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13 シウタ

シウタ


重低音のアラームが拠点中に鳴り響く。

これは戦火の始まりを告げるものなのだろうか。


「帝国の宣戦布告が行われました!」


ブリーフィングルームに駆け込んだ司令部隊が短く告げると、心に緊張とワクワクが入り混じった感情が沸き上がる。


久しぶりの戦場だ。

興奮で笑ってはいけない。隣で仲良く一緒に座っている、赤黒軍服のミリ軍曹に怒られてしまう。

真剣な表情をしているふりをして、普段の軽口は抑え込み、黙って頷いた。


ブリーフィングルームモニターにホログラムが投影された。

帝国からの正式な宣戦布告の映像だ。


画面には帝国の紋章が映り、金色の鷹が黒い背景に浮かび上がっている。


「連邦王国へ。我が帝国は、貴国が無謀な残虐的な行為を行ったことを重く受け止め、ここに宣戦を布告する。正当なる報復の名のもと、我々は拠点A-112を奪取し、帝国の新たな防衛線を構築することを宣言する! 期間は1か月、宣戦布告の協約の元。拠点奪取の時点で交渉とさせてもらう」


その声が響くと同時に、映像は戦場の映像に切り替わった。

最初に映し出されたのは、銀色に輝く帝国の新型機体。

逃走しながら姿を露わにしたその瞬間。画面は皇女機体の背後から閃光が走り、ビームが直撃貫通する様子を映していた。


即座に立ち上がり、キレちらかす。


「おおぉおい? 結局は、助けたんだぞ! ? あの状況で何もしなかったら〇んでただろうが!  それが何でこんなふうに捏造されるんだ?! いや、捏造は、されてないか。 敵兵撃って何が悪いんだよ! 向かってくるのは敵兵で、逃げるやつは良い敵兵で撃っていいんじゃないのか?」


ミリさんが手を差し伸べ肩をそっと掴んで、椅子に座らせてきた。


「落ち着くんだ、シウタのせいじゃない。あっ、どうみてもシウタが悪いか。いや、でも本質は違うぞ? 皇女を後ろから撃った事に、帝国は理由をこじつけてきたんだ。 たとえ、どんな困難が待ち受けてたとしても、お前に傷一つけさせるものか」


