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7日目 ー事件、真実と背きー

 午後一時頃。

 事件が、発生した。


 昼飯後、再び遊園地に向かった。だが、向かっている途中に、地震が起こった。

 何だ何だとみんながパニックになる。


 ドォオオオオオオオオオオオオン!


 施設の方から何かが飛んで来る。

 何かと近寄ってみると、一人の男が倒れていた。見たことのない人。恐らく、菅とわりがある人だろう。でないと、可笑しいし。

 その男の人はボロボロになっていた。


「おっと」


 パニック状態になっている僕らの目の前に現れたのは、一人の男。その男は爽やかに微笑んでいた。


「こんな場所があったとは」


 その男は僕らを一人ずつ見る。

 僕らは何が起こっているかわからない。今がどんな状態かわからない。


「待て!」


 施設の方から血塗れの菅が現れる。


「生きてたのか。中々、しぶといね」

「俺はまだ死ぬわけにはいかない」

「ほお? カッコいいことを言う。なぜか、理由を訊いても?」

「断る」


 菅と男の会話。意味がわからないけど、二人は敵対していることはわかる。


「うっ!」


 その時、菅の片腕が捥げる。

 取ったのは……。


 ――怪物。


「「「「「「「「「「……!」」」」」」」」」」


 怪物を見た瞬間に、ここに居る十人の子供が息を呑む音が聞こえる。

 怪物というのが存在するのは、誰もが知っていたこと。

 でも、実際に見たことはない。

 それが、今、目の前に居る。

 そんな見たことのないものを、目の当たりにして。

 みんな、恐怖を感じていた。


「ああ、すまない」


 男が手を挙げて、後ろに振る。

 すると、怪物は菅の傍から離れる。

 そして、その奥、一匹の怪物が離れた先には、他の怪物が、うじゃうじゃと居た。


「なぜ……止める? 貴様は……俺、を……殺したいんじゃ、なかったのか……?」


 途切れ途切れの声。呼吸が荒い。


「いや、まあ、何となく」

 その気のない答えに、菅が睨む。


「それに、私の目的は、一人の子供だからね」

 菅の視線を無視し、また僕らを一人ずつ見る。


「さて、誰かな」


 この場を楽しむようにニヤリと笑う。

 誰を探しているのか。

 この場の子供が怯える。そんな中「よし」と呟き、何かを思いついたように、怪物に指示をした。


 手を前にする。すると、一匹の怪物が薫に飛びつく。

 あっさりと薫の腕を取った。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 薫の叫び声が響く。


 震える。

 助けたいという思いがあっても、体が動くことが出来ない。


「ふん。この女は違うようだ」


 薫の切り口を見て、冷めた視線を向ける。そして、怪物に指示し薫を捨てる。薫の元に一斗と純恋が駆け寄った。

 薫を摑んでいた怪物は、涎を垂らす。自分の持っている腕を口に入れようとした。それを男が止める。


「待て」


 怪物が男を睨むのに対し、男はその怪物を宥める。


「後で餌はやるから、待て」

 大人しく黙る怪物。


「さて、そろそろ食欲がそそる頃だろう」


 僕らに微笑む。

 何を言っているのかわからない。


 食欲?

