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1 異世界

そこそこ楽しめるんじゃない。


営業職のショウタという者です。

この度は大変お世話になっております。


自分はしがないサラリーマン。

目の前で起きているのはどこにでもある工場のトラブルで、ただ必守の納期に間に合わないだけの話だ。


まさかの納期に合わせ、工場のトラブル。

納期に間に合わないと、客先の耳をつんざく様な罵倒とクレームと共に会社が傾くのだ。


弊社の工場長を引き釣り出し、作業員の目の前で罵倒と懇願をする。


「どういう事ですか?! この納期守れなかったら会社潰れますって! 自分もやれることをやりますから! 何したらいいですか? 工場長、お願いしますよ! 残業でもやりましょうよ!」


と、不満と罵声が飛び交う矢面に立ち、よくわからない工場仕事をよくわからないまま作業をする。


全員に会社が傾くと伝えたと同時に、自分たちの会社での日常が無くなると言う暗喩。

そして、スーツ姿で死ぬほど働いている営業の様子を見ると、残業労働にノーと言える日本人は少ない。


もう日付変更線が変るだろうか、そんな時に全員の協力により完成となった。

ありがたい事に、明日納品できるだろう。会社、そして自分自身が助かった。

ちなみに、部長はもう帰った。立場ってものは良いものだよな?


心も体もボロボロだ。

早く家に帰り、お気に入りのヴィチューバーでも視聴しながら、酒でも飲みたい。

そうそう、前の推しは彼氏の発覚から逆ギレにより消えた。 「たった今終わって、帰る準備しているよ~v」 と、唐突なネトネトにより脳内が破壊されたのだ。

早くあの状況を専用のヴィチューバーのカード化して、ショックNTRの本体直接火力で100点ぐらいのダメージを与える効果にして欲しいものだ。100枚買うぞ。


そんなマイナスイメージの思考が次々浮かんでくる、疲れで精神状態もまともじゃないのだろう。

早く帰ろう、明日は客先へ納品があるから朝早い。


そのまま、いつも帰りに寄るコンビニへ行く。

ビールと鯖缶とカニ缶、雑誌を買うと店員が 「温めますか?」 と聞いてくる。


ボケが、何を温めるんじゃい。やってみろよ。

このラインナップをレンジしたら、爆発したり焦げ付くぞ。


「はい? お願いします」 「え? 何を温めるんですか?」 「は?」 「え?」


マジにストレスが限界だ。

世の中は、どうして自分中心に回らないのか。

そもそもだ。お前、温めるって言ったよな? とは、聞かない。大人だからだ。

来世は、そこで大声でブチ切れる嫌な人間になりたいものだ。


そんな会社帰りに 「異世界超特急便です!」 と、幻聴を聞いた。

その刹那、コンビニにトラックが突っ込んできた。

入り口の隣で夜遊びしている高校生みたいな者達めがけて、トラックが突っ込んできたのだ。


なんて日だろうか。

神様、どうして自分をこんな目にあわすのですか。

あ~、いつも営業で本当っぽい嘘をついているからですかね?


――


目を覚ますと雲の上だ。フカフカとやわらかい感触がある。

これは、卒業ヴィチューバ化しましたね。

現世からの卒業、そして転生。ありがとうございます。

来世は、こいつクソクソクソの暴露系、ヴィチューバで暮らしていきたいものです。


しょうもない絶望に暮れる中、自分の前に神秘的な光が現れ輝く存在が現れた。

なんか、見た事があるし。何かで読んだ事もある展開だ。


古代ギリシャの服装、神たちが着ていたトーガ服。

金のオーラに包まれた蒼い女神だった。


「いや~、トラックの効率が良すぎて、巻き込んでしまいました。 そうですね、死神の鎌ってこの現代において効率悪いと思いません? 短縮リアルタイムアタックをしたら、貴方も轢いてしまいました。 転生させます。 あ、願いはありますか? 可能な範囲叶えましょう。 逆恨みされて復讐されても困りますから」


お願いタイム、来ましたね。 

もちろん、三大お願いの、食べきれないイチゴ、ギャルのぱーてー、素敵な彼氏?? いや、彼女か。

世代を超えてなんとかボールの配信が流行っていたので伝わると思いますが。


「舐めた事言ったら、来世ミジンコにします。生物なのに光合成が出来ますよ。良かったですね」


小学生、つまりク〇ガキの理科の実験で弄ばれる存在。ミジンコ。

お願いは、まともにした方がいいだろう。


「先ほどの勇者たちにギフトを上げたので、巻き込まれた貴方にはスキルぐらいしかあげられないのです。 つまり年齢制限があるのです。貴方には何て言うか30歳手前ですよね。 なんとなく分かりますよね? 年齢と共にスキルの伸びに限界があると。もう、持っているもので戦わないといけないと気づいているはずです」