告白と受け取っても遜色ないセリフですね。一部、都合が悪い部分がありましたが。

そして、軍曹。その手の力で椅子に縫い付けられたかのようで一歩も動けません。

もっと言えば微動だにできません。肩力どうなってますかね。


次の映像が映し出される。

ホログラム画面に映し出されたのは、残酷な光景の中で、自分が血まみれの帝国皇女を救おうとする姿だった。

少女の姿は痛々しく、傷口から流れる血が赤黒い跡を残していた。

皇女をコクピットの外に連れ出し、彼女を寝かせていた。


光が手元から滲み出し、少女の傷口に吸い込まれるように消えていく

荒れ果てた空の赤い光が、その回復の輝きを際立たせ、奇跡のような瞬間が広がっている。

自分の表情は不敵な笑みを浮かべており、皇女に詰め寄っていた。


「ククッ、苦しめ。これが、お前たち帝国が選んだ道だ!」


少女の血まみれの顔がカメラに映る。

痛々しいその姿を前にしても、映像の中の 『誰か』 は残酷な笑みを浮かべ、手のひらを彼女の胸元に押し当てている。


「何だぁあああああァアア?!!!! これはぁああああァアアアアアア!?」


映像はあまりにも極端で、まるで悪役そのもの。


「皇女様よぉ、痛いか? この傷が癒えても、心の傷は癒えないだろうな。いい教訓だろ?」


皇女の目に涙が滲み、その表情に恐怖と絶望と恥辱が映し出される。

その瞬間、画面に帝国の紋章が現れ、重々しい声が響いた。


「これが、連邦王国の英雄の姿だ! この非道、許してはならない」


映像はそこで途切れた。


あまりにもひどい。マジにこれ誰だよ。

何これ? 何。 怒りで頭がおかしくなりそうだ。

許さんぞ、帝国機のコクピットに直撃させてやるわ。

映像の通りにやってやんよ。


ふと、気づく。

ミリさんが肩に当ててくれている手が温かい。

肩に置かれている手をスッと手で握りしめる。

人との接触は、人を正気にもどす。


「なぜ、なぜだ。こんなにも心が繋がっていると言うのに・・・」


それは、それだと思います。

自分も心が繋がってると思ってます。


突如、笑い声が部屋にこだまする。


「アハハハハ! ちょ、ちょっと待って。これ、本当にひどすぎて笑えるわね。そのセリフがあまりにもベタ過ぎて、脳みそお花畑よね。こんな思春期丸出しの映像信じる人いるのかしら?」


「えっ!? 最高の燃料ではありませんか?! こんな悪逆非道な王子は、ここで捕まえてわからせが必要だと思いました」 


「命を助けてやるよ、この屈辱を一生忘れるなよ。子猫ちゃんだと・・・? 脳があああああ!」 


「完全に添削を抜けたポ〇ノ映像で、王子にわからせが必要だと思いました。完璧なプロパガンダです。情報戦で完全に負けています」


そうだね、情報戦で完敗してるだろ。

大丈夫かよ、この拠点。


「おぼこ過ぎない? 拗らせ過ぎって意味ね? ねぇ、貴方達、頭大丈夫?」


さすが、アーレ大佐。

カリスマの塊だ。信用できる。

この戦争に勝ったら、一晩寝てくれないかな。


「この瞬間に、この映像が連邦王国でも10兆回再生されています。全国デビューおめでとうございます。シウタ王子」


司令部、ありがとうね。煽ってくれてありがとう。

すでにキレているからね、ヘイトコントロールもする必要ないんだよね。

この怒り帝国にぶつけて、君たちを守るからね。

捕虜は必要ないし、生き残りも必要ない。


――


戦時中と認定されたことで、実働部隊の配属命令が下りた。


しばらく実働部は、ブリーフィングルームの宇宙映像を見ながら待機だ。

帝国軍の動向や最新の状況が次々と映し出されており、予想進軍ルート、敵兵器の情報が立体的に投影されていた。


ようするに宇宙防衛線を抜けて来て、戦艦から降下して来る占領用のヴォルテクスの退治がメインの仕事となる。


後の余計な仕事は、上に任せる。

会社の兵隊は、実績を稼いでおけばいい。

それが仕事で給料分の働きだろう。


スクランブル発進のため、しばらく簡易宿泊や休憩や食事はここが中心となる。

拠点内は慌ただしく動いており、補給物資が次々と格納庫に積み上げられていく様子が映っている。


外の喧騒を他所に、ミリ軍曹、実働部のやかましい3人組の先輩達、と自分が特にすることも無く、映像を見ながら待機していた。

準備が終わるまで、主役達は邪魔にならないように待機。これが、今できる仕事なのだろう。


そんなこんなで、やかましい先輩3人が近くに寄って来た。


「王子、皇女を回復する姿、悪役ヒーローみたいだったね。私達も怪我したらあのシュチュでやってくれるの? もっと冷たく、そしてやさしくして?」 


「そうそう、私達も悪役ヒーローと仲良くしたいんだけど。あっ、胸が痛いし腰も痛い。あー、痛い痛い。回復が必要かも、チラッチラッ。ほらほら、私の手を握って耳元で囁いて」


「医療ポットへどうぞ、ライバルが減って嬉しい。私は、胸の奥が痛い。多分チューじゃないと治らない。チューしてチュー」


マジにうるさい。うるさい。 実働部は直での物言いをしてくる。


ミリ軍曹セクハラです。助けてください。自分を守るために隣に座っているんでしょう。

この拠点で一人きりの男性社員が、配慮が無い発言に困っています。


ミリ軍曹の方に助けを求めチラリと見る。


「あの、シウタ。あの、サリ伍長とは、何があったんだ。サリ伍長とずいぶん仲が良さそうに見えるけど、様子を聞かせてくれないか。あっ、やっぱりいい脳がどうにかなりそうだ。でも聞きたい。クソッ、なんなんだ。いや、チャキチャキと吐け。いや、だめだあああああああああっ!」


ミリ軍曹、お前もか。

超、うるせぇええええええええ!


