表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

選ばれし者

作者: 雉白書屋

 遠い昔、銀河系にて……


 銀河帝国の圧政に立ち向かうべく、結成された反乱軍であったが、戦況は反乱軍側が劣勢を極めていた。

 帝国の軍隊はこの銀河において、屈指の強靭な肉体を持つ種族で構成されており、一人で反乱軍の兵士三人分の戦力に相当する。彼ら反乱軍を待っていたのは一方的な蹂躙であった。

 だが、反乱軍は多大な犠牲を払い、帝国が研究中の究極兵器の試作品を奪取することに成功した。しかし今、帝国の戦艦が逃走中の反乱軍の宇宙船を捉え、続々と兵士を送り込み、反乱軍の指導者であるルローラ姫を捕縛しようとしていた。

 絶望的な状況に見舞われた。しかし、どんなに苦しい時でも瞼を閉じさえしなければ、希望の光を見つけることができるのである。


『シンニュウシャ! シンニュウシャ!』

『損傷度三十五パーセント!』


 けたたましいサイレンの音が鳴り響き、赤色に染まった船内。通路を走り、姫が向かった先は脱出用ポット。その胸に抱えているのは、そう、希望。しかし……


「コォフュュュ……どちらへ行かれるのですかな、姫よ」


「……相変わらず、独特な呼吸音ですことね、将軍」


「コォォォ、このマスクを外して思いっきり呼吸してみたいものですが、空気が悪いようなのでね。あなたのその反抗的な目つきのせいかな?」

「将軍、ご冗談はほどほどにお急ぎを。まだ船内に敵兵士が残ってますので、油断は禁物コォォォフュュ」


「部下もなんですね」


「コォォォ同族なのでね。さ、あなたが腕に抱えているそれを、こちらに渡していただけますか?」


「それ、とは……?」


「コォォォォォ……そんな布でうまく隠せているつもりですか? あなたが、我々から奪ったものをお持ちであることはわかっています。さあ、返していただきましょうか」


「それほどまでに恐れているのですね。あなたがいう究極兵器、その存在を……」


「ふっ、有用だとは思っていますよ。超人的な力を持ち、そして、どんな種族とも心を通わすことができる。敵対惑星に送り込み、内部から敵勢力を壊滅させることも可能でしょう」


「あの子は兵器などではありませんよ。優しい心で育てれば、悪を挫く正義の光になる」


「御託は結構。さあ、こちらに渡して、な、ない! どこへやった! まさか」


「ええ、すでに脱出用ポットに乗せて、船外に送り出しました。ふふふっ、残念でしたね」


「コォォォォォォ……だが、ポッドにはワープ機能はなく、長距離航行もできない。つまり、行き先は一つしかない。隊長、今すぐに隊を率いてあの星へ向かえ。兵器を見つけ出し、殺すのだ。現地住人もろともだ」

「了解しました。念のため、既にあの星について少し調べておきましたが、どうやら活動するのに、この呼吸器も宇宙服も必要なさそうですフュュュ」


「ふん、バカンス気分でしくじれば、貴様と部下の命はないと思え」

「りょ、了解です!」


「さあ、姫、一緒に来ていただきましょうか」


「ええ、人質なり見せしめの処刑なり、お好きなようにどうぞ……ですが、あなた方鬼畜どもは必ずや報いを受けることでしょう」



 銀河の行く末はどうなるのか。脱出用ポッドはその青い惑星の川へ落ち、そして、どんぶらこ、どんぶらこ……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