「女神様、辛辣ですね。夢とか希望は、どこにありますか?」


「いきたいですか? 夢のランドに? 夢には絡繰りがあるものです。 あなたの好きなチューバ―の中身は、必要な要素じゃないでしょう? 現実をみましょうよ」


何か腹立つ女神だな。

お前が〇したんじゃい。責任とれや。


「便利なスキル全部下さい」


「はい、わかりました。 それでは、いってらっしゃいませ~」


その発言の後、白い光に包まれ。意識が飛んだ。


――


意識が戻り、あたりを見回す。

巨大な木々が空を覆い、日差しがほとんど地面に届いていない。

葉の隙間からわずかな光が差し込むが、薄暗い雰囲気が漂う。

空気は湿っぽく、植物の濃い香りが漂っていた。


どうみてもジャングルだ。

鳥のさえずり、猿の鳴き声、風に揺れる葉音が響いている。さらに、遠くから聞こえる未知の動物の音が緊張感を増す。


何これ?? 原始時代? 異世界転生でもなんでもないな??

中世やナーロッパでも無くない?? 恐竜倒して無双ってか?? トカゲ虐待の何が嬉しいんだ?

ごめん。怪物ハンターユーザーは大好きだったね。トカゲの虐待が。

自分、セッガのファンタジー星派なんだよね、魂がまだあのク〇会社に囚われている。


そうだ、スキル! あの女神がスキルをくれると言っていた!!!

ステータスオープン!

元気に叫ぶと恐竜の餌にされそうなので、心の中で叫んだ。


ステータス

名前:ショウタ 職業:営業 (課長代理)


【ティム:猫を撫でれる程度】 【回復:裂かれた皮膚程度なら回復できるかも】 【気配察知:ヤバいのが分るぐらい】 【剣術:ゲームの知識程度】 【射撃:FPS得意よね】 【言語理解:面白外人程度】


ありがとう。ぶち〇すぞ。

ほんとにつかえねースキルだな。


『女神ィイイイイ!!!!』


祈り、それは信じる力。カードゲームで勝つときはいつもそうだ。ドローは運命を作る。

自分は、女神を力ある限り呼び出す。


「わっ! びっくりした。星海の彼方にいる私を呼ぶとはやるわね。そこは原始次元よ。高校生たちも原始次元で暮らして、繁殖して人類の祖になるんじゃないかしら。でも、貴方は無理そうね? どうしましょう。 先の洞窟に次元の門があるから、この世界が気に入らなかったら渡ったら? 中世世界に行けると思うわよ」


たしかに、中世次元に行けるとは保証はなかった。

でも原始時代で、無双して何をしろと??


世界チェンジだ、チェンジ!

密林を駆け抜け目の前の洞窟に入る。


「洞窟ダンジョンだから注意してね、もう次飛ぶと、この連絡も出来なくなるから」


と、言う言葉を置き去りにして。


急に洞窟内のスニーキングミッションだ。

恐竜を回避しながら、奥に見えるゲートにたどり着く。


ク〇も役に立たない、気配察知で感じ、回復スキルで切り傷を回復しながら走りぬいた。


異世界のゲートは荘厳で神秘的な雰囲気を漂わせていた。

大きな石のアーチの奥に渦巻くエネルギーのような光の帳があり、覗き込むとちらちらと異世界の景色が垣間見えた気がした。


この世界より悪くはならないだろう。

自分は、ゲートに飛び込んだ。


――


視界が暗転する。


「ギィィイイン」 と、金属同士が擦れる音が響き、空は血のように赤く、黒い雲が厚く重なっている。遠くで閃光が瞬き、轟音と共に地面が振動し、どこかで爆発音が響き、機械の破片が空を切って飛び散っていた。


理解が出来ない。

自分は夢を見ているのか。

そうだよ。ベットの中で眠るんだ、そうだこれは夢なんだ。

目が覚めた時、まだ12歳。おきたらラジオ体操に行って、朝ごはんを食べて涼しい午前中にスイカを食べながら宿題をして、午後から友達とリアルファイトに発展するドカポーンをするんだよ。

本気にならないゲームは、面白くない。


「ドンッ!」 と、突然、空に浮いている二足歩行の粗削りの鉄人形に向けて放たれた光線と爆発音が周囲に響き渡る。その衝撃で、鉄人形の装甲がこちらに向けて吹き飛んできた。


女神様、ここ未来世界じゃないですかね? これやっぱり現実ですか?

あのク〇スキルを頂きましたが、ビーム兵器やマップ兵器を撃つロボット相手に何か役立ちますかね? 剣術(笑)? ティムスキル(恨)? ウケる。自分の人生なのに、ウケるんですが。


もうだめそうだ。来世で頑張りますか、幸いミジンコではなさそうですし。


焼けた空気の臭いが鼻を突く。プロパンガスを空焚きした時の臭いだ。

轟音とともに巨大な影が空を裂いて落ちてくる。

ゴオオゴオォンと地響きと共に落ちて来たのは、傷だらけのロボットだった。

破壊されたコクピットからは火花が飛び散り、内部の機械がむき出しになっていた。


地面から巻き上がる爆風に驚き手で顔をかばう。

そして、横向きになったロボットから、人影がボトッと落ちて来た。


おいおいおいおい、大丈夫か。

思わず、あわてて駆け寄る。


そこには、血まみれになった宇宙スーツを着た大柄な女性が倒れていた。

近くにヘルメット転がっていた。


「おおい、大丈夫ですか?! もしもし? 大丈夫ですか?」


近寄り、引き寄せて状態を確認する。

宇宙スーツの肺の部分に穴が開き、血が噴き出している。


「グガガッ、男か?! 民間人がなぜここに・・・、逃げろ! ガハッ。いや、最後の瞬間に王子様が迎えに来てくれる幻覚か。悪くない最後だ。しかし、今まで漁った男の想像より凄いのが超えて来たな。純愛のご褒美・・・グハッ」