 恐らく、僕らの中の誰かのことを言っているのだろうが、先程昼食を食べたばかりだ。それにこんな状態で、食欲がそそるわけが……。


「っ……!」


 そう思った。

 そう思ったのだが……。


 何なのだろう。

 この、沸き上がる感情、衝動は。

 みんなが男に視線を向けている中、僕は薫の取れた腕に虜になってしまった。


 あれが欲しい。

 あれが欲しい。


 と。


 あの腕が取りたい。あの腕が欲しい。

 あの腕が、食べたい――。

 でも、動けなくて。


 食べたいという欲がある。でも、動けない。それは多分、恐怖から。

 震えた足を前に出そうとして出せない。出さないのが正しい。でも僕の欲は、感情は前に進みたいと言っている。あの腕の元へ。


「隆?」


 誰かに名前を呼ばれた。だが、僕の耳に届かない。


「キミだったか」


 みんなの視線が僕に行く。男は探していたものを見つけたような目つきで、僕を見る。


「さあ、キミにこれをやろう」


 男は薫の腕を僕の元へ投げ捨てた。周りに血が飛ぶ。その血は僕の服にも付着した。だが、そんなことを気にしている暇はない。


 食べたい、食べたいと。


 自分の意思関係なく、欲望が溢れ出た。

 跪き、その腕を手に取る。


「隆!」


 それを止めようとするけど、そんな声は聞こえない。

 先程と同様。斬られた腕に虜になっていた。

 僕は腕を持ち上げ、食べようとする。

 だが……。


「……!」


 片腕を持ち上げられた。


「麗、那?」


 彼女の真っ直ぐな瞳が僕に向く。その瞳のお陰で、僕は正気に戻った。

 その様子を見ていた男が詰まらなそうに舌打ちする。


「あの女は邪魔だ。殺せ」


 冷酷な声で、怪物に指示。三匹程の怪物が麗那を目掛け、真っ直ぐ向かう。


「っ……!」


 そうはさせないと、麗那の前に立った。牙を立てた怪物が僕の腕を嚙み千切る。


「あうっ……!」


 痛い。

 痛いけど、我慢する。

 怪物達は引き千切った僕の腕を食べた。主人の命令はまだ達成していない所為か、その場を離れない。

 牙を剥く。僕を睨む。だから、僕も睨み返す。


「お、おい……あれ、どういうことだ……?」


 圭が僕の方を指しながら震えていた。

 僕も僕自身の身体を見る。すると、先程怪物に千切られたはずの腕が復活していた。


「ああ、知らないか。怪物というのは、心臓を突き刺さない限り、復活するんだ」


 怪物への情報を付け加える。

 でもそれが、その情報が、僕が怪物だということを証明していた。


「人間の姿では、コイツらに歯向かえない」


 男に見下される。

 男を睨んだ。だが、その隙を狙うように怪物が僕を飛び越し、麗那に向かう。

 怪物の手が、麗那を摑もうとした。

 その背中を僕は見たことのない速さで摑む。僕自身がやった行動とは思えないけど、事実、僕の腕が怪物を摑んでいるのだから、事実だ。

 僕の腕を見て、みんなが怯えているのが伝わる。


 それでも僕は……。

 怪物を麗那から離し、向こうに投げつけた。そして、待機していた怪物にぶつかる。


 僕の、怪物の手で。


「ほう、やはりそうだったか」


 僕の手を見て、みんなが驚く。僕自身も驚いている。自分が怪物だってことを何となくわかっていた。でも、認めたくない自分が居た。たとえ、約束をしていたとしても。


「キミ、及川隆だったかな。私のものになる気はないか?」

「……?」


 私のもの、というのはどういうことだろう。配下とか部下というところか。


「そういえば、自己紹介がまだだったか」


 勝手に話しを進められる。


「私は柊一。この通り、怪物使いだ。そして、私の目的はキミを手に入れること。ついでに邪魔だった菅智史を殺しに来た、というところかな」


 怪物使いというのは、読んで字の如く、怪物を使い馴らす者。怪物使いもあの本に書いてあった。その男、柊が、怪物である僕を使い馴らすことが目的らしい。


「それで、どうする? 及川隆」

「……お断り、します……」


 緊張の含んだ声で応答するが、その答えを予想していたかのように、柊は怪物の指示をした。

 怪物が真っ直ぐ、物凄いスピードで浩一の方に向かう。浩一は二匹の怪物に襲われた。


「……!」


 歯を食いしばり、目を見開く。そして先程と同様のスピードで食いついている怪物に攻撃をする。だが、先程のように上手くはいかず……。

 僕が怪物を睨んでいると、怪物は浩一ではなく僕を睨む。僕を先に始末することを考えたか、僕を襲った。その攻撃を右腕で防ぐ。この右腕は怪物になった腕。その腕で怪物を薙ぎ払う。その時、もう一匹の怪物が襲いかかった。

 このままではマズい、防ぎきれないと思った瞬間。いいや、これはチャンスだと思い直す。

 後ろに引いた足をしっかり踏み、反撃を。右手の爪を立てて、相手の顔をひっかく。その後、左手で怪物を殴る。気付けば、その左手も怪物の手になっていた。


「……!」


 怪物になった左手を見つめると視界に怪物の足が見える。それは、自分の足だった。気付けば体全体が怪物の姿となっていた。


 その様子を見て、柊が実に楽しそうに笑う。

 そんな声も届かず、みんなが僕を見ていた。

 変わり果てた僕を。

 有り得ないと、疑うように。

 あの時の夢と同じ状況だ。これでは、どうにもならない。

 僕は唇を噛む。

 そして、暫し、決意をして、菅に話しかける。


「ここから出られる方法はあるんだろうな?」

「ああ」

「じゃあ……、頼むよ」


 菅に頼みことをした。何を頼まれたかわかったらしい。

 菅が一生懸命に走り、みんなを誘導する。


「こちらに来い」


 奥へ進む。あちら側は壁だったと思うが……。まあ、出られるのだろう。

 横目でそれを観察していると、柊が舌打ちをし、怪物に指示。僕が目的のくせに、みんなを逃がさないらしい。


「させない!」


 僕はその怪物を倒す。初めての戦闘だけど、何とか戦う。別に武器を使うわけではないので、使い方など考えなくてもいい。


「自分を囮に、逃がすか。面白いッ!」


 うじゃうじゃ居た怪物がいっぺんに僕を襲う。

 誰が相手だろうとも、みんなに手出しはさせない。

 その一心で、僕は必死に戦った。

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