだがなぁ。

加虐的な思想が、ムクムクと沸いてくる。


いや、まて! 騎士道精神にのっとり無事、帰すとしよう。

この方々がまた、帝国ヴォルテクスに乗ってくれて襲ってきてくれるかもしれないのか。

これが、繁栄か! 心で理解した!


帰りなさい! 君たち! お大事にどうぞ!

処方箋に湿布だしておきますね。


ありがとうございます。

引き続きお楽しみください。


最近何となく思うのが 「おい」 の投げかける一言でも多分、スマホ時代とそれ以前の小説で別れるのではと思う。


「おい」


ーー

苦悩と煩悩の狭間で、恋している彼女に何を語ればいいのだろうか。

到底見当もつかない。胸にある僅かな勇気は、灯火のごとく小さく頼りない。

そんな中、彼女に向けてようやく出た言葉は、あまりに素っ気ない一語だった。


「おい」


ーー


「おい」


スキル発動! バリバリバリバリ!


「ぎゃああああああ! 許してくれ!」


「さすがですわ、勇者様!」


いえ大したこと無いですよ。


「何?!お前をパーティから追放する」


「うるせえ」 スキル!バリバリバリバリ!


「ぎゃああああ!」 ついでにお前もだ。

「うぎゃあああああああ!」 


ーー


大体、同じ文字数だ。


おかしいな、なんか下の方が面白い。

世も末da


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