「「「「チュッチュッチュッチュッ」」」」


静寂は訪れない事実に気づき、絶望感に打ちひしがれ、頭が痛くなり顔を手で覆う。


その時ピンポーンと言う、チャイム音と共に、プシューッと誰かが入ってきた。

茶色のセミロングで前髪が編んで分けている、サリステア伍長だ。


「お疲れ様ですー。サリステア伍長、戻りましたよー、シウタさん」


彼女は軽く敬礼をして報告を続けた。


「ミリ軍曹、補給物資と整備の方に目途が着きました。いつでも出撃と警戒行動の配備が出来ますよー。 敵の兵站がありますから、そうは戦線抜かれないと思いますが、状況を見て出撃願います」


軍曹が報告を聞きながら頷く。青い瞳には、戦場に立つ者としての鋭い眼光が見えた。

先ほどまで馬事野次騒音を、口から出していた謎の存在では無く、いつもの尊敬する軍曹だ。


「了解だ、サリ伍長。この度は、大変だったな。さすがは流通部の長だ、感謝する」


上司の同士の打ち合わせは、こんな所か。

言葉数の少なさが、長年の信頼関係を感じさせた。


「サリ伍長、大変お疲れ様です」 


実働部に配属されたとしても、伍長に挨拶なしでは非礼に当たる。

元気よく、労いの言葉をかけた。


と同時に、ミリ伍長は柔らかな笑顔を浮かべながら茶色の瞳は、覗くように見つめてくる。

背後には、熱や自信で裏打ちされているかのような。サリ伍長の雰囲気が言葉で言い表せない。


いや、10代の時まであった感情か? もう無くなった感情だろうか、限界を想像しない未来を疑わない勇気か? もう覚えてない。なんか、輝いている。


「先日みたいに、サリと呼んでくれないんですかー? シウタさん? ふふん、仕事場とわきまえてるところも、素敵ですよねー。 準備は万全ですから、支援はまかせてくださいねー」


この場に居る方々に対し、挑発的な発言に聞こえる。

サリ伍長は、この先の展開が分っているかの様に口元に手を添えると、唇を軽くペロリと舐めた。


ここで、その感じは良くないんじゃないですか、サリ伍長。

とても挑発的です。空気を読んで頂けませんか。


脳内で、コングが鐘を鳴らしそうなんですが。

この気配、分りませんかね? 分ってやってますよね?

うわぁ・・・。


「おい、サリ。どういうことだ。全部聞かせろ」


「えっ、デートの話ですかー? 好きってこういう感じだなぁって思いましたよねー」


「そうか・・・、私達の友情もこういう結末しかないのか? 1人目か2人目か3人目まではあるが・・・。1番は、絶対ゆずらないぞ! サリステア!」


ほら、カーン! と、コングが聞こえたぞ。天然か狙ってるのか分からないのがエグすぎる。

部屋が炎上してる。何かメラメラと部屋が燃えてるもん。

もう終わりだ、ここは明日には爆発してなくなっているだろうな。


ここから逃げよう。

そのうちどっちとも一晩ぐらい寝るから、好意を弄んだ代償は体の支払いで許して欲しい。

こんなの、付き合っていられない。


3人組の先輩たちの肩をポンポンポンと叩く。


「先輩達、いきましょう。この前の話の先輩のヴォルテクス見せてくださいよ。お願いします」


「えっ!? チューの話?!」 「マジに?! ほら早く来るんだよ!」 「でも、ここで2人を倒せば、チューとコクピットの個室を独占できると言う事。友情ごっこは、ここでお終いだ!」