命運を悟り、錯乱しているのか。

全力で回復スキルを解放する。

先ほど、自分の擦り傷、切り傷が治ったから、応急処置にはなるはずだ。

肺に手を当て 「回復、快癒、ヒール、ピル!? うおおおお! 治れ! 働け! 念じろ! この腐れスキルがよぉおおおお!」 と念じ、色々と詠唱する。


緑色の光が肺に吸い込まれ、少しだけ、傷口を塞いだ感じがあり出血が収まる。

体に疲労感が襲ってくるが、それどこでは無い。人の命がかかっている。

再度、全力でスキルを行使した。


「現実の王子様だと・・・!? 肺の穴が塞がった?! 助かったのか。ありがとう。ゴハッ! あの、すまない、王子様。肋骨と腕もバキバキに折れていて、話すのも厳しいのだが。その 『種族の力』 で何とか治せないカハッ!」


「なんかすいません、骨折は無理みたいです」


これだけ全力でやって治らないなら無理だ。

喋れるぐらいまで助かったんだから贅沢を言わないで欲しい。


同時に、爆音と破壊の波が押し寄せる。

飛ばされそうなのをこらえながら、空の方向に首を上げる。


少し遠くの何もない空間に微かな揺らぎが生じた。それは、巨大なロボットを取り巻く見えない膜のように空気を歪ませ、周囲の光をわずかに乱反射させていた。

不可視のシールドみたいものだろうか。それぐらい分る。


「帝国の新型がこの資源拠点を急襲してきたんだ! いや、なぜここに男が?! 王子様を取り巻く雰囲気がおかしいだろ? なぜなにがなぜ? あれ? 幸福感が痛みを上回っている。なんだこれ。 いや、人族のアイドルみたいなのがなぜここに? 何なんだ? この未開地に何だ? 落ち着け、一度引くぞ、新型の梅雨払いが終わったら帝国の中隊が来る。一度引くんだ」


「ですよね。逃げましょう。逃げましょう。 でも、どこにどうやって逃げたらいいでしょうかね」


周辺は、破壊により荒野と化している。砲撃により砂煙が逆巻いており、遠くに建物らしきものが立っているが、遠すぎて良く分からない。


どうすればいいんだよこれ。

まずは自己紹介か? 落ち着け、ビジネスマナーとか関係ない。

どうみても周辺は、戦争中だ。


まずはこの錯乱している軍人っぽいお姉さんの指示に従うとしよう。


「王子様、すまない。そこのマシンのコクピットまで連れて行って欲しい。まだ私のヴォルテクスは動く。 コクピット正面の装甲が破壊されただけだ。乗り込み移動しよう。民間人の保護は禁止されているが、特例だ。代わりに動かして欲しい、避難しよう」


「良く分かりませんが、承知致しました」


宇宙スーツの大柄のお姉さんに片腕を膝の下に滑り込ませてもう一方の腕を背中に回す。

グッと持ち上げるが、凄い重い。折れてない方の手で首を抱えてくれないとヨロヨロとまともに進めない。

両腕を首にかけさせると、重心が収まり凄い持ちやすくなった。


お姉さんを見ると泣いている。

骨折で痛いのだろう。

首に手を回しているので顔が近い。改めて良く見ると、黒髪のぼさぼさロングで猫耳ヘアバンドの様な小物が頭の上から出ている。


ロボットに向かい歩くたびにウウッと嗚咽が漏れる。すごい痛そうだ。

なんかごめんな。無理だ、自分には治せないんだ。何か申し訳ない感じになってくる。


「ウウウッ。気絶しそうな程、痛いのに。このシュチュエーション王子様抱っこで全て痛みが感じなく、幸福感で満たされている。私は、この状況に興奮して幸せだ。 ウウッ、この緊急時にこんな懸想するとは、私はなんて愚かで悲しい生物なのか。今さっき何もしらない行きずりであった男だぞ。いくら王子様とは言え、私はこんなに節操が無ったのか、ウウッ」


知らんがな。うれし泣きかよ。

かすったら即転生のご都合レーザービームが飛び交ってる中で、これだけ冗談を言えれば大丈夫だよな。

1人で歩けるだろこれ。

声には出せないが、めちゃくちゃこのお姉さん、重いぞ。



異世界転生 来世は、パンケーキになりたい。

やわらかくてフワフワ。トッピングも甘いクリームだ


パンケーキ、それは強力で破壊的な光線エネルギー。

全てを飲み込み破壊するのだ。



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