うん? マジに乗せてくれるの? 先輩たちのヴォルテクス? 一人、おかしいのがいるけど。


いこういこう、チューぐらいしてやるわ。


「いきましょう、いきましょう」 こんな、鉄火場にいられない。


即座にプシュー! と、4人で外に出る。

そして、ヴォルテクスの幻影達が語り掛けて来る。


「ねぇ、誰のに最初に乗りたいの?」 「私かな?」 「シュゥゥゥゥゥウウウ、シュゥウウウウウウ」


「たしか・・・、そうですね。フェリシア先輩が近接と中距離の戦闘特化型、イーリス先輩が、同系の長距離型、ミラグロ先輩が凡庸型。 えっ、選べない。 どれにしよう。 えっ、一番最初にどれかに、乗せてもらうのを選ばないといけないですよね? 『ヴォルテクス・レイブン』 がフェリシア先輩で、ヒートソード主体ですもんね。曲線美と鋭角的な装甲、まさにヒートソードから繰り出される様子は、火の翼だ。脚部のスラスターが、瞬時の加速を可能にしているんですよね」


「あっ、はい」


「イーリス先輩が 『ヴォルテクス・エクリスプ』 スリムなフォルムのメタリック仕上げ。頭部には高精度のスナイパースコープ。背部には大型の長距離狙撃ランスを搭載。手足には安定性を高めるための追加ブースター、これも乗りたいです」


「えっ、はい」


「ミラグロ先輩が汎用型の 『ヴォルテクス・アクア』 いいですよね~。これも乗りたい。丸みを帯びたフォルムで、装甲は青と白の鮮やかなカラーリング。背部に多関節型のユニットを搭載しており、瞬時に複雑な動きが可能ですもんね、えっ、一番目に乗る機体を決めないといけないのか?! はぁああああ?! そんなの平等じゃない!」


「?! 私は今まで何を! 私達の事と機体も覚えてくれてるんだ。凄いうれしい」


この世の不条理に涙が出て来る。

3者3様の個性の連携、自分が乗っていいものだろうか。

聖域、そう。パイロットの聖域ではないだろうか。

なんて軽々しく物を言ったのか。まさにヴォルテクスへの冒涜である。

ヴォルテクスに乗る順番を付ける。何と愚かな発想か、大変恥ずべき事だ。


「あああああああああああっ! 許してください! 自分は、なんて愚かな!」


「「「ねぇ?? 王子、色々と大丈夫? もしもし?」」」


――


そんな事をやりとりしていると、拠点に警戒を告げるサイレンが響き渡る。

アーレ大佐のアップのホログラムが基地内の至る所で浮かび上がった。


「全員、ホログラム画面を注視! 宇宙前線部隊がぶつかるわよ! 数は同数! 第一陣、この結果で拠点のありかたがきまるわよ~。祈りましょう」


ホログラムの中で両軍の戦艦が一列に展開されていた。

帝国と連邦王国、それぞれの旗艦が中央に構え、サイドには多数の護衛艦や駆逐艦が陣形を組んでいる。

互いの距離は縮まりつつあり、緊張が高まっていく。


遠くに見える帝国側の艦隊は、黒金の装甲をまとい、艦の側面には無数の砲門が備えられていた。

その砲門が徐々に赤く星の様に輝き始め、攻撃態勢に入っていることを知らせる。


一方、連邦王国の艦隊は、細身の艦体を持ち青白いエネルギー発光がその装甲に映り込んでいた。

全艦に蒼い防御シールドが展開され、砲門を開く。

静寂な黒い宇宙に、虹色のフレアカラーを想起させる激しい閃光が走った。



ありがとうございます。


評価いいね、ブクマ、本当にありがとうございます。


相互無し、SNS無し、他コンテンツ掲載無し、自主評価も無し。宣伝無し。

果たして内容だけで、どこまでいけるものか。5千字に、構成の推敲合わせ約8時間ぐらい。

面白さ勝負だと、ジャンルのランキングに負けて無いと思ってます。

ただ男性本位な話なので、女性作家には不利な感じは否めませんが。


このランキングのポイント、今の数字が皆様から支援を頂いている、純粋な数字であります評価ポイントです。

どう推移しているか、もし興味があったらどんな感じか見守ってて下さい。


ある程度のクオリティの物が読みたいはず。

そんな、貴方様がみてくれていると思い、日々やっております。



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